ラプラス変換の微分法則は \[\mathcal{L} \left\{\dv{f(t)}{t} \right\} = s \mathcal{L} \left\{f(t) \right\} – f(0+) \notag\] で与えられ, \( n \) 階導関数の場合には次式が成立する. \[ \mathcal{L} \left\{\dv[n]{f}{t}\right\} = s^{n} \mathcal{L}\left\{f(t)\right\} – \sum_{k=1}^{n}s^{n-k} \left. \dv[(n-1)]{f(t)}{t} \right|_{t=0+} \quad . \notag \]
ラプラス変換の積分法則は \[\mathcal{L} \left\{\int_{0}^{t} f(\tau) \dd{\tau} \right\} = \frac{1}{s} \mathcal{L}\left\{f(t) \right\} \notag \] で与えられ, \( n \) 重積分の場合には次式が成立する. \[\mathcal{L} \left\{\int_{0}^{t} \int_{0}^{\tau_{n-1}} \cdots \int_{0}^{\tau_{1}} f(\tau) \dd{\tau} \dd{\tau_{1}} \cdots \dd{\tau_{n-1}} \right\} = \frac{1}{s^{n}} \mathcal{L} \left\{f(t) \right\} \quad . \notag \]
微分法則と積分法則の適用には種々の条件が課される.
ラプラス変換を学ぶ目的は, ラプラス変換を微分方程式に対して応用することである. したがって, 関数 \( f(t) \) の導関数 \( \displaystyle{\dv{f(t)}{t}} \) や原始関数(の一つである) \( \displaystyle{\int_{0}^{t}f(\tau) \dd{\tau} } \) に対するラプラス変換がどのように与えられるのかを一般的に知っておくことは非常に重要となる.
実際, ラプラス変換の微分法則及び積分法則を学ぶことによって, ラプラス変換というのは \( t \) を変数とした微分方程式から微分操作や積分操作を取り除き, 複素数 \( s \) の代数方程式の世界への架け橋を渡すものだということがようやく理解できるようになる.
以下では, まず議論の対象となる関数に対して, 数学的には比較的きつめの条件を課すことでラプラス変換の微分法則及び積分法則を端的に示す. 幸いなことに, 物理現象を記述する微分方程式の多くはこの条件を満たすことになる[1]数学的には比較的きつめの条件であっても, 物理的にはゆるい条件なのである. 物理屋さんにとってはありがたい話であるが, … Continue reading.
その後, 微分法則と積分法則をもちいることで, 高次の導関数や重積分に対するラプラス変換がどうなるのかを議論する.
最後には, 関数 \( f \) が指数 \( \alpha \) 位であるときの微分法則と積分法則について議論し, 冒頭の条件よりもゆるい条件下でも両法則が成立することを議論する.
微分法則と積分法則
微分法則
関数 \( f(t) \) が区間 \( (0, \infty ) \) で微分可能であり, ラプラス変換 \( \mathcal{L}\left\{f(t) \right\} \) 及び導関数のラプラス変換 \( \displaystyle{\mathcal{L}\left\{\dv{f(t)}{t} \right\} } \) を持ち, かつ次の条件を満たすとする. \[\lim_{T \to \infty} e^{-sT}f(T) = 0 \quad . \notag\] このとき, 次式で表される微分法則が成立する. \[\mathcal{L} \left\{\dv{f(t)}{t} \right\} = s \mathcal{L} \left\{f(t) \right\} – f(0+) \quad . \label{abLTdev}\] ここで, \( f(0+) \) は \( f(t) \) の \( t=0 \) における右側極限を意味する.
微分法則(式\eqref{abLTdev})において注目すべきなのは, 導関数( \( \displaystyle{\dv{f}{t}} \) )のラプラス変換は, 関数( \( f \) )のラプラス変換と関数の初期値( \( f(0+) \) )とで記述可能という点である. これは, ラプラス変換によって元の微分方程式に含まれていた微分操作を取り除くことに該当している.
