板上を移動する人

板と板上を移動する人の運動量保存

なめらかな下面とあらい上面をもつ質量 \( M \) で長さ \( L \) の板がなめらかな床の上におかれている. その上を質量 \( m \) の人間が移動することを考える. はじめ, 両者は床に対して静止しており, 板の左端にいた人間が等速度で板の右端まで移動する.

この間に板が動く方向とその距離を求めよ.

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水平方向右向きを位置の正の方向とし, 地面に対する人および板の速度を \( v \) , \( V \) とする.

人と物体を1つの系とみなせば, これらの間に運動量保存則が成立する. はじめ, 人と板は両方共静止していたことから初期状態の運動量の総和は \( 0 \) であることを用いると, 運動量保存則より, \[mv + MV =0 \notag \] が成立している. したがって, \[V = -\frac{m}{M}v \label{MV}\] であり, 人と板の速度は互いに逆向きであることがわかる.

板に対する人の相対速度は \[v – \left( -\frac{m}{M}v \right) = \left( 1 + \frac{m}{M} \right) v \notag \] である. したがって, 人が板の端に到達するのに要する時間 \( t \) は, \[\begin{aligned} &\left\{ \left( 1 + \frac{m}{M} \right) v \right\} t = L \\ \therefore \ & t = \frac{M}{m+M} \frac{L}{v} \end{aligned}\] であり, この間に板が動く距離は式\eqref{MV}より, \[\begin{aligned} & \left| \left( -\frac{m}{M}v \right) \cdot \frac{M}{m+M} \frac{L}{v} \right| = \frac{m}{m+M}L \quad . \end{aligned}\] で左向きに板が動いていることがわかる.

一般に質量 \( m_{1} \) で位置 \( \boldsymbol{x}_{1}(t) \) , 質量 \( m_{2} \) で位置 \( \boldsymbol{x}_{2}(t) \) の物体の重心 \( \boldsymbol{r}_{G}(t) \) は \[\boldsymbol{r}_{G}(t) = \frac{m_{1}\boldsymbol{x}_{1} + m_{2}\boldsymbol{x}_{2} }{m_{1}+m_{2}} \notag \]

一方, 運動量の和 \( \boldsymbol{P} \) は \[\boldsymbol{P} = m_{1}\frac{d\boldsymbol{x}_{1}}{dt} + m_{2}\frac{d\boldsymbol{x}_{2}}{dt} \notag \] はこの2物体間に働く力以外の力が存在しなければ, \( \boldsymbol{P} \) は時間によらず一定である. このとき, 重心座標 \( \boldsymbol{r}_{G} \) の時間微分, すなわち重心速度 \[\begin{aligned} \frac{d \boldsymbol{r}_{G} }{dt} &=\boldsymbol{v}_{G} \\ &= \frac{m_{1}\frac{ d\boldsymbol{x}_{1}}{dt} + m_{2}\frac{ d\boldsymbol{x}_{2}}{dt} }{m_{1}+m_{2}} \end{aligned}\] は時間によらずに一定となる(二体問題).

はじめ, 人と板は両方共静止していたことからこれらの重心速度はゼロであり, 人と物体の重心座標は時間によらず常に一定の値となる.

そこで, 板の左端を原点とし, 水平方向右向きを \( x \) 軸の正方向とする. はじめ, 人の座標は \( x=0 \) で, 板の重心は \( x=\frac{L}{2} \) であることから全体の重心 \( x_{G} \) は次式で与えられる. \[x_{G} = \frac{m\cdot 0 + M \frac{L}{2}}{m + M } = \frac{L}{2\left(m+M\right)} \quad . \notag \]

人が移動して板の右端に到達したときの位置座標を \( x^{\prime} \) とすると, 板の重心は \( x^{\prime}-\frac{L}{2} \) で与えられる. これらの重心 \( x^{\prime}_{G} \) は初めの重心 \( x_{G} \) から変化しないことから \[\begin{aligned} & x_{G}^{\prime} =x_{G} \\ & \frac{m \cdot x^{\prime} + M \left( x^{\prime}-\frac{L}{2} \right)}{m + M} = \frac{L}{2\left(m+M\right)} \\ \to\ x^{\prime} &= \frac{M}{m+M}L \end{aligned}\]

板の重心は \( x=\frac{L}{2} \) から \( x=x^{\prime}-\frac{L}{2} \) へ移動したので, その間の変位は \[\begin{aligned} \left( x^{\prime}-\frac{L}{2} \right)- \frac{L}{2} = -\frac{m}{m+M}L \end{aligned}\] である. したがって, 板の座標が \( x \) 軸方向とは逆方向(左方向)に \( \displaystyle{\frac{m}{m+M}L} \) だけ変化したことがわかる.

この解法においては, 人や板が等速度で動くという前提は与えられている必要はない.

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