2体問題

運動している二つの物体に注目しこれらをとみなそう. このように, 注目物体が二つであるような系を2体系と呼ぶ[1].

そして, 2体系に属する個々の粒子の運動を調べる代わりに, 重心運動相対運動とに分離して考えることで, 二物体の衝突などの議論を簡略化することが可能である.

まずは2体系に属する個々の物体の運動方程式から重心運動方程式相対運動方程式を導こう. その後, 運動エネルギーも重心運動によるものと相対運動によるものに分離可能であることを示す.

一般的な衝突問題では運動エネルギー保存則(もしくは反発係数の式)と運動量保存則とを併用することになるが, その計算は煩雑になりがちである. しかし, 2体系内部の物体の衝突によるエネルギー変化は相対運動エネルギーにのみ関係することを紹介する.

この手法は各種の保存則と同様に力学において強力な武器となるので, 初めての人も是非読み進めてみてほしい.

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以下では, 質量 \( m_{1} \) の物体1と質量 \( m_{2} \) の物体2の位置はそれぞれ \( \boldsymbol{r}_{1} \) , \( \boldsymbol{r}_{2} \) とする. また, 物体1の速度 \( \boldsymbol{v}_{1} \) と物体2の速度 \( \boldsymbol{v}_{2} \) はそれぞれの位置の時間微分 \( \boldsymbol{v}_{1}=\frac{d\boldsymbol{r}_{1}}{dt} \) , \( \boldsymbol{v}_{2}=\frac{d\boldsymbol{r}_{2}}{dt} \) で与えられる.

2体系の運動量保存則
重心運動方程式と相対運動方程式
重心運動エネルギーと相対運動エネルギー
エネルギー損失
反発係数とエネルギー損失


2体系の運動量保存則

2体系に属する物体1と物体2の運動方程式について考えよう.

物体1が系の外部から受ける(合)力を \( \boldsymbol{F}_{1} \) , 物体2が系の外部から受ける(合)力を \( \boldsymbol{F}_{2} \) とする. これらは2体系の外部が系内部の物体に及ぼす外力である.

また, 物体1が物体2から受ける力を \( \boldsymbol{F}_{12} \) , 物体2が物体1から受ける力を \( \boldsymbol{F}_{21} \) とする. これらは2体系内部の物体が互いに力を及ぼし合う内力である. さらに, 作用反作用の法則から \( \boldsymbol{F}_{12} \) と \( \boldsymbol{F}_{21} \) について次の関係が成立する. \[\boldsymbol{F}_{12} = – \boldsymbol{F}_{21} \quad . \notag\] より具体的には, 二体系の物体同士が触れ合っていることによる抗力や, 離れていても互いに働く万有引力, クーロン力がこれに相当する.

2体系に属する各物体に働く力を内力と外力とに区別しておけば, 物体1, 物体2の運動方程式はそれぞれ次のように書くことができる. \[\begin{aligned} m_{1} \frac{d\boldsymbol{v}_{1}}{dt} & = \boldsymbol{F}_{1} + \boldsymbol{F}_{12} \notag \\ m_{2} \frac{d\boldsymbol{v}_{2}}{dt} & = \boldsymbol{F}_{2} + \boldsymbol{F}_{21} \notag \end{aligned} \quad . \notag\] 上記二つの運動方程式の辺々をそれぞれ足し合わせると, \[\begin{align} m_{1} \frac{d\boldsymbol{v}_{1}}{dt} + m_{2} \frac{d\boldsymbol{v}_{2}}{dt} &= \boldsymbol{F}_{1} + \boldsymbol{F}_{2} + \left( \right.\boldsymbol{F}_{12} + \underbrace{\boldsymbol{F}_{21}}_{=-\boldsymbol{F}_{12}} \left. \right) \notag \\ \therefore \ \frac{d}{dt} \left( m_{1}\boldsymbol{v}_{1} + m_{2}\boldsymbol{v}_{2} \right) &= \boldsymbol{F}_{1} + \boldsymbol{F}_{2} \label{tbp_dPsysdt} \end{align}\] となる.

