1次元運動における保存力とエネルギー保存則

1次元運動の運動の場合, 力が位置 \( x(t) \) のみの関数 \( F(x) \) であれば, 適当な基準点 \( x_{0} \) に対するポテンシャルエネルギー(位置エネルギー) \( U(x(t)) \) を定義できる. \[U(x) =- \int_{x_{0}}^{x} F(x)\,dx \quad . \notag \] ポテンシャルエネルギーを定義できる力を保存力, 定義できないものを非保存力という.

運動エネルギー \( K(t) = \frac{1}{2}m{v(t)}^{2} \) と位置エネルギー \( U(x(t)) \) の和 \( E = K + U \)を力学的エネルギーという.

時刻 \( t_{A}\) と時刻 \( t_{B}\) での力学的エネルギーの変化は, 非保存力 \( F_{nc}\) が位置 \( x(t_{A}) \) から位置 \( x(t_{B}) \) への経路 \( \mathrm{C}_{A \to B} \)に沿ってした仕事によって引き起こされる. \[ E(t_{B}) – E(t_{A}) = \int_{\mathrm{C}_{A \to B}}F_{nc}\,dx \quad . \notag \] 非保存力が仕事をしなければ力学的エネルギーは保存される.

運動方程式を書き換えることで, 仕事と運動エネルギーという量を定義した.(1次元における仕事と運動エネルギー) 今回は, 仕事とエネルギーの相互関係に注目してエネルギー保存則について議論する.

また, 運動エネルギーと並んで重要な概念であるポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)を定義することで, 力学的エネルギー保存則という有用な保存則を紹介する.

最後には発展的な内容として, 物体が運動可能な範囲やポテンシャルエネルギーの極小値付近での運動がどう表されるのかについても簡単に紹介し, 単振動と呼ばれる運動につながる話をする.

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エネルギー保存則
力学的エネルギー保存則
位置エネルギーと保存力
非保存力
非保存力と力学的エネルギー
運動可能な領域


エネルギー保存則

質量 \( m \) の質点が \( x \) 軸上のみを運動しているとし, ( \( x \) 軸方向を向いた)力 \( F_{x} \) を受けながら速度 \( v_{x}=\frac{dx}{dt} \) で運動しているとしよう. このとき, 質点の運動方程式は \[m \frac{dv_{x}}{dt} = F_{x} \notag\] となる. 運動方程式の両辺に \( v_{x}=\frac{dx}{dt} \) を乗じた式の左辺に合成関数の微分を適用することで次のような変形が可能となる. \[m v_{x} \frac{dv_{x}}{dt} = F_{x} v_{x} \ \to \ \frac{d}{dt} \left( \frac{1}{2} m {v_{x}(t)}^{2} \right) = F_{x} v_{x} \notag\] ここで, 運動エネルギー \( K(t) \) 及び時刻 \( t_{A} \) から \( t_{B} \) までの間に(合)力 \( F_{x} \) のする仕事 \( W \) を \[\begin{aligned} K(t) \mathrel{\mathop:}&= \frac{1}{2}m{v_{x}(t)}^{2} \notag \\ W \mathrel{\mathop:}&= \int_{t_{A}}^{t_{B}} F_{x} v_{x}\,dt = \int_{\mathrm{C}_{A \to B}}F_{x}\,dx \notag \end{aligned}\] と定義しておく. ここで \( \int_{\mathrm{C}_{A \to B}}F_{x}\,dx \) は力 \( F_{x} \) を \( x(t_{A}) \) から \( x(t_{B}) \) まで移動する経路 \( \mathrm{C}_{A \to B} \) に沿って積分を実行する線積分を意味している.

最終的に, 時刻 \( t_{A} \) から \( t_{B} \) までの間の運動エネルギーの変化量と仕事との間に \[K(t_{B}) – K(t_{A}) = W \label{KbKaW}\] が成立することになる. これは, 運動エネルギーを \( K(t_{A}) \) から \( K(t_{B}) \) へと増減されるためには仕事が必要であり, 仕事とはエネルギー供給の一形態であることを意味している.

このエネルギーという量は, 力学以外の様々な分野でも登場することになる. そして, エネルギーというのはその形態を変えつつも失われること無く, このことをエネルギー保存則という[1].

