公式のまとめ-微分方程式篇-

以下, 関数 \( y \) は \( x \) を独立変数に持つものとする. また, 各種の関数は必要な数だけ連続かつ微分可能なものとする.

微分方程式

導関数の表記

関数 \( y \) について \[\lim_{\Delta x \to 0} \frac{y(x+\Delta x) – y(x)}{\Delta x } \notag\] で定義される \( y \) の導関数を表す記法として \[y^{\prime} , y^{(1)}, \dv{y}{x} \notag\] などがあり, 第 \( n \) 次導関数は \[y^{\prime \prime \cdots \prime} , y^{(n)}, \dv[n]{y}{x} \notag\] などと書く.

微分方程式と解

\( x \) , \( y \) および \( y \) の導関数 \( y^{\prime}, y^{\prime \prime} , \cdots , y^{(n)} \) を含む一般的な方程式 \[f\qty( x, y , y^{\prime}, y^{\prime \prime}, \cdots , y^{(n)} ) = 0 \notag\] を常微分方程式という. ここでは常微分方程式のことを単に微分方程式と呼ぶ.

これに対して, 偏導関数を含んだ微分方程式は偏微分方程式といわれ, 常微分方程式に比較して解くことが大変困難である.

「微分方程式を満たすような \( y(x) \) 」または「微分方程式を満たす, \( y \) の導関数を含まないような方程式」を微分方程式の解という. また, 微分方程式の解をもとめることを微分方程式を解くという.

微分方程式の階数

微分方程式に含まれる導関数の最高階数のことを微分方程式の階数といい, 微分方程式 \[f(x, y, y^{\prime}, y^{\prime \prime }, \cdots , y^{(n)}) = 0 \notag\] の階数は \( n \) である. 階数が \( n \) の微分方程式を \( n \) 階微分方程式という.

線形微分方程式

微分方程式が, \( x \) の関数 \( P_{i} = P_{i}(x) \) および \( Q=Q(x) \) をもちいて, \[P_{0} y^{(n)} + P_{1} y^{(n-1)} + P_{2} y^{(n-2)} + \cdots + P_{n-1} y^{(1)} + P_{n} y = Q \quad \qty( P_{0} \neq 0 ) \label{senkeibibunn_matome}\] と, 各導関数の1次式の和に整理できるものを線形微分方程式という.

微分方程式\eqref{senkeibibunn_matome}において, \( Q(x) \) が恒等的にゼロであるような微分方程式 \[P_{0} y^{(n)} + P_{1} y^{(n-1)} + P_{2} y^{(n-2)} + \cdots + P_{n-1} y^{(1)} + P_{n} y = 0 \label{senkeibibunndohan_matome}\] を同次方程式と呼び, \( Q \neq 0 \) であるものを非同次方程式と呼ぶ.

また, 式\eqref{senkeibibunn_matome}が与えられたとき, 式\eqref{senkeibibunndohan_matome}を式\eqref{senkeibibunn_matome}の同伴方程式という.

非線形微分方程式

微分方程式のうち, 線形微分方程式でないものを非線形微分方程式という. 一般に, 非線形微分方程式は線形微分方程式に比べて扱いが格段に難しくなることが知られている.

一般解, 特殊解, 特異解

与えられた \( n \) 階微分方程式に対して, \( n \) 個の独立な任意定数を含んだ解を一般解, 一般解の任意定数を固定することで得られる解を特殊解, 一般解の任意定数をどのように選んでも得られない解を特異解という.

初期条件と境界条件

独立変数がある値をとるときの関数およびその導関数の値が決定されるような条件を初期条件という. 一方, 独立変数の複数の値において, 関数またはその導関数の値が決定されるような条件を境界条件という.

変数分離形と同次形

変数分離形

微分方程式 \[y^{\prime} = \dv{y}{x} = P(x) Q(y) \label{hensu1_matome}\] を変数分離形の微分方程式という. 変数分離形の微分方程式(式\eqref{hensu1_matome})において \( \dv{y}{x} \) を形式的な分数とみなして式変形を行うことで一般解が得られる. \[\begin{aligned} \frac{1}{Q(y)} \dd{y} & = P(x) \dd{x} \notag \\ \to \ \int \frac{1}{Q(y)} \dd{y} & = \int P(x) \dd{x} \notag\end{aligned}\]