証明と補足
微分法則(式\eqref{abLTdev})を証明しよう. ラプラス変換の定義より, \[\begin{aligned} \mathcal{L}\left\{\dv{f(t)}{t}\right\} &= \int_{0}^{\infty} e^{-st} \dv{f(t)}{t} \dd{t} \notag \\ &= \qty[ e^{-st} f(t) ]_{0}^{\infty} + s \int_{0}^{\infty} e^{-st} f(t) \dd{t} \notag \\ &= \lim_{T \to \infty} e^{-sT}f(T) – \lim_{\epsilon \to 0+ } e^{-s\epsilon}f(\epsilon) + s \mathcal{L}\left\{f(t) \right\} \notag \\ &= s \mathcal{L}\left\{f(t) \right\} – f(0+) \notag\end{aligned}\] \[\therefore \ \mathcal{L} \left\{\dv{f(t)}{t} \right\} = s \mathcal{L} \left\{f(t) \right\} – f(0+) \quad . \notag\] この微分法則の前提やその使いどころについて考えておこう.
まず, 関数 \( f(t) \) にラプラス変換が存在するからといって, その導関数 \( \displaystyle{\dv{f}{t}} \) のラプラス変換が存在するかどうかは自明ではない.
また, 我々は関数 \( f(t) \) のラプラス変換 \( \mathcal{L}\left\{f(t) \right\} \) や \( f(0) \) が容易に計算できるときに, \( \displaystyle{\mathcal{L}\left\{\dv{f(t)}{t} \right\}} \) が式\eqref{abLTdev}の右辺のように与えられるという定理を求めているのである. このように考えると, 上記の証明は形式的には容易だが, 実際には(これから値を知りたい) \( \displaystyle{\mathcal{L}\left\{\dv{f(t)}{t} \right\}} \) が存在することを確認しなければならない.
後半にはより緩い条件下で微分法則が成立することを示すことにする.
積分法則
微分法則 \[\mathcal{L} \left\{\dv{f(t)}{t} \right\} = s \mathcal{L} \left\{f(t) \right\} – f(0) \notag\] の \( f(t) \) を \( f(t) \) の原始関数(の一つ)である \( \displaystyle{\int_{0}^{t}f(\tau) \dd{\tau} } \) に置き換えると, \[\begin{align} & \mathcal{L} \left\{f(t) \right\} = s \mathcal{L} \left\{\int_{0}^{t}f(\tau) \dd{\tau} \right\} – \int_{0}^{0}f(\tau) \dd{\tau} \notag \\ \to \ & \mathcal{L} \left\{\int_{0}^{t}f(\tau) \dd{\tau} \right\} = \frac{1}{s}\mathcal{L} \left\{f(t) \right\} \label{abLTint}\end{align}\] を得ることができる.
積分法則(式\eqref{abLTint})によると, ラプラス変換を実行することによってある関数の原始関数(の一つである)( \( \displaystyle{\int_{0}^{t}f(\tau) \dd{\tau} } \) )のラプラス変換は, 関数( \( f \) )のラプラス変換によって記述可能という点である. これは, ラプラス変換によって元の微分方程式に含まれていた積分操作を取り除くことに該当している.
補足
ここで, 積分法則の適用条件について考えてみよう.
積分法則(式\eqref{abLTint})の証明では微分法則(式\eqref{abLTdev})を使用した. したがって, 微分法則の適用条件より, \( \mathcal{L}\left\{\int_{0}^{t}f(\tau) \dd{\tau} \right\} \) と \( \mathcal{L}\left\{f(t) \right\} \) の両方が存在し, かつ \[\lim_{T \to \infty} e^{-sT} \int_{0}^{T} f(\tau) \dd{\tau} = 0 \notag\] を満たしていなければ積分法則 \[\left\{\int_{0}^{t}f(\tau) \dd{\tau} \right\} = \frac{1}{s}\mathcal{L} \left\{f(t) \right\} \notag\] を用いることができない.
