最大供給電力の定理

内部抵抗 \( r \) , 起電力 \( E \) の電圧源を抵抗 \( R \) の素子に接続したとき, 素子に供給される電力の最大値は \( \displaystyle{ \frac{E^{2}}{4r} } \) であり, この時の \( R \) は \( r \) に等しい. このように抵抗値を調整することを整合という.

内部抵抗 \( r \) , 起電力 \( E \) の電圧源を抵抗 \( R \) の素子に接続する.

このとき, この回路全体を流れる電流 \( I \) はキルヒホッフの第2法則によって次式で与えられる. \[E = \left( r + R \right) I \ \iff \ I = \frac{E}{R+r} \quad . \notag\] したがって, 理想電圧源が回路に供給する電力 \( P_{e} \) は \[P_{e} = EI = \frac{E^{2}}{R+r} \notag\] であり, 抵抗 \( R \) で消費される電力 \( P \) は \[\begin{aligned} P &= RI^{2} \notag = R \left( \frac{E}{R+r} \right)^{2} \notag \\ &= \frac{R}{R+r}P_{e} \notag \end{aligned}\] で与えられる.

ここでは, 抵抗 \( R \) での消費電力, すなわち, 電圧源から素子に供給される電力が最大になるためにはどうすればよいか考えよう.


最大供給電力の定理
効率


最大供給電力の定理

素子で消費される電力 \( P \) を \( R \) のみの関数 \( P(R) \) とみなし, \( P(R) \) の最大値を求めよう.

\( P(R) \) を \( R \) で微分すると, \[\begin{aligned} \frac{dP}{dR} &= \frac{E^{2}}{\left( R + r \right)^{2}} – \frac{2RE^{2}}{\left( R + r \right)^{3}} \notag \\ &= \frac{E^{2}}{\left( R +r \right)^{3}} \left( r – R \right) \notag \end{aligned}\] であり, \( R=r \) で \( P \) は極値をとることがわかる.

また, \( P \) の \( R \) についての2階導関数は \[\begin{aligned} \frac{d^{2}P}{dR^{2}} &= \frac{d}{dR} \left\{ \frac{E^{2}}{\left( R +r \right)^{3}} \left( r – R \right) \notag \right\} \notag \\ &= -\frac{3E^{2}}{\left( R + r \right)^{4}} \left( r – R \right) – \frac{E^{2}}{\left( R + r \right)^{3}} \notag \end{aligned}\] であるので, \( R=r \) における2階微分係数の値は負である. \[\left. \frac{d^{2}P}{dR^{2}} \right|_{R=r} = – \frac{E^{2}}{8r^{3}} < 0 \quad . \notag\] したがって, 抵抗素子で消費される電力は抵抗 \( R \) の値が電圧源の内部抵抗 \( r \) と等しいときに最大となり, 最大消費電力 \( P_{\mathrm{max}} \) は \[P_{\mathrm{max} } = P(r) = r \left( \frac{E}{r+r} \right)^{2} = \frac{E^{2}}{4r} \label{maxpowertrans}\] となる. このように, 起電力 \( E \) とその内部抵抗 \( r \) の電圧源に接続された素子への供給電力の最大値は \( E \) と \( r \) のみで定まってしまう[1][2].

また, 消費電力が最大になるように素子の抵抗値を調整することを整合という.

これ等の議論は, 後に交流回路にまで拡張されることになるがここではこれ以上立ち入らない.

効率

供給電力 \( P_{e} \) に対し, ある素子で消費される電力 \( P \) の割合を効率などと呼び \[\eta \mathrel{\mathop:}= \frac{P}{P_{e}} \notag\] で定義される.

起電力 \( E \) , 内部抵抗 \( r \) の電圧源から, 抵抗 \( R \) の素子に供給される電力の効率は \[\eta = \frac{R}{R+r} \notag\] であらわされる. したがって, 効率の良い電力の伝送を目指す場合には \( R \) の値を \( r \) よりも十分に大きく取れば良いことがわかる.

一方, 電圧源と整合する素子における効率 \( \eta \) は \[\eta = \frac{r}{r+r} = \frac{1}{2} = 50\% \notag\] となる.

最終更新日
抵抗素子の直列接続と並列接続 重ね合わせの理



補足    (↵ 本文へ)
  1. 上記の導出を, 次のようにおこなってもよい. \[ \begin{aligned} P(R) &= \frac{E^{2}}{\frac{1}{R}\left( R + r \right)^{2}} \notag \\ &= \frac{E^{2}}{\frac{1}{R} \left\{ \left( R – r \right)^{2} + 4Rr\right\} } \notag \\ &= \frac{E^{2}}{ \left\{ \frac{\left( R – r \right)^{2}}{R} + 4r \right\}} \notag \end{aligned} \] ここで, 分母が最小であるときに \( P(R) \) が最大となるので, \( R = r \) で消費電力が最大となることがわかる.

  2. 内部抵抗が無視できる電圧源理想的な電圧源と呼ばれる所以はここにある. 式\eqref{maxpowertrans}からわかるように, 電圧源の内部抵抗が無視できるような極限 \( r \to 0 \) においては \( \displaystyle{ \lim_{r \to 0 }P_{\mathrm{max}}=\infty } \) となってしまい, 電圧源が抵抗素子に供給する最大供給電力が無限大となってしまう. すなわち, 電圧源が無限に電力を供給できることを意味するが,実際にはそのようなものは存在しない.

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