1階線形(非同次)微分方程式 \[\dv{y}{x} + P(x) y = Q(x) \label{ichikaisenkei}\] の一般解について考えよう.
ただし, この微分方程式をはじめから一般的に解くことは難しいので, まずは \( Q(x)=0 \) とした1階線形同次微分方程式 \[\dv{y}{x} + P(x) y = 0 \label{ichikaisenkeidouji}\] の解について考え, その解に補正を加える事で式\eqref{ichikaisenkei}の解を得る定数変化法と呼ばれる方法をとることにする.
なお, 式\eqref{ichikaisenkeidouji}は式\eqref{ichikaisenkei}の同伴方程式と呼ばれる.
1階線形同次微分方程式の解
1階線形同次微分方程式 \[\dv{y}{x} + P(x) y = 0 \label{ichikaisenkeidouji2}\] について考えよう.
式\eqref{ichikaisenkeidouji2}は変数分離形の微分方程式となっているので, \( y \neq 0 \) とすると, \[\begin{aligned} & \dv{y}{x} + P(x) y = 0 \notag \\ \to \ & \frac{1}{y}\dv{y}{x} = – P(x) \notag \end{aligned}\] ここで, 両辺を \( x \) で積分すると, \[\begin{aligned} \to \ & \int \frac{1}{y}\dv{y}{x} \dd{x} = – \int P(x) \dd{x} \notag \\ \to \ & \int \frac{1}{y} \dd{y} = – \int P(x) \dd{x} \notag \\ \to \ & \log_{e}{\abs{y } } = – \int P(x) \dd{x} + C_{1} \qq{ \( C_{1} \) は積分定数} \notag \\ \to \ & \abs{y } = e^{ – \int P(x) \dd{x} + C_{1} } \notag \\ \to \ & y = \pm e^{C_{1} } e^{ – \int P(x) \dd{x} } \quad . \notag \end{aligned}\] ここで, \( \pm e^{C_{1} } \) をあらためて定数 \( C \) とおくと, 1階線形同次微分方程式(式\eqref{ichikaisenkeidouji2})の解として, \[y = C e^{ – \int P(x) \dd{x} } \label{ichikaisenkeidouji2a}\] が得られる.
また, \( y=0 \) は式\eqref{ichikaisenkeidouji2}を満たすことが明らかであり, これは式\eqref{ichikaisenkeidouji2a}において \( C=0 \) としたときに得られる解とみなすことができるので, これらもまとめて1階線形同次微分方程式 \[\dv{y}{x} + P(x) y = 0 \notag\] の一般解は \[y = C e^{ – \int P(x) \dd{x} }\] とあらわされることがわかる.
1階線形微分方程式の解
1階線形(非同次)微分方程式 \[\dv{y}{x} + P(x) y = Q(x) \label{ichikaisenkeiv2}\] の同伴方程式 \[\dv{y}{x} + P(x) y = 0 \label{ichikaisenkeiv2douhan}\] の一般解がわかったいま, 目的の式\eqref{ichikaisenkeiv2}の解を調べることを考えよう.
いまから議論する内容は, 式\eqref{ichikaisenkeiv2}が式\eqref{ichikaisenkeiv2douhan}と異なり \( Q(x) \neq 0 \) であるので, 式\eqref{ichikaisenkeiv2douhan}の一般解 \[y = C e^{ – \int P(x) \dd{x} } \label{ichikaisenkeiv2douhankai}\] に対して補正を加える事で式\eqref{ichikaisenkeiv2}の解を調べようというもので, 定数変化法と呼ばれる.
そこで, 式\eqref{ichikaisenkeiv2douhankai}に含まれる定数 \( C \) を未知の関数 \( u(x) \) に置き換えて \[y = u(x) e^{ – \int P(x) \dd{x} } \label{ichikaisenkeiv2kaisub}\] としてみて, 式\eqref{ichikaisenkeiv2}を満たすような \( u(x) \) が見つかればよいのである[1]ダメだったら諦めて別の手法で探さなくてはならないのだが, 幸いなことにうまくいく..
式\eqref{ichikaisenkeiv2kaisub}を \( x \) で微分すると, \[\begin{aligned} y^{\prime} & = u^{\prime}(x) e^{ – \int P(x) \dd{x} } + u(x) \dv{x}\qty( – \int P(x) \dd{x} ) e^{ – \int P(x) \dd{x} } \notag \\ & = u^{\prime}(x) e^{ – \int P(x) \dd{x} } – u(x) P(x) e^{ – \int P(x) \dd{x} } \notag \\ & = u^{\prime}(x) e^{ – \int P(x) \dd{x} } – P(x) y \notag \end{aligned}\] この \( y^{\prime} \) を微分方程式\eqref{ichikaisenkeidouji2}に代入すると, \[\begin{aligned} & \left\{u^{\prime}(x) e^{ – \int P(x) \dd{x} } – P(x) y \right\} + P(x) y = Q(x) \notag \\ \to \ & u^{\prime}(x) e^{ – \int P(x) \dd{x} } = Q(x) \notag \\ \to \ & u^{\prime}(x) = Q(x) e^{\int P(x) \dd{x} } \notag \end{aligned}\] となる. 両辺を \( x \) で積分すると, \[\begin{aligned} & u^{\prime}(x) = Q(x) e^{\int P(x) \dd{x} } \notag \\ \to \ & \int u^{\prime}(x) \dd{x}= \int \qty( Q(x) e^{\int P(x) \dd{x} } ) \dd{x}\notag \\ \to \ & u(x) = \int \qty( Q(x) e^{\int P(x) \dd{x} } ) \dd{x}+ C_{1} \qq{ \( C_{1} \) は任意定数}\notag \end{aligned}\] となる.
