重心

高校物理では, 質量はあるが大きさは無視できるという質点についての議論がもっぱらである. しかし, 現実の物体はゼロでない大きさを持ち, 物体内部で質量の分布に(むら)もあるであろう

このような現実的な物体を議論する場合において, 著しい特徴を持つ点, 重心について議論する.

また, 物体を構成している要素同士の位置関係が変化しない, 直感的に言えば非常に固い物体という意味を持つ剛体に限って議論することにする.

以下の議論ですぐに分かるように, 重心はその物体の代表的な点として使われる機会が非常に多いので良く理解しておく必要があるが, メリットは物体の代表点を決めるというだけではない.

一般に, 大きさのある剛体の運動重心の並進運動と, 重心まりの回転運動とにわけて議論できる, というメリットがある[1].

例えば, 無視できない大きさのある小球の転がり運動小球の重心の移動小球の重心まわりの回転運動が同時に起きているとして扱うのである.

重心の並進運動は, 大きさのある物体の全質量が重心に集中したとみなし, 物体が受けている合力はその重心に働く力とみなして運動方程式を立式することで計算可能である. また, 重心まわりの回転モーメント角運動量と言われる量を計算することで計算可能である(角運動量保存則). これらに加え, 大学程度の物理では慣性モーメントという回転のしにくさを表す重要な量も登場することになる.

以下ではまず, 重心の定義と性質を与え, 最後に重心の問題における計算手順について紹介する.

具体例も複数扱うので, 是非ともその計算方法を身につけて欲しい.

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重心の定義
重心に関するいくつかの事実
重心の計算手順


重心の定義

下図に示すような, 石のような形状をした質量 \( M \) の一般的な物体の重心について考えよう.

まず, 物体を非常に細かな \( N \) 個の細かい物体に(仮想的に)分割する. 分割後の各物体を質点とみなし, その位置を \( \boldsymbol{r}_i \ (i = 1 \sim N) \) とする[2]. 位置 \( \boldsymbol{r}_i \) の小物体は質量 \( m_i \) を持つとしよう.
ただし, 元々は質量 \( M \) の物体を分割していることから小物体の質量の総和について \[ \begin{aligned} M &= m_{1} + m_{2} + \cdots + m_{N} \\ &= \sum_{i=1}^{N} m_{i} \end{aligned} \] が成立していることに注意して欲しい.

元の物体を細かく分割し, 分割後の各物体(質量 \( m_{i} \))の位置を \( \boldsymbol{r}_i \) とする.

このとき, 重心 \( \boldsymbol{r}_G \) の数学的な定義は次式で与えられる. \[ \begin{align} \boldsymbol{r}_G &\mathrel{\mathop:}= \frac{\sum_{i=1}^{N} m_i \boldsymbol{r}_i }{ \sum_{i=1}^{N} m_i} \label{gdef} \notag \\ &= \frac{ m_1 \boldsymbol{r}_1 + m_2 \boldsymbol{r}_2 + \cdots m_N \boldsymbol{r}_N }{ m_1 + m_2 + \cdots + m_N} \notag \end{align} \] ここで, 分母は小物体の質量の総和であり, 分子は小物体の質量と位置ベクトルの総和となっている.

念のため, 次元を確認しておこう. 分母は質量の和であり質量の次元を持つ. 分子は質量と長さの次元のせきであることから, 重心は長さの次元を持っていることを確認しておいて欲しい. このように, 新しい量が定義された場合にはその次元も確認するという癖をつけて勉強すると, 各物理量の定義式の記憶から曖昧さが軽減されるであろう.


以上では一つの物体を細かくしてその重心を定義したが, 下図のように, はじめから複数の物体で構成される物体群の重心も全く同様である.