式\eqref{tbp_dPsysdt}において, 左辺は2体系の全運動量 \( \boldsymbol{P}_{\mathrm{sys}}=m_{1}\boldsymbol{v}_{1}+m_{2}\boldsymbol{v}_{2} \) の時間微分, 右辺は外力の和 \( \boldsymbol{F}_{\mathrm{ext}}=\boldsymbol{F}_{1}+\boldsymbol{F}_{2} \) であり, 次のように表現できる. \[\frac{d\boldsymbol{P}_{\mathrm{sys}}}{dt} = \boldsymbol{F}_{\mathrm{ext}} \label{tb_PsysFext}\] この式からは次のような事実が読み取れる.

  1. 2体系の全運動量 \( \boldsymbol{P}_{\mathrm{sys}} \) の変化は外力 \( \boldsymbol{F}_{\mathrm{ext}} \) によって引き起こされる.

  2. 2体系の全運動量 \( \boldsymbol{P}_{\mathrm{sys}} \) は内力に依存しない.

  3. 外力 \( \boldsymbol{F}_{\mathrm{ext}} \) が \( \boldsymbol{0} \) であるとき, 2体系の全運動量 \( \boldsymbol{P}_{\mathrm{sys}} \) は時間によらず一定である.(2体系の運動量保存則)

重心運動方程式と相対運動方程式

2体系の重心運動方程式

系を代表する点として, 2体系の重心がどのような運動を行うのかを議論しよう.

2体系の重心 \( \boldsymbol{r}_{G} \) は次式で与えられる. \[\boldsymbol{r}_{G} = \frac{ m_{1}\boldsymbol{r}_{1} + m_{2}\boldsymbol{r}_{2} }{ m_{1} + m_{2} } \quad . \notag\] さらに, 重心速度 \( \boldsymbol{v}_{G} \) は重心 \( \boldsymbol{r}_{G} \) の時間微分で与えられる. \[\boldsymbol{v}_{G} =\frac{d\boldsymbol{r}_{G}}{dt} = \frac{ m_{1}\boldsymbol{v}_{1} + m_{2}\boldsymbol{v}_{2} }{ M } \quad . \notag\] ここで, 2体系の全質量 \( M \) を \[M \mathrel{\mathop:}=m_{1}+m_{2} \notag\] で定義すると, 2体系の全運動量 \( \boldsymbol{P}_{\mathrm{sys}} \) , 重心速度 \( \boldsymbol{v}_{G} \) について次のような関係式が成立していることがわかる. \[\boldsymbol{P}_{\mathrm{sys}} = M \boldsymbol{v}_{G} \quad . \notag\] したがって, 式\eqref{tb_PsysFext}は重心速度を用いて次のように書き換えることができる. \[M \frac{d\boldsymbol{v}_{G} }{dt} = \boldsymbol{F}_{\mathrm{ext}} \quad . \label{tbp_MdvG}\] これは, 重心と同じ運動を行う, 系の全質量を持った物体の運動方程式とみなすことができるので, 重心運動方程式と呼ばれる. この重心運動方程式を解くことで系の重心の時間変化を知ることが可能となる.

重心運動方程式(式\eqref{tbp_MdvG})からみてとれるように, 2体系の重心速度の変化は外力によってのみ引き起こされ, 内力には依存していない. したがって, 外力が存在しない場合, 2体系の重心速度は常に一定となる.

2体系の相対運動方程式

2体系の運動のうち, 重心の運動は重心運動方程式を解くことによって得られるのであった. 続いては, 2体系の運動のうち, 重心運動を除いた運動に注目することにしよう.

重心の運動についての議論を除外する最も簡単な方法は, 重心 \( \boldsymbol{r}_{G} \) を座標原点にすえることである. すなわち, 重心と一緒に動く座標系を採用することである[2]. このような座標系では重心の位置座標は不動であり, 重心速度は \( \boldsymbol{0} \) である. さらに, 重心速度と全運動量とは比例関係にあるので, 2体系の全運動量が恒等的に \( \boldsymbol{0} \) となる座標系を選択したことと同値である.

