記述試験の注意事項

大学受験の物理では最終的な答えだけを書かせる問題が多いが, 求める学生の質が高い大学では導出過程も含めて書かせる記述問題の割合が増えてくる. そこで, 各予備校で行われた模試の採点基準をまとめることにした[1]. 加えて, 当サイト管理人が採点する立場となった場合に回答者に注意してほしいことも一緒に記述した.

参考にした各予備校の問題集はこのページの下部に列挙するので, 興味がある方は書店に立ち寄り, 必要であれば購入することをおすすめする.

再度ことわりを入れておくが, 以下のまとめは各予備校からみた採点基準\(+ \alpha\)であり, 大学が公表した採点基準ではない. しかし, 十分に参考となるものなので, これらを踏まえながら大学側の求める基準を超える記述ができるように訓練してほしい.

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減点ポイント
加点ポイント
参考にした問題集


減点ポイント

大前提として, 回答者は採点者に優しい回答を心がけること. 字の汚さで減点になるようなことは普通行われないであろうが, 識別できない・読み違えるような記述をした場合には減点や不可(部分点無し)となっても文句は言えない.

添字の間違い, 書き忘れ

物理量を表す記号に加えて添字がつけられている場合が多い. 例えば, \(x_1\)\(m_2\) などである. 回答するときはこれらの添字を書き忘れると減点対象または不可になるであろう.

複数の物体がある場合には同じ記号に異なる添字が使われて, \(x_1\) , \(x_2\) などと与えらえることがある. この場合の回答では添字を抜かして \(x\) としてしまったり, 添字をつけまちがうと物理的に異なる量になってしまうのでほぼ間違いなく不可になるであろう.

回答を書いた後には, 一度落ち着いて添字までチェックしてほしい.

答えだけの回答

駿台の大学入試完全対策シリーズ(東大)では, 答えだけでも点数を与えるが少しでも間違いがあれば不可という採点基準を採用しているようである. しかし出題者の意図を考えると記述型の問題で記述をしないというのは, 採点者にとって釈然としないものであるので避けるべきである.

近似の不実行

問題文中に近似の条件が示されているにも関わらず, 近似を実行していない場合には不可または減点対象であろう. 特に近似された値をその後も使い続ける場合にはほぼ間違いなく不可になるであろう. 問題文中に近似式が与えられていることが多いが, 日頃から「Aに対してBは無視できる」とか「十分小さい」などの条件文は見逃さないように注意されたし.

近似を行う場合にはニアリーイコールの記号を用いてもよいであろうが, その直前に「近似を行うと」などのことわりをいれておくのがより良いと思われる.

文字指定にしたがっていない

問題文に「 \(x\) , \(d\) , \(L\) を使って回答せよ」などと指示がある場合, \(x\) , \(d\) , \(L\) 以外の記号を使った場合には不可となるであろう. これは回答後に問題文をもう一度読む癖をつけておくことで防ぐことができる.

同様に, 自分が定義した記号については最終的な結果に残さなようにしてほしい.

符号の間違い

計算途中の符号の間違いは減点対象となるであろう. さらに, 立式すること自体が目的である問題の場合には物理を正しく記述していない(=わかっていない)とみなされてしまうので不可は免れないだろう.

グラフの凹凸具合

物理過程をグラフに書くときにはその曲線の傾きや凹凸をある程度意識したものを書かないと減点の可能性がある. 求めた関数が横軸として使用する量にどのように依存しているのを簡単に解析して書き込んでほしい. また, 熱力学の \(P-V\) グラフや電磁気のコンデンサの充電・放電過程など, 教科書や参考書に載っているグラフの概形を頭に入れておくことでグラフの書き方の一助となるであろう. 日頃から興味をもって眺めておいてほしい.

座標系と物理量の向き

答える物理量が向きを含めて記述する必要がある場合, 問題文で座標系の向きの定義が与えられている場合にはそれに従う必要がある. また, 与えられていない場合には自分で明言するしないと減点対象であろう.

論理

駿台の大学入試完全対策シリーズ(東大)では, 東京大学の物理が全て記述試験の出題形式となっているからであろうか, 採点基準に次のような記述がある.

物理学は論理学ではない

という流れで,

部分的に正しい理由から正しい結果がみちびかれているならば部分的に誤った説明が含まれていても減点しない.

完全に謝った推論により偶然正しい結果がみちびかれている場合, 減点することがある.

という記述がある. 要するに温情得点を与える方向で採点を行うと宣言されているが, これは独自の基準であるので大学側がこの点についてどう採点しているかは定かでない.

加点ポイント

記述試験で答えの導出過程まで書かせる問題に特有の加点ポイントについて紹介する. 記述問題は計算過程が採点者にもわかるように書く必要があるので少しばかり敷居が高くなるが, 逆に部分点をもぎ取るチャンスでもある. 難易度の高い問題でも下記にあげる事項のうち, 取り組めるものは粘り強く取り組んで1点でも多く点を取ってほしい.