下図のように, すでに各小物体の重心が位置 \( \boldsymbol{r}_i (i = 1 \sim N) \) で与えられ, 各小物体の質量が \( m_i \) のとき, それらの物体群の重心は次式のように, 各小物体の重心の重心で与えられる. \[ \boldsymbol{r}_G = \frac{\sum_{i=1}^{N} m_i \boldsymbol{r}_i }{ \sum_{i=1}^{N} m_i} \quad . \notag \]

重心の定義

\( N \) 個の質点の位置と質量がそれぞれ \( \boldsymbol{r}_i \), \( m_i \) で与えられるとき, 重心 \( \boldsymbol{r}_G \) を次式で定義する. \[ \begin{aligned} \boldsymbol{r}_G &= \frac{\sum_{i=1}^{N} m_i \boldsymbol{r}_i }{ \sum_{i=1}^{N} m_i} \\ &= \frac{ m_1 \boldsymbol{r}_1 + m_2 \boldsymbol{r}_2 + \cdots m_N \boldsymbol{r}_N }{ m_1 + m_2 + \cdots + m_N} \end{aligned} \]

物体群の重心は個々の物体の重心と質量から計算可能である.

重心に関するいくつかの事実

重心を求めるためには重心の定義式 \[ \boldsymbol{r}_G = \frac{\sum_{i=1}^{N} m_i \boldsymbol{r}_i }{ \sum_{i=1}^{N} m_i} \notag \] にしたがって計算すればいいわけだが, 以下で紹介するような対称性の良い物体の重心については事実として用いてもよい事柄がいくつかある.(証明は別途与える.準備中)

一様な棒の重心

密度が一様な細い棒の重心は, 棒の中心と一致する.

一様な正方形板の重心

密度が一様な正方形または長方形の薄い板など平行四辺形の板であれば, 重心は中心と一致する.

一様な円盤の重心

密度が一様な薄い円盤であれば, 重心は中心と一致する.

一様な三角形板の重心

密度が一様な薄い三角形板であれば, 三角形の頂点とその対辺の中点を結ぶ3つの線分が交わる点が重心である.

一様な三角形板の重心のベクトルを用いた証明方法はありふれているので, ここではより物理的な説明を行なう.

一様な棒の重心が中心と一致することを認めるならば, 三角形板も細かい棒に分画し, 各棒の重心を結んだ直線上に三角形の重心が存在することは明らかである.

このような分割を二通り行なうことで平行でない二つの直線ができあがる. この交点こそが三角形板の重心となる.

重心の計算手順

重心の計算方法は重心の定義式 \[ \boldsymbol{r}_G = \frac{\sum_{i=1}^{N} m_i \boldsymbol{r}_i }{ \sum_{i=1}^{N} m_i} \notag \] にそって行えばいいわけだが, 少し複雑な物体や物体が組み合わされたもの, 切り抜かれた物体などの重心計算となると戸惑う人も多いようである.

どんな形状の物体であってもやることは同じなので, 以下にまとめる重心の計算手順はしっかりとみにつけておこう.

ただし, 繰り抜かれた物体について議論するときには特別な注意が必要なので, そのことも補足しておく.


1. 座標系の設定

まずは, 自分がどんな座標系のもとで重心を計算するのかをハッキリさせておく必要がある.

そこで, まずは適切な座標系を設定することが重要である.

適切な座標系といったが, そんなに考えることは多くない. まず気にかけるべきことは物体が線対称な物体かどうかである. 線対称な物体ならばその重心は線対称軸上にあるので, 座標軸を線対称軸と一致させることで複雑な計算を避けることができる可能性がある.

ただし, その座標軸で分断された物体が単純な形状でなければこの恩恵に預かれる可能性は小さくなるので, この場合には素直な座標軸を設定することにしよう.

2. 単純な物体への分割

高校物理に登場するような物体というは, 多少複雑な形状であったとしても単純な形状の物体の組み合わせで再現することができる.

そこで, 複雑な物体を単純な物体に(仮想的に)分割し, 重心に関するいくつかの事実で紹介したような事実を用いて, 分割後の各物体の重心を知ることができる.

この発想は, 質量が異なる物体が接続された物体に対しても同様な考えを適用することができる. すなわち, 質量が異なる境界線で物体を(仮想的に)分割し, その後さらに必要があれば, また細かな物体へと自由に分割してくれればよい.

3. 分割後の各物体の重心の把握

分割された各物体の質量及び各物体の重心(座標)が座標系のどこにあるのかを求める準備はこの段階で整っているので, 落ち着いてそれらを書き出しておこう. すなわち, 分割後の各物体の質量 \( m_{i} \) とその重心座標 \( \boldsymbol{r}_{i} \) を, 分割した物体の数だけ手元にとっておくのである.

