変数係数を持つ2階線形非同次微分方程式 — 変数係数2階線形非同次微分方程式 – – \[\dv[2]{y}{x} + P(x) \dv{y}{x} + Q(x) y = R(x) \notag\] を一般的に解く方法というのは知られていない. しかしながら, いくつかの状況が整った場合には一般解を求めることができる. 以下では, その状況と一般解について紹介しておこう.
なお, これから議論する内容は定数係数2階線形非同次微分方程式の一般解で紹介した内容と重なる部分が多いので, その部分の説明は多少簡略化して示すことにする.
解の構造
2階線形非同次微分方程式の解の構造で議論したとおり, 2階線形非同次微分方程式 \[\dv[2]{y}{x} + P(x) \dv{y}{x} + Q(x) y = R(x) \label{2ndnl1}\] の一般解は, \( y_{1} \) , \( y_{2} \) を基本解に持つ式\eqref{2ndnl1}の同伴方程式 \[\dv[2]{y}{x} + P(x) \dv{y}{x} + Q(x) y = 0 \label{2ndnl1sub}\] の一般解(=余関数) \[C_{1}y_{1} + C_{2} y_{2} \qq{ \( C_{1}, C_{2} \) は任意定数} \notag\] と式\eqref{2ndnl1}の特殊解 \( Y \) との和 \[y = \left\{C_{1} y_{1} + C_{2} y_{2} \right\} + Y \notag\] で与えられる.
変数係数2階線形同次微分方程式の基本解の類推
変数係数2階線形同次微分方程式 \[\dv[2]{y}{x} + P(x) \dv{y}{x} + Q(x) y = 0 \label{2ndnlruisui}\] において, \( P(x) \) , \( Q(x) \) が次表の1列目に示すような関係にあるとき, 式\eqref{2ndnlruisui}を満たす基本解の一つ \( y_{1} \) は次表の2列目のように与えられることが知られている. これらの関係が成立することは, 2列目の関数 \( y_{1} \) を式\eqref{2ndnlruisui}に代入することで確かめることができる.
\( P \) , \( Q \) の条件 | 基本解の一つ |
\( P+xQ=0 \) | \( y_{1}=x \) |
\( 1+P+Q=0 \) | \( y_{1}=e^{x} \) |
\( 1-P+xQ=0 \) | \( y_{1}=e^{-x} \) |
\( \lambda^{2}+ \lambda P+Q=0 \) | \( y_{1}=e^{\lambda x} \) |
\( \lambda\qty( \lambda -1 )+ \lambda x P+x^{2}Q=0 \) | \( y_{1}=x^{\lambda} \) |
変数係数2階線形同次微分方程式の一般的な解法は存在しないが, 上記の表に示したような事実を用いることで解ける問題の種類は少し増えることになる.
変数係数2階線形同次微分方程式
変数係数2階線形同次微分方程式 \[\dv[2]{y}{x} + P(x) \dv{y}{x} + Q(x) y = 0 \label{2ndnl1v4douhan}\] の基本解の一つが \( y_{1} \) であることがわかっているとき, もう一方の基本解を求める方法を紹介する.
式\eqref{2ndnl1v4douhan}の解 \( y_{1} \) と未知関数 \( w(x) \) をもちいた関数 \[y = w y_{1} \label{2ndnl1v4yosou}\] を考え, 式\eqref{2ndnl1v4douhan}を満たすような関数 \( w(x) \) を定めることを目標にする.
式\eqref{2ndnl1v4yosou}の導関数 \[\begin{aligned} y^{\prime} &= w^{\prime}y_{1} + wy^{\prime}_{1} \notag \\ y^{\prime \prime} &= w^{\prime \prime}y_{1} + 2 w^{\prime} y^{\prime}_{1} + w y^{\prime \prime}_{1} \notag \end{aligned}\] を式\eqref{2ndnl1v4douhan}に代入し, \( y_{1} \) が \[y_{1}^{\prime \prime }+ P(x) y_{1}^{\prime} + Q(x) y_{1} = 0 \notag\] を満たすことを利用すると, \[\begin{align} \to \ & \left\{w^{\prime \prime}y_{1} + 2 w^{\prime} y^{\prime}_{1} + w y^{\prime \prime}_{1} \right\} + P(x) \left\{w^{\prime}y_{1} + wy^{\prime}_{1} \right\} + Q(x) w y_{1} \notag \\ & = w \left\{y^{\prime \prime}_{1} + P(x) y^{\prime}_{1} + Q(x) y_{1} \right\} +y_{1} w^{\prime \prime} + \qty( 2y^{\prime}_{1} + P(x) y_{1} ) w^{\prime} \notag \\ & = y_{1} w^{\prime \prime} + \qty( 2y^{\prime}_{1} + P(x) y_{1} ) w^{\prime} \notag \\ & = 0 \notag \\ \therefore \ & w^{\prime \prime} + \qty( \frac{2y^{\prime}_{1} + P(x) y_{1}}{y_{1}} ) w^{\prime} = 0 \quad . \label{2ndnl1v4w} \end{align}\] ここで, \[P_{0}(x) \coloneqq \frac{2y^{\prime}_{1} + a y_{1}}{y_{1}} \notag\] と定義することで, 式\eqref{2ndnl1v4w}は \( w^{\prime} \) についての微分方程式 \[\dv{x} w^{\prime} + P_{0}(x) w^{\prime} = 0 \quad . \notag\] であることがわかる. 