2次元極座標系の運動方程式

力学を考えるにあたり, 一番初めに導入した概念は物体の運動を記述するための容れ物である座標系, 特に直交座標系であった.

直交座標系は直線運動や放物運動を議論するときには, (特に不都合が生じない, という意味で)便利な座標系であった. その一方で, 円運動を行うような物体を記述するためにはより良い座標系が存在することが知られている.

ここでは, 2次元的な円運動を行う物体の運動を記述するのに便利な座標系, 2次元極座標系を導入し, 2次元極座標系では物体の位置, 速度, 加速度がどのように記述されるのかを調べることにする.

その手順としては, 次のとおりである.

まずは我々がよく理解している直交座標系と極座標系との間で, 物体の位置の記述方法がどう変わるのかを理解する. つづいては, 位置の微分で速度, 速度の微分で加速度を計算し, 2次元極座標系での運動方程式がどんな形になるのか, その導出を示す.

円運動の場合の運動方程式は…といった具合に, 円運動は特別扱いされることも多い. この点については座標系を円運動に適したものにとりなおしたときの(向心方向の)加速度の導出を理解することで, 何も特別なことはしていないのだと頷けるであろう.

回転座標系での運動方程式の導出過程では, 異なる座標系同士を結びつける関係式や多数の微分が登場する. これらを全て覚える必要はなく, 数回程自分の手を動かして計算を追う経験を行ったのであれば, 最終的な結果(2次元極座標での運動方程式)を把握するにとどめても良い.

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回転座標系の単位ベクトル
回転座標系の単位ベクトルの時間微分
2次元極座標系での運動方程式


回転座標系の単位ベクトル

空間上のある点を表現するとき, 座標系は人が勝手に設定するものだということを思い出して欲しい.

そこで, これまで慣れ親しんた直交座標系と, その座標系に対して回転したような座標系を考え, この座標系の取り方の違いによって物体の位置の記述がどう変わるかを確認しておこう.

下図のように, 直交した二つの座標軸, \( x \) 軸と \( y \) 軸をもつ慣性系 \( S \) を考え, 軸の交点を原点 \( O \) とする. また, 直交した \( x^{\prime} \) 軸と \( y^{\prime} \) 軸をもつ系 \( S^{\prime} \) を考え, 軸の交点を原点 \( O^{\prime} \) とする.

系 \( S \) と系 \( S^{\prime} \) の原点は一致しており, 系 \( S^{\prime} \) は慣性系 \( S \) に対して反時計回りに角度 \( \theta \) だけ回転しているとし, \( x \) 軸, \( y \) 軸, \( x^{\prime} \) 軸, \( y^{\prime} \) 軸の各軸に対する単位ベクトルを \( \boldsymbol{e}_{x} \) , \( \boldsymbol{e}_{y} \) , \( \boldsymbol{e}_{r} \) , \( \boldsymbol{e}_{\theta} \) とする.

系 \( S \) で物体の位置を記述する場合には \( \boldsymbol{e}_{x} , \boldsymbol{e}_{y} \) の二つを使えばよいし, 系 \( S^{\prime} \) で物体の位置を記述する場合には \( \boldsymbol{e}_{r} , \boldsymbol{e}_{\theta} \) の二つを使って表すことになる.

当面の目的は, \( \boldsymbol{e}_{r} , \boldsymbol{e}_{\theta} \) と \( \boldsymbol{e}_{x} , \boldsymbol{e}_{y} \) とが互いにどんな関係にあるのかを明らかにすることで, 二つのを自由に行き来できるようにすることである.

上図より, \( \boldsymbol{e}_{r} \), \( \boldsymbol{e}_{\theta} \) を \( \boldsymbol{e}_{x} \), \( \boldsymbol{e}_{y} \) で記述しようと思えば \[ \begin{align} \boldsymbol{e}_{r} &= \cos{\theta} \, \boldsymbol{e}_{x} + \sin{\theta} \, \boldsymbol{e}_{y} \label{erotA} \\ \boldsymbol{e}_{\theta} &=- \sin{\theta} \, \boldsymbol{e}_{x} + \cos{\theta} \, \boldsymbol{e}_{y} \label{erotB} \end{align} \] が成立していることがわかる.