各軸方向に沿った運動方程式or保存則

運動方程式や, 運動量保存則を筆頭とするベクトル量に対して成立する保存則は軸の数だけ立式することができる. それらのうち自明でない式を書くことができれば加点の可能性がある.

自明な場合とは, 床に置かれた物体に水平方向の力しか働いていない時には鉛直方向には等速直線運動を行う, などである. この場合には加点対象とはならないであろう.

また, 熱力学などでは状態方程式と熱力学第1法則のどちらかだけでもきちんと書いておくと加点の可能性がある.

拘束条件や各種の条件式

問題ごとにその条件は異なるが, 問題に登場する未知数の数を減らすために考える式や幾何学的に成立する条件を拘束条件という. この拘束条件を正しく考慮できていれば加点の可能性が大である.

他にも波動分野などでは「強め合いの条件」などを数式を用いて表しておくことで同等の価値が有る. むしろ条件を書いておかないと何を意図した式なのかを採点者が考えることになってしまうので, 印象としては良くないであろう.

物理の理解

条件式の加点と似た事情であるが, 物理が正しく理解できていることが説明文等で採点者に伝わるならば加点の可能性がある.

グラフの一部

例えば, 途中で振動周期が変化する単振動をしている物体の位置の時間推移をグラフとして描かせる問題などでは, 途中までのグラフを描くことで加点の可能性がある. また, 複数の曲線を描かせる問題では挙動がわかる曲線だけでも書いておくことで加点の可能性がある.

一つの物理を表すために必要な物理量

波動分野を想像してもらえばよいが, 正弦波を表すためには振幅, 周期, 波長などが必要になる. 波の式を書かせるような問題であれば, これらの条件の中でわかっているものを書き出しておいても加点の可能性がある.

その他

かけ算の順序, 数学的同値

位置エネルギーを表す式 \(mgh\)\(hmg\) はかけ算の順番こそ違えど, 数学的には全く同じ意味を持っていることが明らかである. このような書き方で減点となることはないであろう[2]. また, 回答では約分や共通因数で多項式をくくるなどをしておいたほうがいいであろう. ただし, 共通因数で括らないほうが物理的意味がハッキリしやすいこともあるのでその場合にはくくる必要はない. 求めようとしている量の物理的意味がわかりやすい形で答えればよい. 例えば, 力学的エネルギーを求める問題ならば \[ \frac{1}{2} m v^2 + mgh \] としておけば, 運動エネルギーと位置エネルギーの話であることがわかりやすいので, わざわざ \[ m \left( \frac{1}{2} v^2 + gh \right) \] とする必要はないであろう. 単振動の問題で, 運動方程式を書くだけならば \[ m a =-kx – mg \] などと書けば良いであろうが, 振動中心や角運動量を求める必要があるならば, \[ m a =-k \left( x + \frac{mg}{k} \right) \] などと式変形しておけばよい. また三角関数の公式 \( \sin^2{\theta} + \cos^2{\theta} = 1\) を使えば, 左辺の \( \theta\) を消去できるのでこのような整理はやっておかなくてはならないであろう.

式番号

物理や数学などは論理を積み重ねるものであるので, 自分の書いた式に式番号をつけて以降は式番号を引用することは構わないであろう. 式番号は必要に応じてふればよく, 全ての式に書き込んでおく必要はない.

注意することとしては, 途中で式番号が変わった場合には自分の回答を採点するつもりでもう一度読み, 式番号のズレがないかをチェックする必要がある.

図より

今議論している物理を適切な図を描いた後で「右図より」などと書くことは認められるだろう. これはベクトル量の方向が複雑である場合などは採点者に優しいだけでなく, 回答者自身の考えを整理することにも役にたつ. ただし, 図を描くときには原点, 各軸を表す物理量など図に必要なことは書いておくべきである.

座標系の選択

慣性力の考慮が必要な問題の場合, 「○◯からみた運動方程式」などの断りを入れるべきである. また, 「○◯からみた運動方程式をかけ」などの観測者の指定がない場合には慣性系(地上)からの立式が妥当であろう.

状態の変化を表す記号

ある状態が別の状態に変化するときに「 \( \to\) 」記号を用いる人も多いであろうが記述回答でも許容範囲であろう.

参考にした問題集

最終更新日



補足    (↵ 本文へ)
  1. これらの大学の採点基準は明確に公表されていないのか, なかなか採点者以外が目にすることはできないようです. 管理人も幾つかの方法でこれらの情報を探し回っています. 有益な情報があり, 公にしていいものであればその情報源とともに管理人に教えていただけると大変助かります.

  2. 外積計算は積の順序を意識する必要がある演算であるし, もし問題で積の順序について明言されたならばそれを守る必要があるが相当稀なことである.

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