変数分離形や完全微分形の知識を用いると, \( w^{\prime} \) の一般解は \[\begin{aligned} w^{\prime} &= C_{1} e^{ – \int P_{0} \dd{x} } \notag \\ &= C_{1} e^{ – \int \qty( \frac{2y^{\prime}_{1} + P(x) y_{1}}{y_{1}} ) \dd{x} } \notag \\ &= C_{1} e^{- 2 \int \qty( \frac{y^{\prime}_{1} }{y_{1}} ) \dd{x} } e^{ – \int P(x) \dd{x} } \notag \\ &= C_{1} e^{- 2 \log_{e}{y_{1}}} e^{ – \int P(x) \dd{x} } \notag \\ &= C_{1} \frac{1}{y_{1}^{2}} e^{ – \int P(x) \dd{x} } \notag \end{aligned}\] となる. さらに \( x \) で積分することで \( w(x) \) が \[w = C_{1} \int \qty( \frac{1}{y_{1}^{2}} e^{ – \int P(x) \dd{x} } ) \dd{x} + C_{2} \notag\] と定まり, 同伴方程式(式\eqref{2ndnl1v4douhan})のもう一方の基本解を \[\begin{aligned} y_{2} &= wy_{1} \notag \\ &= C_{1} \int \qty( \frac{1}{y_{1}^{2}} e^{ – \int P(x) \dd{x} } ) \dd{x} y_{1} + C_{2}y_{1} \notag \end{aligned}\] と書くことができた. ただし, \( y_{1} \) と \( y_{2} \) が2階微分方程式の一次独立な基本解であるためにはロンスキアン \( W(y_{1}, y_{2}) \) がゼロでないことを確かめておかなくてはならない(2階線形同次微分方程式の解の構造). 実際にロンスキアンを計算すると, \[\begin{aligned} W(y_{1}, y_{2}) &= W(y_{1}, w y_{1}) \notag \\ &= y_{1} \cdot \qty( w^{\prime}y_{1} + w y_{1}^{\prime} ) – w y_{1} \cdot y_{1}^{\prime} \notag \\ &= w^{\prime} y_{1}^{2} \neq 0 \notag \end{aligned}\] \[\therefore \ w^{\prime} = C_{1} \frac{1}{y_{1}^{2}} e^{ – \int P(x) \dd{x} } \neq 0\] より, 任意定数 \( C_{1} \) を \( C_{1}\neq 0 \) とすることによって, \( y_{1} \) と \( y_{2} \) は式\eqref{2ndnl1v4douhan})の一次独立な基本解となることがわかる.
変数係数2階線形非同次微分方程式
変数係数2階線形非同次微分方程式 \[\dv[2]{y}{x} + P(x) \dv{y}{x} + Q(x) y = R(x) \label{2ndnl1v2}\] の同伴方程式 \[\dv[2]{y}{x} + P(x) \dv{y}{x} + Q(x) y = 0 \label{2ndnl1v2douhan}\] の二つの基本解 \( y_{1} \) , \( y_{2} \) がわかっているとき, 式\eqref{2ndnl1v2}を満たすような解を定数変化法を用いて求めよう.
関数 \( Y \) を式\eqref{2ndnl1v2douhan}の(一次独立な)基本解 \( y_{1} \) , \( y_{2} \) および未知関数 \( u(x) \) , \( v(x) \) をもちいて, \[Y = u(x)y_{1} + v(x) y_{2} \notag\] とする. \( Y \) の導関数は, \[\begin{aligned} Y^{\prime} &= u y_{1}^{\prime} + v y_{2}^{\prime} + \qty( u^{\prime} y_{1} + v^{\prime} y_{2} ) \notag \\ Y^{\prime \prime} &= u y_{1}^{\prime \prime} + v y_{2}^{\prime \prime} + u^{\prime} y_{1}^{\prime} + v^{\prime} y_{2}^{\prime} + \dv{x} \qty( u^{\prime} y_{1} + v^{\prime} y_{2} ) \notag \end{aligned}\] であるが, \( u \) と \( v \) に対して \[u^{\prime} y_{1} + v^{\prime} y_{2} = 0 \notag\] という新しい制約条件を課すと, \( Y^{\prime} \) , \( Y^{\prime\prime} \) は \[\begin{aligned} Y^{\prime} &= u y_{1}^{\prime} + v y_{2}^{\prime} \notag \\ Y^{\prime \prime} &= u y_{1}^{\prime \prime} + v y_{2}^{\prime \prime} + u^{\prime} y_{1}^{\prime} + v^{\prime} y_{2}^{\prime} \notag \end{aligned}\] と書くことが出来る.
