ベクトル

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ベクトル
ベクトルの基本性質
ベクトルの成分表示
内積
外積


ベクトル

「ベクトルとは何か?」と聞かれれば, ベクトルとは大きさ向きを持つ量である, と答えるのが通例であるし, それでよい.

ベクトルをつかって表現すべきものはたくさんある. 物理の勉強を始めればすぐに登場するが, 位置もベクトルを使って表現することになる.

例えば下図のように「点 \( O \) から見て点 \( A \) はどこにいるか」について説明する方法を考えよう.

この場合, 点 \( O \) から見て点 \( A \) に向かう方向を指定し, 点 \( O \) と点 \( A \) を結ぶ長さを指定しなければならない.

方向を指定しても長さ(大きさ)が違っていれば別の点を指定してしまうし, 長さが適切でも方向が違えばこれまた別の点を指定してしまうことになる. このように, 位置を適切に指定するためには方向と長さ(大きさ)の両方を持っているベクトルで表現することになる.

ベクトルとスカラー

ベクトルの要素として長さ(大きさ)が必要であると述べた. この, 向きを持っていない量である長さ(大きさ)のことをベクトルと区別してスカラーと呼ぶ. したがって, ベクトルは方向と大きさを表すスカラー量からなる新しい量である, と表現することもできる.

スカラー量の例としてよく挙げられる物理量は, 身長や体重, 温度などが挙げられる. 一方, ベクトル量の例としては, 位置や速度, 力などが挙げられる.

スカラー場

空間の各点にスカラー量が割り当てられているような空間をスカラー場という.

スカラー場の身近な例は天気予報の気温図などであろう(下図). 温度というスカラー量を地図上の各点に割り当てており, スカラー場のちょうどいい例となっている.

スカラー場の例としての気温図(気象庁HPより引用)
20150726000000t

ベクトル場

空間の各点にベクトル量が割り当てられているような空間をベクトル場という.

ベクトル場の身近な例として天気予報の風向図を下に示す. 風向図では風の強さ(はやさ)と向きを指定して初めて意味があり, これを簡単に書き表している. 下図では地図上の各点に風向きを矢印で, 強さを数字で書き表しており, 典型的なベクトル場の例となっている.

ベクトル場の例としての風向図(気象庁HPより引用)
20150726000000w

スカラー場とベクトル場の考え方は表立っては登場しないが, 空間の各点にスカラー量もしくはベクトル量が敷き詰められているという感覚は持っておいてほしい[1].

ベクトルの基本性質

ベクトルの表記法

ある点 \( A \) が点 \( O \) に対してどの位置にあるのかを指し示すベクトルを \( \overrightarrow{OA} \) などと表す. このとき, 点 \( O \) をベクトルの始点, 点 \( A \) をベクトルの終点という.

べクトルの始点を常に原点 \( O \) にとることにしたベクトルを位置ベクトルといい, 終点の座標と同じ記号を用いて \( \overrightarrow{a} \) などと表記する. また, 理工学系の参考書などでは位置ベクトルを \( \boldsymbol{a} \) などの太字を使って表すことが多く見受けられる. このサイトでもベクトルは太字を使って表現することにする. すなわち, \[ \boldsymbol{a} = \overrightarrow{a} = \overrightarrow{OA} \] はどれも同じベクトルを表している.

ベクトルの大きさ

ベクトル \( \boldsymbol{a} \) の持っている要素としてその長さ(大きさ)を表すスカラー量がある. ベクトル \( \boldsymbol{a} \) の大きさを \( \left| \boldsymbol{a} \right| \) と表す. もしくは, ベクトルを太字書きせず \( a \) と書いた場合もベクトルの大きさを表すことにする. \[ a = \left| \boldsymbol{a} \right|\]

複数のベクトルを描くときにはその相対的な大きさが守られるように意識しながら書くことを意識してほしい.

逆ベクトル

ベクトル \( \boldsymbol{a} \) の逆ベクトルを \( -\boldsymbol{a} \) と表す. 逆ベクトルは \( \boldsymbol{a} \) とは逆向きで同じ大きさを持つ.