つづいて, \( \boldsymbol{e}_{x} \), \( \boldsymbol{e}_{y} \) を \( \boldsymbol{e}_{r} \), \( \boldsymbol{e}_{\theta} \) で記述しておこう.

式\eqref{erotA} \( \times \cos{ \theta } \) と式\eqref{erotB} \( \times \left( – \sin{ \theta } \right) \) の辺々を足し合わせることで \( \boldsymbol{e}_{x} \) を, \eqref{erotA}式 \( \times \sin{ \theta } \) と\eqref{erotB}式 \( \times \cos{ \theta } \) の辺々を足し合わせることで \( \boldsymbol{e}_{y} \) を求めることができ, 次式のようにまとめることができる. \[ \begin{aligned} \boldsymbol{e}_{x} &= \cos{\theta} \, \boldsymbol{e}_{r} – \sin{\theta} \, \boldsymbol{e}_{\theta} \\ \boldsymbol{e}_{y} &= \sin{\theta} \, \boldsymbol{e}_{r} + \cos{\theta} \, \boldsymbol{e}_{\theta} \end{aligned}\]

以上で得られた関係式により, 系 \( S \) で記述したベクトルと系 \( S^{\prime} \) で記述したベクトルとの変換則を知ることが出来る.

なお, これまでは簡単のために系 \( S \) と系 \( S^{\prime} \) の原点が同じであると仮定していた. しかし, ベクトルは平行移動してもその意味は変わらないので, 上記の関係式を導くにあたって, 系 \( S \) と系 \( S^{\prime} \) の原点は一定している必要はないことを補足しておく.

回転座標系の単位ベクトル

2次元直交座標系 \( S \) と系 \( S \) に対して角度 \( \theta \) だけ回転した座標系 \( S^{\prime} \) がある場合, それぞれの単位ベクトルの変換関係は次のようである. \[ \left\{ \begin{aligned} \boldsymbol{e}_{r} &= \cos{\theta} \, \boldsymbol{e}_x + \sin{\theta} \, \boldsymbol{e}_y \notag \\ \boldsymbol{e}_{\theta} &=- \sin{\theta} \, \boldsymbol{e}_x + \cos{\theta} \, \boldsymbol{e}_y \notag \end{aligned} \right.\] \[ \left\{ \begin{aligned} \boldsymbol{e}_{x} &= \cos{\theta} \, \boldsymbol{e}_r – \sin{\theta} \, \boldsymbol{e}_\theta \notag \\ \boldsymbol{e}_{y} &= \sin{\theta} \, \boldsymbol{e}_r + \cos{\theta} \, \boldsymbol{e}_\theta \end{aligned}\right. \]

以下の議論においては, 系 \( S^{\prime} \) が系 \( S \) から回転した角 \( \theta \) は一般には時間に依存する関数であり, \( \theta = \theta(t) \) として扱うことにする.

回転角 \( \theta \) の時間変化率を角速度といい, 記号 \( \omega \) (オメガ)で定義する. \[ \omega \mathrel{\mathop:}= \frac{d \theta}{dt} \quad . \notag \] この角速度 \( \omega \) も時間に依存した関数であり \( \omega = \omega (t) \) である

なお, 角速度 \( \omega \) が一定の運動を等角速度運動といい, 高校物理では円運動で頻繁に取り扱うことになるが, 等角速度であってもなくても, これから導出する極座標系の向心方向の運動方程式は変わらないことを補足しておく.

回転座標系の単位ベクトルの時間微分

2次元極座標系での物体の速度加速度を記述するための準備として, 回転座標系 \( S^{\prime} \) の単位ベクトル \( \boldsymbol{e}_{r} \), \( \boldsymbol{e}_{\theta} \)の時間微分および2階微分がどのように表されるのかを計算しておこう.

なお, 以下の議論では三角関数の合成関数の微分公式 \[ \begin{aligned} \frac{d \sin{ \theta }}{dt} & = \frac{d \theta}{dt} \frac{d \sin{ \theta }}{d\theta} = \omega \cos{\theta} \\ \frac{d \cos{ \theta }}{dt} & = \frac{d \theta}{dt} \frac{d \cos{ \theta }}{d\theta} =- \omega \sin{\theta} \end{aligned}\] を何度も用いることにする.

