以前, ニュートリノが存在すればβ崩壊の謎が解けることについて紹介しました. (ニュートリノ(1))
もちろん, なんの後ろ盾もなかったわけではなく, 理論的にもその存在は強く示唆されていました.
ニュートリノの実験的な観測は小柴さん率いる実験チームによってなされました. (ノーベル賞HP:小柴先生)
素粒子園
ここでは, 素粒子物理学におけるニュートリノという粒子の立ち位置について紹介しようと思います.
今日までに確立された素粒子の世界には登場人物(粒子)がたくさんいます.
ここでいう素粒子とは, “内部構造がないと考えられている粒子“という意味です.
では, “素”粒子なのにたくさんの種類があるのはどうしてなのか, はもっともな疑問ですが, まだ人類の誰も知りません。
もしかしたら, “現在知られている素粒子と考えられているモノ達”は”真の素粒子”の異なる見え方かもしれません. または, 実は内部構造があるのかもしれません. など, 理論的には様々な予言がなされていますが, 実験的にわかっている素粒子達は下図のように17種類います. (図はWikipediaより拝借)
これら17種類の素粒子と3つの力について整理された考えを標準模型と言います.
フェルミオンと呼ばれている粒子は, 全く同じ状態の粒子が同一の場所にいることが出来ないという性質をもっています.
私達や身の回りの物質を形作っている役割もあるので, 物質粒子などといわれることもあります.
たとえば, フェルミオンの中のクォークの中のuクォークとdクォークが陽子と中性子を形成しています. これにフェルミオンの中のレプトンの中の電子が束縛された状況がいわゆる原子であるといった具合です.
ボソンと呼ばれる粒子は, フェルミオンとは違い全く同じ状態の粒子でも同一の場所に重なって存在することができるという性質をもっています.
ボソンに詳しく触れることは別の機会にしますが, 私達が”力を加える(加えられる)”という現象を, 素粒子物理学では”(ゲージ)ボソンをやり取りしている“と解釈します.
電磁気力は光子, 強い力はグルーオン, 弱い力はWボソンとZボソンに対応していると考えるのです.[1]強い力, 弱い力というのは固有名詞です.
また, つい最近ヒッグスボソンが発見されました. これはボソンのなかでも大変おもしろい性質をもっており, そこらの粒子達が持っている質量の起源に関わるものですがこれ以上は深入りしないでおきます.
ヒッグスに関する書籍はたくさんあるので, 興味がある方は色々情報を取り入れてみてくださいね. いくつか紹介だけしておきます.
イメージを掴むための本といえば科学冊子Newtonですかね.
素粒子の実験に関することに興味があるなら次の書籍なんかが割りと写真も豊富です.
まだ発売されていませんが, 期待度大の本としては
レプトンの中のニュートリノ
もう一度, 素粒子の標準模型の図を見ておきましょう.
フェルミオンはレプトンとクォークに分類されます.
クォークとレプトンには
電荷の値が素電荷の整数倍かどうか
強い力という力と相互作用するかどうか
などの違いがあります[2]この他にも単体で存在するかどうかなどもありますが, これ以上は踏み込みません..
つまり, レプトンは, 電荷の値が素粒子の整数倍で, 強い力に関与しません. この条件を満たした最も身近な粒子が電子なのです.
そして, 電子の電荷の絶対値は素電荷に一致していますが, ニュートリノというのは電荷がない中性子なのです.
この違いにより, 電子は電磁気力を感じますがニュートリノは電磁気力を感じません.
標準模型におけるニュートリノの立場をざっと見返すと, 電荷を持っていない中性粒子(=電磁相互作用をしない)で, 強い力と呼ばれるものにも不感であり, 電磁気に頼って物事を観測する人類にとってはとにかく見つけにくい厄介な粒子がニュートリノなのです. そのおかげで幽霊粒子と呼ばれたりもしました.
標準模型に登場するニュートリノはさらに, 電子ニュートリノ, ミューニュートリノ, タウニュートリノと呼ばれるものに分類されますが, ニュートリノの種類とその移り変わりについて取り扱いのはまた次回としたいと思います.