電流

今や我々の生活に欠かせない存在となった電流について議論する.

化学の電池・電気分解を学習した人にとっては既知であるように, 電流の正体とは電子の(逆向きの)流れである. 物理ではこのような定性的な説明に加えて, 電流の値をどのように定義するか, 簡単な回路において電流の値を求めるにはどうするかなどを学んでいくことになる.

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原子配列と自由電子
電流
ミクロな視点で見た電流
電流密度
電流の定義の一般形


原子配列と自由電子

銅(Cu)やアルミニウム(Al)など, 通常の状態で電気をよく通す物質を導体, その逆に普段は電気を通さない物質を不導体(絶縁体), その中間的な性質を持つ物質を半導体という. これらの違いを理解するためにまずは導体について議論する. 最も単純な例として, 固体の導体中の原子核と電子の模式図を下図に示した.

固体とはそれを構成している原子が, 互いの位置関係をほとんど一定に保っている状態である. そして, 原子は正の電荷を持つ原子核と, 負の電荷を持つ電子によって構成されている. このような構造は, 電子をまとっているかのような絵で表現される(上図参照)[1].

導体中では, 特定の原子核にまとわりついている電子のほかに, 原子核の電気的な力が及ぶ範囲から離れて比較的自由に動き回ることができる自由電子が存在している. この自由電子が外部からの電(磁)場を感じると電子の流れが生じ, 電子の集団移動が我々には電流として知覚されているのである[2].

導体中には自由電子が多数存在しているが, 絶縁体にはこのような自由電子がほとんど存在しておらず電流の担い手が存在しない. この違いによって, 各物質は導体と絶縁体とに分類される.

我々の周りのあらゆる電子機器に使用されている半導体はこの両方の性質を持っている物質である. 半導体についても詳しく語りたいところであるが, 話の主題が電流から逸れてしまうのでそれは別の機会に回すことにする.

自由電子と導体・不導体・半導体

電気をよく通す物質を導体, その逆を不導体(絶縁体), 中間の性質を持つ物体を半導体という.

導体中には多数の自由電子が存在しており, 電子の集団移動が我々には電流として観測される.

電流

電流

電流とは読んで字の如く, 電気の流れである. 電気は正と負の両方をとりえるのだが, 電流の方向正の電荷の流れる方向と定義されている.

ある面における電流の強さは単位時間あたりにある面を通過する電荷量の大きさであり, 単位は \( \mathrm{A} \) (アンペア)である. つまり, \( 1 \ \mathrm{A} = 1 \mathrm{C} / \mathrm{s} \) を電流の大きさの単位とする. ちなみに, 電子の持つ電荷の大きさ \( e \) は素電荷と言われ, \( e= 1.6 \times 10^{-19} \ \mathrm{C} \) であるので, \( 1 \mathrm{ C} \) とは電子が約 \( 6 \times 10^{18} \) 個集まった値である[3].

導体内部のある断面を通って \( \Delta t \) 秒間に正の電荷 \( \Delta Q \ \mathrm{C} \)垂直に通過するとき, 電流の大きさ \( I \)\[ I = \frac{\Delta Q}{\Delta t} \] もしくは無限小の極限を用いて \[ I = \frac{d Q}{d t} \] で定義する.

電流は向きを持つベクトル量であり, 向きまで考慮する場合には \( \boldsymbol{I} \) で表記する. 正の電荷 \( Q \) が速度 \( \boldsymbol{v} \) で移動しているとすれば, 速度方向の単位ベクトルは \( \displaystyle{\frac{\boldsymbol{v}}{\left| \boldsymbol{v} \right|}} \) であるので, \[ \boldsymbol{I} = \frac{d Q}{d t} \frac{\boldsymbol{v}}{\left| \boldsymbol{v} \right|} \] と表すことができる. この式を \[ \boldsymbol{I} = \frac{d \left( -Q \right)}{d t} \left( – \frac{\boldsymbol{v}}{\left| \boldsymbol{v} \right|} \right) \] と書き換えておけば, 負の電荷 \( – Q \) の持つ速度 \( \boldsymbol{v} \) とは逆方向が電流の向きであることがわかる.

すぐに説明するように, 実際に導線中を流れているのは負の電荷を持つ(自由)電子であり, 電子の流れの向きと電流の向きが逆に決められているが, これは電子が電流の担い手であったことがわかる以前に取り決められ, そのまま使われ続けているので致し方ない.

ミクロな視点で見た電流

電流についてミクロな視点で考えてみる. ある導体中の自由電子の単位体積あたりの個数(数密度)が \( n \ \mathrm{ 1 / m^3} \) とする. この導体内部の断面(面積 \( S \ \mathrm{m^2} \) )を通過するのは電荷 \( -e \ \mathrm{C} \) を持つ自由電子の集合である. 各電子の速度を \( \boldsymbol{v}_{i} \ \mathrm{m/s} \) として, それらの平均速度を \( \bar{\boldsymbol{v}} \ \mathrm{m/s} \) とすると, \( \Delta t \) 秒間に平均して \( \bar{v} \Delta t \) だけ電子が移動する. したがって, \( \Delta t \) 秒間に断面を通過する電荷の大きさは \( \Delta Q \) は断面から \( \bar{v}\Delta t \) だけ離れた領域に含まれる電子数なので, \[ \Delta Q = \left| -e n S \bar{v} \Delta t \right| \] と表すことができる. このとき, 電流は \[ I = \frac{\Delta Q}{\Delta t} = e n S \bar{v} \] であることがわかる[4]

電流密度

面積 \( \Delta S \) の領域を垂直に通過する電流が \( \Delta I \) であるとする. このとき, 単位面積を通過する電流を電流密度 \( \boldsymbol{i} \) といいその大きさを, \[ i = \frac{ \Delta I}{\Delta S} \] もしくは, 無限小の極限を用いて \[ i = \frac{ d I}{d S} \] で定義する. 電流密度も電流と同じ向きを持つ物理量であり, 向きは電流と同じである.

