コイルの直列接続と並列接続

互いに独立な, 磁気的に結合していない複数のコイルの接続について次の関係式が成立する.

自己リアクタンス \( L_{i} \, \left( i = 1, 2, \cdots , n \right) \) のコイルが直列接続されたとき, 合成リアクタンス \( L \) は \( \displaystyle{ L = \sum_{i=1}^{n} L_{i} } \) で表すことができる.

自己リアクタンス \( L_{i} \, \left( i = 1, 2, \cdots , n \right) \) のコイルが並列接続されたとき, 合成リアクタンス \( L \) は \( \displaystyle{ L = \left( \sum_{i=1}^{n} \frac{1}{L_{i}} \right)^{-1} } \) で表すことができる.

コイルの直列接続並列接続について議論を行い, 各接続方法毎に複数のコイルを単一のコイルに置き換えて考えることが可能なことを示そう.

置き換えられた単一のコイルが持つインダクタンスを合成インダクタンスなどという.

以下では, コイルの自己インダクタンスは時間的に変化せずに一定であるとし, コイル間の相互インダクタンスは無視できるものとする.

コイル間の相互インダクタンスが無視できない場合(磁気的に結合している場合)というのは, あるコイルに電流を流すことで生じた磁場が別のコイルに入射し, そこで生じた電流による磁場が元のコイルに入射することで電流に影響を及ぼすといった状況のことを指す\[1]. この場合には以下の議論より込み入った議論を行う必要が出てくるので注意して欲しい.

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コイルの基本性質
コイルの直列接続
コイルの並列接続


コイルの基本性質

自己リアクタンス \( L \) のコイルに流れる電流が \( I \) であるとき, コイルの両端に生じる電位差 \( V \) は次式で与えられる. \[V = L \frac{dI}{dt} \quad . \label{ispVLI}\] また, 式\eqref{ispVLI}の両辺を時間積分して \( I \) について整理することで次式を得る. \[\int V \,dt = L I \ \to \ I =\frac{1}{L} \int V \,dt\quad . \notag \] コイルが回路に組み込まれた瞬間やコイルに電流が流れ始めた時刻を基準とすることが多いのでその時刻を \( t_{0} \) とし, \( t_{0} \) においてコイルに流れていた電流を \( I(t_{0}) \) としよう. すると, 時刻 \( t \, ( > t_{0} ) \) においてコイルに流れる電流は, 次式で与えられることになる. \[I(t) = I(t_{0})+ \frac{1}{L} \int_{t_{0}}^{t} V(t^{\prime}) \,dt^{\prime} \label{ispVint}\]

コイルの直列接続

下図に示したような, 複数のコイルが直列接続された回路について考えよう.

この回路において, 端子 \( b \) に対する端子 \( a \) の電位を \( V \) , 端子 \( a \) からコイル群に向かって流れ出る電流を \( I \) とする. また, 各コイルの自己リアクタンスを \( L_{i} \) , 各コイル間に生じている端子 \( b \) 方向に対する端子 \( a \) 方向の電位を \( V_{i} \) , \( i \) 番目のコイルに初めから流れていた電流を \( I_{i}(t_{0}) \) と書くことにしよう.
( \( i = 1, 2, \cdots , n \) とする. )

直列接続の場合, 各コイルに流れる電流は全て \( I \) に等しいので次式が成立する. \[I_{i}=I \quad . \notag\] また, 時刻 \( t \) における各コイルの電位差 \( V_{i}(t) \) について式\eqref{ispVLI}が成立し, \[V_{i} = L_{i} \frac{dI_{i}}{dt} = L_{i} \frac{dI}{dt} \quad . \notag\] であるので, \( ab \) の間の電位差 \( V(t) \) は, \[\begin{align} V &= V_{1} + V_{2} + \cdots + V_{n} \notag \\ &= L_{1}\frac{dI}{dt} + L_{2}\frac{dI}{dt} + \cdots + L_{n}\frac{dI}{dt} \notag \\ \therefore \ V &= \left( L_{1} + L_{2} + \cdots + L_{n} \right) \frac{dI}{dt} \label{issubCon} \end{align}\] となる. ここで, \[\begin{aligned} L \mathrel{\mathop:}=& L_{1} + L_{2} + \cdots + L_{n} \\ =& \sum_{i=1}^{n} L_{i} \end{aligned} \notag\] を定義すると, 式\eqref{issubCon}は \[V = L \frac{dI}{dt} \notag \] と書くことができる. これは自己リアクタンス \( L \) をもつ単一のコイルに成立する式\eqref{ispVLI}そのものである.