分割後の各物体の重心が分かってしまえば, その各物体がどんな形状であったかは忘れ去ってしまってよい. なぜならば, 重心 \( \boldsymbol{r}_{i} \) に質量 \( m_{i} \) の質点がいると思って, 続く重心の計算へ移れば良いからである.

4. 重心の定義にしたがって計算する

以上の操作を終えた段階で, 分割後の物体の質量 \( m_{i} \) とその重心座標 \( \boldsymbol{r}_{i} \) が手元にあるはずである.

分割後の各物体の重心の重心は分割前の物体の重心に等しいので, あとは機械的に \( m_{i} \) と \( \boldsymbol{r}_{i} \) を重心の定義式 \[ \boldsymbol{r}_G = \frac{\sum_{i=1}^{N} m_i \boldsymbol{r}_i }{ \sum_{i=1}^{N} m_i} \notag \] に代入するだけで重心の計算を求めることが出来る.

繰り抜かれた物体の場合

具体例で説明するように, ある物体から別の物体を切り抜いた図形も頻出である.

この場合, 切り抜かれるまえの物体マイナスの質量を持つ, 切り抜く物体に分割して考えることで, 先ほどと全く同様に重心を求めることができる[3].


高校物理の場合, 以上の機械的な手順で十分に対処できるので, これらの手順はしっかりと把握しておいてもらいたい.

重心の計算手順

複雑な物体の重心の計算は以下の手順で行う.

  1. 座標軸を決める.
  2. 複雑な物体を単純な物体に分割する.
  3. 各物体の質量と重心座標を書き出す.
  4. 重心の定義に従い全体の重心を求める.

部分的に切り抜かれた物体の重心を計算する場合, 切り抜かれるまえの物体マイナスの質量を持つ切り抜く物体に分割して考える.

最後に補足しておくと, 重心は必ずしも物体上に存在するとは限らないので, 重心の定義通りに計算した結果の重心が物体上になくてもひるまないでほしい.

例えば, 中央に穴のあいたドーナツの重心を重心の定義にそって計算すると, ドーナツの穴の部分に重心の値が得られるが, 間違いではない.

もし計算後の重心座標に自信が持てない場合, 下記のようなチェック項目も頭にいれておくと, 安心感が増すであろう.

  • 重心の次元は長さの次元である.

  • 一様な点対称な物体ならば, 線対称軸上に重心が存在する.

  • 一様な線対称な物体ならば, 中心に重心が存在する.

  • 重心座標 \( \boldsymbol{r}_{G} = \left( x_{G}, y_{G} \right) \) は, 物体上にあるとは限らないが, 下図のように元の物体の \( x \), \( y \) 軸方向それぞれの最小値 \( x_{\mathrm{min}} \), \( y_{\mathrm{min}} \) と最大値 \( x_{\mathrm{max}} \), \( y_{\mathrm{max}} \) の範囲に限られる \[ \begin{aligned} & x_{\mathrm{min}} \lt x_{G} \lt x_{\mathrm{max}} \\ & y_{\mathrm{min}} \lt y_{G} \lt y_{\mathrm{max}} \end{aligned} \]

重心 \( \boldsymbol{r}_G \) の定義は次式である. \[ \begin{equation} \begin{aligned} \boldsymbol{r}_G &\mathrel{\mathop:}= \frac{\sum_{i=1}^{N} m_i \boldsymbol{r}_i }{ \sum_{i=1}^{N} m_i} \\ &= \frac{ m_1 \boldsymbol{r}_1 + m_2 \boldsymbol{r}_2 + \cdots m_N \boldsymbol{r}_N }{ m_1 + m_2 + \cdots + m_N} \end{aligned} \label{cgdef} \end{equation} \]

密度が一様で長さ \( R/2 \) , 質量 \( m_1 = 3M \) の物体と密度が一様で長さ \( R/2 \) , 質量 \( m_2 = M \) の物体がくっついて長さ \( R \) の棒を成しているとする. このような物体の重心を求めよう.

座標を決める

なんにせよ, まずはじめに行うことは座標軸の設定である.

座標系は各人の好みに応じて設定してよく, ここでは図に示すように, 棒の左端を原点とし, 棒に沿った方向に \( x \) 軸, \( x \) 軸とは垂直に \( y \) 軸を設定する..

