マーク式試験・記述試験のテクニック

マーク式試験・記述式試験を問わず、与えられた問題の状況設定を把握し、運動方程式、保存則等を利用して論理を積み重ねるのが物理の正攻法である。

ただし、試験中に正攻法を上手くひね り出すことができない状況も想定される。または、導き出した答えに自信が持てない状況も想定される。重要な試験であれば、このような苦しい状況におかれても少しでも点数を稼ぎたいものである。

このページでは、正攻法と少し異なる視点から問題を眺める方法(テクニック)について紹介し、いわゆる消去法の類も紹介する。

消去法というと、少し抵抗のある人や「邪道だ」と考える人もいだろう。ただし、ここで紹介する消去法は、物理学的に真っ当なことしか行わないので安心してほしい。思考の順序が正攻法と異なるだけであり、物理に習熟した人間が自然に活用している技術である。

ここで扱う手法は、それだけで正解にたどり着くことは滅多にないが、数ある選択肢から正解を絞り込むことはできるため、マーク式試験(選択肢が与えられた問題)では有効な場合がある。

正攻法で演習問題を解きつつ、このページで紹介する視点を持つことで、記述式試験への応用も可能になるとともに物理の論理展開に磨きがかかることであろう。

最終的にはここで紹介する手法が諸君にとって常識として定着することを願う。

繰り返すが、以下の考え方はあくまで正攻法で解いた結果の妥当性の検証又は正攻法の道筋が見えなかった問題での正答率を上げることに役立つものであって、この知識だけで試験が突破できるような類のものではない。

次元の確認

問題には、答えるべき物理量がある。そして、各物理量には次元単位)がそなわっている。

まず紹介するテクニックは、解となる物理量が持つべき次元と異なる次元を持つ選択肢は問答無用で間違いである。

次元については単位と次元で説明しているが、ここでも簡単に説明しておく。


次元とは、ある物理量の単位が、基本単位をどのように組み合わせたかを表現しているものである。物理量の単位は、次に列挙する基本単位の組み合わせで表現可能である。

  • 時間( \( \mathrm{s} \) : 秒)

  • 長さ( \( \mathrm{m} \) : メートル)

  • 質量( \( \mathrm{kg} \) : キログラム)

  • 電流( \( \mathrm{A} \) : アンペア)

  • 温度( \( \mathrm{K} \) : ケルビン)

  • 物質量( \( \mathrm{mol} \) : モル)

  • 光度( \( \mathrm{cd} \) : カンデラ)

ここで、異なる単位でも同じ次元を持ち得る点に注意してほしい。例えば、 \( 1 \ \mathrm{mg} \) と \( 1 \ \mathrm{t} \) はどちらも基本単位 \( \mathrm{kg} \) を用いて \( 1 \times 10^{-6} \ \mathrm{kg} \) と \( 1 \times 10^{3} \ \mathrm{kg} \) と表すことができる。したがって、 \( 1 \ \mathrm{mg} \) と \( 1 \ \mathrm{t} \) は同じ次元を持つ。

次元の異なる物理量同士の和差計算は禁止されていることも注意してほしい。代表的な単位は単位一覧にまとめた。

次元を表すための記号(単位とは別)が定められており、時間( \( \mathrm{T} \) )、長さ( \( \mathrm{L} \) )、質量( \( \mathrm{M} \) )、電流( \( \mathrm{I} \) )、温度( \( \mathrm{\Theta} \) )など使われる。

先ほどの例をそのまま使えば、 \( 1 \ \mathrm{mg} \) と \( 1 \ \mathrm{t} \) は、どちらも次元 \( \mathrm{M} \) を持つ。同様に、速度の次元は \( \mathrm{L T^{-1} } \) 、体積の次元は \( \mathrm{L^3 } \) 、エネルギーもしくは仕事の次元は \( \mathrm{M L^{2} T^{-2} } \) 、運動量もしくは力積の次元は \( \mathrm{M L T^{-1}} \) といった具合に次元が表される。