まずは慣性系 \( S \) の単位ベクトル \( \boldsymbol{e}_{x} , \boldsymbol{e}_{y} \) は時間によらずに一定であり, \[ \frac{d \boldsymbol{e}_{x} }{dt} = \frac{d \boldsymbol{e}_{y} }{dt} = \boldsymbol{0} \notag \] を満たす.

系 \( S^{\prime} \) の単位ベクトルの一つ \( \boldsymbol{e}_{r} \) の時間微分は, \[ \begin{aligned} \frac{d \boldsymbol{e}_{r} }{dt} &= \frac{d}{dt} \left\{ \cos{\theta} \, \boldsymbol{e}_{x} + \sin{\theta} \, \boldsymbol{e}_{y} \right\} \\ &= \frac{d\,\cos{\theta}}{dt} \boldsymbol{e}_x + \frac{d\,\sin{\theta}}{dt} \boldsymbol{e}_{y} \\ &=- \frac{d\theta}{dt} \sin{\theta} \, \boldsymbol{e}_x + \frac{d\theta}{dt} \cos{\theta} \, \boldsymbol{e}_y \\ &=- \omega \sin{\theta} \, \boldsymbol{e}_x + \omega \cos{\theta} \, \boldsymbol{e}_y \\ &= \omega \boldsymbol{e}_{\theta} \quad . \end{aligned} \] また, \( \boldsymbol{e}_{\theta} \) の時間微分は \[ \begin{aligned} \frac{d \boldsymbol{e}_{\theta}}{dt} &= \frac{d}{dt}\left\{ – \sin{\theta} \, \boldsymbol{e}_x + \cos{\theta} \, \boldsymbol{e}_y \right\} \\ &=-\omega \cos{\theta} \, \boldsymbol{e}_x – \omega \sin{\theta} \, \boldsymbol{e}_y \\ &=- \omega \boldsymbol{e}_{r} \quad . \end{aligned}\]

以上より, \( \boldsymbol{e}_{r} \) と \( \boldsymbol{e}_{\theta} \) は微分によって互いに次式のような関係にあることがわかる. \[ \begin{equation} \therefore \ \left\{ \begin{aligned} \frac{d \boldsymbol{e}_r }{dt} &= \omega \boldsymbol{e}_{\theta} \\ \frac{d \boldsymbol{e}_{\theta} }{dt} &=- \omega \boldsymbol{e}_{r} \end{aligned}\right. \label{div_e_r} \end{equation} \]

同様に, \( \boldsymbol{e}_{r} \) , \( \boldsymbol{e}_{\theta} \) の2階時間微分は, \[ \begin{aligned} \frac{d^2 \boldsymbol{e}_{r} }{dt^2} &= \frac{d }{dt} \left( \omega \boldsymbol{e}_{\theta} \right) \\ &= \frac{d \omega}{dt} \boldsymbol{e}_{\theta} + \omega \frac{d \boldsymbol{e}_{\theta} }{dt} \\ &= \frac{d \omega}{dt} \boldsymbol{e}_{\theta} – { \omega }^2 \boldsymbol{e}_{r} \quad . \end{aligned}\] \[ \begin{aligned} \frac{d^2 \boldsymbol{e}_{\theta} }{dt^2} &=- \frac{d }{dt} \left( \omega \boldsymbol{e}_{r} \right) \\ &=- \frac{d \omega}{dt} \boldsymbol{e}_{r} -\omega \frac{d \boldsymbol{e}_{r} }{dt} \\ &=- \frac{d \omega}{dt} \boldsymbol{e}_{r} – { \omega }^2 \boldsymbol{e}_{\theta} \quad . \end{aligned}\] \[ \begin{equation} \therefore \ \left\{ \begin{aligned} \frac{d^2 \boldsymbol{e}_{r} }{dt^2} &= \frac{d \omega}{dt} \boldsymbol{e}_{\theta} – { \omega }^2 \boldsymbol{e}_{r} \\ \frac{d^2 \boldsymbol{e}_{\theta} }{dt^2} &=- \frac{d \omega}{dt} \boldsymbol{e}_{r} -{ \omega }^2 \boldsymbol{e}_{\theta} \end{aligned}\right. \label{divdiv_e_r} \end{equation} \] となる.