微分法則のときと同様に積分法則の使いどころについて考えてみると, 関数 \( f(t) \) の原始関数を求めることが困難である場合にも, ラプラス変換 \( \displaystyle{\mathcal{L} \left\{\int_{0}^{t}f(\tau) \dd{\tau} \right\}} \) は式\eqref{abLTint}の右辺に示す通り, \( \displaystyle{\frac{1}{s}\mathcal{L} \left\{f(t) \right\}} \) によって計算可能である.という法則である(べき)だ. このために, \( \displaystyle{\mathcal{L} \left\{\int_{0}^{t}f(\tau) \dd{\tau} \right\}} \) が存在することを示すところから始めなければならないというのではあまりありがたみがない.
後半には, 後半には関数 \( f(t) \) がある条件をみたすことによって積分法則が成立することを示すことにする.
一般の微分法則と積分法則
一般の微分法則
微分法則 \[\mathcal{L} \left\{\dv{f(t)}{t} \right\} = s \mathcal{L} \left\{f(t) \right\} – f(0+) \quad . \notag\] をくり返し用いることで, 関数 \( f(t) \) の高次の導関数に対するラプラス変換を求めておこう.
\( 2 \) 階導関数のラプラス変換
\( f(t) \) の \( 2 \) 階導関数のラプラス変換に対して微分法則をくり返し適用する. \[\begin{aligned} \mathcal{L} \left\{\dv[2]{f}{t}\right\} &= \mathcal{L} \left\{\dv{t} \qty( \dv{f}{t} )\right\} \notag \\ &= s \mathcal{L} \left\{\dv{f}{t} \right\} – \left. \dv{f}{t} \right|_{t=0+} \notag \\ &= s \qty[ s \mathcal{L}\left\{f(t) \right\} – f(0+) ] – \left. \dv{f}{t} \right|_{t=0+} \notag\end{aligned}\] \[\therefore \quad \mathcal{L} \left\{\dv[2]{f}{t}\right\} = s^{2} \mathcal{L}\left\{f(t) \right\} – s f(0+) – \left. \dv{f}{t} \right|_{t=0+} \notag\]
\( 3 \) 階導関数のラプラス変換
\( f(t) \) の \( 3 \) 階導関数のラプラス変換に対して微分法則をくり返し適用する. \[\begin{aligned} \mathcal{L} \left\{\dv[3]{f}{t}\right\} &= \mathcal{L} \left\{\dv{t} \qty( \dv[2]{f}{t} )\right\} \notag \\ &= s \mathcal{L} \left\{\dv[2]{f}{t} \right\} – \left. \dv[2]{f}{t} \right|_{t=0+} \notag \\ &= s \qty[ s^{2} \mathcal{L}\left\{f(t) \right\} – s f(0+) – \left. \dv{f}{t} \right|_{t=0+} ] – \left. \dv[2]{f}{t} \right|_{t=0+} \notag\end{aligned}\] \[\therefore \quad \mathcal{L} \left\{\dv[3]{f}{t}\right\} = s^{3} \mathcal{L}\left\{f(t) \right\} – s^{2} f(0+) – s \left. \dv{f}{t} \right|_{t=0+} – \left. \dv[2]{f}{t} \right|_{t=0+} \notag\]
\( n \) 階導関数のラプラス変換
上記の議論を一般化した, \( n \) 階導関数のラプラス変換を与えておこう[2]証明は数学的帰納法により容易に示すことができる.. \[\begin{aligned} \mathcal{L} \left\{\dv[n]{f}{t}\right\} & = s^{n} \mathcal{L}\left\{f(t) \right\} – s^{n-1} f(0) – s^{n-2} \left. \dv{f}{t} \right|_{t=0+} – \cdots – \left. \dv[(n-1)]{f}{t} \right|_{t=0+} \notag \\ & = s^{n} \mathcal{L}\left\{f(t)\right\} – \sum_{k=1}^{n}s^{n-k} \left. \dv[(n-1)]{f(t)}{t} \right|_{t=0+} \quad . \quad \notag\end{aligned}\]
一般の積分法則
積分法則 \[\mathcal{L} \left\{\int_{0}^{t} f(\tau) \dd{\tau} \right\} = \frac{1}{s} \mathcal{L}\left\{f(t) \right\} \notag\] を繰り返し用いることで, 関数 \( f(t) \) に対して積分がくり返し行われた関数に対するラプラス変換を求めておこう.
