交流

高校物理の回路分野の最後に登場し, 高校生諸君を非常に悩ませてくれる代物が交流回路である.

単振動と同じくらい, もしくはそれ以上に微積分の力を最大限に活かすことができるのだが, 微積分を封じた指導方法では教える側も心苦しい単元でもある.

まずは交流回路に抵抗素子, コンデンサ, コイルそれぞれが設置されたときの電圧と電流の関係について議論し, インピーダンス及びレジスタンス, リアクタンスという概念について述べる.

それに続いて, RLC直列回路RLC並列回路についてキルヒホッフの法則によって立式した方程式を, 微積分の力を大いにかりて式変形することで解析する.

交流を理解するために必要な各法則は随時確認していくが, 数学に不安のある人は三角関数の微分・積分および三角関数の合成について復習しておくとよい.


交流電源

交流回路とは, 電源装置の起電力が常に正であるような直流回路とは異なり, 電源装置の起電力が時間的に正負に振動しながら変化する電源装置を含んだ回路のことをあらわす.

その中でも高校物理の議論の対象となるのは, 次式のように正弦波の形で記述できる交流, 正弦波交流である. \[ V = V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} ) } \quad .\] ここで \( V_{0} \) は起電力の振幅, \( \omega \) は交流電源の角振動数, \( t \) は時間, \( \theta_{0} \) は初期位相という.

これは, \( t=0 \) における起電力が \( V_{0}\sin{\theta_{0}} \) であり, その後は時間の経過とともに正弦関数の位相[1]ここでいう位相とは正弦関数 \( \sin{( \theta )} \) の \( \theta \) をあらわす用語である.が \( \qty( \omega t + \theta_{0} ) \) と変化するのである.

直流回路との違いはこの一点に尽きるといってもよく, あとは主にキルヒホッフの法則による立式とその数学的な式変形によって交流独自の性質を導くことができる.

以下では正弦波交流電源装置に接続された回路の振る舞いについて議論する

抵抗

起電力 \( V \) が \[ V = V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} ) }\] の交流電源と抵抗のみを含んだ回路について考える.

抵抗に流れている電流を \( I \) とすれば, 抵抗で生じる電圧降下 \( V’ \) はオームの法則により, \( V’ = RI \) で与えられる.

キルヒホッフの第2法則より, (閉回路に含まれる起電力の代数和)=(閉回路で生じる電圧降下の代数和)が成立するので, \[ \begin{aligned} & V = RI \notag \\ \to \ & V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} ) }= RI \notag \\ \therefore \ & I = \frac{V_{0}}{R} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} ) } \end{aligned}\] 以上より, \[ \begin{aligned} V &= V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} ) } \\ I &= \frac{V_{0}}{R} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} ) } \end{aligned}\] という関係にあり, 時刻 \( t \) における交流電源 \( V \) の位相 \( \qty( \omega t + \theta_{0} ) \) と回路を流れる電流 \( I \) の位相 \( \qty( \omega t + \theta_{0} ) \) は同じである. したがって, 抵抗を流れる電流は供給電圧と同位相である.

コンデンサ

起電力 \( V \) が \[ V = V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} ) }\] の交流電源と静電容量 \( C \) のコンデンサのみを含んだ回路について考える.

ある時刻 \( t \) においてコンデンサに蓄えられた電荷量を \( Q \) とすれば, コンデンサで生じる電圧降下 \( V’ \) は \[ Q = CV’ \ \iff \ V’ = \frac{Q}{C}\] で与えられる.

キルヒホッフの第2法則より, \[ \begin{aligned} & V = V’\\ \to \ & V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} )} = \frac{Q}{C} \\ \to \ & Q = CV_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} )} \end{aligned}\] ここで, 電流とは電荷の流れを表す量でありその大きさは電荷の時間微分に等しく, \[ I = \dv{Q}{t}\] であることを利用して回路に流れる電流を求めよう(電流参照).

キルヒホッフの第2法則で得られた式の両辺を時間微分すると \[ \begin{aligned} \dv{Q}{t} &= \dv{t} \qty{ CV_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} )} } \\ \to I &= \omega CV_{0} \cos{\qty( \omega t + \theta_{0} )} \\ \therefore I&= \omega CV_{0} \sin{\qty{ \qty( \omega t + \theta_{0} ) + \frac{\pi}{2} }} \label{コンデンサの交流電流} \end{aligned}\] ここで最後の式変形には三角関数について成立する式 \( \cos{\theta} = \sin{\qty( \theta + \frac{\pi}{2} )} \) を用いて, 電圧の位相と電流の位相を直接比較できる形に式変形している.