力学的エネルギー保存則

位置 \( x(t) \) のみに依存した関数 \( U(x) \) が存在し, \( U(x) \) が \[F_{x} v_{x} =- \frac{d}{dt}U(x) \label{FvUdef}\] を満たすとしよう. このとき, \[\frac{d}{dt} \left( \frac{1}{2} m {v_{x}}^{2} \right) = F_{x} v_{x} \notag\] は \[\frac{d}{dt} \left[ \frac{1}{2} m {v_{x}}^{2} + U(x) \right] = 0 \label{ec1da}\] となる. したがって, 運動エネルギー \( K(t)=\frac{1}{2}m{v_{x}(t)}^{2} \) と関数 \( U(x(t)) \) の和が時間によらずに一定で \[E \mathrel{\mathop:}= K(t) + U(x(t)) = \mathrm{const.} \label{ec1db}\] となることがわかる. このような関数 \( U(x) \) を位置エネルギーと呼び, すぐあとで詳しく議論する.

そして, 運動エネルギーと位置エネルギーの和 \( E \) を力学的エネルギーと呼び, 力学的エネルギーが時間によらずに一定に保たれるという式\eqref{ec1da}もしくは式\eqref{ec1db}のことを力学的エネルギー保存則と呼ぶ[2]. 実際に物理の問題演習を行なっていくと, この力学的エネルギー保存則が非常に有用なものであることを痛感するであろう.

位置エネルギーと保存力

以下では, 位置エネルギー \( U(x) \) を定義できるためには力 \( F_{x} \) がどのような性質を携えておけばよいのかを確認しよう.

そこで, まずは位置エネルギーが \( U(x) \) が存在するとき, \( F_{x} \) がどのような性質を持つのかを確かめておこう.

位置 \( x \) が \( x=x(t) \) であるので, 位置エネルギー \( U(x(t)) \) の時間微分は合成関数の微分をもちいて, \[\frac{d U(x(t))}{dt} = \frac{dU(x)}{dx} \frac{dx(t)}{dt} = \frac{dU}{dx} v_{x} \notag\] と表すことができる. これが \( – F_{x} v_{x} \) に等しいことから, \[\ F_{x} =- \frac{dU(x)}{dx} \label{FdUdx}\] が成立する. したがって, \( U(x) \) が存在するとき, 力 \( F_{x} \) は位置 \( x \) のみに依存していることがわかる.

逆に, 力 \( F_{x} \) が位置 \( x \) のみの関数 \( F_{x}=F_{x}(x) \) であるとしよう[3]. このとき, 仕事 \( W \) は時刻 \( t_{A} \) における位置を \( x_{A}=x(t_{A}) \) , 時刻 \( t_{B} \) における位置を \( x_{B}=x(t_{B}) \) とすると置換積分を用いて \[\int_{t_{A}}^{t_{B}} F_{x}(x) \frac{dx}{dt}\,dt = \int_{x_{A}}^{x_{B}} F_{x}(x)\, dx \label{FintTtoX}\] と書くことができる.

ここで, とある点 \( x=x_{0} \) を基準とした位置 \( x \) のみで決まる関数として, \[U(x) \mathrel{\mathop:}=- \int_{x_{0}}^{x} F(x)\,dx\] なるものを導入しよう[4]. このような関数 \( U(x) \) をもちいると, 式\eqref{FintTtoX}は \[\begin{aligned} \int_{x_{A}}^{x_{B}} F_{x}(x)\, dx & = \int_{x_{A}}^{x_{0}} F_{x}(x)\, dx + \int_{x_{0}}^{x_{B}} F_{x}(x)\, dx \notag \\ & = U(x_{A}) – U(x_{B}) \notag \end{aligned}\] と \( x(t_{A}) \) , \( x(t_{B}) \) の位置座標みで定まることになる.

このとき, エネルギー保存則は \[\begin{aligned} &K(t_{B}) – K(t_{A}) = U(x_{A}) – U(x_{B}) \notag \\ \iff \ & K(t_{A}) + U(x(t_{A})) = K(t_{B}) + U(x(t_{B})) \notag \end{aligned}\] となり, 運動エネルギー \( K(t) \) と位置のみの関数 \( U(x(t)) \) の和が時間によらずに一定であるという力学的エネルギー保存則を示すことができる.

さらに, 関数 \( U(x) \) は微分積分学の基本定理により, \[\frac{d}{dx}U(x) =- \frac{d}{dt}\int_{x_{0}}^{x} F(x)\,dx =- F_{x} \notag\] を満たすことから, \( U(x) \) は式\eqref{FvUdef}で定義した位置エネルギーにほかならない.

