質点系の回転運動方程式

系の全角運動量の時間変化率は系に作用する外力によるモーメントのみに依存する. したがって, 外力によるモーメントがゼロのときには系の全角運動量は一定に保たれる. \[\frac{d\boldsymbol{L}}{dt} = \sum_{i=1}^{N} \left( \boldsymbol{r}_{i} \times \boldsymbol{F}_{i} \right) \quad . \notag\]

ここでは, 多数の質点からなる系について考えることにする. その主な目的は, 質点に対する力学法則を多数の質点からなる系に当てはめることで, 質点系全体に対する力学法則がどのように記述されるのかを調べることである.

質点系の運動方程式では, 質点系の並進運動に関わる物理量である運動量について議論したが, ここでは質点系の回転運動に関わる物理量である角運動量および力のモーメントについて議論することになる.

以下, 特に断りのない限り, 系は \( N \) 個の質点によって成り立つ \( N \) 質点系であり, \( i \) 番目の質点の質量を \( m_{i} \) , その位置ベクトルを \( \boldsymbol{r}_{i} \) , 速度ベクトルを \( \displaystyle{\boldsymbol{v}_{i}=\frac{d\boldsymbol{r}_{i}}{dt} } \) , 運動量を \( \boldsymbol{p}_{i}= m_{i}\boldsymbol{v}_{i} \) とする. ( \( i = 1 ,2, \cdots , N \) )

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角運動量とモーメントの復習
質点の回転運動方程式
質点系の回転運動方程式
質点系の角運動量保存則


角運動量とモーメントの復習

角運動量という物理量については角運動量保存則で紹介しているが, 簡単な復習も以下に載せるので必要な人はこちらも参照して欲しい.

角運動量の復習

位置 \( \boldsymbol{r} \) に存在する質点の運動量が \( \boldsymbol{p} \) のとき, 原点 \( O \) まわりの角運動量 \( \boldsymbol{L} \) は次式で定義される. \[\boldsymbol{L} = \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{p} \quad . \notag \] ここで, 記号 \( \times \) は外積を意味している. 2つのベクトル \( \boldsymbol{A} \) , \( \boldsymbol{B} \) の外積計算の結果は新たなベクトルであり, その向きは \( \boldsymbol{A} \) を始点まわりに \( \theta \left( < 180^{\circ} \right) \) だけ回して \( \boldsymbol{B} \) と一致させるときの右ねじの進行方向である. また, その大きさは \( \left| \boldsymbol{A} \right| \left| \boldsymbol{B} \right| \sin{\theta} \) であり, \( \boldsymbol{A} \) と \( \boldsymbol{B} \) によって作られる平行四辺形の面積に等しい.

角運動量 \( \boldsymbol{L} \) が回転に関係する量といえるのかを簡単に説明しておこう.

原点まわりに回転してしないという状況は, 運動が原点に対して放射状にのびる直線上のみに限られることを意味する. このとき, 物体の位置 \( \boldsymbol{r} \) と運動量 \( \boldsymbol{p} \) とは実数 \( k \) を用いて次のように書くことができる. \[\boldsymbol{p} = k \boldsymbol{r} \quad . \notag\] したがって, \( \boldsymbol{r} \) と \( \boldsymbol{p} \) とは平行であり, これらの外積はゼロ(ベクトル)となる. \[\begin{aligned} \boldsymbol{L} &= \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{p} = \boldsymbol{r} \times k \boldsymbol{r} \notag \\ &= k \left( \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{r} \right) = \boldsymbol{0} \quad . \notag\end{aligned}\]

逆に, \( \boldsymbol{L}=\boldsymbol{0} \) の場合には, \( \boldsymbol{r} \) か \( \boldsymbol{p} \) の少なくともどちらか一方が \( \boldsymbol{0} \) であるか, \( \boldsymbol{r} \) と \( \boldsymbol{p} \) が平行のときであり, いずれの場合も原点まわりに質点は回転していない.

