2階線形微分方程式 \[\dv[2]{y}{x} + P(x) \dv{y}{x} + Q(x) y = R(x) \notag\] は変数変換を行うことによって1階導関数を含まないような微分方程式に変形することができ, 2階線形微分方程式の標準形と呼ばれる.
与えられた微分方程式を標準形の微分方程式に焼きなおすことによって, 問題解決の難易度が下がることになる.
2階線形微分方程式 \[\dv[2]{y}{x} + P(x) \dv{y}{x} + Q(x) y = R(x) \label{2ndcano1}\] において, 関数 \( y \) がゼロでない未知関数 \( u(x) \) と \( y_{0}(x) \) の積 \[y(x) = u(x) y_{0}(x) \notag\] であらわされるとする. このとき, \( y \) の導関数等は \[\begin{aligned} y^{\prime} &= u^{\prime} y_{0} + u y_{0}^{\prime} \notag \\ y^{\prime \prime} &= u^{\prime \prime} y_{0} + 2 u^{\prime} y_{0}^{\prime} + u y_{0}^{\prime \prime} \notag \end{aligned}\] で与えられる. これらの導関数を元の式\eqref{2ndcano1}に代入すると, \[\begin{aligned} & \left\{u^{\prime \prime} y_{0} + 2 u^{\prime} y_{0}^{\prime} + u y_{0}^{\prime \prime} \right\} + P(x) \left\{u^{\prime} y_{0} + u y_{0}^{\prime} \right\} + Q(x) \left\{u y_{0} \right\} = R(x) \notag \\ \to \ & u y_{0}^{\prime \prime} + \left\{2 u^{\prime} + P(x) u \right\} y_{0}^{\prime} + \left\{u^{\prime \prime} + P(x) u^{\prime} + Q(x) u \right\} y_{0} = R(x) \notag \\ \to \ & y_{0}^{\prime \prime} + \left\{2 \frac{u^{\prime} }{u } + P(x) \right\} y_{0}^{\prime} + \left\{\frac{u^{\prime \prime} }{u } + P(x) \frac{u^{\prime} }{u }+ Q(x) \right\} y_{0}(x) = \frac{R(x)}{u} \quad . \notag \end{aligned}\] ここで, \( y_{0}^{\prime} \) の係数部分がゼロとなるような条件 \[2 \frac{u^{\prime}}{u} + P(x) = 0 \ \iff \ \frac{u^{\prime}}{u} = – \frac{P(x)}{2} \label{2ndcanou1}\] を \( u \) に対して課すことにしよう. 式\eqref{2ndcanou1}は \( u \) についての微分方程式であり, 変数分離形となっているので, \( u \) の一般解は \[\begin{aligned} \frac{1}{u}\dv{u}{x} &= – \frac{P(x)}{2} \\ \to \ u &= C e^{ – \int \frac{P(x)}{2} \dd{x} } \quad \qty( \text{\( C \) は任意定数} ) \notag \end{aligned}\] と書くことができる. この条件(式\eqref{2ndcanou1})を元の微分方程式(式\eqref{2ndcano1})に適用することで \[\begin{aligned} y_{0}^{\prime \prime} + \left\{\frac{u^{\prime \prime} }{u } + P(x) \frac{u^{\prime} }{u }+ Q(x) \right\} y_{0}(x) = \frac{R(x)}{u} \notag \end{aligned}\] となる. なお, \( \frac{u^{\prime \prime} }{u } \) は, \[\begin{align} \dv{x}\qty( \frac{u^{\prime}}{u} ) &= \frac{u^{\prime \prime}u – \left\{u^{\prime}\right\}^{2}}{u^{2}} \notag \\ \to \frac{u^{\prime \prime}}{u} &= \dv{x}\qty( \frac{u^{\prime}}{u} ) + \qty( \frac{u^{\prime}}{u} )^{2} \notag \\ \therefore \frac{u^{\prime \prime}}{u} &= – \frac{P^{\prime}(x)}{2} + \frac{P^{2}(x)}{4} \label{2ndcanou2} \end{align}\] と書くことができるので, 式\eqref{2ndcanou1}と式\eqref{2ndcanou2}を式\eqref{2ndcano1}に代入すると, \[y_{0}^{\prime \prime} + \left\{Q(x) – \frac{P^{\prime}(x)}{2} – \frac{P^{2}(x)}{4} \right\}y_{0} = \frac{R(x)}{u} \notag\] を得る. さらに, \[\left\{\begin{aligned} I(x) & \coloneqq Q(x) – \frac{P^{\prime}(x)}{2} – \frac{P^{2}(x)}{4} \notag \\ J(x) & \coloneqq \frac{R(x)}{u(x)} \end{aligned} \right.\] とでも定義すれば, \[\dv[2]{y_{0}}{x} + I(x) y_{0} = J(x) \label{2ndcanoy0}\] といった具合に, 1階微分の項が消去された微分方程式へと変形できる. このような微分方程式を標準形という.
式\eqref{2ndcanoy0}は与式(式\eqref{2ndcano1})に比べると一般解を見つけやすい形になっており, 実際に \( y_{0} \) が見つかったならば微分方程式\eqref{2ndcano1}の解は \[y = u y_{0} = C e^{ – \int \frac{P(x)}{2} \dd{x} } y_{0}(x) \notag\] であることがわかる.