この座標系における物体1と物体2の速度をそれぞれ \( \boldsymbol{u}_{1} \) , \( \boldsymbol{u}_{2} \) とする. このとき, 全運動量がゼロベクトルであることから次式が成立する. \[m_{1} \boldsymbol{u}_{1} + m_{2} \boldsymbol{u}_{2}= \boldsymbol{0} \ \iff \ \boldsymbol{u}_{1} = – \frac{m_{2}}{m_{1}} \boldsymbol{u}_{1} \quad . \notag\] これは, 2体系の重心座標からみた \( \boldsymbol{u}_{1} \) と \( -\boldsymbol{u}_{2} \) の向きが常に一致していることを意味しており, 物体1と物体2は同一直線上を互いに逆向きの速度で運動していることがわかる. このような二物体の運動は相対的に近づいている相対的に遠ざかっているときのみである. したがって, 二物体の相対的な位置関係を知ることが重要となる.

そこで, 我々の興味を物体1からみた物体2の相対座標 \[\boldsymbol{r}_{R}=\boldsymbol{r}_{2}-\boldsymbol{r}_{1} \notag\] に移し, この時間発展がどうなるか記述する方法を考えよう.

この相対座標 \( \boldsymbol{r}_{R} \) の時間的な変化を知りたければ, 2体系の運動方程式 \[\begin{align} m_{1} \frac{d\boldsymbol{v}_{1}}{dt} & = \boldsymbol{F}_{1} + \boldsymbol{F}_{12} \label{tbp_m1eq} \\ m_{2} \frac{d\boldsymbol{v}_{2}}{dt} & = \boldsymbol{F}_{2} + \boldsymbol{F}_{21} \label{tbp_m2eq} \end{align}\] を利用して相対座標 \( \boldsymbol{r}_{R} \) もしくは相対速度 \[\boldsymbol{v}_{R}=\frac{d\boldsymbol{r}_{R}}{dt} = \boldsymbol{v}_{2} – \boldsymbol{v}_{1} \notag\] についての運動方程式を作り出すことができればよい.

式\eqref{tbp_m1eq} \( \times \left( – \frac{1}{m_{1}} \right) \) と式\eqref{tbp_m2eq} \( \times \left( \frac{1}{m_{2}} \right) \) との和を計算すると, \[\begin{align} \frac{d\boldsymbol{v}_{2}}{dt} – \frac{d\boldsymbol{v}_{1}}{dt} &= -\frac{\boldsymbol{F}_{12}}{m_{1}} + \frac{\boldsymbol{F}_{21}}{m_{2}} -\frac{\boldsymbol{F}_{1}}{m_{1}} + \frac{\boldsymbol{F}_{2}}{m_{2}} \notag \\ \therefore \ \frac{d\boldsymbol{v}_{R}}{dt} &= \left( \frac{1}{m_{1}} + \frac{1}{m_{2}} \right) \boldsymbol{F}_{21} -\frac{\boldsymbol{F}_{1}}{m_{1}} + \frac{\boldsymbol{F}_{2}}{m_{2}} \label{tbp_submudvR} \end{align}\] となる. この式\eqref{tbp_submudvR}の各項の次元が運動方程式の次元 \( ( \) 質量 \( ) \times ( \) 加速度 \( ) = ( \) 力 \( ) \) と一致するように調整しよう.

ここで, 換算質量と呼ばれる質量の次元を持つ量 \[\mu \mathrel{\mathop:}= \left( \frac{1}{m_{1}} + \frac{1}{m_{2}} \right)^{-1} = \frac{m_{1}m_{2}}{m_{1}+m_{2}} \notag\] を定義する. この換算質量を式\eqref{tbp_submudvR}の両辺に乗じると次式を得る. \[\mu \frac{d\boldsymbol{v}_{R}}{dt} = \boldsymbol{F}_{21} + \frac{m_{1}\boldsymbol{F}_{2}-m_{2}\boldsymbol{F}_{1}}{m_{1}+m_{2}} \quad . \label{tbp_mudvR}\] この式を形式的に受け止めると, 質量 \( \mu \) の物体が速度 \( \boldsymbol{v}_{R}=\frac{d\boldsymbol{r}_{R}}{dt} \) で運動しているときの運動方程式とみなすことができる. そして, 実際には2体系に属する物体の相対的な位置関係を記述する方程式であり, 相対運動方程式と呼ばれる. 相対運動方程式により, 相対座標 \( \boldsymbol{r}_{R} \) は内力 \( \boldsymbol{F}_{21} \) と外力を含む項 \( \frac{m_{1}\boldsymbol{F}_{2}-m_{2}\boldsymbol{F}_{1}}{m_{1}+m_{2}} \) に依存していることが示された.