ベクトルの平行移動

ベクトルを決める時には大きさと向きさえ指定すればよいと述べた. したがって, 始点と終点を指定しておく必要はない. そこで, 大きさと向きが同じベクトルの群は同じベクトルと考えるのである. 下図に示したベクトルは全て \( \boldsymbol{a} \) だと考えることができる. このようにベクトルは平行移動してもその意味はかわらない.

ベクトルの和

ベクトルについても和差計算を考えることができる. ベクトル \( \boldsymbol{a} \) とベクトル \( \boldsymbol{b} \) のを \[ \boldsymbol{a} + \boldsymbol{b} \] と書く. この意味は \( \boldsymbol{a} \) の終点と \( \boldsymbol{b} \) の始点を合わせてベクトルをつなぎ, \( \boldsymbol{a} \) の始点と \( \boldsymbol{b} \) の終点を直線でつないだベクトルを表している.

ベクトル \( \boldsymbol{a} \) とベクトル \( \boldsymbol{b} \) の和を新しい記号で \( \boldsymbol{c} \) と書くことにすると, \[ \boldsymbol{c} = \boldsymbol{a} + \boldsymbol{b} \] と表す. この式は右辺の二つのベクトル \( \boldsymbol{a} \) , \( \boldsymbol{b} \) を足し合わせることで左辺のベクトル \( \boldsymbol{c} \) を作ったと考えることができる. このような操作をベクトルの合成という. また, 左辺のベクトル \( \boldsymbol{c} \) を右辺の \( \boldsymbol{a} \) , \( \boldsymbol{b} \) の二つのベクトルに分解したと考えることもできる. このような操作をベクトルの分解という.

ベクトルの差 \( \boldsymbol{a} – \boldsymbol{b} \) は \( \boldsymbol{a} + \left( – \boldsymbol{b} \right) \) であり, \( \boldsymbol{a} \) と \( \boldsymbol{b} \) の逆ベクトル \( -\boldsymbol{b} \) の和と考えればよい.

ゼロベクトル

始点と終点が一致したベクトルをゼロベクトルといい, \( \boldsymbol{0} = \overrightarrow{0} \) と表す. \( \boldsymbol{0} \) は大きさがゼロで向きを持たない[2].

ベクトルの実数倍

ベクトル \( \boldsymbol{a} \) の実数倍を, 実数 \( k \) を用いて \( k \boldsymbol{a} \) と表す.

\( \boldsymbol{a} = \boldsymbol{0} \) の場合

\( k \boldsymbol{a} \) は \( \boldsymbol{0} \) となる.

\( \boldsymbol{a} \neq \boldsymbol{0} \) の場合

\( k=0 \) の時 : \( k\boldsymbol{a} \) は \( \boldsymbol{0} \) となる.

\( k>0 \) の時 : \( k\boldsymbol{a} \) の向きは \( \boldsymbol{a} \) と一致し, 大きさは \( k\left|a\right| \) となる.

\( k<0 \) の時 : \( k\boldsymbol{a} \) の向きは \( \boldsymbol{a} \) と逆向きであり, 大きさは \( k\left|a\right| \) となる.

単位ベクトル

大きさが \( 1 \) のベクトル \( \boldsymbol{e} \) を単位ベクトルという. 例えば, ベクトル \( \boldsymbol{a} \) と同じ方向で大きさが \( 1 \) の単位ベクトルを \( \boldsymbol{e} \) とすれば, \[ \boldsymbol{a} = \left| \boldsymbol{a} \right| \boldsymbol{e} = a \boldsymbol{e} \] とあらわすことができる.

ベクトルの演算

\( \boldsymbol{a}, \boldsymbol{b}, \boldsymbol{c} \) を任意のベクトル, \( k, l \) を任意の実数とする. ベクトルは以下に挙げるような性質を持つ. \[ \begin{aligned} & \boldsymbol{a} + \boldsymbol{b} = \boldsymbol{b} + \boldsymbol{a} \\ & \left( \boldsymbol{a} + \boldsymbol{b} \right) + \boldsymbol{c}= \boldsymbol{a} + \left( \boldsymbol{b} + \boldsymbol{c} \right) \\ & k \left( \boldsymbol{a} + \boldsymbol{b} \right) = k \boldsymbol{a} + k \boldsymbol{b} \\ & \left( k + l \right) \boldsymbol{a} = k \boldsymbol{a} + l \boldsymbol{a} \\ & k \left( l \boldsymbol{a} \right) = kl \boldsymbol{a} \\ & 1 \boldsymbol{a} = \boldsymbol{a} \\ & \left( -1 \right) \boldsymbol{a} =- \boldsymbol{a} \\ & 0 \boldsymbol{a} = \boldsymbol{0} \\ & \boldsymbol{a} + \boldsymbol{0} = \boldsymbol{a} \end{aligned} \]

