熱と温度

熱力学では温度や熱にまつわる話題を取り扱う. そこでまずは温度をどのように決めるのか, 熱と温度の違いは何か, 物体もしくは物質の温まりにくさをどのように決めるのかを議論する.

スポンサーリンク

温度
熱と温度の違い
熱容量と比熱


温度

セルシウス温度

日常的に温度といえば, 日本ではセルシウス温度を表している.

セルシウス温度の定義には身近な物質である水が用いられていて, 記号 \( t \) であらわされ, 単位は \( {}^{\circ}\mathrm{C} \) (度)である.

\( 1 \) 気圧(大気圧)のもとで, 水と氷が共存する温度を \( 0 \, {}^{\circ}\mathrm{C} \) , 水と水蒸気が共存する温度を \( 100 \,{}^{\circ}\mathrm{C} \) として, その温度間隔を100等分したのがセルシウス温度である.

絶対温度

セルシウス温度は科学的に決められた温度であるが, あくまで水を基準とした温度の定義である. しかし, 温度についての理解が進むにつれよりよい温度の定義が考えられた.

物質を構成している原子運動が無くなる[1]温度を絶対零度といい \( 0\, \mathrm{K} \) であらわす絶対温度を採用することにする.

絶対温度は記号 \( T \) であらわされ, 単位は \( \mathrm{K} \) (ケルビン)である.

絶対温度 \( T \, \mathrm{K} \) とセルシウス温度 \( t\, {}^{\circ}\mathrm{C} \) は同じ温度間隔であり, 次式のような関係にある. \[ T = t + 273.15 \label{KandC}\] 式\eqref{KandC}より, 絶対零度 \( T = 0 \ [\mathrm{K}] \) とは \( t =-273.15 \ [\mathrm{{}^{\circ}C}] \) のことである.

絶対温度とセルシウス温度は \( 0 \) であらわされる温度は異なるが, その温度間隔は同じである. すなわち, \( 1\,{}^{\circ}\mathrm{C}\) 差 \( 1\,\mathrm{K} \) 差と等しい.
セルシウス温度と絶対温度

温度

セルシウス温度 \( t\,{}^{\circ}\mathrm{C} \) と絶対温度 \( T\,\mathrm{K} \) との間に次式が成立する. \[ T = t + 273.15\]

絶対温度 \( T = 0 \,\mathrm{K} \) を絶対零度という.

熱と温度の違い

熱力学を勉強するにあたりきちんと区別しておかなくてはならないことは, 物理用語としての温度の区別である.

結論から述べると, は物体に蓄えられたエネルギーの一形態であり, 温度は熱がどのくらい蓄えられている状態かをあらわす尺度である.

力学では, 質量 \( m \) の物体が高さ \( h \) の位置にいる場合の位置エネルギー \( U \) を重力加速度 \( g \) を用いて \[ U = mgh\] と表した.

熱力学でも力学と事情は似ており, 質量 \( m \) の物体が絶対温度 \( T \) である場合, 物体の持つエネルギーの一種である熱エネルギー \( U \) を比例係数 \( c \) を用いて \[ U = mcT\] とあらわすのである(位置エネルギーと同じ記号 \( U \) を使ったが, 別物である. ). この比例係数 \( c \) にも物理的に重要な意味があり比熱という. 比熱については後ほど詳しく議論する. また, 上式を見てもわかるように温度( \( T \) )が一定でも質量が大きければ大きな熱をもっていることになる.

このように熱と温度は別物であることをきちんと把握しておかないと混乱することも注意してほしい[2]. 特に, 物体間でやりとりされるのは熱であることに注意してほしい. そして, 物体に蓄えられた熱が変化することで温度が変化するのである.

熱と温度の違い

熱はエネルギーの一種である.

温度は熱を図るための尺度である.

物体間でやりとりされているのは熱である.

熱容量と比熱

ある物体の温度を \( \Delta T \ [\mathrm{K}] \) だけ上昇するために必要な熱量 \( \Delta Q \ [\mathrm{J}] \) について考えてみよう. 熱エネルギーの上昇量と与えた温度との間には比例関係が成立することが知られていて, この比例係数を記号 \( C \) であらわすと, \[ \Delta Q = C \Delta T \quad \Leftrightarrow \quad \frac{\Delta Q}{\Delta T}=C\] が成立する. この物体毎に決まる比例係数 \( C \ [\mathrm{J/K}] \) を熱容量という.

熱容量 \( C \) の単位は \( [\mathrm{J/K}] \) であるので, 物体の温度を \( 1 \ [\mathrm{K}] \) 上昇させるために必要な熱量を表している. 実際, 熱容量の定義式を \[ \frac{\Delta T}{\Delta Q}=\frac{1}{C}\] と書き直せば明らかであるが, 物体に与える熱量 \( \Delta Q \) が一定でも熱容量が大きければ大きいほど温度変化 \( \Delta T \) が小さくなることから, 熱容量は各物体の温度変化のしにくさをあらわす量であることがわかる. 温度変化のしにくさなので, 温まりにくい物体は同時に冷めにくい物体であり, 温まりやすい物体は冷めやすい物体である.