以上より, 1次元運動を行う物体に作用する力 \( F_{x} \) が位置 \( x \) のみの関数 \( F_{x}(x) \) であるならば, ある点 \( x_{0} \) を基準とした位置のみに依存した位置エネルギー \( U(x) \) が存在し, \[U(x) =- \int_{x_{0}}^{x} F(x)\,dx \notag\] で定義されることが示された. このように, 位置エネルギーが定義できる力を保存力という.

ここで, \( F_{x} \) が \( x \) のみに依存するという条件が1次元運動における位置エネルギーを定義するにあたって大変重要である. この条件によって, 本来は仕事率の時間積分が経路に依存した(力の)線積分に置き換わるところを, 運動の始点と終点のみにしかよらない — 運動の経路に依存しない — 積分として記述できるからである.

すでに議論してきたとおり, 位置エネルギー \( U \) とは物体がなされた(保存力による)仕事のことであり, その仕事量は物体にエネルギーとして蓄えられることになる. このような意味で, 物体には仕事を行う能力が潜在的に蓄えられていることになるので \( U \) のことをポテンシャルエネルギーともいう.

潜在的なエネルギーというくらいであるので, ある点におけるポテンシャルエネルギーの値自体には意味はなく, 他の地点と比べた相対的な値が話題になったときにはじめて考慮することになる.

重力による位置エネルギー

下図のように, 地表付近における質量 \( m \) の質点の鉛直方向運動について考えよう. 座標軸は鉛直上向きを正とし, 質点の位置を \( x(t) \) とする.

地表付近の重力加速度を \( g \) とすると, 質点に働く重力は物体の位置 \( x \) によらず鉛直下向きに大きさ \( mg \) で与えられる. したがって, 重力 \( F(x) \) は位置についての定数関数 \( F(x)=-mg \) となみすことができる. つまり, 重力は位置エネルギーを定義できる保存力である.

基準点を \( x_{0} \) としたとき, 位置 \( h \) に存在する質点の(重力による)位置エネルギーは \[U(x) =- \int_{x_{0}}^{x} \left( -mg \right)\,dx = mgx – mgx_{0} \notag\] と表すことができる.

位置エネルギーの基準点 \( x_{0} \) の選び方は自由である. 地表付近で議論する場合には地表, すなわち, \( x=0 \) の点を位置エネルギーの基準とすることが多い. 位置エネルギーの基準点 \( x_{0} \) を \( 0 \) とした \( x=h \) における(重力による)位置エネルギーは \[U(x) = mgx \notag\] で与えられることになる.

ばねの先端に取り付けられた質点(質量 \( m \) )の運動のように, 平衡点からの変位に比例した復元力を受けて1次元運動する物体について考えよう.

平衡点の座標を \( X_{0} \) としたとき, 位置 \( x \) の物体に働く復元力 \( F(x) \) は正定数 \( k \) を用いて, \[F(x) =- k \left( x – X_{0} \right) \notag\] であらわされる. これは位置 \( x \) のみに依存した力であるので, 1次元運動において復元力は保存力とみなすことができる.

基準点を \( x=x_{0} \) としたときのポテンシャルエネルギーは \[\begin{aligned} U(x) &=- \int_{x_{0}}^{x} \left\{ – k \left( x – X_{0} \right) \right\} \,dx \notag \\ &= k \int_{x_{0}}^{x} \left( x – X_{0} \right) \,dx \notag \\ &= \frac{1}{2}k\left( x – X_{0} \right)^{2} + \frac{1}{2}k\left( x_{0} – X_{0} \right)^{2} \notag \end{aligned}\] と表すことができる. ここで位置エネルギーの基準 \( x_{0} \) を平衡点 \( X_{0} \) にとると, 復元力によるポテンシャルエネルギーは \[U(x) = \frac{1}{2}k\left( x – X_{0} \right)^{2} \notag\] と表すことができる.

空間上に置かれた二つの質点の間には万有引力と呼ばれる力が互いに働くことが知られている. 万有引力は二質点の各質量 \( m_{1} \) , \( m_{2} \) の積に比例し, 質点の距離 \( r \) の二乗に反比例することが知られている. このように, 距離の2乗に反比例した力の代表として万有引力による位置エネルギーについて考えてみよう.

一方の質点の位置を座標原点 \( x=0 \) とすると, 位置 \( x \) に存在する質点との間に働く力の大きさ \( \left| F \right| \) は比例係数を \( G \) として \[\left| F \right| = G\frac{m_{1}m_{2}}{x^{2}} \notag\] と書くことができる. また, 向きは互いに引力となる方向に働く.

