コンデンサの並列接続と直列接続

静電容量 \( C \) のコンデンサに流入する電流 \( I \) と電位差 \( V \) との間には次のような関係が成立する. \[ I = C \dv{V}{t} , \quad V = \frac{1}{C} \int I \dd{t} \notag \]

静電容量 \( C_{i} \, \qty( i = 1, 2, \cdots , n ) \) のコンデンサが並列接続されたとき, 合成容量 \( C \) は \( \displaystyle{C = \sum_{i=1}^{n} C_{i} } \) で表すことができる.

静電容量 \( C_{i} \, \qty( i = 1, 2, \cdots , n ) \) のコンデンサが直列接続されたとき, 合成容量 \( C \) は \( \displaystyle{C = \qty( \sum_{i=1}^{n} \frac{1}{C_{i}} )^{-1} } \) で表すことができる. 適用には注意すべき点もある.

コンデンサの並列接続直列接続について議論を行い, 各接続方法毎に複数のコンデンサを単一のコンデンサに置き換えて考えることが可能なことを示そう.

置き換えられた単一のコンデンサの持つ静電容量を合成静電容量または単に合成容量といい, 各接続方法における合成容量をどのように定義すべきかについて議論する.

以下では, コンデンサの静電容量は時間的に変化せずに一定であるとする.

コンデンサの基本性質

静電容量 \( C \) のコンデンサの極板の片方に蓄えられた電荷が \( Q \) であるとき, コンデンサの極板間の電位差 \( V \) は次式で与えられる. \[Q = CV \ \iff \ V = \frac{1}{C} Q \quad . \label{cspQCV}\] また, 電流は電荷の移動そのものであり, 電流 \( I \) の定義は次式で与えられるのであった. (電流) \[ I = \dv{Q}{t} \quad . \label{cspIdef} \]


上記の式\eqref{cspQCV}と式\eqref{cspIdef}を組み合わせて, コンデンサに流れ込む電流 \( I \) とコンデンサで生じている電位差 \( V \) についての関係式を求めておこう.

式\eqref{cspQCV}を式\eqref{cspIdef}に代入すると, \( I \) について整理された式 \[I = \dv{t} \qty( CV ) = C \dv{V}{t} \label{cspICdCdt}\] を得る. また, 式\eqref{cspICdCdt}の両辺を時間積分して \( V \) について整理することで次式を得る. \[\begin{align} Q &= \int I \dd{t} = CV \notag \\ \to \ V &= \frac{1}{C} \int I \dd{t} \quad . \label{cspIint1} \end{align}\] 上式は, 時刻 \( t \) における電位差 \( V(t) \) を知るためには, その時刻にコンデンサが蓄えている電荷 \( Q(t) \) を知っておくか, 時刻 \( t \) までの間にコンデンサに流れた電流 \( I \) の時間積分を行う必要が有ることを意味している.

一般には, コンデンサを回路に組み込んだ瞬間やコンデンサに電流が流れ始めた瞬間を基準として考えることが多いであろうから, この時刻を \( t_{0} \) としよう. そして, 時刻 \( t \, ( > t_{0} ) \) における電位を計算するときには,時刻 \( t_{0} \) 以前にコンデンサに流れ込んだ電流からも影響を受けることを式\eqref{cspIint1}は主張している. つまり, そのコンデンサが世の中に存在した瞬間から \( t_{0} \) までの間にそのコンデンサに電流が流されていたのか( = 充電されていたのか)どうかも考慮しなければならない.

このような物理を考慮するために, 式\eqref{cspIint1}の積分は積分範囲が \( t= – \infty \) からはじまるものとしよう.[1]ここで, \( t^{\prime} \) は時間積分に用いる積分変数であり, \( t \) の時間微分を意味しているわけではない.. \[V= \frac{1}{C} \int_{ – \infty}^{t} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} \quad .\label{cspIint2}\] 式\eqref{cspIint2}の積分を, \( t_{0} \) を基準として, \[V = \frac{1}{C} \int_{ – \infty}^{t_{0}} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} + \frac{1}{C} \int_{t_{0}}^{t} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} \notag\] とわけたとき, 第1項は時刻 \( t_{0} \) の時点でコンデンサに蓄えられている電荷 \[Q(t_{0}) = \int_{ – \infty}^{t_{0}} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} \notag\] によって作られていた初期の電位差 \( V(t_{0})=\frac{Q(t_{0})}{C} \) をあらわしており, 第2項は \( t_{0} \) 以降にコンデンサが組み込まれた回路に流れる電流よって生じる電位差をあらわしている.