回転座標系の単位ベクトルの時間微分

回転座標の単位ベクトル\( \boldsymbol{e}_{r} \) , \( \boldsymbol{e}_{\theta} \) の時間微分 : \[ \left\{ \begin{aligned} \frac{d \boldsymbol{e}_r }{dt} &= \omega \boldsymbol{e}_{\theta} \\ \frac{d \boldsymbol{e}_{\theta} }{dt} &=- \omega \boldsymbol{e}_{r} \end{aligned}\right. \quad . \]

回転座標の単位ベクトル\( \boldsymbol{e}_{r} \) , \( \boldsymbol{e}_{\theta} \) の2階時間微分 : \[ \left\{ \begin{aligned} \frac{d^2 \boldsymbol{e}_{r} }{dt^2} &= \frac{d \omega}{dt} \boldsymbol{e}_{\theta} – { \omega }^2 \boldsymbol{e}_{r} \\ \frac{d^2 \boldsymbol{e}_{\theta} }{dt^2} &=- \frac{d \omega}{dt} \boldsymbol{e}_{r} -{ \omega }^2 \boldsymbol{e}_{\theta} \end{aligned}\right. \quad . \]

2次元極座標系での運動方程式

いよいよ, 2次元極座標系での運動方程式の記述方法へと話を移そう.

2次元極座標系では, 回転座標系の \( x^{\prime} \) 軸を, 注目する物体(質量 \( m \) )の位置ベクトル \( \boldsymbol{r} \) と一致させる. これは単位ベクトル\( \boldsymbol{e}_{r} \) が常に物体の位置方向を向くようにすることを意味し, \( \boldsymbol{e}_{r} \) の向きを動径方向などと呼ぶ.

したがって, 物体の位置 \( \boldsymbol{r} \) は回転座標系の単位ベクトル \( \boldsymbol{e}_{r} \) と原点から物体までの距離 \( r \) を用いて, \[ \boldsymbol{r} = r \boldsymbol{e}_r + 0 \boldsymbol{e}_{\theta} = r \boldsymbol{e}_r \notag \] と表すことができる.

また, 物体に働く合力\( \boldsymbol{F} \) を \( \boldsymbol{e}_{r} \) , \( \boldsymbol{e}_{\theta} \) 方向に分解した成分をそれぞれ \( F_{r} \), \(F_{\theta}\) とすると, 極座標系における \( \boldsymbol{F} \) は \[ \boldsymbol{F} = F_{r} \boldsymbol{e}_{r} + F_{\theta} \boldsymbol{e}_{\theta} \notag \] と表すことができる.

位置 \( \boldsymbol{r} = r \boldsymbol{e}_{r} \) に存在する物体の速度や加速度を, \( \boldsymbol{e}_{r} \) , \( \boldsymbol{e}_{\theta} \) を用いて記述することを考えよう.

一般には, 距離 \( r \) が時間によって変化する関数 \( r = r(t) \) であることを忘れずに \( \boldsymbol{r} = r \boldsymbol{e}_{r} \) に対して随時微分操作を行なうと, \[ \begin{aligned} \frac{d \boldsymbol{r} }{dt} & = \frac{d r}{dt} \boldsymbol{e}_r + r \frac{d \boldsymbol{e}_r }{dt} \\ \frac{d^2 \boldsymbol{r} }{dt^2} & = \underbrace{\frac{d^2 r}{dt^2} \boldsymbol{e}_r + \frac{d r}{dt} \frac{d \boldsymbol{e}_r }{dt} }_{\frac{d }{dt}\left(\frac{d r}{dt} \boldsymbol{e}_r\right)} + \underbrace{\frac{d r}{dt} \frac{d \boldsymbol{e}_r }{dt} + r \frac{d^2 \boldsymbol{e}_r }{dt^2}}_{\frac{d }{dt}\left(r \frac{d \boldsymbol{e}_r }{dt} \right)} \\ &= \frac{d^2 r}{dt^2} \boldsymbol{e}_r + 2\frac{d r}{dt} \frac{d \boldsymbol{e}_r }{dt} + r \frac{d^2 \boldsymbol{e}_r }{dt^2} \end{aligned}\]となる.