以上の \( Y \) , \( Y^{\prime} \) , \( Y^{\prime \prime} \) を式\eqref{2ndnl1v2}に代入し, \( y_{1} \) , \( y_{2} \) が \[\left\{\begin{aligned} & y^{\prime \prime}_{1} + P(x) y^{\prime}_{1} + Q(x) y_{1} = 0 \notag \\ & y^{\prime \prime}_{2} + P(x) y^{\prime}_{2} + Q(x) y_{2} = 0 \notag \end{aligned} \right. \notag\] を満たすことをもちいると, \[\begin{aligned} & Y^{\prime \prime} + P(x) Y^{\prime} + Q(x) Y = R(x) \notag \\ \to & \ u y_{1}^{\prime \prime} + v y_{2}^{\prime \prime} + u^{\prime} y_{1}^{\prime} + v^{\prime} y_{2}^{\prime} \notag \\ & \quad + P(x) \left\{u y_{1}^{\prime} + v y_{2}^{\prime} \right\} + Q(x) \left\{u y_{1} + v y_{2} \right\} \notag \\ & = u \left\{y_{1}^{\prime \prime} + P(x) y_{1}^{\prime} + Q(x) y_{1} \right\} \notag \\ & \quad + v \left\{y_{2}^{\prime \prime} + P(x) y_{2}^{\prime} + Q(x) y_{2} \right\} \notag \\ & \quad + u^{\prime} y_{1}^{\prime} + v^{\prime} y_{2}^{\prime} \notag \\ & = u^{\prime} y_{1}^{\prime} + v^{\prime} y_{2}^{\prime} = R(x) \quad . \notag \end{aligned}\] 以上より, \( u \) , \( v \) が次の二つの条件 \[\left\{\begin{aligned} u^{\prime} y_{1} + v^{\prime} y_{2} & = 0 \notag \\ u^{\prime} y_{1}^{\prime} + v^{\prime} y_{2}^{\prime} & = R(x) \notag \end{aligned} \right.\] を満たすように定めればよい. そこで, この二式を \( u^{\prime} \) , \( v^{\prime} \) についての連立方程式とみなして解き, さらに積分することで \( u \) , \( v \) を求めよう. なお, \( y_{1} \) , \( y_{2} \) は2階線形同次微分方程式の一次独立な解であることから, ロンスキアン \[W(y_{1}, y_{2}) = y_{1} y^{\prime}_{2} – y_{2} y^{\prime}_{1} \notag\] がゼロではないので, \[\left\{\begin{aligned} u^{\prime} &= – \frac{y_{2}}{y_{1}y^{\prime}_{2} – y_{2}y^{\prime}_{1} } R = – \frac{y_{2}}{W(y_{1}, y_{2})}R(x) \notag \\ v^{\prime} &= \frac{y_{1}}{y_{1}y^{\prime}_{2} – y_{2}y^{\prime}_{1} } R = \frac{y_{1}}{W(y_{1}, y_{2})}R(x) \end{aligned} \right. \quad .\] 最後に両辺を \( x \) で積分することで次式のように, \( u \) , \( v \) を求めることができる. \[\therefore \ \left\{\begin{aligned} u &= – \int \frac{y_{2}}{W(y_{1}, y_{2})}R(x) \dd{x} \notag \\ v &= \int \frac{y_{1}}{W(y_{1}, y_{2})}R(x) \dd{x} \end{aligned} \right. \quad .\] 以上より, 微分方程式 \[\dv[2]{y}{x} + P(x) \dv{y}{x} + Q(x) y = R(x) \label{2ndnl1v3}\] の特殊解 \( Y \) は式\eqref{2ndnl1v3}の同伴方程式の二つの基本解 \( y_{1} \) , \( y_{2} \) をもちいて, \[Y = \left\{ – \int \frac{y_{2}}{W(y_{1}, y_{2})}R(x) \dd{x} \right\}y_{1} + \left\{\int \frac{y_{1}}{W(y_{1}, y_{2})}R(x) \dd{x} \right\}y_{2} \notag\] と表すことが出来るので, 式\eqref{2ndnl1v3}の一般解は \[\begin{aligned} y &= Y + C_{1} y_{1} + C_{2} y_{2} \qq{ \( C_{1}, C_{2} \) は任意定数} \notag \\ &= C_{1} y_{1} + C_{2} y_{2} + \left\{ – \int \frac{y_{2}}{W(y_{1}, y_{2})}R(x) \dd{x} \right\}y_{1} + \left\{\int \frac{y_{1}}{W(y_{1}, y_{2})}R(x) \dd{x} \right\}y_{2} \notag \end{aligned}\] で与えられる. なお, 任意定数 \( C_{1} \) , \( C_{2} \) は \( Y \) に含まれる二つの不定積分を実行することで出現する積分定数であると考えてもよい.