同次形

微分方程式 \[\dv{y}{x}=f(\frac{y}{x}) \label{doujikei_matome}\] を同次形の微分方程式という. 同次形の微分方程式は変数分離形に変換できることが知られている. 実際, 式\eqref{doujikei_matome}において, \( u \coloneqq \frac{y}{x} \) とおくと, \[\dv{u}{x} = \frac{1}{x} \qty( f(u) – u ) \notag\] より, 次の変数分離形へと帰着する. \[\frac{1}{f(u) – u } \dv{u}{x} = \frac{1}{x} \notag \quad .\]

変数分離形または同次形に持ち込める微分方程式

微分方程式 \[\dv{y}{x} = f\qty( \frac{Ax+By}{Cx+Dy} ) \label{doujikeiv2_matome}\] は同次形の微分方程式 \[\dv{y}{x} = f\qty( \frac{A+B \qty( \frac{y}{x} ) }{C+D \qty( \frac{y}{x} )} )\] へと変換できる.

微分方程式 \[\dv{y}{x}= f\qty( \frac{Ax+By+C}{Dx+Ey+F} ) \notag\] において \( AE-BD \neq 0 \) ならば, \[\begin{cases} Ax+By+C = 0 \\dd{x+Ey+F}= 0 \end{cases} \notag\] をみたすような \( x \) , \( y \) の値 \( x_{0} \) , \( y_{0} \) を用いて, \[\begin{aligned} \dv{y}{x} &= f\qty( \frac{Ax+By-Ax_{0} – By_{0}}{Dx+Ey-Dx_{0} – Ey_{0}} ) \notag \\ &= f\qty( \frac{A\qty( x – x_{0} )+B\qty( y-y_{0} )}{D\qty( x – x_{0} )+E\qty( y-y_{0} )} ) \quad . \notag \end{aligned}\] と変換できる. さらに, \[\begin{cases} X = x – x_{0} \\ Y = y – y_{0} \end{cases} \notag\] とすると, \[\dv{Y}{X} = f\qty( \frac{AX+BY}{DX+EY} ) \notag\] となる. これは式\eqref{doujikeiv2_matome}に示した微分方程式と同じであり, 同次形または変数分離形の微分方程式へと変換できる.

微分方程式 \[\dv{y}{x} = \frac{y}{x} f(xy) \notag\] は新しい変数を \( u \coloneqq xy \) とし, \[\dv{u}{x} = \frac{u}{x} \qty( 1 + f(u) ) \notag\] を用いると, 次のように変数分離形の微分方程式に変換できる. \[\frac{1}{u\qty( 1 + f(u) )}\dv{u}{x}= \frac{1}{x}\quad . \notag\] 微分方程式 \[\dv{y}{x} = f(Ax+By+C) \notag\] は新しい変数を \( u \coloneqq Ax +By +C \) とし, \[\dv{u}{x} = A + B f(u) \notag\] を用いると, 次のように変数分離形の微分方程式に還元できる. \[\frac{1}{A + B f(u)} \dv{u}{x} = 1 \notag\]

1階線形微分方程式

定数係数1階線形微分方程式

微分方程式 \[\dv{y}{x} + a y = b \qq{ \( a, b \) は定数} \notag\] を定数係数1階線形微分方程式という. この式は \[\dv{y}{x} = – a \qty( y – \frac{b}{a} ) \notag\] と書き換えることができ, 一般解は次式で与えられる. \[y = C e^{- ax } + \frac{b}{a} \quad . \notag\]

1階線形同次微分方程式

1階線形同次微分方程式 \[\dv{y}{x} + P(x) y = 0 \notag\] の一般解は次式で与えられる. \[y = C e^{ – \int P(x) \dd{x} } \quad . \label{ichikaisenkeidouji2a_matome}\]

1階線形微分方程式

1階線形非同次微分方程式 \[\dv{y}{x} + P(x) y = Q(x) \label{ichikaisenkei_matome}\] の一般解は, 式\eqref{ichikaisenkei_matome}において \( Q(x)=0 \) とした同伴方程式である1階線形同次微分方程式の一般解(式\eqref{ichikaisenkeidouji2a_matome})に「補正」を加える手法 – 定数変化法 – で求めることができる.