原点に質量 \( m_{1} \) が固定された座標系において位置 \( x \) に存在する質量 \( m_{2} \) の物体の位置エネルギーは, 位置エネルギーの基準点を \( x_{0} \) としたとき, \[\begin{aligned} U(x) &=- \int_{x_{0}}^{x} \left\{ – G\frac{m_{1}m_{2}}{x^{2}} \right\} \,dx \notag \\ &= \int_{x_{0}}^{x} G\frac{m_{1}m_{2}}{x^{2}} \,dx \notag \\ &= \left[ – G\frac{m_{1}m_{2}}{x} \right]_{x_{0}}^{x} \notag \\ &=-G\frac{m_{1}m_{2}}{x} + G\frac{m_{1}m_{2}}{x_{0}} \notag \end{aligned}\] と書くことができる.

ここで, 位置エネルギーの基準点 \( x_{0} \) のとり方は自由であることを利用し, 上式が簡単な形になるような基準点を選ぶと取り決めることは自然なことである. 上式が最も簡単となる基準点とは \( G\frac{m_{1}m_{2}}{x_{0}} \) がゼロとなるような点であり, 基準点 \( x_{0} \) を無限遠にとると約束することが普通である.

したがって, 無限遠を位置エネルギーの基準とした位置エネルギーは \[U(x) =- G \frac{m_{1}m_{2}}{x} \notag\] と書くことができる[5].

非保存力

力は何も保存力ばかりではない. 高校物理でよく出会う, 保存力でない力 — 非保存力 — の代表例は摩擦力空気抵抗である. これらの力には位置エネルギーというものを定義することができない. 別の言い方をすれば, 非保存力によってなされた仕事は物体にポテンシャルエネルギーとして蓄えることはないということである.

摩擦を例に考えてみよう. 摩擦力の大きさは接触しあっている二物体(物体 \( A \) , 物体 \( B \) )の材質によって(実験的に)定まる摩擦係数と, 互いに働く抗力の垂直成分の大きさの積によって決まる. さらに, 物体 \( A \) に働く摩擦力の向きは, 物体 \( A \) から見た物体 \( B \) の相対速度方向に一致している. したがって, 力が位置だけの関数ではなく, 速度(の向き)に依存する非保存力である.

たとえば, あらい床面上を移動している物体 \( P \) について, 位置 \( x_{A} \) から位置 \( x_{C}\,( > x_{A}) \) まで移動し, 位置 \( x_{B}\,(<x_{C}) \) まで戻って静止するまでの間に, 物体 \( P \) に働く摩擦力のみに注目し, その \( F \) – \( x \) グラフを下図に示した. なお, 物体 \( P \) と床面との動摩擦係数は \( \mu^{\prime} \) とし, 物体 \( P \) が床面から受ける垂直抗力を \( N \) とした.

\( F \) – \( x \) グラフの符号付き面積は仕事をあらわしていたので, \[\begin{aligned} W &= \int_{x_{A}}^{x_{C}} \left( – \mu^{\prime} N \right)\,dx + \int_{x_{C}}^{x_{B}} \left( + \mu^{\prime} N \right)\,dx \notag \\ &=-\mu^{\prime}N \underbrace{ \left( x_{C} – x_{A} \right) }_{ > 0} -\mu^{\prime} N \underbrace{ \left( x_{C} – x_{B} \right) }_{ > 0} \notag \end{aligned}\] となり, 移動経路に依存した負の仕事をしたことがわかる.

ここでいう「負の仕事」とは, 物体 \( P \) の持つ運動エネルギーを減少させるような仕事という意味である.

空気抵抗についての詳細な議論は割愛するが, 速い速度で流体中を運動する物体には物体の速度に依存した空気抵抗が働くことが知られている. これは向きだけでなくその大きさですらも速度に依存した力であり, 非保存力であることは明らかである.

非保存力と力学的エネルギー

これまでに培ってきた知識を総動員して, 力学的エネルギー保存則の拡張を行おう.

