斜方投射とその最高点が描く軌跡
図のように, 水平方向右向きを \( x \) 軸の正方向, 鉛直方向上向きを \( y \) 軸の正方向とし, 各軸の交点を原点 \( O \) とする. 原点から仰角 \( \theta \) ( \( 0^{\circ} \le \theta \le 90^{\circ} \) )となるように斜め上方に向かって速さ \( v_{0} \) で小物体を投げた.
投げ出された物体の位置を \( \left( x, y \right) \) とするとき, 次の問に答えよ. ただし重力加速度の大きさは \( g \) とする.
投げ出された物体が再び地面に達するまでに描く軌道(軌跡)をもとめ, 軌道が放物線軌道となることを示せ.
投げ出された物体が描く放物線の頂点の座標 \( \left(X, Y\right) \) を求めよ.
\( v_{0} \) を一定に保ち, 角度 \( \theta \) を様々に変えてくことで得られる座標 \( \left(X, Y \right) \) は楕円の軌跡の一部となることが知られている. この楕円の中心座標, 短軸, 長軸の値をそれぞれ求めよ.
解答1
下図のように初速度を \( x \), \( y \) 方向にそれぞれ分解する.
時刻 \( t \) における物体の \( x \) 方向 \( y \) 方向の位置は \[\begin{aligned} x& = v_{0}\cos{\theta}\,t \\ y&= -\frac{1}{2}gt^2 + v_{0}\sin{\theta}\,t\end{aligned}\] である. 今求めるのは物体の軌跡であるので, この両式から時刻 \( t \) を消去すると, \[y = -\frac{g}{2v_{0}^{2}\cos^{2}{\theta}}x^{2} + \tan{\theta}\,x \label{yx} \] となる. 打ち出す角度は水平方向に対して \( 0^{\circ} \le \theta \le 90^{\circ} \) であるので, この2次関数のうち, 第一象限に属するものが放物線の軌跡である.
放物線軌道(式\eqref{yx})を \( x \) の2次関数とみなして平方完成を行うと, \[\begin{aligned} y &= -\frac{g}{2v_{0}^{2}\cos^{2}{\theta}} \left\{ x – \frac{v_{0}^{2}\cos^{2}{\theta}\tan{\theta}}{g} \right\}^{2} + \frac{v_{0}^{2}\sin^{2}{\theta}}{2g} \\ &= -\frac{g}{2v_{0}^{2}\cos^{2}{\theta}} \left\{ x – \frac{v_{0}^{2}\sin{\theta}\cos{\theta}}{g} \right\}^{2} + \frac{v_{0}^{2}\sin^{2}{\theta}}{2g} \\ \end{aligned}\] したがって, 放物線軌道の頂点の座標は \[\left( \frac{v_{0}^{2}\sin{\theta}\cos{\theta}}{g} , \frac{v_{0}^{2}\sin^{2}{\theta}}{2g} \right) \notag \] で与えられることが分かる.
ここで, 式変形の煩雑さを防ぐため, \[h = \frac{v_{0}^{2}}{2g} \notag \] とすると, \[\begin{aligned} X & = 2h\sin{\theta}\cos{\theta} \\ Y & = h\sin^{2}{\theta} \end{aligned}\] である. \( X \) の両辺を2乗して式変形を行うと, \[\begin{aligned} X^{2} &= 4h^2\sin^2{\theta}\cos^2{\theta} \\ &= 4h^2\sin^2{\theta}\left( 1 – \sin^{2}{\theta}\right) \\ &= 4hY \left( 1 – \frac{Y}{h}\right) \\ &= – 4\left\{ \left( Y – \frac{h}{2} \right)^{2} – \left( \frac{h}{2} \right)^2 \right\} \end{aligned}\] \[\begin{aligned} & \to \ \frac{X^{2}}{2^2} + \left( Y – \frac{h}{2} \right)^{2} = \left( \frac{h}{2} \right)^2 \\ & \to \ \frac{X^{2}}{ h^2} + \frac{\left( Y – \frac{h}{2} \right)^{2}}{ \left( \frac{h}{2} \right)^2} = 1 \end{aligned}\] \[\therefore \ \frac{X^{2}}{ \left( \frac{v_{0}^{2}}{2g} \right)^2} + \frac{\left( Y – \frac{v_{0}^{2}}{4g} \right)^{2}}{ \left( \frac{v_{0}^{2}}{4g} \right)^2 } = 1 \label{daen} \] この式を中心 \( (x_{0}, y_{0}) \) , 長軸および短軸が \( a, b \ (a > b ) \) である楕円の方程式 \[\frac{\left( x – x_{0} \right)^{2}}{a^2} + \frac{\left( y – y_{0} \right)^{2}}{b^2} = 1\] と見比べると, 放物線の頂点の座標 \( X \) , \( Y \) は中心が \( \displaystyle{\left( 0, \frac{v_{0}^{2}}{4g} \right)} \) , 長軸が \( \displaystyle{ \frac{v_{0}^{2}}{2g}} \) , 短軸が \( \displaystyle{ \frac{v_{0}^{2}}{4g}} \) の楕円軌道上に存在することがわかる.
ただし, 物体の初速度方向を第一象限に限っていることから, 放物線の最高点の座標は楕円軌道(式\eqref{daen})の第一象限と一致する.