バネで固定された物体との衝突
なめらかな水平面上を速さ \( v_{0} \) で水平方向右向きに運動している質量 \( m_{1} \) の物体 \( 1 \) , 質量の無視できるバネ定数 \( k \) のバネを介して壁面に固定された質量 \( m_{2} \) の物体 \( 2 \) が存在している. はじめ, 物体 \( 2 \) は静止しており, バネは自然長に保たれている.
\( t=0 \) で物体 \( 1 \) と物体 \( 2 \) は衝突し, 衝突後のそれぞれの速さは \( v_{1} \) , \( v_{2} \) であった. 物体 \( 1 \) と物体 \( 2 \) との反発係数を \( e \) , 円周率を \( \pi \) として以下の問に答えよ. ただし反発係数は \( 0 < e < 1 \) を満たすものとする.
衝突直後の物体 \( 1 \) , \( 2 \) の速さ \( v_{1} \) , \( v_{2} \) を求めよ.
衝突後の物体 \( 1 \) が衝突後も水平方向右向きに進むための反発係数の条件を求めよ. 以下の設問において, 反発係数はこの条件を満たしているものとする.
衝突後, しばらくのあいだ物体 \( 2 \) は振幅 \( A \) の単振動の一部を行い, 物体 \( 1 \) は等速直線運動をおこなった. 物体 \( 2 \) は壁面に最も近づいたのち左向きに運動している間に再び物体 \( 1 \) と衝突した. このときの時刻は \( t=T \) であり, \( t = 0 \) のときに物体 \( 2 \) が静止していた位置から右方向に距離 \( \frac{A}{2} \) だけ離れた地点であった.
振幅 \( A \) を \( m_{2} \), \( v_{2} \), \( k \) を用いて求めよ.
物体 \( 2 \) が物体 \( 1 \) に再び衝突する時刻 \( T \) を, \( \pi \) , \( m_{2} \) , \( k \) , \( A \) のうち必要なものを用いて求めよ.
このような運動が生じるための反発係数を \( \pi \) , \( m_{1} \) , \( m_{2} \) , \( v_{0} \), \( k \) のうち必要なものを用いて求めよ.
解答1
物体 \( 1 \) と物体 \( 2 \) を1つの系とみなして考える. 衝突直後は物体 \( 2 \) に接続されたバネの縮みは無視することができるので, 衝突前から直後までの間で系に外力が作用しておらず, 運動量保存則を適用することができる. \[m_{1}\cdot v_{0} + m_{2}\cdot 0 =m_{1} \cdot v_{1} + m_{2} \cdot v_{2} \label{mvc}\] また, 反発係数 \( e \) は衝突前の相対速度の大きさと衝突後の相対速度の比であることから, \[e = \frac{v_{2}-v_{1}}{v_{0}-0} \quad \left( = -\frac{v_{1}-v_{2}}{v_{0}-0} \right) \label{ve}\] 式\eqref{mvc}と式\eqref{ve}を連立させることで, \[\begin{aligned} v_{1} &= \frac{m_{1}-em_{2}}{m_{1}+m_{2}} v_{0} \\ v_{2} &= \frac{m_{1}}{m_{1}+m_{2}} \left( 1 + e \right) v_{0} \end{aligned}\]
物体 \( 1 \) が衝突後も水平方向右向きに進むためには \( v_{1}>0 \) となれば良いので, \[\begin{aligned} & v_{1} = \frac{m_{1}-em_{2}}{m_{1}+m_{2}}> 0 \\ \therefore \ & 0 < e < \frac{m_{1}}{m_{2}} \end{aligned}\]
バネと物体 \( 2 \) とのエネルギー保存則より, \[ \begin{aligned} & \frac{1}{2}m_{2}v_{2}^{2} = \frac{1}{2} k A^{2} \\ & \to \ A = \sqrt{\frac{m_{2}}{k}}v_{2} \end{aligned} \]
\( t=0 \) における物体を原点とし, 水平方向右向きを \( x \) 軸の正方向とし, 物体 \( 2 \) の位置を \( x \) とする. \( x > 0 \) において, 物体 \( 2 \) はバネから左向きに弾性力を受けるので, 物体 \( 2 \) の加速度を \( a \) とすると, \[\begin{aligned} & m_{2} a = – k \left( x – 0 \right) \\ & \to \ a = – \frac{k}{m_{2}}x \end{aligned}\] したがって, 物体 \( B \) は \[x = A \sin{\omega t } \notag \] に従う単振動を行なっていることがわかる. ここで, \( \omega \) は角振動数であり, \[\omega^2 \mathrel{\mathop:}= \frac{k}{m_{2}} \notag \] で定義した. このような単振動の周期は \( \frac{2\pi}{\omega} \) で与えれる.
物体 \( 2 \) が時刻 \( t=T \) で \( x = \frac{A}{2} \) にいることから, \[\frac{A}{2} = A \sin{\omega T} \notag \] となる \( T \) を求めることになる. ただし, 問題文の条件より物体 \( B \) が最も壁面に近づいた時刻, すなわち, \( \omega t = \frac{\pi}{2} \) を満たす時刻 \( t \) よりも後であり, かつ, 物体 \( 2 \) は単振動を一周期分行う前に物体 \( 1 \) と衝突することから \( T < \frac{2 \pi}{\omega} \) を満たしているので, \[\begin{aligned} & \omega T = \frac{5\pi}{6} \\ & \to T = \frac{5\pi}{6\omega} = \frac{5\pi}{6}\sqrt{\frac{m_{2}}{k}} \end{aligned}\] であることがわかる.
時刻 \( t=0 \) から \( t=T \) までの間, 物体 \( 1 \) は速さ \( v_{1} \) で等速運動を行なっていることから, \[\begin{aligned} & v_{1} \cdot T = \frac{A}{2} \\ \to \ & v_{1} \cdot T = \frac{1}{2} \sqrt{\frac{m_{2}}{k}}v_{2} \\ \to \ &\frac{m_{1}-em_{2}}{m_{1}+m_{2}} v_{0} \cdot \frac{5\pi}{6}\sqrt{\frac{m_{2}}{k}} = \frac{1}{2} \sqrt{\frac{m_{2}}{k}} \cdot \frac{m_{1}}{m_{1}+m_{2}} \left( 1 + e \right) v_{0} \\ \end{aligned}\] を反発係数 \( e \) について整理すると, \[ \therefore \ e = \frac{\left( 5\pi – 3 \right) m_{1}}{5 \pi m_{2}+3m_{1}} \notag \]