各物体の重心を書き出す

次に, 質量の異なる \( x = \frac{R}{2} \) をさかいに物体を仮想的に分離し, 質量 \( 3M \) の棒の重心 \( \boldsymbol{r}_{1} \) と質量 \( M \) の棒の重心 \( \boldsymbol{r}_{2} \) がどこかを調べる. このとき, 一様な棒の重心は棒の中心と一致しているという事実を用いると, \( \boldsymbol{r}_{1} \) , \( \boldsymbol{r}_{1} \) はそれぞれ次式となる. \[ \boldsymbol{r}_{1} = ( \frac{R}{4} , 0 ) \quad , \quad \boldsymbol{r}_{2} = ( \frac{3R}{4} , 0) \quad . \notag \]

全体の重心を求める

以上で重心を求めるために必要な前置きは終了したので, 実際に定義式\eqref{cgdef}に代入して棒全体の重心 \( \boldsymbol{r}_{G} \) を求めることにする. \[ \begin{aligned} \boldsymbol{r}_{G} &= \frac{\sum_{i=1}^{2}m_{i}\boldsymbol{r}_{i}}{\sum_{i=1}^{2}m_{i}} \\ &= \frac{m_{1} \boldsymbol{r}_{1} + m_{2} \boldsymbol{r}_{2} }{m_1 + m_2} \\ &= \frac{ \left\{ 3M( \frac{R}{4} , 0 )+M ( \frac{3R}{4} , 0) \right\} } {3M + M} \\ &= ( \frac{3R}{8} , 0 ) \notag \end{aligned} \]

座標を決める

座標系の設定は人によって異なってもよいので, 先ほどの同じ問題を別の座標系で求めてみる.

図に示すように棒の中心を原点とすると, 質量 \( m_{1}= 3M \), \( m_{2}= M \) の各棒の重心はそれぞれ以下のようであることがわかる. \[ \boldsymbol{r}_{1} = ( -\frac{R}{4} , 0 ) \quad , \quad \boldsymbol{r}_{2} = ( \frac{R}{4} , 0) \notag \]

全体の重心を求める

以上で重心を求めるために必要な前置きは終了したので, 実際に定義式\eqref{cgdef}に代入して棒全体の重心 \( \boldsymbol{r}_{G} \) を求めることにする. \[ \begin{aligned} \boldsymbol{r}_{G} &= \frac{\sum_{i=1}^{2}m_{i}\boldsymbol{r}_{i}}{\sum_{i=1}^{2}m_{i}} \\ &= \frac{m_{1} \boldsymbol{r}_{1} + m_{2} \boldsymbol{r}_{2} }{m_1 + m_2} \\ &= \frac{ \left\{ 3M( – \frac{R}{4} , 0 )+M ( \frac{R}{4} , 0) \right\} }{3M + M} \\ &= (- \frac{R}{8} , 0 ) \notag \end{aligned} \] 座標設定が異なるために, 重心の成分の値は異なるが, 物理的には同じ点になっていることがわかる.

密度が一様で一辺の長さが \( R \) で, 質量が \( m_1 = M \) , \( m_2 = 2M \) , \( m_3 = 3M \) , \( m_4 = 4M \) の薄い板が下図のように連結された一枚の大きな薄い板の重心を求めよう.

座標を決める-各物体の重心を書き出す

まずは座標軸の設定である.

座標は各人の好みに応じて設定してよく, ここでは図に示すように, 板の左下端を原点としてみよう.

板を質量の異なる境で(仮想的に)分割し, 分割後の各板は正方形であるのでその重心は各板の中心と一致することから, \[ \begin{aligned} & \boldsymbol{r}_{1} = ( \frac{R}{2} , \frac{3R}{2} ) \quad , \quad \boldsymbol{r}_{3} = ( \frac{3R}{2} , \frac{3R}{2} ) \\ & \boldsymbol{r}_{2} = ( \frac{R}{2} , \frac{R}{2} ) \quad , \quad \boldsymbol{r}_{4} = ( \frac{3R}{2} , \frac{R}{2} ) \end{aligned} \]であり, 結果下図のような状況であることがわかる.