1階線形同次微分方程式の一般解(式\eqref{ichikaisenkeidouji2a_matome})の定数 \( C \) を関数 \( u(x) \) に置き換えた関数 \[y = u(x) e^{ – \int P(x) \dd{x} } \notag\] を微分方程式\eqref{ichikaisenkei_matome}に代入することで, \( u(x) \) を定める. 実際に代入して得られる \( u \) についての微分方程式 \[u^{\prime}(x) = Q(x) e^{\int P(x) \dd{x} } \notag\] の両辺を \( x \) で積分することで, \( u(x) \) の関数形が次のように定まる. \[u(x) = \int \qty( Q(x) e^{\int P(x) \dd{x} } ) \dd{x}+ C \notag \quad .\] したがって, 1階線形非同次微分方程式(式\eqref{ichikaisenkei_matome})の一般解として次式を得る. \[y = e^{ – \int P(x) \dd{x} } \left\{\int \qty( Q(x) e^{\int P(x) \dd{x} } ) \dd{x}+ C \right\} \quad . \notag\]

一つの特殊解がわかっている場合

1階線形非同次微分方程式 \[\dv{y}{x} + P(x) y = Q(x) \notag\] を満たす特殊解の一つが \( y_{1} \) であるとき, 未知関数 \( z(x) \) と特殊解 \( y_{1} \) の和 \( y = y_{1} + z \) を代入すると, \[z = C e^{ – \int P(x) \dd{x} } \notag\] であることわかるので, 一般解として次式を得る. \[y = y_{1} + C e^{ – \int P(x) \dd{x} } \quad . \notag\]

二つの特殊解がわかっている場合

1階線形非同次微分方程式 \[\dv{y}{x} + P(x) y = Q(x) \notag\] を満たす特殊解の二つ \( y_{1} \) , \( y_{2} \) がわかっているとき, 一般解として次式が得られる. \[y = y_{1} + C\qty( y_{2} – y_{1} ) \quad . \notag\]

2階線形微分方程式の解の構造

微分方程式 \[y^{\prime \prime} + P(x) y^{\prime} + Q(x) y = R(x) \notag\] を2階線形非同次微分方程式という. 2階線形微分方程式の一般解を求める前から解の持つ性質自体は知ることはできる.

解の存在と一意性

2階線形微分方程式 \[y^{\prime \prime} + P(x) y^{\prime} + Q(x) y = R(x) \notag\] において, \( P(x) \) , \( Q(x) \) , \( R(x) \) がある区間内で連続関数であるとする. この区間内のある一点 \( x=x_{0} \) における初期条件を与えると, 微分方程式の解は区間内でただ一つだけ必ず存在することが知られている.

2階線形同次微分方程式の解の線形性

2階線形同次微分方程式 \[y^{\prime \prime} + P(x) y^{\prime} + Q(x) y = 0 \notag\] を満たすような解 \( y_{1} \) , \( y_{2} \) が得られたとき, 任意定数 \( C_{1} \) , \( C_{2} \) を用いた \[y = C_{1} y_{1} + C_{2} y_{2} \notag\] も解となる.

1次独立と1次従属

二つの関数 \( y_{1} \) と \( y_{2} \) が比例関係になく, \[C_{1} y_{1} + C_{2} y_{2} = 0 \notag\] が恒等的に満たす条件が \( C_{1} = C_{2} = 0 \) に限られるとき, \( y_{1} \) と \( y_{2} \) は1次独立であるという.

一方, 二つの関数 \( y_{1} \) と \( y_{2} \) が比例関係にあり, \[C_{1} y_{1} + C_{2} y_{2} = 0 \notag\] を恒等的に満たす条件が \( C_{1} = C_{2} = 0 \) 以外に存在するとき, \( y_{1} \) と \( y_{2} \) は1次従属であるという.

1次独立な関数の組の例

\[\left\{y_{1} , y_{2} \right\} = \begin{cases} \left\{x^{m}, x^{n} \right\} \quad \qty( m \neq n ) \\ \left\{\sin{x}, \cos{x} \right\} \\ \left\{e^{x}, e^{-x} \right\} \\ \left\{e^{\alpha_{1}x}, e^{\alpha_{2}x} \right\} \quad \qty( \alpha_{1} \neq \alpha_{2} ) \\ \left\{x^{m} e^{\alpha x}, x^{n}e^{\alpha x} \right\} \qq{ \( \alpha \) は定数, \( m \neq n \) } \end{cases} \notag\]

2階線形同次微分方程式の解の構造

1次独立な二つの2階線形同次微分方程式の解 \( y_{1} \) , \( y_{2} \) を基本解といい, 2階線形同次微分方程式の一般解は2個の1次独立な基本解を用いて次式で与えられる. \[y = C_{1} y_{1} + C_{2} y_{2} \qq{ \( C_{1}, C_{2} \) は任意定数} \quad . \notag\]