ベクトルの成分表示

これまではベクトル自身が持つ性質についてのみ説明してきた. 次はベクトルをある空間に配置することを考える.

2次元空間のベクトル

2次元空間にベクトル \( \boldsymbol{a} \) を配置する事を考える. なお, 2次元空間のベクトルを平面ベクトルともいう.

ベクトル \( \boldsymbol{a} \) を配置する2次元空間には2つの垂直に交わる座標軸を用意し, \( x \) 軸, \( y \) 軸とする. また, \( x \) 軸と \( y \) 軸の交点を原点 \( O \) と呼ぶ.

ベクトル \( \boldsymbol{a} \) の始点を原点 \( O \) にとり, \( \boldsymbol{a} \) の終点を点 \( A \left( a_x , a_y \right) \) とする. 点 \( A \) から \( x \) 軸及び \( y \) 軸に垂線をおろし, それぞれの交点を \( P , Q \) とする. \[ P\left( a_x , 0 \right) , \quad Q\left( 0 , a_y\right) \ . \] \( P, Q \) の位置ベクトルをそれぞれ \( \boldsymbol{p} , \boldsymbol{q} \) とする. ここで, 向きが \( x \) 軸方向で大きさ \( 1 \) の単位ベクトルを \( \boldsymbol{e}_x \) , 向きが \( y \) 軸方向で大きさ \( 1 \) の単位ベクトルを \( \boldsymbol{e}_y \) とすると次式が成り立つ. \[ \begin{gathered} \boldsymbol{p} = a_x \boldsymbol{e}_x \\ \boldsymbol{q} = a_y \boldsymbol{e}_y \end{gathered} \] \( \boldsymbol{a} \) は \( \boldsymbol{p} \) と \( \boldsymbol{q} \) の和であるから, 結局 \[ \begin{aligned} \boldsymbol{a} & = \boldsymbol{p} + \boldsymbol{q} \\ & = a_x \boldsymbol{e}_x + a_y \boldsymbol{e}_y \label{aベクトルの基本ベクトル表示} \end{aligned} \] となる. \( a_x , a_y \) をそれぞれベクトル \( \boldsymbol{a} \) の \( x \) 成分, \( y \) 成分という. 上式をより簡略化して \[ \boldsymbol{a} = \left( a_x , a_y \right) \] と表し, ベクトルの成分表示という. また, ベクトル \( \boldsymbol{a} \) の大きさは各成分を用いて \[ \left| \boldsymbol{a} \right| = a = \sqrt{ a_x^2 + a_y^2 } \] と与えられる.

成分表示の2次元ベクトルの演算

\( \boldsymbol{a} = \left( a_x , a_y \right) \) 及び \( \boldsymbol{b} = \left( b_x , b_y \right) \) を任意のベクトル, \( k \) を任意の実数とすると以下に挙げるような性質を満たす. \[ \begin{aligned} k \boldsymbol{a} &= k \left( a_x , a_y \right) = \left( k a_x , k a_y \right) \\ \boldsymbol{a} + \boldsymbol{b} & = \left( a_x , a_y \right) + \left( b_x , b_y \right) \\ & = \left( a_x + b_x , a_y + b_y \right) \\ \boldsymbol{a} – \boldsymbol{b} & = \left( a_x , a_y \right) – \left( b_x , b_y \right) \\ &= \left( a_x – b_x , a_y – b_y \right) \end{aligned} \]

2次元空間の距離

ベクトル \( \boldsymbol{p} \) の始点 \( A\left( x_1 , y_1 \right) \) , 終点 \( B\left( x_2 , y_2 \right) \) の時にはベクトルの分解を用いると, \[ \begin{aligned} \boldsymbol{a} & = \overrightarrow{AB} = \overrightarrow{OB} – \overrightarrow{OA} \\ & = \left( x_2 – x_1 , y_2 – y_1 \right) \end{aligned} \] と表される.