全体の重心を求める

以上で重心を求めるために必要な前置きは終了したので, 実際に定義式\eqref{cgdef}に代入して棒全体の重心 \( \boldsymbol{r}_{G} \) を求めることにする.

\[ \begin{aligned} \boldsymbol{r}_{G} &= \frac{\sum_{i=1}^{4}m_{i}\boldsymbol{r}_{i}}{\sum_{i=1}^{4}m_{i}} \\ &= \frac{m_{1} \boldsymbol{r}_{1} + m_{2} \boldsymbol{r}_{2} + m_{3} \boldsymbol{r}_{3} + m_{4} \boldsymbol{r}_{4} }{m_1 + m_2 +m_3 + m_4} \end{aligned} \] ここで, 今回取り扱う物体は2次元的に広がった物体であるので, 2つの座標軸それぞれについて重心を求めることが必要となる.

\( x \) 方向の重心 \( r_{G_x} \) , \( y \) 方向の重心 \( r_{G_y} \) はそれぞれ \[ \begin{aligned} r_{G_x} &= \frac{m_{1} r_{1_x} + m_{2} r_{2_x} + m_{3} r_{3_x} + m_{4} r_{4_x} }{m_1 + m_2 +m_3 + m_4} \\ &= \frac{ \left\{ M \frac{R}{2} + 2M \frac{R}{2} + 3M \frac{3R}{2} + 4M \frac{3R}{2} \right\} }{M + 2M + 3M +4M} \\ &= \frac{6}{5}R \\ r_{G_y} &= \frac{m_{1} r_{1_y} + m_{2} r_{2_y} + m_{3} r_{3_y} + m_{4} r_{4_y} }{m_1 + m_2 +m_3 + m_4} \\ &= \frac{ \left\{ M \frac{3R}{2} + 2M \frac{R}{2} + 3M \frac{3R}{2} + 4M \frac{R}{2} \right\} }{M + 2M + 3M +4M} \\ &= \frac{9}{10}R \end{aligned} \] したがって, \[ \boldsymbol{r}_{G} = ( \frac{6}{5}R , \frac{9}{10}R ) \notag \]

下図に示すように, もともと半径 \( r \) で密度が一様な薄い円盤(質量 \( M \) ) から, 半径 \( r/2 \) の円を切り抜いた図形の重心を求めよう.

[補足]この問題設定はよく問題集にのっており, 繰り抜かれる前の円盤の質量などが与えられていない場合も多い. しかし, 以下の計算を進めると, 質量を問題設定として与えなくても重心がわかることになる.

このように切り抜かれた図形は, 切り抜かれるまえの図形切り抜く図形(質量はマイナスと考える)が重なった状態であると考えることで, 切り抜かれた後の図形の重心を求めることができる.

今の場合, 半径 \( r \) の円1の面積 \( S_1 \) と半径 \( r/2 \) の円2の面積 \( S_2 \) の面積比は \( S_1:S_2 = 1:1/4 \) で, 円1の質量が \( M \) なので, 円2の質量を \( -M/4 \) と考えればよい.

座標を決める

図形が二次元的な広がりを持っているが, 円1の中心と円2の中心を通る直線に対して線対称であるので, この軸上に重心があることは明らかである. そこで, この軸にあわせて \( x \) 軸を設定し, 円1の中心を \( O \) としよう.

各物体の重心を書き出す

円1と円2の重心 \( \boldsymbol{r}_1 , \boldsymbol{r}_2 \) はそれそれ, \[ \begin{aligned} & \boldsymbol{r}_{1} = ( 0 , 0 ) \\ & \boldsymbol{r}_{2} = ( \frac{r}{2} , 0) \end{aligned} \] である.

全体の重心を求める

以上で重心を求めるために必要な前置きは終了したので, 実際に定義式\eqref{cgdef}に代入して切り抜かれた円盤の重心 \( \boldsymbol{r}_{G} \) を求めよう. \[ \begin{aligned} \boldsymbol{r}_{G} &= \frac{\sum_{i=1}^{2}m_{i}\boldsymbol{r}_{i}}{\sum_{i=1}^{2}m_{i}} \\ &= \frac{m_{1} \boldsymbol{r}_{1} + m_{2} \boldsymbol{r}_{2} }{m_1 + m_2} \\ &= \frac{ \left\{ M( 0, 0 )+ \left( – \frac{M}{4} \right) ( \frac{r}{2} , 0) \right\} }{M + \left( – \frac{M}{4}\right)} \\ &= \left( -\frac{r}{6} , 0 \right) \end{aligned} \] このように正の質量の物体の足しあわせで重心を計算しにくい物体の場合, 切り抜かれる前の物体負の質量を持つ, 切り抜く(仮想的な)物体を考えて, それらの重心を計算することで重心を求めることが可能になる.