ここで, 式\eqref{div_e_r}及び式\eqref{divdiv_e_r}を用いると, \[ \begin{aligned} \frac{d \boldsymbol{r} }{dt} &= \frac{d r}{dt} \boldsymbol{e}_r + r \omega \boldsymbol{e}_\theta \\ \frac{d^2 \boldsymbol{r} }{dt^2} &= \frac{d^2 r}{dt^2} \boldsymbol{e}_r + 2\frac{d r}{dt} \left( \omega \boldsymbol{e}_{\theta} \right) + r \left(\frac{d \omega}{dt} \boldsymbol{e}_{\theta} – { \omega }^2 \boldsymbol{e}_{r} \right)\notag \\ &= \left( \frac{d^2 r}{dt^2} – r{ \omega }^2 \right)\boldsymbol{e}_{r} + \underbrace{ \left( 2\frac{d r}{dt} \omega + r \frac{d \omega}{dt} \right)}_{ \frac{1}{r} \frac{d }{dt} \left(r^2 \omega\right)= 2\frac{d r}{dt} \omega + r \frac{d \omega}{dt} } \boldsymbol{e}_{\theta} \notag \\ &= \left( \frac{d^2 r}{dt^2} – r{ \omega }^2 \right)\boldsymbol{e}_{r} + \frac{1}{r} \frac{d }{dt} \left(r^2 \omega\right) \boldsymbol{e}_{\theta} \end{aligned}\] 途中, \( \boldsymbol{e}_\theta \) の係数については, 以下の等式を用いて係数を整理した. \[ \frac{1}{r} \frac{d }{dt} \left(r^2 \omega\right)= 2\frac{d r}{dt} \omega + r \frac{d \omega}{dt} \quad .\]

このようにして, 2次元極座標系で記述した場合の物体の加速度は \[ \frac{d^2 \boldsymbol{r} }{dt^2} = \left( \frac{d^2 r}{dt^2} – r{ \omega }^2 \right)\boldsymbol{e}_{r} + \frac{1}{r} \frac{d }{dt} \left(r^2 \omega\right) \boldsymbol{e}_{\theta} \] であり, 加速度の動径方向成分( \( \boldsymbol{e}_{r} \) 方向成分)は \[ \left( \frac{d^2 r}{dt^2} – r{ \omega }^2 \right) \quad , \notag \] 加速度の角度方向成分( \( \boldsymbol{e}_{\theta} \) 方向成分)は \[ \frac{1}{r} \frac{d }{dt} \left(r^2 \omega\right) \notag \] であることがわかった.

以上の議論をまとめると, 慣性系 \( S \) で成立する運動方程式 \[ \begin{aligned} & m\frac{d^2 \boldsymbol{r} }{dt^2} = \boldsymbol{F} = F_{x} \boldsymbol{e}_{x} + F_{y}\boldsymbol{e}_{y} \\ & \iff \ \left\{ \begin{aligned} m\frac{d^{2}x}{dt^{2}} &= F_{x} \\ m\frac{d^{2}y}{dt^{2}} &= F_{y} \end{aligned} \right. \quad . \end{aligned} \] は, \( \boldsymbol{e}_{r} \), \( \boldsymbol{e}_{\theta} \) で記述する2次元極座標系の立場では, \[ \begin{aligned} & m\frac{d^2 \boldsymbol{r} }{dt^2} = \boldsymbol{F} = F_{r} \boldsymbol{e}_{r} + F_{\theta}\boldsymbol{e}_{\theta} \\ & \iff \ \left\{ \begin{aligned} m\left( \frac{d^2 r}{dt^2} – r{ \omega }^2 \right) &= F_{r} \\ m\frac{1}{r} \frac{d }{dt} \left(r^2 \omega\right) &= F_{\theta} \end{aligned} \right. \quad . \end{aligned} \] と記述されることがわかった.

このままでは幾分複雑な式であるが, 円運動の項目で説明するように半径 \( r \) や角速度 \( \theta \) が一定などの条件を加えることで, 高校物理の教科書で書かれている円運動の運動方程式を導出できるのである.