以上より, \( t=t_{0} \) で電荷 \( Q(t_{0}) \) を蓄えていた(電位差が \( V(t_{0})=\frac{Q(t_{0})}{C} \) であった)コンデンサの時刻 \( t \) における電位差 \( V(t) \) は次式で与えられる. \[\begin{align} V(t) &= V(t_{0})+ \frac{1}{C} \int_{t_{0}}^{t} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} \label{cspIint3a} \\ &= \frac{1}{C} \qty[ Q(t_{0}) + \int_{t_{0}}^{t} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} ] \label{cspIint3b} \end{align}\] コンデンサが単一である場合, 式\eqref{cspIint3a}及び式\eqref{cspIint3b}は式\eqref{cspQCV}と等価である. 実際, \[\begin{align} V(t) &= \frac{1}{C} \qty[ Q(t_{0}) + \int_{t_{0}}^{t} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} ] \notag \\ &= \frac{1}{C} \qty[ Q(t_{0}) + \left\{Q(t) – Q(t_{0})\right\} ]\notag \\ &= \frac{1}{C}Q(t) \notag \end{align}\] であるが, 直列接続のときには式\eqref{cspIint3a}から式\eqref{cspIint3b}への変形には注意が必要であることについて後に議論する.

コンデンサの並列接続

下図に示したような, 複数のコンデンサが並列接続された回路について考えよう.

この回路において, 端子 \( b \) に対する端子 \( a \) の電位を \( V \) , 端子 \( a \) からコンデンサ群に向かって流れ出る電流を \( I \) とする. また, 各コンデンサの静電容量を \( C_{i} \) , 端子 \( b_{i} \) に対する端子 \( a_{i} \) の電位を \( V_{i} \) , 各コンデンサに端子 \( a \) 側から流れ込む電流を \( I_{i} \) としよう.
( \( i = 1, 2, \cdots , n \) とする. )

並列接続の場合, 各コンデンサの両端の電位差 – \( b_{i} \) に対する \( a_{i} \) の電位 – \( V_{i} \) は全て \( V \) に等しいので次式が成立する. \[V_{i} = V \quad . \notag\] また, 点 \( a_{1} \) に対してキルヒホッフの第1法則を適用すると次式を得る. \[I = I_{1} + I_{2} + \cdots + I_{n} \quad . \label{cpKirch1}\] さらに, 各コンデンサについて \[I_{i} = C_{i} \dv{V_{i}}{t} = C_{i} \dv{V}{t} \notag\] が成立する(式\eqref{cspICdCdt})ので, \( I_{i} \) を式\eqref{cpKirch1}に代入すると, \[\begin{align} I &= I_{1} + I_{2} + \cdots + I_{n} \notag \\ &= C_{1}\dv{V}{t} + C_{2}\dv{V}{t} + \cdots + C_{n}\dv{V}{t} \notag \\ \therefore \ I &= \qty( C_{1} + C_{2} + \cdots + C_{n} ) \dv{V}{t} \label{cpsubCon} \end{align}\] となる.

ここで, \[\begin{aligned} C \coloneqq & C_{1} +C_{2} + \cdots + C_{n} \\ =& \sum_{i=1}^{n}C_{i} \end{aligned} \notag\] なるものを定義すると, 式\eqref{cpsubCon}は \[I = C \dv{V}{t} \notag\] と書くことができる. これは静電容量 \( C \) をもつ単一のコンデンサに成立する式\eqref{cspICdCdt}そのものである.

以上より, \( n \) 個のコンデンサ(静電容量 \( C_{i} \) )が並列接続されている状況は, 静電容量 \( C = C_{1} +C_{2} + \cdots + C_{n} \) を持つ単一のコンデンサが接続されている状況と同じだとみなすことができ, \( C \) を並列接続されたコンデンサの合成容量という.