点 \( A \) と点 \( B \) との距離は \( \boldsymbol{p} \) の大きさなので, 三平方の定理を用いると, \[ \begin{aligned} \left| \boldsymbol{p} \right| & = \left| \overrightarrow{AB} \right| \\ & = \sqrt{ \left(x_2 – x_1 \right)^2 + \left(y_2 – y_1 \right)^2 } \end{aligned} \] と計算することができる.

3次元空間のベクトル

ベクトルの長所の一つに次元の数が変わってもその成分が増えるだけで演算法則が変わらないことが挙げられる.

今度はベクトル \( \boldsymbol{a} \) を配置する空間として3次元空間を想定する.

3次元空間では互いに垂直な3つの軸 \( x \) 軸, \( y \) 軸, \( z \) 軸を用意し, その交点を原点 \( O \) とする. また, \( x \) 軸, \( y \) 軸, \( z \) 軸の向きを持つ大きさ \( 1 \) の単位ベクトルをそれぞれ \( \boldsymbol{e_x} , \boldsymbol{e_y} , \boldsymbol{e_z} \) とする.

2次元ベクトルの時と同様, 3次元ベクトル(空間ベクトル) \( \boldsymbol{a} \) の成分表示を \[ \boldsymbol{a} = \left( a_x ,a_y , a_z\right) \] などと表し, \( a_x , a_y , a_z \) をそれぞれベクトル \( \boldsymbol{a} \) の \( x \) 成分, \( y \) 成分, \( z \) 成分と呼ぶ.

成分表示の3次元ベクトルの演算

\( \boldsymbol{a} = \left( a_x , a_y , a_z \right) \) 及び \( \boldsymbol{b} = \left( b_x , b_y , b_z \right) \) を任意のベクトル, \( k \) を任意の実数とすると以下に挙げるような性質を満たす. \[ \begin{aligned} k \boldsymbol{a} & = k \left( a_x , a_y , a_z \right) = \left( k a_x , k a_y , k a_z\right) \\ \boldsymbol{a} + \boldsymbol{b} &= \left( a_x , a_y , a_z \right) + \left( b_x , b_y , b_z\right) \\ & = \left( a_x + b_x , a_y + b_y , a_z + b_z \right) \\ \boldsymbol{a} – \boldsymbol{b} & = \left( a_x , a_y , a_z \right) – \left( b_x , b_y , b_z \right) \\ & = \left( a_x – b_x , a_y – b_y , a_z – b_z\right) \end{aligned} \]

3次元空間の距離

ベクトル \( \boldsymbol{p} \) の始点が \( A\left( x_1 , y_1 , z_1\right) \) で終点が \( B\left( x_2 , y_2 , z_2 \right) \) の時, 成分表示を用いて \[ \begin{aligned} \boldsymbol{p}& = \overrightarrow{AB} = \overrightarrow{OB} – \overrightarrow{OA} \\ & = \left( x_2 – x_1 , y_2 – y_1 , z_2 – z_1 \right) \end{aligned} \] と表される. \( \boldsymbol{p} \) の大きさ, すなわち点 \( A \) と点 \( B \) との距離は \[ \begin{aligned} \left| \boldsymbol{p} \right| & = \left| \overrightarrow{AB} \right| \\ & = \sqrt{ \left(x_2 – x_1 \right)^2 + \left(y_2 – y_1 \right)^2 + \left(z_2 – z_1 \right)^2 } \end{aligned} \] で与えれる. このように, 空間の距離であっても空間ベクトルを用いることで容易に計算することができる.

内積

ベクトルの和と差はこれまで述べてきたようにベクトルをつなぎ合わせることで別のベクトルを作る操作であった. 次に考えるのはベクトルの積をどう考えるのかであるが, ベクトルの積には2つの考え方がある. そのうちの1つが 内積 と言われる積であり, ベクトルとベクトルからスカラー量を作る積の考え方である.