回転座標系(極座標系)での運動方程式

回転座標系(極座標系)においての物体の位置・速度・加速度 : \[ \begin{aligned} \boldsymbol{r} &= r\boldsymbol{e}_r \\ \boldsymbol{v} &=\frac{d\boldsymbol{r} }{dt} = \frac{d r}{dt} \boldsymbol{e}_r + r \omega \boldsymbol{e}_\theta \\ \boldsymbol{a} &=\frac{d^2 \boldsymbol{r} }{dt^2} \\ &= \left( \frac{d^2 r}{dt^2} – r{ \omega }^2 \right)\boldsymbol{e}_{r} + \frac{1}{r} \frac{d }{dt} \left(r^2 \omega\right) \boldsymbol{e}_{\theta} \end{aligned} \]

動径方向( \( \boldsymbol{e}_r \) 方向)の運動方程式 : \[ m \left(\frac{d^2 r}{dt^2} – r { \omega }^2 \right)= F_r \notag \]

角度方向( \( \boldsymbol{e}_{\theta} \) 方向)の運動方程式 : \[ m \frac{1}{r} \frac{d }{dt} \left(r^2 \omega \right)= F_\theta \notag \]

最終更新日

回転座標系(極座標)の運動方程式を複素数の知識を使って導いてみよう.

回転座標の単位ベクトルと複素数との対応

ベクトル \( \boldsymbol{r}=\left( x , y \right) \) を複素数に対応させる時, \( x \) 座標を複素数 \( z \) の実部, \( y \) 座標を複素数 \( z \) の虚部に対応させる. すなわち, \( \boldsymbol{r}=\left( x,y \right) \leftrightarrow z = x + i y \) に対応させるのである.

また, \( \boldsymbol{r} = \left( x , y \right) \) について, 原点からの距離を \( r \) , \( x \) 軸からの角度を \( \theta \) として, \[\left\{ \begin{aligned} x &= r \cos{\theta} \\ y &= r \sin{\theta} \end{aligned} \right.\] とすると, 対応する複素数は \[\begin{aligned} z &= r\cos{\theta} + i r \sin{\theta} \\ &= r\left( \cos{\theta} + i \sin{\theta} \right) \end{aligned}\] である. ここでオイラーの公式 \[e^{i\theta} = \cos{\theta} + i \sin{\theta} \notag \] を用いると, 位置ベクトル \( \boldsymbol{r} \) に対応する複素数は次のようにあらわされる. \[z = r e^{ i \theta} \notag \] 以上より, \( r \) 方向の単位ベクトルを \( \boldsymbol{e}_{r} \mathrel{\mathop:}=\boldsymbol{r}/\left|\boldsymbol{r}\right| \) として, \[\boldsymbol{r} = r \frac{\boldsymbol{r}}{\left| \boldsymbol{r} \right|} = r \boldsymbol{e}_{r} \ \leftrightarrow \ z = r e^{ i \theta} \notag \] となる. つまり, \( e^{i \theta} \) は動径方向の単位ベクトル \( \boldsymbol{e}_{r} \) に対応していることがわかる.

また, 上記の結果より \( \boldsymbol{e}_{r} \) に対して直角な角度方向の単位ベクトル \( \boldsymbol{e}_{\theta} \) が \( e^{i \left( \theta + \pi/2 \right)} \) に対応していることがわかる. \[\boldsymbol{e}_{\theta}\ \leftrightarrow \ e^{i \left( \theta + \pi/2 \right)} = e^{i \theta } e^{i \pi/2 }= i e^{i \theta } \quad . \notag \]

回転座標の単位ベクトルと複素数との対応

原点からの距離 \( r \) , \( x \) 軸からの角度が \( \theta \) の実ベクトル \( \boldsymbol{r} \) について, \( r \) 方向の単位ベクトル \( \boldsymbol{e}_{r} \) 及びそれに対して直行した \( \theta \) 方向の単位ベクトル \( \boldsymbol{e}_{\theta} \) と複素数とは次のような対応関係にある. \[\left\{ \begin{aligned} \boldsymbol{e}_{r}\ \leftrightarrow &\ e^{i \theta } \\ \boldsymbol{e}_{\theta}\ \leftrightarrow &\ i e^{i \theta } \end{aligned} \right.\]

2次元極座標系での運動方程式と複素数との対応

続いて, 位置ベクトル \( \boldsymbol{r} \) に対応する複素数 \( z = re^{i\theta} \) を微分し, その結果を用いて2次元極座標系での運動方程式を求めよう.

