直交座標系

直交した2軸で作られる座標系を2次元直交座標系、直交した3軸で作られる座標系を3次元直交座標系という。

位置ベクトル \( \boldsymbol{r} \) は2次元直交座標系では \( \boldsymbol{r}=(x, y) =x\boldsymbol{e}_{x}+y\boldsymbol{e}_{y} \) 、3次元直交座標系では \( \boldsymbol{r}=(x, y, z) =x\boldsymbol{e}_{x}+y\boldsymbol{e}_{y}+z\boldsymbol{e}_{z} \) とあらわされる。ここで \( \boldsymbol{e}_{x} \) , \( \boldsymbol{e}_{y} \) , \( \boldsymbol{e}_{z} \) は各軸方向を向いた大きさ \( 1 \) の単位ベクトルである。

物理学は物体の運動を記述するための学問である。

ここでは、物体が何処にいるのかを記述する第一歩として、座標系というものを定義しよう。

座標系を定義するという行為は、物体が配置された空間に対して目盛りを付け加えることに相当する。 したがって、座標系を適切に定めることができれば、物体の位置の記述が明確になるだけでなく、向きを持つ物理量の記述も容易となる。

座標系の設定は人間が好き勝手に行うものであり、これによって何か物理現象自体が変わるというわけではない[1]。 また、物理の勉強をしていると、設定した座標系の下で運動を適切に記述するということに多くの時間を割くことになる。 しかしながら、注目している物体の運動の性質や記述が明瞭となるような、適切な座標系を設定することや、異なる座標系間の関係を記述するという努力もいずれ必要となることは記憶に留めておいてほしい。

典型的な座標系は複数知られているが、まずは最も単純な座標系について考えよう。 すなわち、座標軸が互いに直交する直交座標系である。

以下では、ある量 \( a \) がベクトルであることを \( \boldsymbol{a} \) といった具合に太字で表現する[2]。 この \( \boldsymbol{a} \) は、 \( \vec{a} \) と同義である。

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2次元直交座標系
3次元直交座標系
その他の座標系


2次元直交座標系

諸君も経験的に理解できるように、平面上のある位置を指定するときには縦と横という互い直交した軸を設定し、各軸の値を指定することで表現できる。

机の上に置かれた消しゴムの位置を指定するために、机の四隅のいずれか一箇所を基準にとして、縦方向に \( 5\,\mathrm{cm} \) 、横方向に \( 12\,\mathrm{cm} \) といった具合である。

この考え方を一般化し、平面上のある点 \( P \) の位置を記述する方法について考えよう。

2次元直交座標系とは、下図に示すように、二つの数直線が直交するような座標系のことをいう。 このとき、二つの数直線をそれぞれ \( x \) 軸及び \( y \) 軸と呼び、それらの交点を原点 \( O \) と呼ぶことにしよう。

通常、原点 \( O \) は \( x \) 軸と \( y \) 軸の両方の値がゼロとなるように設定し、また、各座標軸に矢印を書き加えることで、その軸の正方向に表現することとしよう。

下図の場合、右向きが \( x \) 軸の正の方向であり、 \( x \) 軸の正方向に対して反時計回りに \( 90^{\circ} \) 回転した方向を \( y \) 軸の正方向と定めている[3]

このような座標軸を設定すると、 \( x \) 軸上の値 \( y \) 軸上の値の両方を指定することで点 \( P \) の位置を記述することが可能となる。

2次元直交座標系上の任意の点 \( P \) の座標を \( (x, y) \) としよう。 これは、点 \( P \) から \( x \) 軸におろした垂線と \( x \) 軸との交点の値( \( x \) 座標成分)が \( x \) で、点 \( P \) から \( y \) 軸におろした垂線と \( y \) 軸との交点の値( \( y \) 座標成分)が \( y \) であることを表している。

ここで、点 \( P \) を表す位置ベクトルを導入しよう。 位置ベクトルとは、原点 \( O \) から点 \( P \) へと向かう、向きまで考慮した線分(有向線分)のことである。

2次元直交座標系の場合、点 \( P \) を表す位置ベクトル \( \boldsymbol{r} \) は \[\boldsymbol{r} = \left( x, y \right) \label{pvec} \] といった具合に表し、数 \( x \) 及び \( y \) を(位置)ベクトル \( \boldsymbol{r} \) の成分と呼ぶことにしよう。 式\eqref{pvec}のように、二次元平面上で表現されたベクトルであることを強調する場合には、2次元ベクトル又は平面ベクトルなどと呼ぶ。

ベクトルの性質については、別のページを参照してほしい。

\( x \) 軸の正方向を向いた大きさが \( 1 \) であるベクトルを \( \boldsymbol{e}_{x} \) 、 \( y \) 軸の正方向を向いた大きさが \( 1 \) であるベクトルを \( \boldsymbol{e}_{y} \) としよう。このように、大きさが \( 1 \) であるベクトルを単位ベクトルという。 \[\begin{aligned} \boldsymbol{e}_{x} &= \left( 1, 0 \right) \\ \boldsymbol{e}_{y} &= \left( 0, 1 \right) \end{aligned} \label{2dexey} \]