以上より, \( n \) 個のコイル(自己リアクタンス \( L_{i} \) )が直列接続されている状況は, 自己リアクタンス \( L = L_{1} +L_{2} + \cdots + L_{n} \) を持つ単一のコイルが接続されている状況と同じだとみなすことができ, \( L \) を直列接続されたコイルの合成インダクタンスという.

コイルの並列接続

下図に示したような, 複数のコイルが並列接続された回路について考えよう.

この回路において, 端子 \( b \) に対する端子 \( a \) の電位を \( V \) , 端子 \( a \) からコイル群に向かって流れ出る電流を \( I \) とする. また, 各コイルの自己リアクタンスを \( L_{i} \) , 端子 \( b_{i} \) に対する端子 \( a_{i} \) の電位を \( V_{i} \) , 各コイルに端子 \( a \) 側から流れ込む電流を \( I_{i} \) としよう.
( \( i = 1, 2, \cdots , n \) とする. )

並列接続の場合, 各コイルの両端の電位差 – \( b_{i} \) に対する \( a_{i} \) の電位 – \( V_{i} \) は全て \( V \) に等しいので次式が成立する. \[V_{i} = V \quad . \notag\] また, 点 \( a_{1} \) に対してキルヒホッフの第1法則を適用すると次式を得る. \[I = I_{1} + I_{2} + \cdots + I_{n} \quad . \label{ipKirch1}\] さらに, 各コイルについて \[I_{i} = I_{i}(t_{0}) + \frac{1}{L_{i}} \int_{t_{0}}^{t} V\,dt \notag\] が成立する(式\eqref{ispVint})ので, \( I_{i} \) を式\eqref{ipKirch1}に代入すると, \[\begin{align} I &= I_{1} + I_{2} + \cdots + I_{n} \notag \\ &= \left[ I_{1}(t_{0}) + \frac{1}{L_{1}} \int_{t_{0}}^{t} V\,dt \right] \notag \\ & \phantom{=} + \left[ I_{2}(t_{0}) + \frac{1}{L_{2}} \int_{t_{0}}^{t} V\,dt \right] \notag \\ & \phantom{=} + \cdots \notag \\ & \phantom{=} + \left[ I_{n}(t_{0}) + \frac{1}{L_{n}} \int_{t_{0}}^{t} V\,dt \right] \notag \\ &= \left[ I_{1}(t_{0}) + I_{2}(t_{0}) + \cdots + I_{n}(t_{0})\right] \notag \\ & \phantom{=} + \left[ \frac{1}{L_{1}} + \frac{1}{L_{2}} + \cdots + \frac{1}{L_{n}}\right] \int_{t_{0}}^{t}V(t^{\prime}) \,dt^{\prime} \label{ipsubCon} \end{align}\] となる.

ここで, \[\begin{aligned} \frac{1}{L} \mathrel{\mathop:}=& \frac{1}{L_{1}} + \frac{1}{L_{2}} + \cdots + \frac{1}{L_{n}} \\ =& \sum_{i=1}^{n}L_{i} \end{aligned} \notag\] および \[I(t_{0}) \mathrel{\mathop:}= I_{1}(t_{0}) + I_{2}(t_{0}) + \cdots + I_{n}(t_{0}) \notag\] を定義すると, 式\eqref{ipsubCon}は \[I(t) = I(t_{0}) + \frac{1}{L} \int_{t_{0}}^{t}V(t^{\prime}) \,dt^{\prime} \notag \] と書くことができる. これは自己リアクタンス \( L \) を持つ単一のコイルが時刻 \( t_{0} \) に \( I(t_{0}) \) の電流が流れていたときに成立する式\eqref{ispVint}そのものである.

以上より, \( n \) 個のコイル(自己リアクタンス \( L_{i} \) )が並列接続されており, 初期状態における各コイルを流れる電流が \( I_{i}(t_{0}) \) である状況は, 自己リアクタンス \( L=\left( \frac{1}{L_{1}} + \frac{1}{L_{2}} + \cdots + \frac{1}{L_{n}}\right)^{-1} \) を持つ単一のコイルが時刻 \( t_{0} \) に \( I(t_{0})=I_{1}(t_{0})+I_{2}(t_{0})+\cdots+I_{n}(t_{0}) \) の電流が流れていた状況と同じだとみなすことができ, \( L \) を並列接続されたコイルの合成インダクタンスという.

最終更新日
コンデンサの充電・放電過程 交流



補足    (↵ 本文へ)
  1. 例えば, 同じ鉄芯にまかれた二つのコイルがこの状況に相当する.

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