\( r \) と \( \theta \) は時間の関数( \( r =r(t) \) , \( \theta=\theta(t) \) )とすると, 複素数の時間微分及び2階時間微分は次のようになる. ただし, \( \displaystyle{ \omega \mathrel{\mathop:}= \frac{ d \theta}{dt} } \) とする. \[\begin{aligned} z &= re^{ i \theta } \\ \frac{d}{dt} z &= \frac{dr}{dt}e^{ i \theta } + r i\frac{d \theta}{dt}e^{ i \theta } \\ &= \frac{dr}{dt}e^{ i \theta } + r i\omega e^{ i \theta } \\ \frac{d^2}{dt^2} z &= \frac{d^2r}{dt^2}e^{ i \theta } + \frac{dr}{dt}i \frac{d\theta}{dt}e^{ i \theta } \\ & \quad + \frac{dr}{dt} i\omega e^{ i \theta } + ri\frac{d\omega}{dt}e^{ i \theta } + r \left( i\omega \right)^2e^{ i \theta } \\ &= \left\{ \frac{d^2r}{dt^2} – r \omega^2 \right\} e^{ i \theta } + \left\{ 2\frac{dr}{dt}\omega + r \frac{d \omega}{dt} \right\} i e^{ i \theta } \\ &= \left\{ \frac{d^2r}{dt^2} – r \omega^2 \right\} e^{ i \theta } + \frac{1}{r} \frac{d}{dt} \left( r^2\omega \right) i e^{ i \theta } \end{aligned}\] 複素数 \( z \) を2階時間微分した \( \displaystyle{\frac{d^2z}{dt^2}} \) は, 位置ベクトル \( \boldsymbol{r} \) の2階時間微分に対応し, \[\begin{aligned} \left\{ \frac{d^2r}{dt^2} – r \omega^2 \right\}e^{ i \theta } \ \leftrightarrow & \ \left\{ \frac{d^2r}{dt^2} – r \omega^2 \right\} \boldsymbol{e}_{r} \\ \frac{1}{r} \frac{d}{dt} \left( r^2\omega \right) i e^{ i \theta } \ \leftrightarrow & \ \frac{1}{r} \frac{d}{dt} \left( r^2\omega \right) \boldsymbol{e}_{\theta} \end{aligned}\] という対応関係にあるので, \[\frac{d^2\boldsymbol{r}}{dt^2} = \left\{ \frac{d^2r}{dt^2} – r \omega^2 \right\} \boldsymbol{e}_{r} + \frac{1}{r} \frac{d}{dt} \left( r^2\omega \right) \boldsymbol{e}_{\theta} \notag \] として, 2次元極座標系での加速度が得られる.

2次元極座標系での運動方程式と複素数との対応

位置・速度・加速度ベクトルに対応する複素数. \[\begin{aligned} z &= re^{ i \theta } \\ \frac{dz}{dt} &= \frac{dr}{dt}e^{ i \theta } + r i\omega e^{ i \theta } \\ \frac{d^2z}{dt^2} z &= \left\{ \frac{d^2r}{dt^2} – r \omega^2 \right\} e^{ i \theta } + \frac{1}{r} \frac{d}{dt} \left( r^2\omega \right) i e^{ i \theta } \end{aligned}\]

複素数と実ベクトルが \( e^{i \theta }\ \leftrightarrow \ \boldsymbol{e}_{r} \) , \( ie^{i \theta }\ \leftrightarrow \ \boldsymbol{e}_{\theta} \) という対応関係により, 動径方向の加速度及び角度方向の加速度として, 次式を得る. \[\frac{d\boldsymbol{r}}{dt} = \frac{dr}{dt}\boldsymbol{e}^{r} + r \omega \boldsymbol{e}^{\theta} \notag \] \[\frac{d^2\boldsymbol{r}}{dt^2} = \left\{ \frac{d^2r}{dt^2} – r \omega^2 \right\} \boldsymbol{e}_{r} + \frac{1}{r} \frac{d}{dt} \left( r^2\omega \right) \boldsymbol{e}_{\theta} \notag \]

最終更新日
単振動とエネルギー保存則 円運動

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