ラグランジュの微分方程式

関数 \( y=y(x) \) についてのラグランジュの微分方程式またはダランベールの微分方程式と呼ばれるものは, 次のように書くことが出来る微分方程式のことである. \[y = xf(y^{\prime}) + g(y^{\prime} ) \notag \quad .\] このラグランジュの微分方程式はクレローの微分方程式の拡張版となっており, \( f(y^{\prime}) \) の関数形によってクレローの微分方程式1階線形微分方程式のどちらかに還元可能なことを議論する.

\( f(y^{\prime})=y^{\prime} \) のとき

ラグランジュの微分方程式 \[y = xf(y^{\prime}) + g(y^{\prime} ) \notag \quad .\] において, \( f(y^{\prime})=y^{\prime} \) のとき, すなわち, \[y = xy^{\prime} + g(y^{\prime} ) \notag \quad .\] はクレローの微分方程式と一致していることがわかる.

したがって, このときの解法はクレローの微分方程式を参照してほしい.

\( f(y^{\prime})\neq y^{\prime} \) のとき

ラグランジュの微分方程式 \[y = xf(y^{\prime}) + g(y^{\prime} ) \label{LagEq}\] の両辺を微分すると, \[\begin{aligned} & y^{\prime} = f(y^{\prime}) + xf^{\prime}(y^{\prime})y^{\prime \prime} + g^{\prime}(y^{\prime} )y^{\prime \prime} \notag \\ \to \ & y^{\prime \prime} \left\{xf^{\prime}(y^{\prime}) + g^{\prime}(y^{\prime} ) \right\} = \left\{y^{\prime} – f(y^{\prime}) \right\} \notag \end{aligned}\] ここで, \[p \coloneqq y^{\prime} \notag \] と定義すると, \[\begin{aligned} & p^{\prime} \left\{xf^{\prime}(p) + g^{\prime}(p) \right\} = \left\{p – f(p) \right\} \notag \\ & \dv{p}{x} = \frac{p – f(p) }{\left\{xf^{\prime}(p) + g^{\prime}(p) \right\} } \notag \end{aligned}\] さらに, 両辺に \( \dv{x}{p} \) を乗じて整理すると, \[\dv{x}{p} – \frac{f^{\prime}(p) }{p – f(p) }x = \frac{g^{\prime}(p) }{p – f(p) } \quad . \notag\] \( f^{\prime}(p) \) や \( g^{\prime}(p) \) もただの \( p \) の関数であることに変わりないので, \[P_{0}(p) \coloneqq – \frac{f^{\prime}(p) }{p – f(p) } , \quad Q_{0}(p) \coloneqq \frac{g^{\prime}(p) }{p – f(p) } \notag\] と定義すると, \[\dv{x}{p} + P_{0}(p)x = Q_{0}(p) \notag\] となり, \( x \) が \( p \) を独立変数に持つ \( x(p) \) という関数とみなしたときの, \( x \) についての1階線形(非同次)微分方程式となっていることがわかるので, 1階線形微分方程式の一般解の公式[1]1階線形(非同次)微分方程式 \[\dv{y}{x} + P(x) y = Q(x) \notag\] の一般解は任意定数 \( C \) を用いて \[y = e^{ – \int P(x) \dd{x} } \left\{\int \qty( Q(x) e^{\int P(x) … Continue readingをもちいることで, \[x = e^{ – \int P_{0}(p) \dd{p} } \left\{\int \qty( Q_{0}(p) e^{\int P_{0}(p) \dd{p} } ) \dd{p} + C \right\} \label{LagEqx}\] となる. ここで \( C \) は任意の定数である.

したがって, 元々与えられたラグランジュの微分方程式\eqref{LagEq}と式\eqref{LagEqx}を組み合わせた \[\begin{cases} y = xf(p) + g(p) \\ x = e^{ – \int P_{0}(p) \dd{p} } \left\{\int \qty( Q_{0}(p) e^{\int P_{0}(p) \dd{p} } ) \dd{p} + C \right\} \end{cases} \notag\] から \( p \) を消去するか, このまま, \( p \) を媒介変数とした曲線が解となる. これがラグランジュの微分方程式の一般解である.

脚注

脚注
1 1階線形(非同次)微分方程式 \[\dv{y}{x} + P(x) y = Q(x) \notag\] の一般解は任意定数 \( C \) を用いて \[y = e^{ – \int P(x) \dd{x} } \left\{\int \qty( Q(x) e^{\int P(x) \dd{x} } ) \dd{x}+ C \right\} \notag\] で与えられる.