\( 2 \) 重積分
\( f(t) \) の \( 2 \) 重積分に対して積分法則を繰り返し適用する \[\begin{aligned} &\mathcal{L} \left\{\int_{\tau_{1}=0}^{\tau_{1}=t} \int_{\tau=0}^{\tau=\tau_{1}} f(\tau) \dd{\tau} \dd{\tau_{1}} \right\} \notag \\ & \qquad = \frac{1}{s} \mathcal{L} \left\{\int_{\tau=0}^{\tau=t} f(\tau) \dd{\tau} \right\} \notag \\ & \qquad = \frac{1}{s} \cdot \frac{1}{s} \mathcal{L} \left\{f(t) \right\} \notag \\ & \qquad = \frac{1}{s^{2}} \mathcal{L}\left\{f(t)\right\} \notag\end{aligned}\]
\( n \) 重積分
上記の議論を一般化した, 積分が \( n \) 回重ねられた関数のラプラス変換を与えておこう[3]証明は数学的帰納法により容易に示すことができる.. \[\mathcal{L} \left\{\int_{0}^{t} \int_{0}^{\tau_{n-1}} \cdots \int_{0}^{\tau_{1}} f(\tau) \dd{\tau} \dd{\tau_{1}} \cdots \dd{\tau_{n-1}} \right\} = \frac{1}{s^{n}} \mathcal{L}\left\{f(t)\right\} \notag\]
指数 \( \alpha \) 位の関数の微分法則及び積分法則
微分法則
関数 \( f(t) \) が区間 \( ( 0, \infty) \) において連続で, \( f(t) \) が指数 \( \alpha \) 位の関数[4] \( f(t) \) が指数 \( \alpha \) 位の関数であるとは, \[\abs{f(t) } \le M e^{\alpha t} \quad \qty( M > 0 ) \notag\] を満たすことであった.(ラプラス変換の存在定理)であるとし, \( \displaystyle{\dv{f}{t}} \) が区間 \( ( 0, \infty) \) において区分的に連続であるとする.
ラプラス変換の定義より, \[\begin{aligned} \mathcal{L} \left\{\dv{f(t)}{t} \right\} &= \int_{0}^{\infty} e^{-st} \dv{f(t)}{t} \dd{t} \notag \\ &= \qty[ e^{-st} f(t) ]_{0}^{\infty} + s \int_{0}^{\infty} e^{-st} f(t) \dd{t} \notag \\ &= \lim_{T \to \infty} e^{-sT}f(T) – \lim_{\epsilon \to 0+}e^{-s \epsilon} f(\epsilon) + s \int_{0}^{\infty} e^{-st} f(t) \dd{t} \notag \\ &= \lim_{T \to \infty} e^{-sT}f(T) – f(0+) + s \int_{0}^{\infty} e^{-st} f(t) \dd{t} \quad .\notag\end{aligned}\] さて, ラプラス変換の存在定理で示したように指数 \( \alpha \) 位の関数は \( \mathrm{Re}[s]>\alpha \) を満たすような \( s \) の領域においてラプラス変換が存在するので, \[\mathcal{L} \left\{\dv{f(t)}{t} \right\} = \lim_{T \to \infty} e^{-sT}f(T) – f(0+) + s \mathcal{L}\left\{f(t)\right\} \quad . \quad \qty( \mathrm{Re}[s] > \alpha ) \label{LTfalphaproofdev1}\] さらに, \( f(t) \) が指数 \( \alpha \) 位の関数であることから, \( \mathrm{Re}[s] > \alpha \) を満たすような \( s \) について \[\begin{aligned} \lim_{T \to \infty} \abs{e^{-sT}f(T) } & = \lim_{T \to \infty} e^{ – \mathrm{Re}[s]T} \abs{f(T) } \notag \\ & \le \lim_{T \to \infty} e^{ – \mathrm{Re}[s]T} M e^{\alpha T} \notag \\ & = 0 \quad \qty( \mathrm{Re}[s] > \alpha ) \notag \end{aligned}\] が成立するため, 次式が成立する. \[\lim_{T \to \infty} e^{-sT}f(T) = 0 \quad . \quad \qty( \mathrm{Re}[s] > \alpha ) \label{LTfalphaproofdev2}\]