まず, 時刻 \( t \) の運動エネルギー \( K(t) \) は \[K(t) = \frac{1}{2}m{v(t)}^{2} \label{ecKE}\] で与えられる. そして, 位置 \( x_{A}=x(t_{A}) \) から位置 \( x_{B}=x(t_{B}) \) まで移動する経路を \( \mathrm{C}_{A \to B} \) と名付けると, 移動中に力 \( F \) のした仕事は線積分 \[W = \int_{t_{A}}^{t_{B}} F v_{x} \,dx = \int_{\mathrm{C}_{A \to B}} F \,dx \label{ecWintline}\] で与えられる. このうち, 保存力(conservative force) \( F_{c} \) のした仕事 \( W_{c} \) は経路に依存せず, ある基準 \( x_{0} \) に対する位置エネルギー \[U(x) =- \int_{x_{0}}^{x}F_{c}\,dx \notag\] を用いて \[\begin{align} W_{c} &= \int_{\mathrm{C}_{A \to B}} F_{c}\,dx = \int_{x_{A}}^{x_{B}} F_{c}\,dx \notag \\ &= U(x_{A}) – U(x_{B}) \notag \end{align} \label{ecWcint}\] と書くことができるのであった.

また, ある時刻 \( t \) における力学的エネルギーは運動エネルギーと位置エネルギーの和 \[E = K(t) + U(x(t)) \notag\] で定義される.

これらを把握した上で, \( x \) 軸上を運動する1次元物体を行う質量 \( m \) の質点 \( P \) についてのエネルギー保存則を考えよう. 質点 \( P \) に働く合力のうち, 保存力の合力を \( F_{c} \) , 非保存力(non-conservative force)の合力を \( F_{nc} \) と書くことにすると, 質点 \( P \) の運動方程式は次式で与えられる. \[m \frac{dv_{x}}{dt} = F_{c} + F_{nc} \quad . \notag\] この両辺に \( v_{x} \) を乗じて積分すると, 時刻 \( t_{A} \) (位置 \( x_{A} \) , 速度 \( v_{A} \) )から時刻 \( t_{B} \) (位置 \( x_{B} \) , 速度 \( v_{B} \) )まで積分すると, \( x_{A} \) から \( x_{B} \) への経路を \( \mathrm{C}_{A \to B} \) として, \[\begin{aligned} & \int_{t_{A}}^{t_{B}} \frac{d}{dt} \left\{ \frac{1}{2} m v_{x}^{2} \right\} \,dt = \int_{t_{A}}^{t_{B}} \left\{ F_{c} + F_{nc} \right\}v_{x} \,dt \notag \\ \xrightarrow{\text{式}\ref{ecWintline}} \ & \frac{1}{2}mv_{B}^{2} – \frac{1}{2}mv_{A}^{2} = \int_{\mathrm{C}_{A \to B}} F_{c}(x) \,dx + \int_{\mathrm{C}_{A \to B}} F_{nc} \,dx \notag \\ \xrightarrow{\text{式}\ref{ecKE}, \text{式}\ref{ecWcint}} \ & K(t_{B}) – K(t_{A}) = U(x_{A}) – U(x_{B}) + \int_{\mathrm{C}_{A \to B}} F_{nc} \,dx \notag \\ \to \ & \left\{ K(t_{B}) + U(x_{B}) \right\} – \left\{ K(t_{A}) + U(x_{A}) \right\} = \int_{\mathrm{C}_{A \to B}} F_{nc} \,dx \notag \\ \therefore \ & E(t_{B}) – E(t_{A}) = \int_{\mathrm{C}_{A \to B}} F_{nc} \,dx \notag \end{aligned}\] 最終的に得られた式が意味していることは, 力学的エネルギー \( E \) の変化量がその間に非保存力によってなされた仕事に等しいことを意味している.

運動可能な領域

力学的エネルギー保存則 \[E = \frac{1}{2}m{v_{x}(t)}^{2} + U(x) \notag\] において, 運動エネルギー \( \frac{1}{2}mv_{x}^{2} \) が常に正であることから, \( E \ge U \) が常に成立する. これは質点の運動可能な領域に制限を加えていることになる.

たとえば, 位置エネルギー \( U(x) \) が下図に示すような曲線で与えられているとする. このとき, 物体が運動可能な領域は \( U(x) \) が \( E \) 以下の領域のみであることを意味している. 図で言えば, \( x_{A} \le x \le x_{B} \) および \( x_{C} \le x \) の領域においてのみ運動をすることが許されており, この領域で \( E-U \) が運動エネルギー \( K \) に相当していることになる. したがって, \( x_{A} \) , \( x_{B} \) 及び \( x_{C} \) では運動エネルギーがゼロであり, 物体が静止していることをあらわしている. また, \( x_{A} \le x \le x_{B} \) の範囲で運動している物体は外部から仕事を加えられない限りは \( x_{c} \le x \) の領域へと遷移することはできないのである.

発展 : 平衡点周りの運動

位置エネルギー \( U(x) \) が \( x=0 \) において極小値 \( U(0) \) を持つような場合について考えよう.