このように, 角運動量という物理量は質点のある点まわりの回転を特徴づける物理量となっている.

モーメントと回転運動方程式の復習

質点の運動方程式 \[m \frac{d\boldsymbol{v}}{dt} = \boldsymbol{F} \notag\] に対して左から \( \boldsymbol{r} \) を乗じ, 外積計算を行なった式 \[m \left( \boldsymbol{r} \times \frac{d\boldsymbol{v}}{dt} \right) = \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{F} \notag \] の右辺に登場する量は(原点まわりの)力のモーメントまたは単にモーメントと呼ばれる. \[\boldsymbol{N} \mathrel{\mathop:}= \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{F} \quad . \notag\] また, 角運動量 \( \boldsymbol{L} \) の時間微分が \[\begin{aligned} \frac{d\boldsymbol{L}}{dt} &= \frac{d}{dt} \left( \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{p} \right) = m \frac{d}{dt} \left( \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{v} \right) \notag \\ &= m \left\{ \left( \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} \times \boldsymbol{v} \right) + \left( \boldsymbol{r} \times \frac{d\boldsymbol{v}}{dt} \right) \right\} \notag \\ &= m \left( \boldsymbol{r} \times \frac{d\boldsymbol{v}}{dt} \right) \notag \end{aligned}\] であることから, 運動方程式から導かれた回転運動に対する運動方程式は次式のように書くことができる. \[\frac{d \boldsymbol{L}}{dt} = \boldsymbol{r} \times \boldsymbol{F} =\mathrel{\mathop:} \boldsymbol{N} \quad . \notag\] これにより, 質点の角運動量 \( \boldsymbol{L} \) の時間的な変化はモーメント \( \boldsymbol{N} \) によって引き起こされ, \( \boldsymbol{N}=\boldsymbol{0} \) の場合には角運動量が一定に保たれることがわかる. このことを角運動量保存則という.

質点の回転運動方程式

系に属する \( i \) 番目の質点が同じ系に属する \( j\ ( \neq i) \) 番目の質点から受ける力を \( \boldsymbol{f}_{ij} \) とする. 作用反作用の法則により, \( i \) 番目の質点が \( j \) 番目の質点から受ける力 \( \boldsymbol{f}_{ij} \) と \( j \) 番目の質点が \( i \) 番目の質点から受ける力 \( \boldsymbol{f}_{ji} \) との間に次式が成立している. \[\boldsymbol{f}_{ij} = – \boldsymbol{f}_{ji} \quad \left( i \neq j\right) \quad . \notag\] このような, 系内部の物体が互いに及ぼし合う力を内力といい, \( i \) 番目の質点が受ける内力の合力は \( \displaystyle{ \sum_{j\neq i}^{N} \boldsymbol{f}_{ij} } \) で与えられる. ここで, 記号 \( \displaystyle{ \sum_{j\neq i}^{N} } \) は, \( j =1 , 2, \cdots , N \) の総和計算を, \( j = i \) のみを除いた範囲で行うことを意味している.

そして, \( i \) 番目の質点が系の外部から受ける外力(の合力)を \( \boldsymbol{F}_{i} \) とすると, \( i \) 番目の質点が受ける合力は \( \displaystyle{ \left( \boldsymbol{F}_{i} + \sum_{j\neq i}^{N} \boldsymbol{f}_{ij} \right) } \) と書くことができる. このとき, \( i \) 番目の質点の原点 \( O \) まわりの力のモーメント \( \boldsymbol{N}_{i} \) は, 質点の位置と質点に働く合力との外積で定義される. \[\boldsymbol{N}_{i} \mathrel{\mathop:}= \boldsymbol{r}_{i} \times \left( \boldsymbol{F}_{i} + \sum_{j\neq i}^{N} \boldsymbol{f}_{ij}\right) \quad . \notag\] また, \( i \) 番目の質点の原点 \( O \) まわりの角運動量 \( \boldsymbol{L}_{i} \) は, 質点の位置 \( \boldsymbol{r}_{i} \) と運動量 \( \boldsymbol{p}_{i} \) との外積 \[\boldsymbol{L}_{i} \mathrel{\mathop:}= \boldsymbol{r}_{i} \times \boldsymbol{p}_{i}= m_{i} \boldsymbol{r}_{i} \times \boldsymbol{v}_{i} \quad . \notag\] で定義され, モーメント \( \boldsymbol{N}_{i} \) との間には次式の回転運動方程式が成立する. \[\frac{d\boldsymbol{L}_{i}}{dt} = \boldsymbol{N}_{i} = \boldsymbol{r}_{i} \times \left( \boldsymbol{F}_{i} + \sum_{j\neq i}^{N} \boldsymbol{f}_{ij}\right) \quad . \label{nbpleomi}\]