コンデンサの直列接続

下図に示したような, 複数のコンデンサが直列接続された回路について考えよう.

この回路において, 端子 \( b \) に対する端子 \( a \) の電位を \( V \) , 端子 \( a \) からコンデンサ群に向かって流れ出る電流を \( I \) とする. また, 各コンデンサの静電容量を \( C_{i} \) , 各コンデンサ間に生じている端子 \( b \) 方向に対する端子 \( a \) 方向の電位を \( V_{i} \) , \( i \) 番目のコンデンサに初めから生じていた電位差を \( V_{i}(t_{0}) \) と書くことにしよう.
( \( i = 1, 2, \cdots , n \) とする. )

直列接続の場合, 各コンデンサに流れる電流は全て \( I \) に等しいので次式が成立する. \[I_{i}=I \quad . \notag\] また, 時刻 \( t \) における各コンデンサの電位差 \( V_{i}(t) \) について式\eqref{cspIint3b}が成立し, \[V_{i}(t) = V_{i}(t_{0})+ \frac{1}{C_{i}} \int_{t_{0}}^{t} I_{i}(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} \notag\] であるので, \( ab \) の間の電位差 \( V(t) \) は, \[\begin{aligned} V(t) &= V_{1}(t) + V_{2}(t) + \cdots + V_{n}(t) \notag \\ &= \qty( V_{1}(t_{0})+ \frac{1}{C_{1}} \int_{t_{0}}^{t} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} ) \notag \\ &\phantom{=} + \qty( V_{2}(t_{0})+ \frac{1}{C_{2}} \int_{t_{0}}^{t} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} ) \notag \\ &\phantom{=} + \cdots \notag \\ &\phantom{=} + \qty( V_{n}(t_{0})+ \frac{1}{C_{n}} \int_{t_{0}}^{t} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} ) \notag \end{aligned}\] \[\begin{equation} \begin{aligned} \therefore \ V(t) &= \qty[ V_{1}(t_{0}) + V_{2}(t_{0}) + \cdots + V_{n}(t_{0}) ] \\ &\phantom{=} + \qty[ \frac{1}{C_{1}} + \frac{1}{C_{2}} + \cdots + \frac{1}{C_{n}} ] \int_{t_{0}}^{t} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} \end{aligned} \end{equation} \label{cssubCon}\] となる.

ここで, \[\begin{aligned} \frac{1}{C} \coloneqq & \frac{1}{C_{1}} + \frac{1}{C_{2}} + \cdots + \frac{1}{C_{n}} \\ =& \sum_{i=1}^{n}\frac{1}{C_{i}} \end{aligned} \notag\] および \[V(t_{0}) \coloneqq V_{1}(t_{0}) + V_{2}(t_{0}) + \cdots + V_{n}(t_{0}) \notag\] を定義すると, 式\eqref{cssubCon}は \[V(t) = V(t_{0}) + \frac{1}{C} \int_{t_{0}}^{t}I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} \label{csCon}\] と書くことができる. これは静電容量 \( C \) を持つ単一のコンデンサが時刻 \( t_{0} \) に \( V(t_{0}) \) の電位差を持っていたときに成立する式\eqref{cspIint3a}そのものである.

以上より, \( n \) 個のコンデンサ(静電容量 \( C_{i} \) )が直列接続されており, 初期状態における各コンデンサの極板間の電位差が \( V_{i}(t_{0}) \) である状況は, 静電容量 \( C=\qty( \frac{1}{C_{1}} + \frac{1}{C_{2}} + \cdots + \frac{1}{C_{n}} )^{-1} \) を持つ単一のコンデンサが時刻 \( t_{0} \) に \( V(t_{0})=V_{1}(t_{0})+V_{2}(t_{0})+\cdots+V_{n}(t_{0}) \) の電位差を持っていた状況と同じだとみなすことができ, \( C \) を直列接続されたコンデンサの合成容量という.

直列接続についての補足

直列接続の公式の適用には注意が必要である.

まず, 上記で示した式\eqref{csCon}は単一コンデンサについて成立する式\eqref{cspIint3a} \[V(t) = V(t_{0})+ \frac{1}{C} \int_{t_{0}}^{t} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} \label{cspIint3a2}\] と対応するものであった.

