物理に登場するグラフ

物理では数式だけでなく多数の図やグラフが登場する. 図やグラフは数式の感覚的理解を助けてくれるし, 可視化された情報の方が記憶するのにより適しているので, 積極的に勉強するべきである. 以下では物理で頻出のグラフをいくつか紹介する.

グラフを見るときに注意すべき点はいくつかあるが, 最低でも以下のことは頭に入れておきたい.

  • 縦軸と横軸は何か?

  • グラフが最大値, 最小値, 縦軸がゼロになるときそれぞれの横軸の値.

  • グラフの傾き=関数の微分が表す物理量は”(縦軸の単位)/(横軸の単位)”と同じ単位を持つ量である.

  • グラフの面積=関数の積分が表す物理量は”(縦軸の単位)×(横軸の単位)”と同じ単位を持つ量である.

力と距離

主な登場分野 : 力学, 電磁気学

縦軸に力 \( F \) , 横軸に距離 \( x \) をとれば, その面積は仕事 \( W \) を表す. 力学的エネルギー保存則の項目で詳しく説明するが, ある位置から別の位置を経て元の位置に戻ってくるまでの間に力 \( F \) がした仕事 \( W \) がゼロであれば \( F \) を保存力という.

力と時間

主な登場分野 : 力学, 熱力学

縦軸に力 \( F \) , 横軸に時間 \( t \) をとれば, その面積は力積 \( I \) を表す. 一般的に物体に加えられる力は下図のように時間的に急な変化をするが, 計算する場合には力積(面積)が同じ値になるよう平均の力を \( \overline{F} \) として計算することが多い.

多くの場合力 \( F \) の働く時間 \( \Delta t \) は十分に短く, 撃力でない力による力積は撃力による力積に比べて無視できることなどは計算にはほとんど登場しないが, 頭の片隅には置いておいていだたきたい.

万有引力の位置エネルギー

主な登場分野 : 力学

縦軸に万有引力の位置エネルギー \( U \) , 横軸に距離 \( r \) をとったとき, 位置エネルギーの微分量の絶対値は万有引力 \( F \) の大きさを表す. なお, 万有引力のエネルギーの基準は無限遠点とするので, その位置エネルギーはマイナスであることに注意すること.

P – Vグラフ

主な登場分野 : 熱力学

縦軸に気体の圧力 \( P \) , 横軸に気体の体積 \( V \) をとればその面積は気体が外部に成した仕事 \( W \) を表す. これは力と距離の積で仕事が求まる関係と本質は同じであり, 縦軸が(力÷面積)で横軸が(距離×面積)となっているだけである.

P – V グラフではその反応過程の向きや \( W \) の定義など, 問題ごとで確認しておくべき項目が多いので注意が必要である.

電場と距離

主な登場分野 : 電磁気学

縦軸に電場 \( E \) , 横軸に距離 \( x \) をとると, その面積は距離 \( x \) だけ隔てた位置との電位差 \( V \) を表す. コンデンサなど電場を形成する極板間の距離 \( d \) が小さい領域では \( E \) が一定とみなして, \( V = Ed \) が成立する.

電流と時間

主な登場分野 : 電磁気学

縦軸に電流 \( I \) , 横軸に時間 \( t \) をとると, その面積は電荷量 \( Q \) を表す. 電流の正体は電荷を持つ電子の移動によって生じている量だと分かっていれば極々自然な意味である.

磁束と時間

主な登場分野 : 電磁気学

縦軸に磁束 \( \Phi \) , 横軸に時間 \( t \) をとると, その傾きの絶対値は誘導起電力の大きさ \( V \) を表す. 磁場の学問では磁場中を金属等の自由電子を持つ物体が相対的に移動することでローレンツ力が生じて電荷を持つ量の流れをつくる. これは電荷を持つ物体に対する電気的な高低差を生んでいることに等しく誘導起電力と言われ, 電池と並列に考えることになる.