熱容量はさらにその物体の質量 \( m \ [\mathrm{kg}] \) に比例することが知られていて, その比例係数を比熱といい記号 \( c \) で表せば, 熱容量と比熱との間に \[ C = m c\] が成立する. 比熱 \( c \ [\mathrm{J/(K \cdot kg)}] \) は物質毎に決まる量であり, 熱容量と同様に比熱は物質の温度変化のしにくさを表している[3]. ただし, 熱容量が物体全体の温度変化のしにくさを表していたのに対して, 比熱は単位質量あたりの温度変化のしにくさを表しているので注意が必要である.

たんに比熱といえば”単位質量( \( 1 \ [\mathrm{kg}] \) )あたり“の温度変化のしにくさを表しており, ある物質 \( 1 \ [\mathrm{kg}] \) の温度を \( 1 \ [\mathrm{K}] \) 上昇させるために必要な熱量を表している.

固体や液体の場合には単位質量に対する比熱で議論されることが多いが, 気体の比熱を考える時には”単位モル( \( 1 \ [\mathrm{mol}] \) )あたり“の比熱を頻繁に考える. この比熱をモル比熱という. 以下ではいくつかの熱容量やモル比熱を列挙するが, それぞれの詳細については後ほど議論する.

熱容量

熱容量( \( C \ [\mathrm{J / K}] \) )
物体の温度を \( 1 \ [\mathrm{K}] \) 上昇させるために必要な熱量. \[ \underbrace{\Delta Q}_{\mbox{与えた熱量$\ [\mathrm{J}]$}} = \underbrace{C}_{\mbox{熱容量$\ [\mathrm{J/K}]$}} \cdot \underbrace{\Delta T}_{\mbox{上昇する温度$\ [\mathrm{K}]$}}\]

比熱

比熱( \( c \ [\mathrm{J / ( kg \cdot K ) }] \) )
物体 \( 1 \ [\mathrm{kg}] \) の温度を \( 1 \ [\mathrm{K}] \) 上昇させるために必要な熱量. \[ \underbrace{\Delta Q}_{\mbox{与えた熱量$\ [\mathrm{J}]$}} = \underbrace{m}_{\mbox{質量$\ [\mathrm{kg}]$}} \cdot \underbrace{c}_{\mbox{比熱$\ [\mathrm{J/(K \cdot kg)}]$}} \cdot \underbrace{\Delta T}_{\mbox{上昇する温度$\ [\mathrm{K}]$}}\]

定積モル比熱( \( C_v \ [\mathrm{J / ( mol \cdot K)}] \) )
体積が一定に保たれた気体 \( 1\ [\mathrm{mol}] \) の温度を \( 1\ [\mathrm{K}] \) だけ上昇させるために必要な熱量. \[ \underbrace{\Delta Q}_{\mbox{与えた熱量$\ [\mathrm{J}]$}} = \underbrace{n}_{\mbox{物質量$\ [\mathrm{mol}]$}} \cdot \underbrace{C_v}_{\mbox{比熱$\ [\mathrm{J/( K \cdot mol)}]$}} \cdot \underbrace{\Delta T}_{\mbox{上昇する温度$\ [\mathrm{K}]$}}\]

定圧モル比熱( \( C_p \ [\mathrm{J / ( mol \cdot K ) }] \) )
圧力が一定に保たれた気体 \( 1\ [\mathrm{mol}] \) の温度を \( 1\ [\mathrm{K}] \) だけ上昇させるために必要な熱量. \[ \underbrace{\Delta Q}_{\mbox{与えた熱量$\ [\mathrm{J}]$}} = \underbrace{n}_{\mbox{物質量$\ [\mathrm{mol}]$}} \cdot \underbrace{C_p}_{\mbox{比熱$\ [\mathrm{J/ ( K \cdot mol)}]$}} \cdot \underbrace{\Delta T}_{\mbox{上昇する温度$\ [\mathrm{K}]$}}\]

熱容量と比熱

熱容量 :
物体の温度変化のしにくさを表しており, 物体の温度を \( 1 \ [\mathrm{K}] \) だけ変化させるために必要な熱エネルギーに相当する. \[ C\ [\mathrm{J/K}] = \frac{\Delta Q}{\Delta T}\]

比熱 :
物質の温度変化のしにくさを表しており, 単位質量( \( m=1 \ [\mathrm{kg}] \) )の物質の温度を \( 1 \ [\mathrm{K}] \) だけ変化させるために必要な熱エネルギーに相当する. \[ c\ [\mathrm{J/(K \cdot kg)}] = \frac{1}{m}\frac{\Delta Q}{\Delta T}\]

気体の比熱を議論する時には \( 1 \ [\mathrm{mol}] \) あたりの比熱, モル比熱を用いることが一般的である.

最終更新日
熱力学第0法則



補足    (↵ 本文へ)
  1. 熱力学を学んでいくと絶対零度 \( 0 \ \mathrm{K} \) とは, 原子の運動エネルギーが \( 0 \) の状態を表していることがわかるが, 原子の物理学はニュートン力学の適用限界を超えた不可思議な物理法則(量子力学)に従うことがわかっており, 厳密に運動エネルギーが \( 0 \) となる状態は実現しない.

  2. “位置エネルギーと高さは別物だ”というくらい”熱”と”温度”は別物である.

  3. 本文では物体と物質を区別して用いている. 物体と言った場合には質量やその構成については考えていないが, 物質といった場合には単一の元素によって構成されていることを想定している.

スポンサーリンク

この記事をシェアする

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です