\( x \) 軸及び \( y \) 軸方向の単位ベクトルを用いると、位置ベクトル \( \boldsymbol{r} = \left( x, y \right) \) は、 \[\begin{aligned} \boldsymbol{r} &= \left( x , y \right) \\ &= \left( x , 0 \right) + \left( 0 , y \right)\\ &= x \boldsymbol{e}_{x} + y \boldsymbol{e}_{y} \end{aligned} \] と表すことができる。ここで、ベクトル同士の和はその成分同士の和で計算できることと、ベクトルの実数倍はその各成分に同じ値を乗じたものになるというベクトルの性質を用いた。

なお、直交する二つの単位ベクトル \( \boldsymbol{e}_{x} \) と \( \boldsymbol{e}_{y} \) との内積 \( \boldsymbol{e}_{x} \cdot \boldsymbol{e}_{y} \) はゼロであり、 \[\boldsymbol{e}_{x} \cdot \boldsymbol{e}_{y} = 0 \] が成立している。

3次元直交座標系

3次元空間上のある点 \( P \) の位置を記述する方法について考えよう。 以下の議論は、平面の場合のそれを素直に拡張したものとなる。

空間上のある位置を指定するときには縦、横に加えて、高さを含めた、互い独立した三つの数の組でもって指定することが可能となる。

3次元直交座標系とは、下図に示すように2次元直交座標系が張る平面とは垂直な方向に \( z \) 軸を設けた座標系のことを指す。

ここで、 \( z \) 軸の正方向をどちら向きにとるかはそれなりに大きな問題である。 下図のような正方向の決め方をした座標系を右手系といい、一般的にはこの座標軸の取り方が標準となっている。 ただし、下図とは \( z \) 軸の正方向が反対にしたような座標系ももちろん可能であり、左手系というがここではこれ以上踏み込まない。

以下、特に断りのない限りは右手系で議論する。

点 \( P(x, y, z) \) を表す位置ベクトルも平面ベクトルのときのそれを素直に拡張すればよい。 すなわち、ベクトルの成分が一つ増えた3次元ベクトル又は空間ベクトルを \[\boldsymbol{r} = \left( x, y, z \right) \] で表すことにする.

また、 \( x \) 軸、 \( y \) 軸及び \( z \) 軸それぞれの正方向を向いた大きさが \( 1 \) である単位ベクトルを、記号 \( \boldsymbol{e}_{x} \) 、 \( \boldsymbol{e}_{y} \) 及び \( \boldsymbol{e}_{z} \) で表す。 \[\begin{aligned} \boldsymbol{e}_{x} &= \left( 1, 0, 0\right) \\ \boldsymbol{e}_{y} &= \left( 0, 1, 0 \right) \\ \boldsymbol{e}_{z} &= \left( 0, 0, 1 \right) \end{aligned} \]

また、位置ベクトル \( \boldsymbol{r} = \left( x, y, z \right) \) は、単位ベクトルをもちいて次のように書くことができる. \[\boldsymbol{r} = x \boldsymbol{e}_{x} + y \boldsymbol{e}_{y} + z \boldsymbol{e}_{z} \]

なお、直交する三つの単位ベクトルのうち、互いに異なる二つのベクトルの内積はゼロとなる。 \[\boldsymbol{e}_{x} \cdot \boldsymbol{e}_{y} = \boldsymbol{e}_{y} \cdot \boldsymbol{e}_{z} = \boldsymbol{e}_{z} \cdot \boldsymbol{e}_{x} = 0 \]

その他の座標系

以上では直交座標系のみを考えた。 しかし、冒頭でも述べたように、座標系とは人間が自然現象を的確に述べるための共通の目盛りとしてしいたものであるので、様々な目盛りのとり方が存在してもよい[4]

物理現象によっては直交座標系以外で議論したほうが便利なこともある. 実際、原点周りを円運動しているような物体についてを議論するときには下図左のような碁盤の目状の直交座標系ではなく、極座標系と呼ばれる円形の目盛りを持った下図右のような座標系を考えたほうが都合がよいことを2次元極座標系の運動方程式などで取り扱う.

最終更新日



補足    (↵ 本文へ)
  1. 物理現象の見え方は、異なる場合がある。

  2. 手書きでノートに書く場合などは別ページの内容を参照してほしい。

  3. もちろん、 \( x \) 軸の正方向に大して時計回りに \( 90^{\circ} \) 回転下方向を \( y \) 軸の正方向と定めてもよいが、標準的ではない。

  4. 目盛りというと、長さのように解釈されてしまうかもしれないが、その目盛り角度などであってもよい。

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