式\eqref{tbp_MdvG}の重心運動方程式が外力のみに依存していたのに対し, 式\eqref{tbp_mudvR}の相対運動方程式は内力に依存した項を含んでおり, 2体系内部の相互作用は相対運動方程式で記述されることになる.

重心運動方程式と相対運動方程式のまとめ

2体系に属する物体1, 物体2の運動方程式はそれぞれ次式で与えられる. \[\left\{ \begin{aligned} m_{1} \frac{d\boldsymbol{r}_{1}}{dt} = \boldsymbol{F}_{1} +\boldsymbol{F}_{12} \notag \\ m_{2} \frac{d\boldsymbol{r}_{2}}{dt} = \boldsymbol{F}_{2} +\boldsymbol{F}_{21} \notag \end{aligned} \right. \quad . \notag\] ここで, \( \boldsymbol{F}_{1} \) と \( \boldsymbol{F}_{2} \) は外力, \( \boldsymbol{F}_{12} \) と \( \boldsymbol{F}_{21} \) は内力であり, \( \boldsymbol{F}_{12}=-\boldsymbol{F}_{21} \) を満たす.

重心速度 \( \boldsymbol{v}_{G} \) と相対速度 \( \boldsymbol{v}_{R} \) , 全質量 \( M \) と換算質量 \( \mu \) の定義は次式で与えられる. \[\left\{ \begin{aligned} \boldsymbol{v}_{G} &= \frac{m_{1}\boldsymbol{v}_{1}+m_{2}\boldsymbol{v}_{2}}{m_{1}+m_{2}} \notag \\ \boldsymbol{v}_{R} &= \boldsymbol{v}_{2} – \boldsymbol{v}_{1} \notag \end{aligned} \right. , \ \left\{ \begin{aligned} M &= m_{1} + m_{2} \notag \\ \mu &= \frac{m_{1}m_{2}}{m_{1}+m_{2}} \notag \end{aligned} \right.\]

重心運動方程式と相対運動方程式は次式で与えられる. \[\begin{aligned} M \frac{d\boldsymbol{v_{G}}}{dt} &= \boldsymbol{F}_{1} + \boldsymbol{F}_{2} \notag \\ \mu \frac{d\boldsymbol{v_{R}}}{dt} &= \boldsymbol{F}_{21} + \frac{m_{1}\boldsymbol{F}_{2}-m_{2}\boldsymbol{F}_{1}}{m_{1}+m_{2}} \notag \end{aligned}\] 重心運動方程式は内力に依存せずに外力のみに依存し, 内力に関する物理は相対運動方程式で記述される.

重心運動エネルギーと相対運動エネルギー

2体系の運動エネルギーの総和は, 重心運動に関するエネルギーと相対運動に関するエネルギーとに分離可能なことを示そう.

まずは, 2体系に属する各物体の位置座標 \( \boldsymbol{r}_{1} \) と \( \boldsymbol{r}_{2} \) を重心座標 \( \boldsymbol{r}_{G} \) と相対座標 \( \boldsymbol{r}_{R} \) をもちいて表現しよう. これは非常に容易で, 下図より幾何学的に求めることができる.