質点系の回転運動方程式

質点系に属する各質点に対して成立する回転運動方程式(式\eqref{nbpleomi})が得られたので, 今度はそれらを全て合わせたときにどんな結論が得られるのかに興味を移そう.

\( i \) 番目の質点に対して成立する式\eqref{nbpleomi}を \( i=1 \) から \( N \) まで和を取ると, \[\sum_{i=1}^{N} \frac{d\boldsymbol{L}_{i}}{dt} = \sum_{i=1}^{N} \boldsymbol{r}_{i} \times \boldsymbol{F}_{i} + \sum_{i=1}^{N} \boldsymbol{r}_{i} \times \left( \sum_{j\neq i}^{N} \boldsymbol{f}_{ij} \right) \label{nbpleomsum}\] となる. 以下では, 式\eqref{nbpleomsum}の各項をできる限り整理しよう.

まず, 式\eqref{nbpleomsum}の左辺について考える. 質点系の原点 \( O \) まわりの全角運動量 \( \boldsymbol{L} \) を, 質点系に属する各粒子の角運動量の総和 \[\boldsymbol{L} \mathrel{\mathop:}= \sum_{i=1}^{N} \boldsymbol{L}_{i} \quad . \notag\] で定義すると, \[\frac{d\boldsymbol{L}}{dt} = \frac{d}{dt} \left( \sum_{i=1}^{N} \boldsymbol{L}_{i} \right) = \sum_{i=1}^{N} \frac{d\boldsymbol{L}_{i}}{dt} \notag\] が成立するので, 式\eqref{nbpleomsum}の左辺は系の全角運動量の時間微分に置き換えることができる.

次に, 式\eqref{nbpleomsum}の右辺第2項について考える. この項は \[\sum_{i=1}^{N} \boldsymbol{r}_{i} \times \left( \sum_{j\neq i}^{N} \boldsymbol{f}_{ij} \right) = \sum_{i=1}^{N} \boldsymbol{r}_{i} \times \left( \sum_{j < i}^{N} \boldsymbol{f}_{ij} + \sum_{j > i}^{N} \boldsymbol{f}_{ij} \right) \notag\] と書くことができる. ここで, 記号 \( \displaystyle{ \sum_{j< i}^{N} } \) \( j =1 , 2, \cdots , N \) の総和計算を, \( j \) が \( i \) 未満の範囲で行うことを意味し, 記号 \( \displaystyle{ \sum_{j> i}^{N} } \) \( j =1 , 2, \cdots , N \) の総和計算を, \( j \) が \( i \) より大きな範囲で行うことを意味する.

