正弦波

波動現象とは, 波を生じさせる波源の運動が波を伝える媒質中を伝搬する現象を指す.

波動分野はその実とても深いので, 全てを網羅することをせず, 重要なポイントと話題性にとむ内容のみ取り扱うことにする.

波の概要

高校物理で登場する波は正弦波として書くことがほとんどである. 正弦波とは波源が単振動をすることで, \( \sin \) もしくは \( \cos \) の関数に従う位置の変化が周りに伝搬する.

\( x \) 方向へ速さ \( v \) で進む正弦波は下図のようになる. \( x \) 方向に対して垂直な方向への媒質の変化を変位という. 最大変位 \( A \) を振幅という. 正弦波において隣り合う最大変位の間隔を波長 \( \lambda \) という.

媒質が一回振動するのに要する時間を周期 \( T \) といい, 周期 \( T \) の間に媒質は \( \lambda \) だけ進むので 次式が成立する. \[ \lambda = v T \label{波長と周期と速度}\]また, 周期の逆数を振動数という. \[ f = \frac{1}{T}\]振動数は \( t = 1 \ \mathrm{[s]} \) の間に振動する回数を表す. したがって, \[ v = f \lambda\]が成立する.

重ね合わせの原理

波の持つ特徴の中でも圧倒的に大切な原理が重ね合わせの原理である. 重ね合わせの原理, とは空間のある一点において複数の波が出会った時, その空間での振幅は複数の波の変位の和で表されるという原理である. そして, この波の重ね合わさった波のことを合成波などという. また, 合成波の元となる波達自身の波形は互いに変化せず, 独立している. \[ \begin{aligned} y(x,t)_{合成波} &= y_1(x,t) + y_2(x,t) + y_3(x,t) + \cdots \\ &= \sum_{i} y_i(x,t) \end{aligned} \]

正弦波の導出

簡単に波の式 \[ y(x,t) = A \sin{2 \pi\qty( \frac{t}{T} – \frac{x}{\lambda} )}\]の導出を行なう. 時刻 \( t=0 \) における波の波形が下図のようであったとする. この波は \( x=\lambda \) で, 位相が \( 2\pi \) 進んでいることから, \[ y(x,t=0) = – A \sin{2\pi \frac{x}{\lambda} } \label{wavesub1} \]である.

この波形が \( x \) の正の向きに速度 \( v \) で移動している時, 時刻 \( t \) における波形は下図のように元の波形から \( x \) 方向に \( vt \) だけ進んだ波となる.

したがって, 時刻 \( t=0 \) における波の式\eqref{wavesub1}を \( x \) 方向に \( vt \) だけ平行移動することで, 時刻 \( t \) における波の式を得ることができるので, \[ \begin{aligned} y(x,t) &= y(x-vt,0) \\ & = – A \sin{2\pi \frac{\qty( x – vt )}{\lambda} } \\ &= A \sin{2\pi \frac{\qty( vt – x )}{\lambda} } \notag \\ &= A \sin{2\pi \qty( \vphantom{\frac{b}{a}} \underbrace{\frac{vt}{\lambda}}_{\frac{v}{\lambda} = \frac{1}{T}} – \frac{x}{\lambda} \vphantom{\frac{b}{a}} ) } \\ &= A \sin{2\pi \qty( \frac{t}{T} – \frac{x}{\lambda} ) } \end{aligned} \] このようにして教科書に載せられている正弦波の式を導出することができる.

ここで, さらに式変形をして波の速度 \( v \) が \( vT = \lambda \) であらわすことができるので, \[ \begin{aligned} y(x,t) &= A \sin{\left\{\frac{2 \pi}{T} \qty( t – \frac{x}{\lambda}T ) \right\} } \\ &= A \sin{\left\{\frac{2 \pi}{T} \qty( t – \frac{x}{\lambda}T ) \right\} } \\ &= A \sin{\left\{\frac{2 \pi}{T} \qty( t – \frac{x}{v} ) \right\} } \end{aligned} \]

定常波

振幅, 時間周期 \( T \) , 波長 \( \lambda \) が等しく, 進行方向 \( v \) が逆向きの波との合成波について考える. \[ \begin{aligned} y_{+}(x,t) & = A \sin{\left\{\frac{2 \pi}{T} \qty( t – \frac{x}{v} ) \right\} } \\ y_{-}(x,t) &= A \sin{\left\{\frac{2 \pi}{T} \qty( t – \frac{x}{\qty( -v )} ) \right\} } \\ &= A \sin{\left\{\frac{2 \pi}{T} \qty( t + \frac{x}{v} ) \right\} } \end{aligned} \] \( y_{+} \) と \( y_{-} \) について重ね合わせの原理より, \[ \begin{aligned} y(x,t) &= y_{+}(x,t) + y_{-}(x,t) \\ & = A \sin{\left\{\frac{2 \pi}{T} \qty( t – \frac{x}{v} ) \right\} } + A \sin{\left\{\frac{2 \pi}{T} \qty( t + \frac{x}{v} ) \right\} } \\ &= 2A \sin{\qty( 2\pi \frac{t}{T} ) } \cos{\qty( 2\pi \frac{x }{\lambda } ) } \\ \therefore \ y(x,t) &= 2A \cos{\qty( 2\pi \frac{x }{\lambda } )} \sin{\qty( 2\pi \frac{t}{T} )} \end{aligned} \]となる.

合成波 \( y(x,t) \) の表式について, すぐに分かることがある. 座標 \( x \) について, \[ \begin{aligned} 2 \pi \frac{x}{\lambda} &= \qty( n+\frac{1}{2} ) \pi \\ \to x & = \qty( n+\frac{1}{2} ) \frac{\lambda}{2} \qq{ \( n \) は整数とする} \end{aligned} \]が成立する時, \[ y\qty( \qty( n + \frac{1}{2} ) \lambda , t ) = 0\]となり, 合成波 \( y \) の変位は時間によらず \( 0 \) となる. このような点をという. \( n \) 番目の節 \( x_n \) と \( ( n+1 ) \) 番目の節 \( x_{n+1} \) との間隔 \( \Delta x \) は, \[ \begin{aligned} \Delta x & = x_{n+1} – x_n \\ & = \qty( \qty( n+1 )+\frac{1}{2} ) \frac{\lambda}{2} – \qty( n+\frac{1}{2} ) \frac{\lambda}{2} \\ &= \frac{\lambda}{2} \end{aligned} \]となり, 定常波を形成する波 \( y_{+}(x , t) , y_{-}(x , t) \) の波長 \( \lambda \) の半分が節の間隔となる.

また, \[ \begin{aligned} 2 \pi \frac{x}{\lambda} & = n \pi \\ \to x & = n \frac{\lambda }{2} \ \qq{ \( n \) は整数とする} \end{aligned} \]が成立する時, \[ y\qty( n \lambda , t ) = 2A \cos{n \pi } \sin{\qty( 2\pi \frac{t}{T} )}\]となる. ここで, \[ \abs{\cos{n \pi } } = 1\]より, \( x = n \lambda \) の点においては時間が変化した時の変位が最大となる. このような点をという. 腹の間隔も節の間隔と同じく \( \Delta x = \frac{\lambda}{2} \) である.