下図に示す密度が一様な図形の重心を求めよう.

考え方としては

  • 2つないしは3つの正の質量を持つ長方形の結合

  • 大きな長方形から小さな長方形を切り抜いた図形

のどちらかとして扱うのが通常であろう. ここでは共通して上図のような座標系で考えることにする.

2つの長方形とする場合, いくつかの長方形のわけかたがあるが長方形ACDH(物体1)と正方形EFGH(物体2)の二つの図形として考えてみる. 物体2の質量を \( M \) とすると物体1の質量は面積比より \( 3M \) である. 物体1と物体2の重心はそれぞれ \[ \begin{aligned} & \boldsymbol{r}_{1} = ( \frac{3R}{2} , \frac{R}{2} ) \\ & \boldsymbol{r}_{2} = ( \frac{R}{2} , \frac{3R}{2}) \end{aligned} \] であるので, 全体の重心 \( \boldsymbol{r}_{G} \) は \[ \begin{aligned} \boldsymbol{r}_{G} &= \frac{\sum_{i=1}^{2}m_{i}\boldsymbol{r}_{i}}{\sum_{i=1}^{2}m_{i}} \\ &= \frac{m_{1} \boldsymbol{r}_{1} + m_{2} \boldsymbol{r}_{2} }{m_1 + m_2} \\ &= \frac{ \left\{ 3M( \frac{3R}{2}, \frac{R}{2} )+ M ( \frac{R}{2} , \frac{3R}{2}) \right\} }{3M + M } \\ &= \left( \frac{5R}{4} , \frac{3R}{4} \right) \end{aligned} \] である. 3つの長方形の場合にも全く同様にすればよい.


次に, 同じ問題を大きな長方形ACIG(物体1)から小さな長方形DEFI(物体2)を切り抜いた図形だと捉える場合について考えよう.

物体1の質量を \( M \) とすれば物体2の質量(の絶対値)は面積比より \( M/3 \) である. ただし, 物体2は切り抜く物体なのでマイナスの質量を持つ. 重心はそれぞれ \[ \begin{aligned} & \boldsymbol{r}_{1} = ( \frac{3R}{2} , R ) \\ & \boldsymbol{r}_{2} = ( 2R , \frac{3R}{2}) \end{aligned} \] であるので, 全体の重心 \( \boldsymbol{r}_{G} \) は物体1と負の質量を持つ物体2の重心と考えて \[ \begin{aligned} \boldsymbol{r}_{G} &= \frac{\sum_{i=1}^{2}m_{i}\boldsymbol{r}_{i}}{\sum_{i=1}^{2}m_{i}} \\ &= \frac{m_{1} \boldsymbol{r}_{1} + m_{2} \boldsymbol{r}_{2} }{m_1 + m_2} \\ &= \frac{ \left\{ M( \frac{3R}{2}, R )+ \left( -\frac{M}{3} \right) ( 2R , \frac{3R}{2}) \right\} }{M – \frac{M}{3} } \\ &= \left( \frac{5R}{4} , \frac{3R}{4} \right) \end{aligned} \] となり, 先に求めた重心と一致する.

最終更新日
力学的エネルギー保存則 2体問題



補足    (↵ 本文へ)
  1. このように, 質点という現実的な物体を極限まで簡略化した概念(モデル)に対して大きさという現実の要素を加える, 適切に処理することで扱える問題の範囲を拡張可能なのが物理の醍醐味でもある.

  2. 気づいた人もいるであろうが, 小さな物体の位置はどこにするべきなのかという疑問が生じるであろう. その位置は実は, やはりその小さな物体の重心なのである. つまり, この文章はよく読むと循環論法的になってしまっているが, まずは小物体の中心を物体の位置と思って読み進めて欲しい. 小さい物体は質量の斑が無視できるであろうし, そのような一様な物体の重心は物体の中心に一致することが知られている.

  3. もちろん, マイナスの質量というのは計算上の話である. 残念ながら, そのような物体はまだ見つかっていない.

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