ボイル・シャルルの法則の導出

以下, 理想気体に話を限定し, 系の体積を \( V\,\mathrm{m^3} \) , 温度を \( T\,\mathrm{K} \) , 圧力を \( P\,\mathrm{Pa} \) とする.

通常, ボイル・シャルルの法則 \[ \frac{PV}{T} = \mathrm{const.}\] の導出にはボイルの法則に従うような状態変化とシャルルの法則に従うような状態変化をつかって各状態の変化を眺めることで比較的すっきりした物理的導出がなされる.

そこで, この記事はちょっとだけ趣向を変えて, ボイル・シャルルの法則を数学チックに導きたいという人むけの備忘録とする.

ボイルの法則とは, 系の温度 \( T \) が一定に保たれているとき, 系の圧力と体積との間に \[ PV = \mathrm{const.}\] が成立することである. ここで, 右辺は定数であるとしたが, この定数はボイルの法則の前提条件 — \( T \) が一定である — のもとで決まる定数であり, そのじつ温度 \( T \) の関数である.

そこで, ボイルの法則の右辺を \( f(T) \) とでもしておくと, ボイルの法則を \[ PV = f(T)\] と表すことができる.

シャルルの法則とは, 系の圧力 \( P \) が一定に保たれているとき, 系の体積と温度との間に \[ \frac{T}{V} = \mathrm{const.}\] が成立することである. シャルルの法則についても同様に, 右辺を圧力 \( P \) のみに依存した関数 \( g(P) \) と書くと, \[ \frac{T}{V} = g(P)\] である.

したがって, \[ \left\{\begin{aligned} PV &= f(T)\\ \frac{T}{V} &= g(P) \end{aligned} \right.\] をひとまとめにすることができれば嬉しいな, というのがボイル・シャルルの法則である.

ボイルの法則より圧力 \( P \) は \[ P =\frac{f(T)}{V}\] である. これをシャルルの法則の右辺 \( g(P) \) に代入すると, \[ \frac{T}{V} = g\qty( \frac{f(T)}{V} )\] となる. ここで, \( g \) の逆関数を \( g^{-1} \) とすると, \[ g^{-1}\qty( \frac{T}{V} ) = \frac{f(T)}{V}\] である. 左辺が \( \displaystyle{\frac{T}{V} } \) を変数とした関数であるので, 右辺 \( \displaystyle{\frac{f(T)}{V} } \) も \( \displaystyle{\frac{T}{V} } \) を変数とした関数であることが求められるが, そのためには \( f(T) \) が温度に比例していなければならない. すなわち, 関数 \( f(T) \) は \[ f(T) \propto T\] を満たしている必要がある.

したがって, ボイルの法則は \[ PV =f(T) \ \to \ PV \propto T\] と書き換えることができるので, ボイル・シャルルの法則 \[ \frac{PV}{T} = \mathrm{const.}\] が導かれる.