以上より, \[ \begin{aligned} V &= V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} ) } \\ I &= \omega CV_{0} \sin{\qty{ \qty( \omega t + \theta_{0} ) + \frac{\pi}{2} }} \end{aligned}\] という関係にあり, 時刻 \( t \) における交流電源 \( V \) の位相 \( \qty( \omega t + \theta_{0} ) \) と回路を流れる電流 \( I \) の位相 \( \qty{ \qty( \omega t + \theta_{0} ) + \frac{\pi}{2} } \) とでは位相が異なっており, 電流の位相が起電力よりも \( \displaystyle{\frac{\pi}{2}} \) だけ電圧よりも進んでいる. したがって, コンデンサを流れる電流の位相は供給電圧に比べて \( \displaystyle{\frac{\pi}{2}} \) だけ進んでいる.

コイル

起電力 \( V \) が \[ V = V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} ) }\] の交流電源と自己インダクタンス \( L \) のコイルのみを含んだ回路について考える.

ある時刻 \( t \) において回路を流れている電流を \( I \) とすると, コイルを流れる電流の時間変化は \( \displaystyle{\dv{I}{t}} \) であり, コイルには電流の向きとは逆向きの起電力 \( V’ \) が発生し, \[ V’ = – L \dv{I}{t}\] で与えらえる.

回路に存在する起電力は交流電源とコイルであり, 電圧降下を引き起こす素子は含まれていないので, キルヒホッフの第2法則より, \[ \begin{aligned} & V + V’ = 0 \\ \to \ & V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} ) } – L\dv{I}{t} = 0 \\ \to \ & \dv{I}{t} = \frac{1}{L} V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} ) } \end{aligned}\] 電流を求めるために両辺を時間で積分すると, \[ \begin{aligned} \int \dv{I}{t}\dd{t}&= \int \frac{1}{L} V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} ) } \dd{t}\\ I &= – \frac{V_{0}}{\omega L} \cos{\qty( \omega t + \theta_{0} )} + C \ ( C = \mathrm{const.}) \\ I &= \frac{V_{0}}{\omega L} \sin{\qty{ \qty( \omega t + \theta_{0} ) – \frac{\pi}{2} }} + C \ ( \because – \cos{\theta}=\sin{\qty( \theta – \frac{\pi}{2} )} \end{aligned}\] となる. ここで \( C \) は積分定数であり, 初期条件などで決まる値である. この積分定数の存在は回路に定常的な電流が存在することを意味するが, 理想的なコイルの交流回路ではこのような電流成分は存在せず \( C=0 \) と決めてしまうのが通例である.

この妥当性について納得がいくためにはコイルと抵抗を含んだ回路における電流の式を求めた後で抵抗の存在を無視する極限を考えることで定常的な電流成分を無視することの妥当性が示されるのだが, ここではこれ以上立ち入らない.

以上より, コイルを流れる電流は積分定数を無視することで \[ \begin{aligned} V &= V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} ) } \\ I &= \frac{V_{0}}{\omega L} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} – \frac{\pi}{2} )} \end{aligned}\] という関係にあり, 時刻 \( t \) における交流電源 \( V \) の位相 \( \qty( \omega t + \theta_{0} ) \) と回路を流れる電流 \( I \) の位相 \( \displaystyle{\qty{ \qty( \omega t + \theta_{0} ) – \frac{\pi}{2} } } \) とでは位相が異なっており, 電流の位相が起電力よりも \( \displaystyle{\frac{\pi}{2}} \) だけ電圧よりも遅れている.

したがって, コイルを流れる電流の位相は供給電圧に比べて \( \displaystyle{\frac{\pi}{2}} \) だけ遅れている.

実効値

直流電流 \( I \) が抵抗値 \( R \) を持つ抵抗に流れており, 電圧降下が \( V=RI \) の場合の単位時間あたりの消費電力 \( P \) は \[ P= VI = RI^2 = \frac{V^2}{R}\] で与えられるのであった.

交流の消費電力について議論する場合, 波形や角振動数という交流特有の情報に関係なく直流の場合と直接的に比較できるような指標があれば便利である.