\[\begin{aligned} \boldsymbol{r}_{1} & = \boldsymbol{r}_{G} – \frac{m_{2}}{m_{1}+m_{2}}\boldsymbol{r}_{R} \notag \\ \boldsymbol{r}_{2} & = \boldsymbol{r}_{G} + \frac{m_{1}}{m_{1}+m_{2}}\boldsymbol{r}_{R} \notag \end{aligned} \quad .\] したがって, 各物体の速度 \( \boldsymbol{v}_{1} \) と \( \boldsymbol{v}_{2} \) を重心速度 \( \boldsymbol{v}_{G} \) と相対速度 \( \boldsymbol{v}_{R} \) をもちいて次式のように表現できる. \[\begin{aligned} \boldsymbol{v}_{1} & = \boldsymbol{v}_{G} – \frac{m_{2}}{m_{1}+m_{2}}\boldsymbol{v}_{R} \notag \\ \boldsymbol{v}_{2} & = \boldsymbol{v}_{G} + \frac{m_{1}}{m_{1}+m_{2}}\boldsymbol{v}_{R} \notag \end{aligned} \quad .\] さて, 2体系の運動エネルギーの総和 \( K \) は, 2体系に属する各物体の運動エネルギー \[K_{1} = \frac{1}{2}m_{1}\boldsymbol{v}_{1}^{2}, \quad K_{2} = \frac{1}{2}m_{2}\boldsymbol{v}_{2}^{2} \notag\] の和である. この運動エネルギーの総和 \( K \) を \( \boldsymbol{v}_{G} \) , \( \boldsymbol{v}_{R} \) であらわすと, \[\begin{aligned} &\frac{1}{2}m_{1}\boldsymbol{v}_{1}^{2} + \frac{1}{2}m_{2}\boldsymbol{v}_{2}^{2} \notag \\ &= \frac{1}{2}m_{1} \left( \boldsymbol{v}_{G} – \frac{m_{2}}{m_{1}+m_{2}}\boldsymbol{v}_{R} \right)^{2} + \frac{1}{2}m_{2} \left( \boldsymbol{v}_{G} + \frac{m_{1}}{m_{1}+m_{2}}\boldsymbol{v}_{R} \right)^{2} \notag \\ &= \frac{1}{2}\left( m_{1}+m_{2}\right) \boldsymbol{v}_{G}^{2} + \frac{1}{2}\left( \frac{m_{1}m_{2}}{m_{1}+m_{2}} \right) \boldsymbol{v}_{R}^{2} \notag \\ &= \frac{1}{2}M\boldsymbol{v}_{G}^{2} + \frac{1}{2}\mu \boldsymbol{v}_{R}^{2} \notag \end{aligned}\] となる. 最右辺第1項は重心運動にのみ関係し, 重心運動エネルギーと呼ばれている. 最右辺第2項は相対運動にのみ関係し, 相対運動エネルギーと呼ばれている.

したがって, 物体1, 物体2それぞれの運動エネルギー \( K_{1} \) , \( K_{2} \) の和は, 重心運動エネルギー \( K_{G}=\frac{1}{2}M\boldsymbol{v}_{G}^{2} \) と相対運動エネルギー \( K_{R}=\frac{1}{2}\mu\boldsymbol{v}_{R}^{2} \) の和に書き換えることができる. \[K_{1} + K_{2} = K_{G} + K_{R} \quad . \notag\] 2体系の運動エネルギーを重心運動エネルギーと相対運動エネルギーとに分離したことの利点について述べよう.

重心運動エネルギー \( K_{G} = \frac{1}{2} M\boldsymbol{v}_{G}^{2} \) は重心速度にのみ依存している. したがって, 2体系に外力が働いておらず, 重心速度が一定に保たれる運動では重心運動エネルギーは常に一定の値となる.

相対運動エネルギー \( K_{R}=\frac{1}{2}\mu \boldsymbol{v}_{R}^{2} \) は相対速度にのみ依存している. したがって, 衝突の前後で二つの物体の相対速度が変わる場合, 相対エネルギーのみが変化することになる.

すぐあとで詳しく述べるように, 二つの物体の衝突によるエネルギーの損失は相対運動エネルギーのみで議論可能となる.

重心運動エネルギーと相対運動エネルギーのまとめ

重心運動エネルギー \( K_{G} \) と相対運動エネルギー \( K_{R} \) の定義は2体系の全質量 \( M \) と換算質量 \( \mu \), 重心速度 \( \boldsymbol{v}_{G} \) と相対速度 \( \boldsymbol{v}_{R} \) を用いて次式で与えられる. \[ \begin{aligned} K_{G} &= \frac{1}{2} M\boldsymbol{v}_{G}^{2} \\ K_{R} &= \frac{1}{2} \mu \boldsymbol{v}_{R}^{2} \end{aligned} \]

物体1の運動エネルギー \( K_{1} \) と物体2の運動エネルギー \( K_{2} \) の和は, 重心運動エネルギー \( K_{G} \) と相対運動エネルギー \( K_{R} \) の和に等しい. \[ K_{1} + K_{2} = K_{G} + K_{R} \notag \]

エネルギー損失

いま, 物体1と物体2を系とみなした2体系には外力が働いていないとし, これらの物体が衝突したことによる系の運動エネルギー変化について考えよう. このような問題では, 2体系の運動エネルギーが重心運動エネルギーと相対運動エネルギーとに分離できるという事実が大きな役割を持つことになる.