\( \boldsymbol{0} \) でない二つのベクトル \( \boldsymbol{a} , \boldsymbol{b} \) のなす角が \( \theta ( 0 \le \theta \le \pi ) \) の時, 実数 \[ \boldsymbol{a} \cdot \boldsymbol{b} = \left| a\right| \left| b\right| \cos{\theta} \] を \( \boldsymbol{a} , \boldsymbol{b} \) の内積という. 内積はかならず記号「 \( \cdot \) 」を使って表す. \( \boldsymbol{a} \times \boldsymbol{b} \) は高校数学では取り扱われないが, 後に説明する外積という量を表すので, 「 \( \cdot \) 」と「 \( \times \) 」はベクトルの計算では厳密に区別しておく必要がある.

なお, ゼロベクトル \( \boldsymbol{0} \) の内積については \[ \boldsymbol{0} \cdot \boldsymbol{b} =\boldsymbol{a} \cdot \boldsymbol{0} = 0 \] とする.

内積の性質

2次元ベクトル \( \boldsymbol{a}=\left( a_x , a_y \right) \) , \( \boldsymbol{b}= \left( b_x , b_y \right) \) または 3次元ベクトル \( \boldsymbol{a}=\left( a_x , a_y , a_z \right) \) , \( \boldsymbol{b}= \left( b_x , b_y , b_z \right) \) の内積について \( \boldsymbol{a} \) と \( \boldsymbol{b} \) のなす角を \( \theta \) として次のような性質を満たす. \[ \begin{aligned} & \boldsymbol{a} \cdot \boldsymbol{b} = \boldsymbol{b} \cdot \boldsymbol{a} \\ & \boldsymbol{a} \cdot \boldsymbol{b} = \left| \boldsymbol{a} \right|^2 \\ & \sqrt{ \boldsymbol{a} \cdot \boldsymbol{b} } = \sqrt{\left| \boldsymbol{a} \right|^2 } = \left| \boldsymbol{a} \right| \\ & \boldsymbol{a} \cdot \boldsymbol{b} = \left\{ \begin{aligned} & a_x b_x + a_y b_y \quad \mbox{–2次元の場合}\\ & a_x b_x + a_y b_y + a_z b_z \quad \mbox{–3次元の場合} \end{aligned} \right. \\ & \cos{\theta} = \frac{ \boldsymbol{a} \cdot \boldsymbol{b} }{\left| \boldsymbol{a} \right| \left| \boldsymbol{b}\right|} = \left\{ \begin{aligned} & \frac{ a_x b_x + a_y b_y }{ \sqrt{ a_x^2 + a_y^2 } \sqrt{b_x^2 + b_y^2 } } \quad \mbox{–2次元の場合} \\ & \frac{ a_x b_x + a_y b_y +a_z b_z }{ \sqrt{ a_x^2 + a_y^2 + b_z^2} \sqrt{b_x^2 + b_y^2 + b_z^2} } \quad \mbox{–3次元の場合} \end{aligned} \right. \end{aligned} \]

内積と垂直条件

\( \boldsymbol{0} \) でないベクトル \( \boldsymbol{a} \) と \( \boldsymbol{b} \) が直交する時, \( \boldsymbol{a} \) と \( \boldsymbol{b} \) のなす角は \( \frac{\pi}{2} \) であるのでその内積は \( 0 \) となる. このとき \( \boldsymbol{a} \) と \( \boldsymbol{b} \) の関係を \( \boldsymbol{a} \perp \boldsymbol{b} \) と表す. \[ \boldsymbol{a} \perp \boldsymbol{b} \quad \Longleftrightarrow \quad \boldsymbol{a} \cdot \boldsymbol{b} = 0 \] 以上より, ゼロでない二つのベクトルの内積が \( 0 \) であることは二つのベクトルが直交することの必要十分条件である.

内積と射影ベクトル

2次元ベクトル \( \boldsymbol{a} = \left( a_x , a_y \right) \) と \( x \) 軸方向への単位ベクトル \( \boldsymbol{e}_x = \left( 1, 0 \right) \) の内積は \[ \boldsymbol{a} \cdot \boldsymbol{e_x} = a_x \cdot 1 + a_y \cdot 0 = a_x \] となり, \( \boldsymbol{a} \) ベクトルの \( x \) 方向成分のみを取り出すことができる. また, ベクトル \( \boldsymbol{a} \) が \( \boldsymbol{e}_x \) 方向に対して垂直に下ろしたがつくるベクトルは \[ \left( \boldsymbol{a} \cdot \boldsymbol{e}_x \right) \boldsymbol{e}_x = a_x \boldsymbol{e}_x \] とあわらすことができ, 正射影ベクトルなどという.