そこで, 抵抗 \( R \) に交流電圧 \( V=V_{0}\sin{\omega t} \) をかけて1周期( \( T \ \mathrm{s} \) )に消費する電力と, 直流電圧 \( V=V_{\mathrm{e}} \) を同じ時間 \( T \ \mathrm{s} \) だけかけて消費される電力が等しいとすると, \[ \begin{aligned} & \qty( \text{交流1周期 \( T \) の消費電力} )= \qty( \text{ \( T \) 間の直流の消費電力} ) \\ \to \ & \int_{0}^{T} \frac{\qty( V_{0}\sin{\omega t} )^2}{R} \dd{t}= \frac{V_{\mathrm{e}}^2}{R} T \\ \to \ & V_{\mathrm{e}} = \sqrt{\frac{1}{T} \int_{0}^{T} \qty( V_{0} \sin{\omega t} )^2 \dd{t}}\end{aligned}\] となる. この \( V_{\mathrm{e}} \) を交流電圧の実効値またはRMS値[2]”Root Mean Square”の略称であり”Root: \( \sqrt{} \) ”, ”Mean: \( \int_{0}^{T} f(t) \dd{t}\) ”, ”Square: \( f^{2}(t) \) ”のことを意味する.という.

つまり, 電圧の実効値 \( V_{\mathrm{e}} \) がどのような値かを知っておけば, 交流の消費電力の計算を \( V_{\mathrm{e}} \) の直流が流れていると置き換えて計算できるのである[3]もちろん, 測定時間が交流の振動周期よりも十分長いことが条件である. 瞬間瞬間ごとの交流の消費電力は当然ながら振動している..

交流が \( V=V_{0}\sin{\omega t} \) の場合の実効値 \( V_{\mathrm{e}} \) を計算しておこう. \[ \begin{aligned} V_{\mathrm{e}} &= \sqrt{\frac{1}{T} \int_{0}^{T} \qty( V_{0} \sin{\omega t} )^2 \dd{t}}\\ &= V_{0} \sqrt{\frac{1}{T} \int_{0}^{T} \sin[2]{\omega t} \dd{t}} \\ &= V_{0} \sqrt{\frac{1}{T} \int_{0}^{T} \frac{1 – \cos{2\omega t}}{2} \dd{t}} \\ &= V_{0} \sqrt{\frac{1}{2T} \qty[ t – \frac{1}{2\omega}\sin{2\omega t} ]_{0}^{T} } \\ &= V_{0} \sqrt{\frac{1}{2T} \qty[ T – \frac{1}{2\omega} \qty( \sin{2\omega T} – \sin{0} ) ] } \\ \therefore \ V_{\mathrm{e}} &= \frac{V_{0}}{\sqrt{2}} \quad .\end{aligned}\] 途中, 半角の公式 \( \displaystyle{\sin[2]{\frac{\theta}{2}}=\frac{\qty( 1 – \cos{\theta} )}{2} } \) と, 周期と角振動数について成り立つ関係式 \( \omega T = 2 \pi \) を用いた.

以上より, 交流電圧が正弦関数 \( V = V_{0}\sin{\omega t} \) で与えられている場合の抵抗 \( R \) での単位時間あたりの消費電力 \( \overline{P} \) は \[ \overline{P} = \frac{V_{\mathrm{e}}^{2}}{R} = \frac{V_{0}^{2}}{2R}\] となる. この計算結果は初期位相 \( \theta_{0} \) を含んでいても同じ値となるので各自で確認していただきたい.

全く同様の議論により, 交流電流 \( I=I_{0}\sin{\omega t} \) の実効値 \( I_{\mathrm{e}} \) を定義することができ, \[ \begin{aligned} I_{\mathrm{e}} &= \sqrt{\frac{1}{T} \int_{0}^{T} \qty( I_{0} \sin{\omega t} )^2 } \\ \to I_{\mathrm{e}} &=\frac{I_{0}}{\sqrt{2}} \quad .\end{aligned}\] したがって, 交流電流が正弦関数 \( I = I_{0}\sin{\omega t} \) で与えられている場合の抵抗 \( R \) での単位時間あたりの消費電力 \( \overline{P} \) は \[ \overline{P} = RI_{\mathrm{e}}^{2} = \frac{RI_{0}^{2}}{2}\] となる.

以上をまとめると, 交流電圧 \( V \) または交流電流 \( I \) の振幅がそれぞれ \( V_{0}, I_{0} \) の正弦曲線で与えられる場合の実効値 \( V_{\mathrm{e}}, I_{\mathrm{e}} \) は \[ V_{\mathrm{e}} = \frac{V_{0}}{\sqrt{2}} \quad , \quad I_{\mathrm{e}} = \frac{I_{0}}{\sqrt{2}}\] となる.