物理量の次元を確認することの有用性は広く知られている。実際の試験問題では、答えるべき物理量の次元と異なる次元を持つ選択肢が存在することがある。このような選択肢は、選択肢から除外して構わない。

記述式試験でも、自分の計算結果が求めるべき量の次元と等しいか確認する習慣を身につけてほしい。

次元を使った選択肢の絞り込みを次の問題に適用してみよう。

例題:次元の確認

なめらかな面上を運動する質量 \( m_{1} \) 、速さ \( v_{1} \) で右方向に進んでいた物体1が、質量 \( m_{2} \) で速さ \( v_{2} \ ( < v_1) \) で右方向に進んでいた物体2に衝突後、それぞれ別の速さとなった。衝突時の反発係数を \( 0 ≤ e ≤ 1 \) としたとき、衝突の前後で失われたエネルギーの大きさを求めよ。

正攻法で解くと、選択肢1が正解である(2体問題参照)が、ここでは各選択肢を次元という観点から考えてみよう。

まず、選択肢1、2及び4に登場する \( \displaystyle{\frac{m_{1} m_{2} }{m_{1} + m_{2} }} \) の次元は、質量の次元 \( \mathrm{M} \) を用いると、 \( \mathrm{M^2} / \mathrm{M} = \mathrm{M} \) となる。したがって、これは質量の次元を持っていることが分かる。

次に、全ての選択肢に登場している反発係数 \( e \) に注目する。反発係数の定義は(衝突後の遠ざかる速さ)/(衝突前の近づく速さ)であり、その次元は速さの次元( \( \mathrm{LT^{-1}} \) )同士の比である。したがって、反発係数は次元を持たない無次元量である。

上記二点に注意すると、選択肢1の次元は \( \mathrm{ML^2T^{-2}} \) 、選択肢2の次元は \( \mathrm{MLT^{-1}} \) 、選択肢3の次元は \( \mathrm{M^2L^2T^{-2}} \) 、選択肢4の次元は \( \mathrm{ML^2T^{-2}} \) である。

求めるべき物理量はエネルギーと同じ次元( \( \mathrm{ML^2T^{-2}} \) )でなければならないので、選択肢2及び3は問答無用で間違いと判断できる。

極端な値の代入

与えられた選択肢に対して、仮定を逸脱しない範囲で極端な値や特別な場合を代入した結果、正しくない結論を導く選択肢も選ばないように注意してほしい。まずは次の簡単な問題について考えよう。

例題:極端な値の代入

地面から角度 \( \theta \) だけ傾いた斜面上を滑り降りている物体の加速度を求めよ。ただし、重力加速度を \( g \) 、斜面と物体との動摩擦係数を \( \mu^{\prime} \) とする。

正攻法で解くと、選択肢1が正解であるが、ここでは選択肢に対して極端な値を代入して選択肢を絞ることを考えよう。

極端な例として、斜面の角度を \( \theta = 0^{\circ} \) とすれば、与えられた問題は水平面上での運動になるし、 \( \theta = 90^{\circ} \) とすれば、鉛直方向にそりたつ壁と見なすことができる。

前者の \( \theta=0^{\circ} \) の場合、運動方向に働く力は運動を妨げる向きに摩擦力が働くだけである。しかし、選択肢2、3及び4に \( \theta=0^{\circ} \) を代入すると、解答が摩擦係数と無関係になってしまうので論外である。

ある変数を含んだ選択肢に対し極端(特別)な値を代入した結果、現実の現象に対応しえないならば、間違いの選択肢である可能性が高い。

もう一題、同様の手法が有効な問題について考えよう。

例題:特別な状況の設定

二つの音源1、音源2は振動数 \( f_0 \) の音を出しつつ、互いの距離を保ったまま左向きに速さ \( v \) で直進している。この音源1と音源2の間を右向きに速さ \( u \) で移動している間、観測者には各音源から異なる振動数の音が聞こえる。観測者が両音源に挟まれた領域を運動している間に音源1から聞こえる音の振動数を \( f_{1} \) 、音源2から聞こえる音の振動数を \( f_2 \) とするとき、振動数の差 \( f_{1} – f_{2} \) として適当なものを選べ。ただし、空気中での音速を \( V \) として風はふいていないものとする。