以上より, 式\eqref{LTfalphaproofdev2}を式\eqref{LTfalphaproofdev1}に代入することで, 次の微分法則を得る. \[\mathcal{L} \left\{\dv{f(t)}{t} \right\} = s \mathcal{L}\left\{f(t)\right\} – f(0+) \quad . \quad \qty( \mathrm{Re}[s] > \alpha ) \notag\]
積分法則
\( \alpha > 0 \) の場合
関数 \( f(t) \) が指数 \( \alpha \) 位の関数であり, \( \alpha > 0 \) の場合には原始関数 \( \int_{0}^{t}f(\tau) \dd{\tau} \) も指数 \( \alpha \) 位の関数であることを示しておこう. \[\begin{aligned} \abs{\int_{0}^{t} f(\tau) \dd{\tau} } & \le \int_{0}^{t} \abs{f(\tau) } \dd{\tau} \notag \\ & \le \int_{0}^{t} M e^{\alpha \tau} \dd{\tau} \notag \\ &= \frac{M}{\alpha} \qty[ e^{\alpha \tau} ]_{0}^{t} \notag \\ &=\frac{M}{\alpha} \qty( e^{\alpha t } – 1 ) \notag \\ &\le M^{\prime} e^{\alpha t} \quad \qty( M^{\prime} \coloneqq \frac{M}{\alpha} > 0 ) \notag\end{aligned}\] これにより, \( \int_{0}^{t} f(\tau) \dd{\tau} \) も指数 \( \alpha \) 位の関数である. したがって, ラプラス変換の存在定理より, \( f(t) \) が指数 \( \alpha \) 位の関数であるときには \( \mathrm{Re}[s]>\alpha \) を満たす \( s \) の領域において \( \displaystyle{\mathcal{L}\left\{\int_{0}^{t}f(\tau) \dd{\tau} \right\} } \) が存在することが示された.
ラプラス変換の定義より, \[\begin{align} \mathcal{L}\left\{\int_{0}^{t} f(\tau) \dd{\tau} \right\} &= \int_{0}^{\infty} e^{-st} \int_{0}^{t}f(\tau) \dd{\tau} \dd{t} \notag \\ &= \qty[ – \frac{1}{s}e^{-st} \int_{0}^{t}f(\tau) \dd{\tau} ]_{0}^{\infty} + \frac{1}{s} \int_{0}^{\infty} e^{-st} f(t) \dd{t} \notag \\ &= \lim_{T \to \infty} \left\{ – \frac{1}{s}e^{-sT} \int_{0}^{T} f(\tau) \dd{\tau} \right\} + \frac{1}{s} e^{-s \cdot 0} \int_{0}^{0} f(\tau) \dd{\tau} + \frac{1}{s} \mathcal{L} \left\{f(t) \right\} \notag \\ &=\lim_{T \to \infty} \left\{ – \frac{1}{s}e^{-sT} \int_{0}^{T}f(\tau) \dd{\tau} \right\} + \frac{1}{s}\mathcal{L}\left\{f(t)\right\} \label{LTfalphaproofint1}\end{align}\] となる. ここで, 上式最右辺第 \( 1 \) 項について, \( \int_{0}^{t} f(\tau) \dd{\tau} \) も指数 \( \alpha \) 位の関数であることから, \( \mathrm{Re}[s] > \alpha \) を満たすような \( s \) について \[\begin{aligned} \lim_{T \to \infty} \abs{e^{-sT} \int_{0}^{T}f(\tau) \dd{\tau} } &= \lim_{T \to \infty} e^{ – \mathrm{Re}[s]T} \abs{\int_{0}^{T}f(\tau) \dd{\tau} } \notag \\ &\le \lim_{T \to \infty} e^{ – \mathrm{Re}[s]T} M e^{\alpha T} \quad \qty( M > 0 ) \notag \\ &=0 \notag\end{aligned}\] が成立するため, 次式が成立する. \[\lim_{T \to \infty} e^{-sT} \int_{0}^{T}f(\tau) \dd{\tau} = 0 \quad . \label{LTfalphaproofint2}\]