しかし, コンデンサについて高校生に馴染みのある式 \( Q=CV \) の形式で(すなわち, 式\eqref{cspIint3b}の形式で)直列接続を考える時には注意が必要であることについて補足しておく.


直列接続されたコンデンサについて成立する式\eqref{cssubCon} \[\begin{aligned} V(t) &= \qty[ V_{1}(t_{0}) + V_{2}(t_{0}) + \cdots + V_{n}(t_{0}) ] \notag \\ &\phantom{=} + \qty[ \frac{1}{C_{1}} + \frac{1}{C_{2}} + \cdots + \frac{1}{C_{n}} ] \int_{t_{0}}^{t} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} \notag \\ &= \qty[ \frac{Q_{1}(t_{0})}{C_{1}} + \frac{Q_{2}(t_{0})}{C_{2}} + \cdots + \frac{Q_{n}(t_{0})}{C_{n}} ] \notag \\ &\phantom{=} + \qty[ \frac{1}{C_{1}} + \frac{1}{C_{2}} + \cdots + \frac{1}{C_{n}} ] \int_{t_{0}}^{t} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} \notag \end{aligned}\] と単一コンデンサについて成立する式\eqref{cspIint3b} \[\begin{aligned} V(t) &= \frac{1}{C} \qty[ Q(t_{0}) + \int_{t_{0}}^{t} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} ] \notag \\ \to \ V(t) &= \frac{1}{C}Q(t) \notag \end{aligned}\] とが形式上同じになる状況について考えよう.

これには, 各コンデンサが \( t_{0} \) の時点で蓄えていた電荷が全て等しい値 \( Q(t_{0}) \) であればよく, \[Q_{i}(t_{0}) = C_{i} V_{i}(t_{0}) =Q(t_{0})\] とすると, \[\begin{aligned} V(t) &= \qty( V_{1}(t_{0}) + V_{2}(t_{0}) + \cdots + V_{n}(t_{0}) ) \notag \\ &\phantom{=} + \qty[ \frac{1}{C_{1}} + \frac{1}{C_{2}} + \cdots + \frac{1}{C_{n}} ] \int_{t_{0}}^{t} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} \notag \\ &= \qty[ \frac{1}{C_{1}} + \frac{1}{C_{2}} + \cdots + \frac{1}{C_{n}} ] Q(t_{0})\notag \\ &\phantom{=} + \qty[ \frac{1}{C_{1}} + \frac{1}{C_{2}} + \cdots + \frac{1}{C_{n}} ] \int_{t_{0}}^{t} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} \notag \\ \therefore \ V(t) &= \qty[ \frac{1}{C_{1}} + \frac{1}{C_{2}} + \cdots + \frac{1}{C_{n}} ] \left\{Q(t_{0}) + \int_{t_{0}}^{t} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} \right\} \end{aligned}\] となる. ここで, 合成容量 \( C \) を \[\frac{1}{C} \coloneqq \frac{1}{C_{1}} + \frac{1}{C_{2}} + \cdots + \frac{1}{C_{n}}\] で定義することで, 直列につながれたコンデンサに対して \[\begin{aligned} V(t) &= \frac{1}{C} \qty[ Q(t_{0}) + \int_{t_{0}}^{t} I(t^{\prime}) \dd{t^{\prime}} ] \notag \\ \to \ V(t) &= \frac{1}{C}Q(t) \end{aligned}\] と書くことができる. これは, 静電容量 \( C \) を持つ単一のコンデンサについて成立する式\eqref{cspIint3b}そのものである.

以上より, \( Q=CV \) の形で直列接続の合成容量の公式 \( C = \qty( \frac{1}{C_{1}} + \frac{1}{C_{2}} + \cdots + \frac{1}{C_{n}} )^{-1} \) を用いるためには, 時刻 \( t_{0} \) における各コンデンサの蓄えている電気量が全て等しいという条件が必要であることがわかる.

脚注

脚注
1 ここで, \( t^{\prime} \) は時間積分に用いる積分変数であり, \( t \) の時間微分を意味しているわけではない.