正攻法で解くと、選択肢2が正解であるが、特別な状況設定を考えるだけで選択肢1、3及び4を除外することができる。

この場合の特別な状況設定とは \( u= – v \) が成立するとき、つまり、両音源と観測者の三者が全て左向きに速さ \( v \) で移動している場合である。この状況では、音源と観測者の相対速度はゼロであり、ドップラー効果がそもそも生じない。したがって、 \( f_{1} = f_{2} = f_{0} \) であり、 \( f_{1} – f_{2} = 0 \) は明らかである。

以上より、与えられた選択肢の \( u \) を \( -v \) に置き換えて \( f_{1} – f_{2} = 0 \) とならない選択肢1、3及び4は論外だと分かる。

この問題で与えられた仮定は、観測者と音源の位置及び移動関係のみであり、ドップラー効果はその結果として生じる。ならば、仮定の範囲内でドップラー効果が生じない特別な状況を考え、それを解に含まない選択肢は不適切として除外するのである。

これまで議論したような、極端(特別)な状況設定を考える手法が有効な例をいくつか列挙しておく。

  • 斜面の角度 \( \theta \) が \( \theta \to 0^{\circ} \) の水平状態や、 \( \theta \to 90^{\circ} \) の鉛直な壁面状態を考えてみる。

  • 摩擦係数 \( \mu \) を \( \mu \to 0 \) として摩擦が全く働かない状態や、摩擦が大きすぎて摩擦が働く物体同士が一緒に運動している状態を考えてみる。

  • 反発係数 \( e \) を \( e \to 1 \) として完全弾性衝突の問題に置き換えるか、 \( e \to 0 \) として完全非弾性衝突として考える。

  • 二物体の質量比( \( m/M \) )を、 \( m/M \to 0 \) として質量 \( M \) の物体に対して質量 \( m \) の物体が非常に軽い極限を考える。

  • 相対速度がゼロになる状況を考えてみる。

  • 時間が十分に経過した極限( \( t \to \infty \) )や、繰り返しの回数が無限の極限( \( n \to \infty \) )を考える。例えば、地面との反発が繰り返し起きる問題で、反発回数や経過時間を十分大きくとれば最終的には反発しなくなる、などがこれに該当する。

  • 浮力を与えている媒質の密度 \( \rho \) を \( \rho \to 0 \) として、その媒質が存在しない状況や、 \( \rho \to \infty \) として剛体と近似できる極限を考える。

このように、問題文中の物理量や状況が極端(特別)な場合を考えた結果と整合しない選択肢には、十分に警戒してほしい。そして、問題設定の仮定を変更しないように注意すべきであることを改めて注意喚起しておく。

常識に反しないか確認

極端な値の代入と類似の考え方として、求めた答えが常識に反していないかにも意識を向けておくことは大変意義深い。この考え方は、マーク式試験よりは記述式試験で自分が導出した解の妥当性の検証で役に立つ場面が多いだろう。

例えば、せいぜい常温程度で自由運動する粒子の平均速度を求めさせる問題において、値が \( 3 \ \mathrm{m/s} \) とか、 \( 100 \ \mathrm{km/s} \) となってしまった場合には途中で計算間違いをした可能性が大きい。実際、常温程度の気体粒子の平均速度は気体分子運動論によって導出することができるので興味がある人は試してほしい。せいぜい数百 \( \mathrm{m/s} \) 程度である。

他にも、水や油のような物質の屈折率を求める問題において導出した答えが \( 1 \) より小さいなども大変怪しいし、可視光線の波長が \( \lambda = 1 \ \mathrm{mm} \) などとなっていてもその結果を疑わないことは、物理学と現実との関わりに関心が薄いと言わざるをえない。

この常識的な値というのは、教科書などでコラム的に紹介される程度であるし、諸君もそれを必死に覚える必要はない。しかし、物理学が現実世界の物理現象を記述する学問であることを鑑みて、どの程度のスケールで起きている物理現象なのかどの程度の値が実現しているのかの感覚を、少しは持っておいてほしい。

