運動方程式

高校物理に登場する には次のような力がある.

  1. 重力
    その本質は 万有引力である. 今は地表上で質量 \(m\)を持つ物体は鉛直下向きに \(mg\)の大きさの力が加わることだけ知っておいてもらえばよい. ここで \(g\)重力加速度を表す.

  2. 電磁気力
    電荷を持つ物体は電場や磁場から力を受ける. 電磁気の章で詳しく取り扱う.

  3. 接触による力(抗力・張力・弾性力)
    物体は別の物体と接触している面からは 作用反作用の法則より, 必ず力を受けることになる. 抗力とは垂直抗力と摩擦力からなる力である. 張力とは糸などが物体を引っ張る力, 弾性力は押し縮められたバネなどが元に戻ろうとする復元力などを表す.

運動方程式

運動方程式とは力と物体の運動[1]を結びつけてくれる大切な方程式である .

注目物体の質量を \(m\)とする. 注目物体が受ける力の総和( 合力)を \( \boldsymbol{F}\), 注目物体の加速度を \( \displaystyle{ \boldsymbol{a} = \frac{ d^2 \boldsymbol{r} }{dt^2} }\)とすると, 注目物体の運動方程式は, \[ m\frac{ d^2 \boldsymbol{r} }{dt^2} = \boldsymbol{F} \quad \left( m \boldsymbol{a} = \boldsymbol{F} \right) \notag \] で与えられる.

運動方程式をたてることが出来れば物体の加速度を知ることができる. 加速度を積分すれば速度が求まり, 速度が求まれば積分によって位置が求まる, というふうにして物体の運動を完全に記述することができるのである. \[ \begin{aligned} \frac{d^2 \boldsymbol{r} }{dt^2} &= \frac{1}{m}\boldsymbol{F} \\ \frac{d \boldsymbol{r} }{dt} &= \int \frac{d^2 \boldsymbol{r}}{dt^2} \ dt + C_1 \\ &= \int \frac{1}{m}\boldsymbol{F} \ dt + C_1 \\ \boldsymbol{r} &= \int \frac{d \boldsymbol{r}}{dt} \ dt + C_2 \\ &= \int \left\{ \int \frac{1}{m}\boldsymbol{F} \ dt + C_1 \right\} \ dt + C_2 \end{aligned} \]ただし, \(C_1\), \(C_2\)はそれぞれ積分定数である.

運動方程式と位置・速度・加速度の関係を整理すると下図のようになる.

運動方程式と位置・速度・加速度の関係

運動方程式のたて方

運動方程式は以下の手順にそって立式する. この手順は非常に重要であり, 運動方程式を書くことができれば問題の大部分は解決したといっても過言ではない.

  1. 注目物体を決める.

  2. 注目物体が受ける力を全て図示する.

  3. 座標軸を適切にとる.

  4. 力を各座標軸に沿って分解する.

  5. 運動方程式の左辺に(注目物体の質量 \( \times\)その軸方向の加速度)を, 右辺にその軸方向の合力を書く.

最終的にこれらの手順を自然と実行できるようになるまで, 訓練を続けてほしい.

運動方程式のたて方の具体例1

運動方程式をたてる一番最初の例として, 地表上で静止した物体の運動方程式をたてる.

  1. 注目物体を決める.

    まずは注目する物体を決める.

  2. 注目物体が受ける力を全て図示する.

    物体に作用する力で考慮するのはまず重力である. 地表における重力の方向は鉛直下向きである. 次に電磁気力であるが, 特別ことわりがない限り物体は中性で電磁気力が働かないとする. 最後に接触力であるが, 注目物体が唯一接触しているのは地面であり, 地面からは接触である抗力 \( \boldsymbol{R}\)が注目物体に働く.

    諸君はこの図を見た時に「抗力がなんであさっての方向を向いているのか?」と思ったであろうが, その感覚は今までの経験から運動方程式を解いた結果を知っているからである. なので, ここではひとまず抗力がの方向を向いているか自明ではないとしている[2].

  3. 座標軸を適切にとる.

    ここでは地面に対して平行な軸を \(x\)軸, \(x\)軸に対して垂直に \(y\)軸をとる.

  4. 力を各座標軸に沿って分解する.

    設定した \(x\)軸, \(y\)軸方向に全ての力の成分を分解する.

    ここでは抗力 \( \boldsymbol{R}\)を分解して, \(x\)軸方向の成分 \(R_x\)\(y\)軸方向の成分 \(R_y\)に分解する.

  5. 運動方程式の左辺に(注目物体の質量 \( \times\)その軸方向の加速度)を, 右辺にその軸方向の合力を書く.

