熱力学的な系

熱力学では多数の粒子が集まった集団の平均的な振る舞いを記述することになる. そこで, 議論の対象とする粒子又はその集合もしくは領域のことを熱力学的な系あるいは単に系(system)と呼び, 系以外を外界又は単に外部と呼ぶことにする[1]などと呼ぶこともある.. ここでは, 系及び外界やその境界について議論する.

力学では, 2物体からなる系などを考えたが, 熱力学が議論対象とする系には十分に多数の粒子 [2]例えば気体分子や液体分子.が存在していることが想定される. しかし, 一般には, 非常に多数の粒子すべての運動方程式を解くことは困難である. そこで, 系内部の個々の粒子の運動には目を瞑りつつも, 系全体で平均化された情報を用いて系を特徴づけることができれば便利であり, これこそがまさしく高校物理で学ぶ熱力学の特徴である.

まとめると, 熱力学とは非常に微視的(ミクロ)な粒子の集まりである系の特徴を, 巨視的(マクロ)な視点で観測した結果を体系的にまとめた学問ということができる.

系の分類

系と外界との間でどのようなやり取りが可能なのかに応じた系の分類を与える. このような分類を強く意識する機会はあまり多くないかもしれないが, 熱力学をきちんと学んでいこうとするときには重要な区別となる. とはいえ, 初めのうちは日常的な感覚と絡めたイメージを重視した理解で十分である.

まず, 系と外界との間でのやり取り可能なものは物質(粒子)又はエネルギーであるとして, 孤立系, 閉鎖系および開放系を次表のように分類することとする[3]熱力学では顕著であるが, 物理学では使用する用語や定義が文献によって幾分異なることは珍しくない.  … Continue reading.

系の呼称 物質のやり取り エネルギーのやり取り
孤立系 \(\times\) \(\times\)
閉鎖系(閉じた系) \(\times\) \(\bigcirc\)
開放系(開いた系) \(\bigcirc\) \(\bigcirc\)

これらの系の区別の例示として, 全く正確とはいえないが, イメージを先行させた具体例で議論してみよう.

孤立系

魔法瓶のような容器の内部をとしよう. 非常に理想的な魔法瓶であるならば, 陽射しのもとにさらしても系の温度に変化が生じないことが想像される. さらに, 可視光線だけでなく, いろんな波長の電磁波も遮断するなどした容器があったならば, 系と外界では物質の出入りもなければエネルギーのやり取りも禁止されることになる. このような系が孤立系のイメージとして合致するものである.

閉鎖系(閉じた系)

風船又はペットボトルのような容器に閉じ込められた領域をとしよう. このような容器に覆われた系と外界とは物質の出入りが遮断されているとみなすことができる. しかし, このような容器を放置しておくと, 外界の温度に応じて内容物の温度が変化することは想像に易い. この現象は容器の内部と外界とで粒子の出入りが行われたことで生じたわけではなく, 系と外界との間で熱エネルギーが伝達されていることに起因している. このような系は閉鎖系のイメージと合致するものである.

開放系(開いた系)

気球の球皮内部の領域を系としよう. 球皮内部には大気中の粒子達が出たり入ったりしており, 物質の出入りが自由に行われている. また, 物質の出入りがあるのだから, それと同時にエネルギーのやり取りが活発に行われており, 開放系のイメージと合致するものである.

脚注

脚注
1 などと呼ぶこともある.
2 例えば気体分子や液体分子.
3 熱力学では顕著であるが, 物理学では使用する用語や定義が文献によって幾分異なることは珍しくない. 複数の文献の記述内容を比較するときには, 各文献で定義された用法で各用語を用いることに注意してほしい.