衝突によって互いの物体が及ぼしあう力は内力であるので, 重心運動エネルギーは衝突の前後で変化しない. したがって, 衝突前の重心運動エネルギー \( K_{G} \) と衝突後の運動エネルギー \( K_{G}^{\prime} \) との間に次式が成立している. \[K_{G} = K_{G}^{\prime} \quad . \notag\] 一般的に, 衝突によって両物体が受ける力は保存力ではなく, 摩擦力のような非保存力である. この力が具体的にどのようなものかは調べることは困難である. しかし, エネルギーが摩擦熱や音の振動といったものに形態をかえ, 2体系の運動エネルギーの総和を減少させ得ることはわかる.

したがって, 衝突前の相対運動エネルギーを \( K_{R} \) , 衝突後の相対運動エネルギーを \( K_{R}^{\prime} \) とすると, 衝突前後の2体系の運動エネルギーの総和について次式が成立していることがわかる. \[K_{G} +K_{R} \ge K_{G}^{\prime} + K_{R}^{\prime} \quad . \notag\] ただし, 重心運動エネルギーは衝突による内力では変化しないので, 結果的に, 相対運動エネルギーに関する不等式 \[K_{R} \ge K_{R}^{\prime} \notag\] が得られる.

衝突によって系から失われることになる運動エネルギー損失 \( \Delta K \) は, 衝突前に2体系が持っていた全運動エネルギー \( K=K_{G}+K_{R} \) と, 衝突後に2体系が持つ全運動エネルギー \( K^{\prime}=K_{G}^{\prime}+K_{R}^{\prime} \) との差である. そして, 重心運動エネルギーが変化しないことに注意すれば, エネルギー損失は相対運動エネルギーの変化だけに注目すればよいことがわかる. \[\begin{aligned} \Delta K &= K – K^{\prime} \notag \\ &= \left( K_{G} + K_{R} \right) – \left( K_{G}^{\prime} + K_{R}^{\prime} \right) \notag \\ &= K_{R} – K_{R}^{\prime} \ge 0 \quad . \notag \end{aligned}\]

反発係数とエネルギー損失

反発係数(1次元)

物体1と物体2の衝突が1次元の場合について考えよう.

二つの物体が運動している直線を軸に取り, 衝突前の物体1, 物体2の速度をそれぞれ \( v_{1} \) , \( v_{2} \) とする. また, 衝突後の物体1, 物体2の速度をそれぞれ \( v_{1}^{\prime} \) , \( v_{2}^{\prime} \) とする. したがって, 相対速度 \( v_{R}=v_{2}-v_{1} \) で近づいて衝突し, 衝突後に相対速度 \( v_{R}^{\prime}=v_{2}^{\prime}-v_{1}^{\prime} \) となったとしよう.

ここで, 衝突前に相対的に近づく速さと, 衝突後に相対的に遠ざかる速さとの比 \[e = \frac{ \left| v_{R}^{\prime} \right| }{ \left| v_{R} \right| } = \frac{ \left| v_{2}^{\prime}-v_{1}^{\prime} \right| }{ \left| v_{2}-v_{1} \right| } \notag\] を反発係数という. 衝突前後で \( v_{R} \) と \( v_{R}^{\prime} \) の符号が反転することを考慮すれば, 初めから \[e= -\frac{v_{2}^{\prime}-v_{1}^{\prime} }{ v_{2}-v_{1} } \notag\] と書いてもよい.

この反発係数の値は \( 0 \le e \le 1 \) であり, 衝突させる二つの物体の性質によって定まる量であり, 衝突前の相対速度 \( v_{R} \) に依存しないことが知られている.

後に紹介するように, 物体同士の衝突は反発係数の値に応じて, (完全)弾性衝突, 非弾性衝突, 完全非弾性衝突に分類される.