インピーダンス, レジスタンス, リアクタンス

回路を議論する上で重要な物理量としてインピーダンスと呼ばれるものがある. これは, 回路に存在する抵抗素子だけではなくコンデンサやコイルをについても抵抗に該当する量を考え, 抵抗の概念を拡張させた物理量のことを指す.

抵抗素子のインピーダンスの大きさをレジスタンス(抵抗), コンデンサのインピーダンスの大きさを容量性リアクタンス, コイルのインピーダンスの大きさを誘導性リアクタンスという. 容量性リアクタンスと誘導性リアクタンスはともに単にリアクタンスとも呼ばれる.

これらの用語の使い分けの必要性は, 交流(複素数表示)で紹介している複素インピーダンスと呼ばれる概念まで考えた時に初めてわかるものであるので, 興味のある方はぜひとも一読していただきたい.

各素子のインピーダンスの大きさ(レジスタンス, リアクタンス)を決めたいわけだが, 交流は時間的に変動しているので, 交流の実効値を用いて定義することで直流の場合との直接比較を可能な次の形で定義しておく. \[ \text{レジスタンス, リアクタンス} = \frac{電圧降下の実効値}{電流の実効値}\]

回路上の各要素についてレジスタンス及びリアクタンスについてすでにわかっていることをまとめると,

  • 抵抗素子のレジスタンス
    \[ \begin{aligned} R \coloneqq \frac{V_0 / \sqrt{2} }{V_0/ \qty( \sqrt{2} R )} = R \end{aligned}\]

  • コンデンサの容量性リアクタンス
    \[ \begin{aligned} X_{C} = \frac{V_{0} / \sqrt{2}}{\omega C V_{0} / \sqrt{2}} = \frac{1}{\omega C} \end{aligned}\]

  • コイルの誘導性リアクタンス
    \[ \begin{aligned} X_{L} = \frac{V_{0} / \sqrt{2}}{V_{0} / \qty( \sqrt{2} \omega L ) } = \omega L \end{aligned}\]

合成インピーダンス

以下では, 抵抗, コンデンサ, コイルを含んだ回路全体の抵抗に該当する概念である 合成インピーダンスの大きさをどのように計算するのかを紹介していく.

RLC並列回路

下図のようなRLC並列回路において, 供給する電圧を \( V=V_{0}\sin{\qty( \omega t + \theta_{0} )} \) とし, 電源装置を流れる電流を \( I \) とする. また, ある時刻 \( t \) に抵抗に流れる電流を \( I_{R} \) , コイルに流れる電流を \( I_{L} \) , コンデンサに蓄えられた電荷および流れる電流を \( Q \) , \( I_{C} \) とする.

キルヒホッフの第2法則を電源装置と各素子を含む閉回路についてそれぞれ適用すると, \[ \begin{aligned} & \left\{\begin{aligned} & V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} )} = RI_{R} \\ & V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} )} – L \dv{ I_{L}}{t}= 0 \\ & V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} )} = \frac{Q}{C} \\ \end{aligned} \right. \\ \Rightarrow \ & \left\{\begin{aligned} I_{R} &= \frac{1}{R} V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} )} \\ I_{L} &= – \frac{1}{\omega L} V_{0} \cos{\qty( \omega t + \theta_{0} )} \\ I_{C} &= \omega C V_{0} \cos{\qty( \omega t + \theta_{0} )} \end{aligned} \right. \quad . \end{aligned}\] 誘導性リアクタンス \( \displaystyle{X_{L} = \omega L} \) , 容量性リアクタンス \( \displaystyle{X_{C} = \frac{1}{\omega C}} \) を用いると, \[ \begin{aligned} I_{R} &= \frac{V_{0}}{R } \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} )} \\ I_{L} &= – \frac{V_{0}}{X_{L}} \cos{\qty( \omega t + \theta_{0} )} \\ I_{C} &= \frac{V_{0}}{X_{C}} \cos{\qty( \omega t + \theta_{0} )} \end{aligned}\] また, キルヒホッフの第1法則を適用すると, \[ I = I_{R} + I_{L} + I_{C}\] が成立するので, 途中三角関数の合成を用いて式変形を行うと \[ \begin{aligned} I &= I_{R} + I_{L} + I_{C} \\ &= \frac{V_{0}}{R} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} )} + V_{0} \qty( \frac{1}{X_{C}} – \frac{1}{X_{L}} ) \cos{\qty( \omega t + \theta_{0} )} \\ &=\sqrt{\qty( \frac{1}{R} )^2 + \qty( \frac{1}{X_{C}} – \frac{1}{X_{L} } )^2 } V_{0} \sin{\left\{\qty( \omega t + \theta_{0} ) + \gamma \right\}} \quad . \end{aligned}\] ここで \( \gamma \) は \[ \begin{aligned} \cos{\gamma} &= \frac{1/R}{\sqrt{\qty( \frac{1}{R} )^2 + \qty( \frac{1}{X_{C}} – \frac{1}{X_{L} } )^2 } }, \\ \sin{\gamma} &= \frac{1/X_{C} – 1/X_{L}}{\sqrt{\qty( \frac{1}{R} )^2 + \qty( \frac{1}{X_{C}} – \frac{1}{X_{L} } )^2 } } \end{aligned}\] を満たすような定数である.