    物体の位置座標を\( \boldsymbol{r}\)= (x,y)とすると運動方程式は \[ m\frac{d^2 \boldsymbol{r}}{dt^2} = m\boldsymbol{g} + \boldsymbol{R} \]となる. 各成分毎に書き表すと, \[ \begin{aligned} m \frac{d^2 x}{dt^2} &= 0 + R_x = 0 + R \cos{\theta} \\ m \frac{d^2 y}{dt^2} &=- mg + R_y =- mg + R \sin{\theta} \end{aligned} \]

    ここで, 物体が静止しているということから, \[ \begin{gathered} \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} = \boldsymbol{0} \quad \Longleftrightarrow \quad \left(\frac{dx}{dt} , \frac{dy}{dt} \right)= \left(0, 0 \right) \\ \frac{d^2 \boldsymbol{r}}{dt^2} = \boldsymbol{0} \quad \Longleftrightarrow \quad \left(\frac{d^2 x}{dt^2} , \frac{d^2 y}{dt^2} \right)= \left(0, 0 \right) \end{gathered} \]である. \(x \)軸方向の運動方程式より, \[ 0 = R \cos{\theta} \to \ \theta = \frac{\pi}{2} \]\(y \)軸方向の運動方程式より, \[ \begin{aligned} & 0 =- mg + R \sin{\theta} \\ \underbrace{\to}_{ \theta = \frac{\pi}{2} } \quad & 0 =- mg + R \\ &\therefore \ R = mg \end{aligned} \]こうして大きさ・向きともに未知の力であった抗力が \[ \boldsymbol{R} = \left(mg , 0 \right) \]であることがわかった. 以上のことがわかっていれば, 「水平面上に置かれた物体に働く抗力は鉛直上向き方向の抗力である垂直抗力のみであり, その大きさは注目物体に働く合力の鉛直下向き成分の大きさに等しい」が常識となるのである.

運動方程式のたて方の具体例2

運動方程式をたてる次の例として, あらい表面をもつ固定された斜面上で静止した質量 \(m\)の体Aの運動方程式をたてる.

  1. 注目物体を決める.

    まずは注目する物体を決める. ここでは物体Aに注目することにする.

  2. 注目物体が受ける力を全て図示する.

    まずは鉛直下向きに物体に重力を描く. 次に, 注目物体が唯一接触しているのは地面であり, 地面からは抗力 \( \boldsymbol{R}\)が注目物体に働く. なお, 先の問題でわかったように, 静止した物体に働く合力は \( \boldsymbol{0}\)になることは自明であるが, ここでも抗力の大きさと向きは不明としておく.

  3. 座標軸を適切にとる.

    ここでは斜面に対して平行な軸を \(x\)軸, \(x\)軸に垂直に \(y\)軸をとる.

  4. 力を各座標軸に沿って分解する.

    設定した \(x\)軸, \(y\)軸方向に全ての力の成分を分解する.

    このとき, 角度の取り方についてはそれぞれ図のようであるとする.

  5. 運動方程式の左辺に(注目物体の質量 \( \times\)その軸方向の加速度)を, 右辺にその軸方向の合力を書く.

    物体の位置座標を \( \boldsymbol{r} = ( x , y )\)とすると運動方程式は \[ m\frac{d^2\boldsymbol{r}}{dt^2} = m\boldsymbol{g} + \boldsymbol{R} \]となる. 各成分毎の運動方程式は, \[ \begin{aligned} & m \frac{d^2x}{dt^2} = mg \cos{\theta} -R \cos{\theta'} \\ & m \frac{d^2y}{dt^2} =- mg\sin{\theta} + R\sin{\theta'} \end{aligned} \]

    ここで, 物体が静止しているということから, \[ \begin{gathered} \frac{d\boldsymbol{r}}{dt} = \boldsymbol{0} \\ \Longleftrightarrow \quad \left(\frac{dx}{dt} , \frac{dy}{dt} \right)= \left(0, 0 \right) \\ \frac{d^2 \boldsymbol{r}}{dt^2} = \boldsymbol{0} \\ \Longleftrightarrow \quad \left(\frac{d^2x}{dt^2} , \frac{d^2 y}{dt^2} \right)= \left(0, 0 \right) \end{gathered} \]より, \[ \begin{aligned} & 0 = mg \cos{\theta} -R \cos{\theta'} \\ \to & \quad mg \cos{\theta} = R \cos{\theta'} \label{斜面x方向の釣り合い} \\ & 0 =- mg\sin{\theta} + R\sin{\theta'} \\ \to & \quad mg\sin{\theta} = R\sin{\theta'} \label{斜面y方向の釣り合い} \end{aligned} \]

    \(y \)方向の式を\(x \)方向の式で辺々を割ると, \[ \begin{aligned} &\frac{ mg \sin{\theta} }{ mg \cos{\theta} } = \frac{ R \sin{\theta} }{ R \cos{\theta'} } \\ \to \ & \tan{\theta} = \tan{\theta'} \\ & \therefore \ \theta = \theta' \end{aligned} \] \( \theta = \theta'\)を元の運動方程式に代入すると, \[ R = mg \]を得る.

    こうして抗力が \[ \boldsymbol{R} = \left(- R_x , R_y \right) = \left(- R\cos{\theta} , R\sin{\theta} \right) \]であることがわかった. 抗力 \( \boldsymbol{R}\)の斜面とは垂直方向の力 \(R\sin{\theta}\)垂直抗力といい, 抗力 \( \boldsymbol{R}\)の斜面方向の力 \(R\cos{\theta}\)(静止)摩擦力という.

最終更新日
運動の3法則 圧力と浮力



補足    (↵ 本文へ)
  1. ここでいう「運動」とは, 加速度・速度・位置などを表す.

  2. では, 「なぜ重力の方向は初めから下向きに設定したのか?」と思った人は正しい. 実は重力の方向は運動方程 式とは別に万有引力の法則によって定められるのである.

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