この \( u(x) \) を式\eqref{ichikaisenkeiv2kaisub}に代入することで, \[y = e^{ – \int P(x) \dd{x} } \left\{\int \qty( Q(x) e^{\int P(x) \dd{x} } ) \dd{x}+ C_{1} \right\}\] が得られる.
この式には既に \( y \) の導関数も未知関数も含まれていないので, 1階線形微分方程式が解けたことになり, 上式が一般解の公式として得られる.
一つの特殊解がわかっている場合
1階線形(非同次)微分方程式 \[\dv{y}{x} + P(x) y = Q(x) \label{ichikaisenkeiv3}\] を満たす特殊解が一つがわかっているとしよう. すなわち, ある関数 \( y_{1} \) が \[\dv{y_{1}}{x} + P(x) y_{1} = Q(x) \label{ichikaisenkeiv3tokushu1}\] を満たすことがわかっているとする.
ここで, 式\eqref{ichikaisenkeiv3}の一般解が未知関数 \( z(x) \) と特殊解 \( y_{1} \) を用いて \[y = y_{1} + z \label{ichikaisenkeiv3katei}\] とかけると仮定し, 式\eqref{ichikaisenkeiv3}を満たすような \( z \) を探すことにしよう.
式\eqref{ichikaisenkeiv3katei}を式\eqref{ichikaisenkeiv3}に代入すると, \[\begin{aligned} & \dv{x} \qty( y_{1} + z ) + P(x) \qty( y_{1} + z ) = Q(x) \notag \\ \to & \left\{\dv{y_{1}}{x} + P(x) y_{1} – Q(x) \right\} + \dv{z}{x} + P(x) z = 0 \notag \\ \underbrace{\to}_{\textbf{式\ref{ichikaisenkeiv3tokushu1}}} \ & \dv{z}{x} + P(x) z = 0 \notag\end{aligned}\] となるのでこの式を満たすような \( z \) を求めればよいことになる. この式は変数分離形の微分方程式であるので, \[\begin{aligned} & \dv{z}{x} + P(x) z = 0 \notag \\ & \frac{1}{z} \dd{z} = – P(x) \dd{x} \notag \\ & \int \frac{1}{z} \dd{z} = – \int P(x) \dd{x} \notag \\ & \log_{e}{\abs{z }}= – \int P(x) \dd{x} + C_{1} \qq{ \( C_{1} \) は任意定数} \notag \\ & z = \pm e^{C_{1}} e^{ – \int P(x) \dd{x} } \notag \\ & z = C e^{ – \int P(x) \dd{x} } \qq{ \( C \) は任意定数} \notag \quad .\end{aligned}\] 以上より, 1階線形微分方程式 \[\dv{y}{x} + P(x) y = Q(x) \notag\] の特殊解の一つ \( y_{1} \) が分かっていれば, \[y = y_{1} + C e^{ – \int P(x) \dd{x} } \qq{ \( C \) は任意定数} \notag\] が一般解であることがわかる.
二つの特殊解がわかっている場合
1階線形(非同次)微分方程式 \[\dv{y}{x} + P(x) y = Q(x) \label{ichikaisenkeiv4}\] を満たす特殊解が二つわかっているとしよう. すなわち, ある関数 \( y_{1} \) , \( y_{2} \) が \[\begin{aligned} & \dv{y_{1}}{x} + P(x) y_{1} = Q(x) \notag \\ & \dv{y_{2}}{x} + P(x) y_{2} = Q(x) \notag \end{aligned}\] を満たしているとしよう. この二式からはすぐさま \[\dv{x} \left\{C\qty( y_{2} – y_{1} ) \right\} + P(x) \left\{C\qty( y_{2} – y_{1} ) \right\} = 0 \qq{ \( C \) は任意定数} \label{ichikaisenkeiv4sa}\] が成立していることわかる.
さらに, 式\eqref{ichikaisenkeiv4}の一般解が未知関数 \( z(x) \) と特殊解 \( y_{1} \) (もしくは \( y_{2} \) )を用いて \[y = y_{1} + z \label{ichikaisenkeiv4katei}\] とかけると仮定し, 式\eqref{ichikaisenkeiv4}を満たすような \( z \) を探すことにしよう.
式\eqref{ichikaisenkeiv4katei}を式\eqref{ichikaisenkeiv4}に代入すると, \[\begin{aligned} & \dv{x} \qty( y_{1} + z ) + P(x) \qty( y_{1} + z ) = Q(x) \notag \\ \to \ & \dv{z}{x} + P(x) z = 0 \notag \end{aligned}\] となるのでこの式を満たすような \( z \) を求めればよいことになる. このような \( z \) として, \( \left\{C\qty( y_{2} – y_{1} ) \right\} \) が存在することは式\eqref{ichikaisenkeiv4sa}で示されているので, 結局 \[y = y_{1} + C\qty( y_{2} – y_{1} ) \qq{ \( C \) は任意定数} \notag\] が式\eqref{ichikaisenkeiv4}を満たす一般解であることがわかる.
脚注
⇡1 | ダメだったら諦めて別の手法で探さなくてはならないのだが, 幸いなことにうまくいく. |
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