反発係数とエネルギー損失(1次元)

反発係数の値が事前に調べられていれば, 衝突前の相対運動エネルギー \[K_{R} = \frac{1}{2} \mu v_{R}^{2} = \frac{1}{2} \mu \left( v_{2} – v_{1} \right)^{2} \notag\] と衝突後の相対運動エネルギー \[K_{R}^{\prime} = \frac{1}{2} \mu {v_{R}^{\prime}}^{2} = \frac{1}{2} \mu e^{2} \left( v_{2} – v_{1} \right)^{2} \notag\] との間に次式が成立していることが分かる. \[K_{R}^{\prime} = e^{2} K_{R} \quad . \notag\] 一方, 衝突によって互いの物体が受ける力は2体系の内力であり, 重心速度は変化しない. したがって, 重心運動エネルギーは衝突の前後で変化しない.

以上より, 1次元的な衝突によって系から失われる運動エネルギー \( \Delta K \) は,衝突前後の相対運動エネルギーの差 \[\begin{aligned} \Delta K &= K – K^{\prime} \notag \\ &= K_{R} – K_{R}^{\prime} \notag \\ &= \left( 1 – e^{2} \right) K_{R} \notag \end{aligned}\] で求めることができる.

衝突の種類

完全非弾性衝突

衝突によるエネルギー損失 \( \Delta E \) が最大であるとき, すなわち, \( \Delta E \) が2体系がはじめに持っていた相対運動エネルギー \( K_{R} \) に一致しているときの反発係数 \( e \) は \( 0 \) である. このような衝突を完全非弾性衝突という.

完全非弾性衝突は, 衝突後の相対速度 \( v_{R}^{\prime} \) がゼロであることと同値である. したがって, 二物体が衝突後に一体となって運動するような現象に相当している.

非弾性衝突

衝突によるエネルギー損失が \( 0 < \Delta E < K_{R} \) であるとき, 反発係数 \( e \) は \( 0 < e < 1 \) である. このような衝突を非弾性衝突という.

身の回りで起きている衝突現象の多くはこの非弾性衝突に相当している.

(完全)弾性衝突

衝突によるエネルギー損失 \( \Delta E \) が \( 0 \) であり, 衝突の前後で形の運動エネルギーが保存しているときの反発係数 \( e \) は \( 1 \) である. このような衝突を(完全)弾性衝突という.

完全弾性衝突では衝突の前後で2体系の全運動エネルギーが変化しないため, 反発係数が \( e=1 \) であるという式は2体系の力学的エネルギー保存則と同値である.

反発係数(2次元)

下図に示すように物体同士の衝突が2次元的な場合の反発係数の定義について簡単に述べる.

このような場合, 物体衝突時の接触面にそって \( X \) 軸, それと垂直な方向に \( Y \) 軸を設定する.

そして, 衝突直前の物体1の速度が \( ( v_{1;X}, v_{1;Y} ) \) , 衝突直後の物体1の速度が \( ( v_{1;X}^{\prime}, v_{1;Y}^{\prime} ) \) であったとしよう. 物体2についても同様に, 衝突直前の速度が \( ( v_{2;X}, v_{2;Y} ) \) , 衝突直後の速度が \( ( v_{2;X}^{\prime}, v_{2;Y}^{\prime} ) \) であったとする.

このとき, 反発係数 \( e \) の定義は衝突面の法線成分( \( Y \) 軸にそった成分)のみの次式で定義される. \[e \mathrel{\mathop:}= – \frac{v_{2;Y}^{\prime} – v_{1;Y}^{\prime}}{v_{2;Y} – v_{1;Y}} \quad . \notag\] 衝突による摩擦が無視できる場合, 各物体の \( X \) 軸方向の運動量は変化せず, 各物体の \( Y \) 軸方向の運動量のみが衝突による力積によって変化することになる. しかし, 衝突による摩擦が無視できない場合, \( X \) 軸方向の運動量も変化することになるので注意して欲しい.