以上より, RLC並列回路全体の(合成)インピーダンスの大きさは \[ \begin{aligned} Z &= \frac{V_{e}}{I_{e}} \\ &=\frac{1}{\sqrt{\qty( \frac{1}{R} )^2 + \qty( \frac{1}{X_{C}} – \frac{1}{X_{L} } )^2 }} \end{aligned}\] となることがわかる[4]実効値を念の為にしめしておくと. \[ \begin{aligned} V_{e} &= \frac{1}{\sqrt{2}}V_{0} \\ I_{e} &= \frac{1}{\sqrt{2}}\sqrt{\qty( \frac{1}{R} )^2 + \qty( \frac{1}{X_{C}} – … Continue reading.

RLC直列回路

下図のようなRLC直列回路において, 供給する電圧を \( V=V_{0}\sin{\omega t + \theta_{0}} \) とし, 電源装置を流れる電流を \( I \) とする. また, 抵抗とコイルでの電圧降下をそれぞれ \( V_{R} \) , \( V_{C} \) , コイルの起電力を \( V_{L} \) とする.

キルヒホッフの第2法則より, \[ \begin{gathered} V + V_{L} = V_{C} + V_{R} \notag \\ V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} ) } – L \dv{t} I = RI + \frac{Q}{C} \label{RLCの回路方程式} \end{gathered}\] ここで, やや天下り的ではあるが, \[ I(t) = I_{0} \sin{\qty( \omega t + \beta )}\] と仮定し, キルヒホッフの第2法則を満たすような条件を考える.

仮定した電流 \( I(t) \) をキルヒホッフの第2法則に代入すると, \[ V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} )} = RI_{0}\sin{\qty( \omega t + \beta )} + \omega L I_{0} \cos{\qty( \omega t + \beta )} – \frac{I_{0}}{\omega C} \cos{\qty( \omega t + \beta )}\] であり, 誘導性リアクタンス \( \displaystyle{X_{L} = \omega L} \) , 容量性リアクタンス \( \displaystyle{X_{C} = \frac{1}{\omega C}} \) および三角関数の合成を用いて式変形を行うと, \[ \begin{aligned} V_{0} & \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} )} = RI_{0}\sin{\qty( \omega t + \beta ) } + \qty( X_{L} – X_{C} ) I_{0} \cos{\qty( \omega t + \beta )} \\ & = I_{0}\sqrt{R^2 + \qty( X_{L} – X_{C} )^2 } \sin{\qty( \omega t + \beta + \gamma )} \end{aligned}\] となる. ここで \( \gamma \) は \[ \begin{aligned} \cos{\gamma} &= \frac{R}{\sqrt{R^2 + \qty( X_{L} – X_{C} )^2 } } \\ \sin{\gamma} &= \frac{\qty( X_{L} – X_{C} ) }{\sqrt{R^2 + \qty( X_{L} – X_{C} )^2 } } \end{aligned}\] をみたす定数である.

キルヒホッフの第2法則の両辺が恒等的に等しいということは両辺の位相が揃っている必要があり, \[ \theta_{0} = \beta + \gamma\] が必要となる. したがって, はじめに仮定した時に導入した未知定数 \( \beta \) \( \beta = \theta_{0} – \gamma \) を満たせばキルヒホッフの第2法則を満たすことがわかる.