導体内部での各位置における電流密度がわかれば, 面積で積分し, \[ \begin{aligned} &\int i \ dS = \int \frac{ d I}{d S} \ dS \\ & \to \ I = \int i \ dS \end{aligned} \] を計算することで電流を求めることができる.

電流のまとめ

導体内部のある断面を通って \( \Delta t \) 秒間に正の電荷 \( \Delta Q \)垂直に通過するとき, 電流の大きさ \( I \) を  \[ I = \frac{d Q}{d t} \] で定義する. 電流の向きは正電荷の向きと一致する.

自由電子の数密度が \( n \) の導体内部の断面(面積 \( S \ \mathrm{m^2} \) )を通過する電子の平均速度を \( \bar{\boldsymbol{v}} \) とすると, 電流の大きさは次式で与えられる. \[ I = e n S \bar{v} \]

単位面積を通過する電流を電流密度 \( \boldsymbol{i} \) といい, 電流とは次式の関係にある. \[ \begin{aligned} &\int i \ dS = \int \frac{ d I}{d S} \ dS \\ & \to \ I = \int i \ dS \end{aligned} \]

電流の定義の一般形

ある面積 \( S \) の平面を電流密度 \( \boldsymbol{i} \) が垂直な向き以外で通過する場合についても記述しておく. このとき, 面に対して垂直な単位ベクトルを \( \boldsymbol{n} \) としよう. すると面を垂直に貫く電流密度の大きさ \( i_{n} \)\[ \begin{aligned} i_{n} & = \boldsymbol{i} \cdot \boldsymbol{n} \\ & = i \cos{\theta} \end{aligned} \] であり, \( \theta \)\( \boldsymbol{i} \)\( \boldsymbol{n} \) のなす角である. また, 電流の大きさ \( I \)\[ \begin{aligned} I & = \boldsymbol{i} \cdot \boldsymbol{n} S \\ & = i_{n} S \end{aligned} \] と決めることができる.

最後に, 電流が通る面が曲面である場合に一般化することを考えてみよう. 曲面 \( S \) 上の微小領域(面積 \( dS \) )に対して垂直な単位ベクトルを \( \boldsymbol{n} \)その位置での電流密度を \( \boldsymbol{i} \) すると, この面に対する電流の大きさ \( I \)\[ I = \int_{S} \boldsymbol{i} \cdot \boldsymbol{n} \ dS \] である. ここで \( \int_{S} \) は曲面 \( S \) 上の全てのについて積分を実行することを意味する.

電流の定義の一般形

曲面 \( S \) 上の微小領域(面積 \( dS \) )に垂直な単位ベクトルを \( \boldsymbol{n} \), その位置での電流密度を \( \boldsymbol{i} \) すると, この面における電流の大きさ \( I \) は次式で与えられる. \[ I = \int_{S} \boldsymbol{i} \cdot \boldsymbol{n} \ dS \]

最終更新日
コンデンサ オームの法則



補足    (↵ 本文へ)
  1. 電子が原子核の周りを”回っている”という考え方が正しい表現ではない, と聞いたことがある人もいるだろう. その通りである. では実際にはどんなふうになっているのかを学ぶためには量子力学というミクロの世界で主役となる物理学の登場を待つことになる. 量子力学の考え方では, 粒子達についてある瞬間にある位置にいる存在確率はわかる, というなんとも奇妙(?)なものである. この手の話は数式から入るよりも, 一般向けの科学雑誌などでイメージを掴んでから学習することをおすすめする.

  2. このような話を以前にもしたことがある. 熱力学における気体分子運動論である. 両者に共通することは, ミクロな存在の挙動を逐一追わなくてもマクロにどんな事が起きるのかを理解できる, ということである. 物理学では個々の物体の動きに注目するだけでなく, それらが全体としてどのように振る舞うか, どんな性質を持つかについても頻繁に議論することになる.

  3. 化学でも電子がアボガドロ数個集まった時の電荷量を表すファラデー定数 \( F = 9.65 \times 10^{4} \ \mathrm{C} \cdot \mathrm{mol^{-1}} \) が登場した. 今の場合, \( 1 \ \mathrm{A} \) という値にはどれくらいの電子が貢献しているのかなどが物理定数から知ることができる. 時々は物理定数に目を向けていただきたい.

  4. 電子が負の電荷を持つことと, 電子の速度とは逆向きが電流の向きであることをあらわにしてベクトルとして表すと, \[ \begin{aligned} \boldsymbol{I} = \left( – e \right) n S \left( – \bar{\boldsymbol{v}} \right) \end{aligned} \] となる.

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