物理定数の値は、物理現象のスケールを知るためのよい指標となるので、物理定数を、今一度確認しておいてほしい。

グラフの特徴に注目

物理現象を表す式を適切なグラフとして描画すると、その意味が分かりやすくなることがままある。実際、グラフには様々な情報が含まれており、この情報を使わない手はない。

ここでは、グラフの特徴に着目し、明らかに間違いな選択肢などを排除することを考える。

まず、図を見た時に確認することは、縦軸及び横軸が表す量の確認である。特に、波動分野では軸の表す量が様々であるので注意してほしい。また、始点終点の確認を怠ってはならない。当然であるが、グラフから読み取れるこれらの特徴が、与えられた問題文に適していない選択肢は論外である。

消去法の観点では、グラフ上の特別な点には注意が必要である。以下に、注目すべき特徴点の例を列挙しておく。

  • 縦軸の値がゼロになる点。

  • 横軸の値がゼロになる点。

  • グラフが最大値もしくは最小値を取る点。

  • グラフの傾き(縦軸の物理量を横軸の量で微分した値)が最大値もしくは最小値を取る点

以下では、例題を通してグラフの活用を議論しよう。

例題:グラフの概形に着目

いま、 \( x \) 軸方向へ進行する波がある。時刻 \( t=0 \) における波の波形を上図に、媒質の位置 \( x=0 \) の点の波の高さの時間変化を下図に示す。この波の変位を表す式として正しいものを答えよ。

正攻法で解くと、選択肢1が正解であるが、選択肢とグラフの対応を考えてみよう。

時刻 \( t=0 \) では、波の変位は \( – \sin \) の形状である。各選択肢に \( t=0 \) を代入すると、選択肢2及び4は \( + \sin \) の形状であり、誤った選択肢であることが分かる。

また、 \( x=0 \) では、波の高さの時間変化は \( +\sin \) の形状である。各選択肢に \( x=0 \) を代入すると、選択肢2及び3は \( – \sin \) の形状であり、誤った選択肢であることが分かる。

最後に、グラフを答えさせる問題について考えよう。

例題:物理的な特徴とグラフの整合性の確認

下図のように可変抵抗を含んだ回路を考える。可変抵抗の抵抗値 \( R \) を上昇させていくとき、検流計 \( G \) を流れる電流を表したグラフを選べ。ただし、電流の向きは点 \( B \) から \( C \) へ流れる方向を正とする。(国家公務員試験改題)

正攻法で解くと、選択肢2が正解である。

グラフを選ぶ問題なので、まずは始点終点に着目してみよう。

可変抵抗 \( R \) の値が \( 0 \ \mathrm{\Omega} \) の時には点 \( A \) の電流は全て点 \( B \) に流れ込むことは明らかであるので、選択肢4は論外である。また、選択肢3は電流がこの状況下で限りなく大きな値に発散するように描かれているが、そのようなことは生じないので選択肢3も誤った選択肢と判断できる。

ホイートストンブリッジの考え方を利用すると、可変抵抗の抵抗値が \( R = 2 \ \mathrm{\Omega} \) の時には検流計には電流が流れないので \( I = 0 \ \mathrm{A} \) となる。この条件はどのグラフも満たしているので、選択肢の絞り込みには利用できない。

最後に、可変抵抗の値を限りなく大きくした場合、点 \( A \) の電流は全て点 \( C \) へ流れ込むことになり、 \( BC \) 間では \( C \to B \) の電流しか存在しなくなる。この状況が描かれているのは選択肢2のみである。

このように、グラフを用いた問題でも幾つかの着目ポイントを押さえておくことで選択肢の絞り込みは可能である。


以上、幾つかの手法(テクニック)について紹介したが、言われてみれば当然というところであろう。ただし、試験中という限られた時間の中で、これらの確認を行うのはそれなりに慣れが必要となる。なにか、試験や受験が近づいてきたらとにかく演習量を増やして経験値を貯めてほしい。