ロンスキアン

二つの関数 \( y_{1} \) と \( y_{2} \) のロンスキアン \( W(y_{1}, y_{2}) \) とは, \[W(y_{1}, y_{2}) \coloneqq y_{1} y_{2}^{\prime} – y_{2} y_{1}^{\prime}\] で定義される. ロンスキアンはロンスキー行列式とも呼ばれ, 次の行列式でも定義される. \[W(y_{1}, y_{2}) \coloneqq \begin{vmatrix} y_{1} & y_{2} \\ y_{1}^{\prime} & y_{2}^{\prime} \end{vmatrix} \notag \quad .\] 関数 \( y_{1} \) , \( y_{2} \) が2階線形同次微分方程式の解であるとき, \( y_{1} \) , \( y_{2} \) が1次独立な基本解であることはロンスキアン \( W(y_{1}, y_{2}) \) がゼロでないことの必要十分条件である.

2階線形非同次微分方程式の解の構造

2階線形非同次微分方程式 \[y^{\prime \prime} + P(x) y^{\prime} + Q(x) y = R(x) \label{nikaisenkeihidouji_matome}\] を満たす特殊解が \( y=Y \) であったとする. 式\eqref{nikaisenkeihidouji_matome}の一般解は, 式\eqref{nikaisenkeihidouji_matome}の同伴方程式 \[y^{\prime \prime} + P(x) y^{\prime} + Q(x) y = 0 \notag\] の一般解 \[y_{3} = C_{1} y_{1} + C_{2} y_{2} \notag\] と特殊解 \( Y \) との和である次式で与えられる. \[y = C_{1} y_{1} + C_{2} y_{2} + Y \quad . \notag\]

定数係数2階線形同次微分方程式の一般解

微分方程式 \[\dv[2]{y}{x} + a \dv{y}{x} + b y = 0 \qq{ \( a, b \) は定数} \notag\] を定数係数2階線形同次微分方程式という. この微分方程式の一般解は, 特性方程式と呼ばれる次の2次方程式 \[\lambda^{2} + a \lambda + b = 0 \notag\] の判別式 \( D = a^{2} – 4 b \) の値に応じて3つに場合分けされる.

\( D > 0 \) で特性方程式が二つの実数解 \( \lambda_{1} \) , \( \lambda_{2} \) を持つとき

一般解は次式で与えられる. \[y = C_{1} e^{\lambda_{1} x } + C_{2} e^{\lambda_{2} x } \quad . \notag\]

\( D < 0 \) で特性方程式が二つの虚数解 \( \lambda_{1}=p+iq \) , \( \lambda_{2}=p-iq \) ( \( p, q \in \mathbb{R} \) )を持つとき

一般解は次式で与えられる. \[\begin{aligned} y &= C_{1} e^{\lambda_{1} x } + C_{2} e^{\lambda_{2} x } \notag \\ &= e^{px} \left\{C_{1} e^{i q x } + C_{2} e^{i q x } \right\} \quad . \notag \end{aligned}\] または, これと等価な次式で与えられる. \[y = e^{px} \left\{C_{1} \sin{\qty( qx )} + C_{2} \cos{\qty( qx )} \right\} \quad . \notag\]

\( D = 0 \) で特性方程式が重解 \( \lambda_{0} \) を持つとき

一般解は次式で与えられる. \[y = \qty( C_{1} + C_{2} x ) e^{\lambda_{0} x } \quad . \notag\]

ベルヌーイの微分方程式

微分方程式 \[\dv{y}{x} + P(x)y = Q(x) y^{n} \label{Bernoulli_matome}\] をベルヌーイの微分方程式という. ベルヌーイの微分方程式は, \( n=0 \) のときは1階線形非同次微分方程式, \( n=1 \) のときは変数分離形となる.

関数 \( w \) を \( w \coloneqq y^{1-n} \) で定義すると, ベルヌーイの微分方程式(式\eqref{Bernoulli_matome})は \[\dv{w}{x} + \qty( 1-n ) P(x) w = \qty( 1-n ) Q(x) \notag\] という, \( w \) についての1階線形非同次微分方程式となり, 一般解は \[w = y^{1-n} = e^{ – \int \qty( 1-n )P(x) \dd{x} } \left\{\int \qty( \qty( 1-n ) Q(x) e^{\int \qty( 1-n )P(x) \dd{x} } ) \dd{x}+ C_{1} \right\} \notag\] で与えられる.