一般にベクトル \( \boldsymbol{a} \) のベクトル \( \boldsymbol{b} \) に対する正射影ベクトル \( \boldsymbol{a}' \) は, \( \boldsymbol{a} \) と \( \boldsymbol{b} \) のなす角を \( \theta \) として, \[ \begin{aligned} \boldsymbol{a}' & = \left| \boldsymbol{a} \right| \cos{\theta} \frac{\boldsymbol{b}}{\left|\boldsymbol{b}\right|} \\ & = \left| \boldsymbol{a} \right| \frac{ \boldsymbol{a} \cdot \boldsymbol{b} }{ \left| \boldsymbol{a} \right| \left| \boldsymbol{b} \right| } \frac{\boldsymbol{b}}{\left|\boldsymbol{b}\right|} \\ & = \left( \frac{\boldsymbol{a} \cdot \boldsymbol{b}}{\left| \boldsymbol{b}\right|^2 } \right) \boldsymbol{b} \end{aligned} \] である.

また, 射影という考え方を用いれば, 内積について別の表現が可能である. \( \boldsymbol{a}' \) の大きさと \( \boldsymbol{b} \) の大きさの積を計算すると, \[ \begin{aligned} \left| \boldsymbol{a}' \right| \left| \boldsymbol{b} \right| & = \left( \frac{\boldsymbol{a} \cdot \boldsymbol{b}}{\left| \boldsymbol{b}\right|^2 } \right) \left| \boldsymbol{b} \right| \ \left| \boldsymbol{b} \right| \\ & = \boldsymbol{a} \cdot \boldsymbol{b} \quad . \end{aligned} \] したがって, \( \boldsymbol{a} \) と \( \boldsymbol{b} \) の内積は, \( \boldsymbol{a} \) を \( \boldsymbol{b} \) に射影したベクトル \( \boldsymbol{a}' \) の大きさと \( \boldsymbol{b} \) の大きさの積であるともいえる.

外積

外積の定義

ベクトルに対して 外積 ( ベクトル積 )と呼ばれる新たな演算方法を導入する. 外積は2つの空間ベクトルに対して行われる. 外積とは, ベクトルとベクトルのかけ算によって新しい空間ベクトルを生成するような演算である. なお, 外積は平面ベクトルについては考えることができない積であり, 外積を考える場合には3次元ベクトルを考えていることにする.

ベクトル \( \boldsymbol{A} = \left( A_x , A_y , A_z \right) \) , \( \boldsymbol{B} = \left( B_x , B_y , B_z \right) \) の外積を記号 \( \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{B} \) と表す. この結果によって新しく生成されるベクトルを \( \boldsymbol{C} \) とする. すなわち, \[ \boldsymbol{C} = \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{B} \] とした時のベクトル \( \boldsymbol{C} = \left( C_x , C_y , C_z \right) \) の成分を列ベクトルを用いて表すと, \[ \left( \begin{aligned} C_x \\ C_y \\ C_z \end{aligned} \right) = \left( \begin{aligned} A_y B_z – A_z B_y \\ A_z B_x – A_x B_z \\ A_x B_y – A_y B_x \end{aligned} \right) \] また, \( \boldsymbol{A} , \boldsymbol{B} \) のなす角を \( \theta \) とすると, \( \boldsymbol{C} \) の大きさは \[ \left| \boldsymbol{C}\right| = \left| \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{B} \right| = \left| \boldsymbol{A} \right| \left| \boldsymbol{B}\right| \sin{\theta} \] である. これは \( \boldsymbol{A} , \boldsymbol{B} \) を2辺とした平行四辺形の面積に等しい.