途中, 作用反作用の法則 \( \boldsymbol{f}_{ij} = -\boldsymbol{f}_{ji} \) を用いると, \[\begin{aligned} \sum_{i=1}^{N} \boldsymbol{r}_{i} \times \left( \sum_{j\neq i}^{N} \boldsymbol{f}_{ij} \right) &\ = \sum_{i=1}^{N} \boldsymbol{r}_{i} \times \left( \sum_{j < i}^{N} \boldsymbol{f}_{ij} + \sum_{j > i}^{N} \boldsymbol{f}_{ij} \right) \notag \\ &\ = \sum_{i=1}^{N} \sum_{j < i}^{N} \left( \boldsymbol{r}_{i} \times \boldsymbol{f}_{ij} \right) + \sum_{i=1}^{N}\sum_{j > i}^{N} \left( \boldsymbol{r}_{i} \times \boldsymbol{f}_{ij} \right) \notag \\ &\ = \sum_{i=1}^{N} \sum_{j < i}^{N} \left( \boldsymbol{r}_{i} \times \boldsymbol{f}_{ij} \right) – \sum_{i=1}^{N}\sum_{j > i}^{N} \left( \boldsymbol{r}_{i} \times \boldsymbol{f}_{ji} \right) \notag \\ &\ = \sum_{i=1}^{N} \sum_{j < i}^{N} \left( \boldsymbol{r}_{i} \times \boldsymbol{f}_{ij} \right) – \sum_{j=1}^{N}\sum_{i > j}^{N} \left( \boldsymbol{r}_{j} \times \boldsymbol{f}_{ij} \right) \notag \\ &\ = \sum_{i=1}^{N} \sum_{j < i}^{N} \left\{ \left( \boldsymbol{r}_{i} – \boldsymbol{r}_{j} \right) \times \boldsymbol{f}_{ij} \right\} \notag\end{aligned}\] となる. ここで, 作用反作用の法則により, \( \boldsymbol{f}_{ij} \) は \( \boldsymbol{r}_{i}-\boldsymbol{r}_{j} \) と同一直線上(作用線上)に存在するので, \( \left( \boldsymbol{r}_{i} – \boldsymbol{r}_{j} \right) \) と \( \boldsymbol{f}_{ij} \) は互いに平行であり, その外積はゼロとなる. したがって, 内力によるモーメントは互いに打ち消し合うことがわかる[1].

したがって, 式\eqref{nbpleomsum}は次のように書き換えることができる. \[\frac{d\boldsymbol{L}}{dt} = \sum_{i=1}^{N} \left( \boldsymbol{r}_{i} \times \boldsymbol{F}_{i} \right) \notag\] この式は, 系の全角運動量の時間変化は系の各質点に働く外力によるモーメントのみに依存するということを示しており, 内力のモーメントは系の全角運動量に影響を与えないことがわかる.

この結論は質点系の運動の分離を学ぶことでより整理された形に変形することができるが, ここではこれ以上踏み込まないことにする.

質点系の角運動量保存則

質点系の角運動量保存則 \[\frac{d\boldsymbol{L}}{dt} = \sum_{i=1}^{N} \left( \boldsymbol{r}_{i} \times \boldsymbol{F}_{i} \right) \notag\] により, 系に作用する外力による原点 \( O \) まわりのモーメントがゼロであれば系の全角運動量が時間的に変化しないことが示された. これを質点系の角運動量保存則という.

最終更新日
質点系の運動方程式 質点系の運動の分離



補足    (↵ 本文へ)
  1. 同じことをもう少し感覚的に導くこともできる. 作用反作用の法則により, \( \boldsymbol{r}_{i} \times \boldsymbol{f}_{ij} \) が存在すれば必ず \( \boldsymbol{r}_{j} \times \boldsymbol{f}_{ji} = \boldsymbol{r}_{j} \times \left( – \boldsymbol{f}_{ij} \right) \) も存在することになる. このとき, \[\boldsymbol{r}_{i} \times \boldsymbol{f}_{ij} + \boldsymbol{r}_{j} \times \boldsymbol{f}_{ji} = \left( \boldsymbol{r}_{i} – \boldsymbol{r}_{j} \right) \times \boldsymbol{f}_{ij} \notag\] は, \( \boldsymbol{f}_{ij} \) は \( \boldsymbol{r}_{i}-\boldsymbol{r}_{j} \) と平行である(作用反作用の法則)のでゼロ(ベクトル)となる. ゼロベクトルの総和はやはりゼロベクトルであるので, 式\eqref{nbpleomsum}の第2項はゼロとなることがわかる.

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