リッカチの微分方程式

微分方程式 \[\dv{y}{x} + P(x)y = Q(x) y^{2} + R(x) \label{RicEq_matome}\] をリッカチの微分方程式という. リッカチの微分方程式の一般解は求積法では求まらないことが知られているが, 特殊解が一つでも見つかればベルヌーイの微分方程式に変換できる.

リッカチの微分方程式(式\eqref{RicEq_matome})の特殊解を \( y_{1}(x) \) とし, 未知関数 \( z \) を用いて \( y = y_{1} + z \) とすると, 式\eqref{RicEq_matome}は次式のような \( z \) についてのベルヌーイの微分方程式に変換できる. \[\dv{z}{x} + \left\{P(x) – 2 Q(x) y_{1} \right\} z = Q(x) z^{2} \quad .\notag\] ここで, \[P_{0}(x) \coloneqq P(x) – 2 Q(x) y_{1} \notag\] とすると, 一般解は次式で与えられる. \[\begin{aligned} y &= y_{1} – \qty[ e^{\int P_{0}(x) \dd{x} } \left\{\int \qty( Q(x) e^{ – \int P_{0}(x) \dd{x} } ) \dd{x}+ C \right\} ]^{-1} \notag \\ &= y_{1} – \qty[ e^{\int \qty( P(x) – 2 Q(x) y_{1} ) \dd{x} } \left\{\int \qty( Q(x) e^{ – \int \qty( P(x) – 2 Q(x) y_{1} ) \dd{x} } ) \dd{x}+ C \right\} ]^{-1} \quad .\notag \end{aligned}\]

クレローの微分方程式

微分方程式 \[y = xy^{\prime} + f(y^{\prime} ) \label{ClaEq}\] をクレローの微分方程式という. クレローの微分方程式は特異解を持つ微分方程式であり, 特異解は一般解から得られる曲線群の全てとどこかに接点を持つ曲線 – 包絡線 – である.

式\eqref{ClaEq}の両辺を \( x \) で微分することで \[\begin{cases} y^{\prime \prime} = 0 \\ x + f^{\prime}(y^{\prime}) = 0 \end{cases} \notag\] のどちらかは成立していることがわかる.

\( y^{\prime \prime}=0 \) のとき

\( y^{\prime \prime}=0 \) のとき, 一般解は次式で与えられる. \[y = C_{1} x + f(C_{1}) \quad . \notag\]

\( x + f^{\prime}(y^{\prime}) = 0 \) のとき

\( x + f^{\prime}(y^{\prime}) = 0 \) のとき, \( y^{\prime} \) を媒介変数とした座標 \[\begin{cases} x = – f^{\prime}(y^{\prime}) \\ y = – f(y^{\prime}) y^{\prime} + f(y^{\prime}) \end{cases}\] の集まりで定義される曲線が解となる. この解は一般解からは得られない特異解である.

ラグランジュの微分方程式

微分方程式 \[y = xf(y^{\prime}) + g(y^{\prime} ) \quad . \label{Lagrange_matome}\] をラグランジュの微分方程式またはダランベールの微分方程式という. ラグランジュの微分方程式はクレローの微分方程式の拡張版である.

\( f(y^{\prime})=y^{\prime} \) のとき

この場合, クレローの微分方程式 \[y = xy^{\prime} + g(y^{\prime} ) \notag \quad .\] と一致している.

\( f(y^{\prime})\neq y^{\prime} \) のとき

ラグランジュの微分方程式(式\eqref{Lagrange_matome})の両辺を微分し, \( p \coloneqq y^{\prime} \) と定義すると, \[\dv{p}{x} = \frac{p – f(p) }{\left\{xf^{\prime}(p) + g^{\prime}(p) \right\} } \notag\] となる. この両辺に \( \dv{x}{p} \) を乗じて整理すると, \[\dv{x}{p} – \frac{f^{\prime}(p) }{p – f(p) }x = \frac{g^{\prime}(p) }{p – f(p) } \quad . \notag\] ここで, \[P_{0}(p) \coloneqq – \frac{f^{\prime}(p) }{p – f(p) } , \quad Q_{0}(p) \coloneqq \frac{g^{\prime}(p) }{p – f(p) } \notag\] と定義すると, \[\dv{x}{p} + P_{0}(p)x = Q_{0}(p) \notag\] となり, \( x \) が \( p \) を独立変数に持つ関数とみなしたときの1階線形非同次微分方程式となる.