反発係数とエネルギー損失

外力が働かないとき, 2体系の重心速度は変化せず, 系の運動量が保存する. また, 2体系の重心運動エネルギーは衝突の前後で変化しない. \[ K_{G} = {K}_{G}^{\prime} \notag \]

外力が働かないとき, 衝突前後の2体系のエネルギー損失 \( \Delta K = K – K^{\prime} \) は, 系の相対運動エネルギーの変化 \( K_{R} – K_{R}^{\prime} \) に等しい. \[ \Delta K = K – K^{\prime} = K_{R} – K_{R}^{\prime} \notag \]

1次元衝突の場合, 反発係数 \( e \) は衝突前に相対的に近づく速さ \( \left| v_{R} \right| = \left| v_{2} – v_{1}\right| \) に対する衝突後に相対的に遠ざかる速さ \( \left| v_{R}^{\prime} \right| = \left| v_{2}^{\prime} – v_{1}^{\prime} \right| \) の比で定義される. \[ e = \frac{\left| v_{R}^{\prime} \right|}{\left| v_{R} \right|} = \frac{ \left| \boldsymbol{v}’_2 – \boldsymbol{v}’_1 \right| }{\left| \boldsymbol{v}_2 – \boldsymbol{v}_1 \right| } \notag \] 2次元衝突の場合, 衝突面の法線成分に注目して定義される.

反発係数に応じて衝突は次の3つに分類される.

  1. (完全)弾性衝突 : \(e = 1 \)
    衝突の前後で系の運動エネルギーが保存する. エネルギー保存則と等価.
  2. 非弾性衝突 : \( 0 < e < 1 \)
    衝突の前後で系の運動エネルギーが減少する.
  3. 完全非弾性衝突 : \( e = 0 \)
    衝突の前後で系の運動エネルギーが減少する. 衝突後に一体になる.

1次元衝突において, 反発係数が \( e \) の場合, 衝突による2体系のエネルギー損失 \( \Delta K \) は衝突前の相対運動エネルギー \( K_{R} \) をもちいて次式で与えられる. \[ \Delta K = \left( 1 – e^{2} \right) K_{R} \notag \]

下図のように, 質量 \( M \) の箱と, 箱の内部に質量 \( m \) の小球が入れられているとする. また小球に初速度 \( \boldsymbol{v}_{A} \) を与え, 箱には初速度 \( \boldsymbol{v}_{B} \) を与えたとする.

小球と箱は繰り返し衝突をおこなうが, 十分に長い時間が経過すると小球と箱の間の摩擦によって, 小球は箱に対して静止し一体となって運動することになる. この間に摩擦によって失われたエネルギーについて考える.

箱と小球を一つの系とみなせば摩擦力は内力であり, 運動量保存則が成立するので重心運動エネルギーは一定に保たれる. したがって, エネルギーの変化は相対運動エネルギーの変化に等しい.

始状態の相対運動エネルギーは換算質量 \( \displaystyle{ \mu = \frac{mM}{m+M} } \) を用いて \[ \frac{1}{2} \mu \left( \boldsymbol{v}_{B} -\boldsymbol{v}_{A} \right)^2 \notag \] と表される. 終状態では小球と箱の相対速度が \( \boldsymbol{0} \) なので, \[ \frac{1}{2} \mu \boldsymbol{0}^2 = 0 \notag \] である. したがって, 相対運動エネルギーの減少量は \[ \frac{1}{2} \mu \left( \boldsymbol{v}_{B} -\boldsymbol{v}_{A} \right)^2 – 0 = \frac{1}{2} \mu \left( \boldsymbol{v}_{B} -\boldsymbol{v}_{A} \right)^2 \notag \] である. 以上の結果より, 摩擦によって失われたエネルギー \( \Delta E \) は \[ \begin{aligned} \Delta E & = \frac{1}{2} \mu \left( \boldsymbol{v}_{B} -\boldsymbol{v}_{A} \right)^2 \\ & = \frac{1}{2} \frac{mM}{m+M} \left( \boldsymbol{v}_{B} -\boldsymbol{v}_{A} \right)^2 \end{aligned} \] であることがわかる.

最終更新日
重心 実験室系と重心系



補足    (↵ 本文へ)
  1. 注目する二物体が質点ならば2質点系などとも呼ぶ.

  2. このような座標系は重心系と呼ばれる. ここでは重心系の話題には深入りしない.

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One thought on “2体問題

  1. とってもわかりやすかったです!

    非常にためになりました

    ありがとうございます

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