\( \boldsymbol{C} \) の向きを表す簡単な例として, \( \boldsymbol{A} , \boldsymbol{B} \) が \( x-y \) 平面上に存在する場合, すわなち, \( \boldsymbol{A} = \left( A_x , A_y , 0 \right) \) , \( \boldsymbol{B} = \left( B_x , B_y , 0 \right) \) と表される場合, \( \boldsymbol{C} = \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{B} \) の向きは図に示すようであり, \( \boldsymbol{A} , \boldsymbol{B} \) の両方に垂直な方向の成分のみ値を持つ. このような方向を 右ねじの方向 という.

\[ \left( \begin{aligned} C_x \\ C_y \\ C_z \end{aligned} \right) = \left( \begin{aligned} A_y \underbrace{B_z}_{=0} – \underbrace{A_z}_{=0} B_y \\ \underbrace{A_z}_{=0} B_x – A_x \underbrace{B_z}_{=0} \\ A_x B_y – A_y B_x \end{aligned} \right) = \left( \begin{aligned} &0 \\ &0 \\ A_x B_y &- A_y B_x \end{aligned} \right) \] \[ \left| \boldsymbol{C}\right| = \left|\boldsymbol{A}\right| \left|\boldsymbol{B}\right|\sin{\theta} \]

外積はその定義の性質上, \( \boldsymbol{A} \) と \( \boldsymbol{B} \) の掛け算の順序が逆になると \( \boldsymbol{C} \) の向きも反対になることに注意が必要である. このような性質を積が非可換であるという[3].

高校物理で外積が登場する分野は, 力学の角運動量・モーメント, 電磁気での磁場・ローレンツ力などの範囲である. これらの単元では外積という言葉が明記されない場合があるが, 右ねじの考え方だけが紹介されるのが一般的である.

外積の演算

任意のベクトル \( \boldsymbol{A} , \boldsymbol{B}, \boldsymbol{C} \) と実数 \( k \) に対して, 外積の演算は以下の様な特徴を持つ. 特に最初の2つの演算は内積の性質とは大きく異なることに注意すること.

\[ \begin{aligned} & \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{A} = \boldsymbol{0} \\ & \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{B} =- \boldsymbol{B} \times \boldsymbol{A} \\ & \left( \boldsymbol{A} + \boldsymbol{B}\right) \times \boldsymbol{C} = \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{C} + \boldsymbol{B} \times \boldsymbol{C} \\ & k (\boldsymbol{A} \times \boldsymbol{B} ) = k\boldsymbol{A} \times \boldsymbol{B} = \boldsymbol{A} \times k \boldsymbol{B} \\ & \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{0} = \boldsymbol{0} \\ & \boldsymbol{A} \times \left( \boldsymbol{B} \times \boldsymbol{C} \right) + \boldsymbol{B} \times \left( \boldsymbol{C} \times \boldsymbol{A} \right) + \boldsymbol{C} \times \left( \boldsymbol{A} \times \boldsymbol{C} \right) = \boldsymbol{0} \\ & \boldsymbol{A} \times \left( \boldsymbol{B} \times \boldsymbol{C}\right) = \left( \boldsymbol{A} \cdot \boldsymbol{C} \right) \boldsymbol{B} – \left( \boldsymbol{A} \cdot \boldsymbol{B} \right) \boldsymbol{C} & \end{aligned} \]

各公式の証明などについてはこれ以上踏み込まないが, 興味がある人は各自で行ってみること.

最終更新日
三角比 極限



補足    (↵ 本文へ)
  1. すでに物理を学んだ人にとってはこれらの考え方が物理では頻繁に使われていたことを思い出してほしい.
    質量のある物体に重力を与える重力場や, 電荷を持つ物体にローレンツ力を与える電場などはベクトル場の一種であるし, 熱平衡状態とは空間の各点での温度が同じ値を持っているスカラー場の一種である.
    このという考え方は将来的に物理を学びたいと考えている人にとってはとても重要な考え方である.

  2. より正確には, ゼロベクトルは向きが定まらないと考えるべきである.

  3. 全く余談であるが, よく小学生の問題の採点に関して, かけ算の順序が逆だとバツかどうかが問題になっているようだ. 教育という観点からはどう指導すべきなのか知らないが数学的には全く問題がないと管理人は思う.
    また積が非可換であるのは何も特別なことではなく, そのような計算は理工学系に進学したらざらであることがわかる. むしろ内積のように積の順序が関係ない(可換)性質はとてもありがたいものである.

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