\( x \) の一般解は \[x = e^{ – \int P_{0}(p) \dd{p} } \left\{\int \qty( Q_{0}(p) e^{\int P_{0}(p) \dd{p} } ) \dd{p} + C \right\} \label{LagEqx_matome}\] で与えられ, ラグランジュの微分方程式\eqref{Lagrange_matome}と式\eqref{LagEqx_matome}を組み合わせて \( p \) を媒介変数とした \[\begin{cases} y = xf(p) + g(p) \\ x = e^{ – \int P_{0}(p) \dd{p} } \left\{\int \qty( Q_{0}(p) e^{\int P_{0}(p) \dd{p} } ) \dd{p} + C \right\} \end{cases} \notag\] か, 上2式から \( p \) を消去した関数が解となる.

完全微分形

微分方程式 \[\dv{ y}{x} = – \frac{P(x, y)}{Q(x, y)} \ \iff \ P(x, y) \dd{x} + Q(x, y) \dd{y} =0 \label{ede1_matome}\] のうち, \[\pdv{P (x,y)}{y} = \pdv{Q(x,y)}{x} \notag\] を満たすものを完全微分形という.

完全微分形の微分方程式(式\eqref{ede1_matome})の \( P(x, y) \) , \( Q(x, y) \) は, ある関数 \( U(x,y) \) の偏導関数を用いて \[\left\{\begin{aligned} P(x,y) &= \pdv{U(x, y)}{x} \notag \\ Q(x,y) &= \pdv{U(x, y)}{y} \notag \end{aligned} \right.\] として書くことがき, 全微分を用いて \[ \dd{U(x, y)} = \pdv{U(x, y)}{x} \dd{x} + \pdv{U(x, y)}{y} \dd{y} = 0 \label{ede2_matome}\] と書ける. したがって, 完全微分形の微分方程式(式\eqref{ede1_matome}または式\eqref{ede2_matome})一般解は \[\begin{aligned} & U(x, y) = C \notag \\ \iff \ & \int P \dd{x} + \int \left\{Q – \pdv{y} \qty( \int P \dd{x} ) \right\} \dd{y} = C \notag \end{aligned}\] で与えられる.

積分因子

完全微分形でない微分方程式 \[P(x, y) \dd{x} + Q(x, y) \dd{y} =0 \notag\] にある関数 \( \mu = \mu(x, y) \) を乗じた式 \[\left\{\mu P(x, y) \right\} \dd{x} + \left\{\mu Q(x, y) \right\} \dd{y} = 0 \notag\] が完全微分形となり, \[\pdv{y} \qty( \mu P ) = \pdv{x} \qty( \mu Q ) \iff \ Q \pdv{\mu}{x} – P \pdv{\mu}{y} = \mu \qty( \pdv{P}{y} – \pdv{Q}{x} ) \notag\] を満たすような \( \mu(x, y) \) のことを積分因子という.

積分因子が特別な場合

\[\begin{aligned} \mu(x) = C e^{\int g(x) \dd{x} } \ & \iff \ g(x) = \frac{1}{Q}\qty( \pdv{P}{y} – \pdv{Q}{x} ) \notag \\ \mu(y) = C e^{ – \int h(y) \dd{y} } \ & \iff \ h(y) = \frac{1}{P}\qty( \pdv{P}{y} – \pdv{Q}{x} ) \notag \\ \mu(xy) = C e^{ – \int r(xy)\, \dd(xy) } \ & \iff \ r(xy) = \frac{1}{P x – Q y } \cdot {\qty( \pdv{P}{y} – \pdv{Q}{x} ) } \notag \\ \mu(\frac{y}{x}) = C e^{ – \int s(\frac{y}{x})\dd(\frac{y}{x}) } \ & \iff \ r(\frac{y}{x}) = \frac{x^{2}}{P x + Q y } \cdot \qty( \pdv{P}{y} – \pdv{Q}{x} ) \notag \end{aligned}\]

全微分を用いた積分因子の予測

微分方程式 \[P(x, y) \dd{x} + Q(x, y) \dd{y} = 0 \label{zen1_matome}\] を \[g(x, y) \dd{U(x,y)} = 0 \label{zen2_matome}\] という形に変形できるならば, 式\eqref{zen1_matome}および式\eqref{zen2_matome}の積分因子は \( \mu = \frac{1}{g(x, y)} \) である.