以上より, 式\eqref{LTfalphaproofint2}を式\eqref{LTfalphaproofint1}に代入することで, 次の積分法則を得る. \[\mathcal{L}\left\{\int_{0}^{t} f(\tau) \dd{\tau} \right\} = \frac{1}{s}\mathcal{L}\left\{f(t)\right\} \quad . \quad \qty( \mathrm{Re}[s] > \alpha ) \notag\]
\( \alpha \le 0 \) の場合
関数 \( f(t) \) が指数 \( \alpha \) 位の関数であり, \( \alpha \le 0 \) の場合, \[\begin{aligned} \abs{f(t) } \le M e^{\alpha t} \le M \quad \qty( M > 0 , \ \alpha \le 0 ) \notag\end{aligned}\] より, \[\begin{aligned} \abs{\int_{0}^{t} f(\tau) \dd{\tau} } & \le \int_{0}^{t} \abs{f(\tau) } \dd{\tau} \notag \\ & \le \int_{0}^{t} M \dd{\tau} \notag \\ &= M t \notag\end{aligned}\] となる. これにより, \( \displaystyle{\int_{0}^{t} f(\tau) \dd{\tau} } \) も指数 \( 0 \) 位の関数であるので, ラプラス変換の存在定理より, \( \mathrm{Re}[s]>0 \) を満たす \( s \) の領域において \( \displaystyle{\mathcal{L}\left\{\int_{0}^{t}f(\tau) \dd{\tau} \right\} } \) が存在することが示された.
ラプラス変換の定義より, \[\begin{align} \mathcal{L}\left\{\int_{0}^{t} f(\tau) \dd{\tau} \right\} &= \int_{0}^{\infty} e^{-st} \int_{0}^{t}f(\tau) \dd{\tau} \dd{t} \notag \\ &=\lim_{T \to \infty} \left\{ – \frac{1}{s}e^{-sT} \int_{0}^{T}f(\tau) \dd{\tau} \right\} + \frac{1}{s}\mathcal{L}\left\{f(t)\right\} \label{LTfalphaproofint3}\end{align}\] となる. ここで, 上式最右辺第 \( 1 \) 項について, \[\begin{aligned} \lim_{T \to \infty }\abs{e^{-sT} \int_{0}^{T} f(\tau) \dd{\tau} } & = \lim_{T \to \infty }e^{ – \mathrm{Re}[s]T}\abs{\int_{0}^{T} f(\tau) \dd{\tau} } \notag \\ & = \lim_{T \to \infty }e^{ – \mathrm{Re}[s]T}MT \notag \\ &= 0 \notag\end{aligned}\] が成立するため, 次式が成立する. \[\lim_{T \to \infty } e^{-sT} \int_{0}^{T} f(\tau) \dd{\tau} = 0 \quad . \label{LTfalphaproofint4}\]
以上より, 式\eqref{LTfalphaproofint4}を式\eqref{LTfalphaproofint3}に代入することで, 次の積分法則を得る. \[\mathcal{L} \left\{\int_{0}^{t} f(\tau) \dd{\tau} \right\} = \frac{1}{s} \mathcal{L}\left\{f(t) \right\} \quad . \qty( \mathrm{Re}[s] > 0 ) \notag\]
脚注
⇡1 | 数学的には比較的きつめの条件であっても, 物理的にはゆるい条件なのである. 物理屋さんにとってはありがたい話であるが, 数学屋さんからすれば物理屋は大雑把という評価をいただくかもしれない. |
---|---|
⇡2, ⇡3 | 証明は数学的帰納法により容易に示すことができる. |
⇡4 | \( f(t) \) が指数 \( \alpha \) 位の関数であるとは, \[\abs{f(t) } \le M e^{\alpha t} \quad \qty( M > 0 ) \notag\] を満たすことであった.(ラプラス変換の存在定理) |