このとき, \( x=0 \) では \( U(x) \) が極値となっていることから, 位置の導関数は \( \frac{dU}{dx}=0 \) を満たしている.

\( x=0 \) の近傍では \( U(x) \) はマクローリン展開を用いて \[U(x) \approx U(0) + \left. \frac{1}{1!}\frac{dU}{dx} \right|_{x=0}x + \left. \frac{1}{2!}\frac{d^{2}U}{dx^{2}} \right|_{x=0} x^{2} + \left. \frac{1}{3!}\frac{d^{3}U}{dx^{3}} \right|_{x=0} x^{3} + \cdots \notag\] と近似できることが知られている. この式に \( \frac{dU}{dx}=0 \) を代入すると, \[U(x) \approx U(0) + \left. \frac{1}{2!}\frac{d^{2}U}{dx^{2}} \right|_{x=0} x^{2} + \left. \frac{1}{3!}\frac{d^{3}U}{dx^{3}} \right|_{x=0} x^{3} + \cdots \notag\] となる. さらに, \( x \) が非常に小さいことから \( x \) の3次以上の式は \( x \) の2次の項に比べて無視できると近似することで \[U(x) \approx U(0) + \left. \frac{1}{2!}\frac{d^{2}U}{dx^{2}} \right|_{x=0} x^{2} \notag\] とみなすことが出来る.

したがって, 位置エネルギーの平衡点 \( x=0 \) のごく近傍において, 力 \( F_{x} \) は \[F_{x} =- \frac{d}{dx}U(x) =- \left. \frac{d^{2}U}{dx^{2}} \right|_{x=0} x \notag\] となる.

ところで, \( x=0 \) で \( U(x) \) は極小値をとることから \( x=0 \) における2次の微分係数 \( \left. \frac{d^{2}U(x)}{dx^{2}} \right|_{x=0} \) は正となるので, これを定数 \( k \) と書くと, \[F_{x} =- k x \notag\] となる. これは, 位置エネルギーの極小値のごく近傍では, 力の大きさは \( x \) の1乗に比例し, 常に \( x=0 \) の平衡点を向いている復元力に近似できることを意味している.

後に詳細に議論するが, 力 \( F \) が正定数 \( k \) を用いて \( F=-kx \) と書けるような運動方程式は単振動と呼ばれる運動をすることになる(単振動の運動方程式と一般解). そして, 上述の議論より位置エネルギーの極小値まわりでの運動は単振動に近似できることになる. このような意味で単振動という振動現象は物理でも頻出であり, 非常に基本的な運動の一つであるということができる.

1次元運動における仕事と運動エネルギー 力学的エネルギー保存則



補足    (↵ 本文へ)
  1. 現時点ではこの式\eqref{KbKaW}はニュートンの運動方程式を元に導出されたことに注意して欲しい. そして, ニュートンの運動方程式で記述できる現象は我々が素朴に観測できる程度の運動に限られている事も知られている. このような意味で, ニュートンの運動方程式が成立しない世界でのエネルギー保存則まで式\eqref{KbKaW}で保証しているわけではなく, 式\eqref{KbKaW}はニュートン力学の範囲内でのエネルギー保存則において, エネルギーの移り変わりがどのように記述されるかを示した式と考えたほうがよいであろう. エネルギー保存則自体は, 「力」が主役のニュートン力学の範囲よりももっと大きな枠組みの中で成立していると考えられている. このことは熱力学などでさらに学ぶことになる.

    身近な物理現象を束ねる物理法則を見つけだして(数学)言語化し, その物理法則から導かれる物理量こそが実は基本的だと解釈して物理法則を再度見直し, ときにはそれらを破棄・修正して物理学は作られてきた. このような一連の流れは一人の人間が生きている間では到底なし得ない. 先人たちの努力に強く感謝しよう.

  2. 式\eqref{KbKaW}で紹介したエネルギー保存則とは異なることに注意.

  3. 本来, 力 \( F_{x} \) は時間 \( t \) や位置 \( x \) , 速度 \( \frac{dx}{dt} \) などに依存した多変数関数 \( F_{x}(t, x, \frac{dx}{dt}, \cdots ) \) であると考えられる.

  4. じつは, 式\eqref{FdUdx}を書いたときからこのような関係が \( F_{x} \) と \( U(x) \) との間に成り立つことは推測できた.

  5. このように位置エネルギーが負になることが気にかかる人は, 位置エネルギーというのはある2点の相対的な量として決定されるということを考え落としてしまっている.

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