ラプラス変換とは

ラプラス変換という分野の概要について述べておこう. ただし, 概要とはいうものの, その数学には踏み込まず, ラプラス変換を学ぶことによってどのような恩恵が得られるのかの紹介にとどめたい.

というのも, ラプラス変換は物理的なイメージが湧きにく, 初学者にとっては何をやっているのかわからないと思われがちな分野であるが, それは幾分仕方がないという事情も知っておいてほしいからである.

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ラプラス変換という分野
ラプラス変換による微分方程式の解き方


ラプラス変換という分野

ラプラス変換の入門的な部分を学ぶと, 物理の理解のための一手法としての側面が大きいと感じることであろう[1]. 実際, ラプラス変換は微分方程式を解くための強力な武器として, 物理の電子回路や制御系で役立っている分野である. そこで, 初学者の方には, ラプラス変換が微分方程式に応用できることを理解することを当面の目標としていただきたい.

次に, ラプラス変換の出処についても簡単に述べておこう.

かつて, 微分方程式を解く手法の一つとして演算子法というものが知られていた[2]. ただし, 演算子法がなぜ上手いこと微分方程式を解く一助になっているのかについて, 数学的な後ろ盾が不十分だったのである. この演算子法に対して数学的な後ろ盾を整えていった結果あらわれたものが, これから学ぶことになるラプラス変換である[3].

このような経緯を持つがゆえに, 後に登場するラプラス変換の定義は突拍子もないものに視えるであろう. しかし, それは致し方ないことであり, そのありがたみはある程度学んだときにはじめてわかることになる[4].

ラプラス変換による微分方程式の解き方

微分方程式を解く手法として, 人類は様々な数学的手法について熟考してきた. しかし, 微分方程式を代数的に解くことができるのであれば, 微分方程式を直接的に解くよりも難易度が下がることは明白であろう. この発想を実現してくれるものこそが ラプラス変換(及び逆ラプラス変換)であり, これらを駆使することで微分方程式を代数的に解くことが可能となる.

微分方程式を真っ向から解く手法と, ラプラス変換を駆使する手法との比較を下図を用いて行うことにしよう.

愚直な微分方程式の解法とは, 微分方程式の一般解をもとめて, その一般解に対して初期条件を適用することで微分方程式の特殊解を得る. この中でも一般解を得るというステップが非常に困難な場合が少なくない.

一方, ラプラス変換による微分方程式の解法は次のとおりである. まずは, \( f(t) \) についての微分方程式に対してラプラス変換という処理を行う. その結果, 与えられた微分方程式を\(F(s) \) という量の代数方程式に変換することができ, なおかつこの段階で初期条件を容易に組み込むことができる. その後, 逆ラプラス変換という処理を行うことで微分方程式の特殊解を得ることができる. これらの各行程は, 特殊な場合を除いて簡単な計算で済むことが多い.

要するに, 急がば回れの理論である.

また, ラプラス変換と逆ラプラス変換は, その計算結果を事前にラプラス変換表として手元に持っておくことができ, この表を参照しつつ処理を行うことができることも大きな利点となる.

最終更新日



補足    (↵ 本文へ)
  1. もちろん, ラプラス変換は単なる計算手法というものではない!ということに共感してもらえるところまで学んで頂きたいものであるが, 幾分ハードルが高いようでもある.

  2. これは, 電気回路の微分方程式に登場する微分及び積分演算に対して, \( \displaystyle{\frac{d}{dt} \to p} \) , \( \displaystyle{\int \ dt \to \frac{1}{p}} \) をという置き換えを実行したあと, \( p \) の代数方程式を解くことで元の微分方程式を解くというものであった.

  3. 物理屋さん, 工学屋さんの感覚, 経験則及びアイデアに後ろ盾を与えてくれる方々に強い敬意を表する.

  4. このような事情は他にも様々な学問で見受けられる. 人類が長年の経験則や試行錯誤によって定式化してきたものを, より数学的に整理された体系で記述することは学問的に当然の流れであるが, 整理されたあとから振り返ってみるとかつての経験則に妥当性を与えるためにいくつもの準備段階を経ることが少なくない.

    例えば, 大学初年度レベルの学生が取り扱う, 解析力学などもそうであろう. この分野では作用という(直感的にはどのようなものか記述することが困難な)概念から議論を始めることになるが, その妥当性を初めて実感できるのは作用に対する議論を推し進めて運動方程式という慣れ親しんだ概念を導き出すところまで辿り着いてからとなる人も多いことであろう.

    または, 自然数とは何かといった問題意識をもった人々が必然的に学ぶであろうペアノの定理なども, 数学的な後ろ盾が後々になって厳密に与えられた例として適しているかもしれない.

    諸君には, ある(体系的に整理された)分野を学び始めたときに抱える数々の疑問は大切にしつつも, まずは先人たちによって後世に残された論法を素直に辿ってみて, 何度も何度も反芻することでその妥当性を検証することをおすすめする.