結局, \[ V_{0} \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} )} = I_{0}\sqrt{R^2 + \qty( \omega L – \frac{1}{\omega C} )^2 } \sin{\qty( \omega t + \theta_{0} )}\] という結論が得られ, RLC直列回路全体の(合成)インピーダンスの大きさは \[ \begin{aligned} Z &= \frac{V_{e}}{I_{e}} \\ &= \sqrt{R^2 + \qty( \omega L – \frac{1}{\omega C} )^2 } \end{aligned}\] となることがわかる[5]実効値を念の為にしめしておくと. \[ \begin{aligned} V_{e} &= \frac{1}{\sqrt{2}}V_{0} \\ I_{e} &= \frac{1}{\sqrt{2}}\frac{1}{\sqrt{\qty( \frac{1}{R} )^2 + \qty( \frac{1}{X_{C}} … Continue reading.

交流の消費電力

周期 \( T \) が同じで位相が一致していないような一般的な位相を持つ交流電圧 \( V = V_{0}\cos{\qty( \omega t + \theta_{v} )} \) , 交流電流 \( I = I_{0}\cos{\qty( \omega t + \theta_{i} )} \) が流れている回路の消費電力は一周期の間の平均電力を計算すればよく, \[ \begin{aligned} \overline{P} &= \frac{1}{T} \int_{0}^{T} I_{0} V_{0} \cos{\qty( \omega t + \theta_{i} )} \cos{\qty( \omega t + \theta_{v} )} \dd{t}\\ &= \frac{1}{T} \int_{0}^{T} \frac{I_{0} V_{0}}{2} \left\{\cos{\qty( 2\omega t + \theta_{i} + \theta_{v} )} + \cos{\qty( \theta_{i} – \theta_{v} )} \right\} \dd{t}\\ &= \frac{1}{T} \frac{I_{0} V_{0}}{2} \qty[ \frac{1}{2}\sin{\qty( 2\omega t + \theta_{i} + \theta_{v} )} + t \cos{\qty( \theta_{i} – \theta_{v} )} ]_{0}^{T} \\ &= \frac{I_{0} V_{0}}{2} \cos{\qty( \theta_{i} – \theta_{v} )}\end{aligned}\] となる.

したがって, 電力を知るためには電流の電圧の位相差 \( \qty( \theta_{i} – \theta_{v} ) \) を知れば良いことになる. 素子が一つだけの回路については次のようにまとめることが出来る.

  1. 抵抗のみを含んだ回路では \( \qty( \theta_{i} – \theta_{v} )=0 \) より, \( \displaystyle{P = I_{0} V_{0} = I_{\mathrm{e}} V_{\mathrm{e}}} \) .

  2. コンデンサのみを含んだ回路では \( \displaystyle{\qty( \theta_{i} – \theta_{v} )=\frac{\pi}{2} } \) より, \( P=0 \)

  3. コイルのみを含んだ回路では \( \displaystyle{\qty( \theta_{i} – \theta_{v} )= – \frac{\pi}{2} } \) より, \( P=0 \)

以上の計算からわかるように, コイルとコンデンサの平均消費電力はゼロとなる.

抵抗素子のなかでは電子の流れを物理的に妨げている結果として熱が発生して電力の消費が発生しているが, 理想的なコイルやコンデンサでは電子の運動が妨げられずに運動しており, 熱を発していないと考えることができる. 回路のエネルギーを考えるとコイルやコンデンサにエネルギーが蓄えられると考えることができるのだが, 蓄えられたエネルギーは消費されずにそのまま回路に還元されることになる.

脚注

脚注
1 ここでいう位相とは正弦関数 \( \sin{( \theta )} \) の \( \theta \) をあらわす用語である.
2 ”Root Mean Square”の略称であり”Root: \( \sqrt{} \) ”, ”Mean: \( \int_{0}^{T} f(t) \dd{t}\) ”, ”Square: \( f^{2}(t) \) ”のことを意味する.
3 もちろん, 測定時間が交流の振動周期よりも十分長いことが条件である. 瞬間瞬間ごとの交流の消費電力は当然ながら振動している.
4 実効値を念の為にしめしておくと. \[ \begin{aligned} V_{e} &= \frac{1}{\sqrt{2}}V_{0} \\ I_{e} &= \frac{1}{\sqrt{2}}\sqrt{\qty( \frac{1}{R} )^2 + \qty( \frac{1}{X_{C}} – \frac{1}{X_{L} } )^2 }V_{0} \end{aligned}\] である.
5 実効値を念の為にしめしておくと. \[ \begin{aligned} V_{e} &= \frac{1}{\sqrt{2}}V_{0} \\ I_{e} &= \frac{1}{\sqrt{2}}\frac{1}{\sqrt{\qty( \frac{1}{R} )^2 + \qty( \frac{1}{X_{C}} – \frac{1}{X_{L} } )^2 }}V_{0} \end{aligned}\] である.