円運動の運動方程式 —角振動数一定の場合—

円運動の運動方程式 \[ m r \omega^2 = F\] の導出については本編でも書いているのだが, それとは少し違う手法で議論を行う[1].

このページでは,

  1. 物体の運動軌道が円軌道という条件を初めから与える.

  2. さらに, 円軌道上を一定の速さで回る等速円運動とする.

  3. 円運動の(動径方向の)運動方程式を示す.

といった順序で進めてみようと思う.

実は, 条件2がなくとも動径方向の運動方程式は変わらないのだが, それはまた後日.


さて, ココで使う数学のうちちょっとだけ敷居が高いのは三角関数の微分である. が, 今回は公式として与えておくことにしておこう. [2].

三角関数の微分の公式は次式で与えられる. \[\begin{aligned} \frac{d }{d x } \sin{x} &= \cos{x} \\ \frac{d }{d x } \cos{x} &=-\sin{x} \quad . \end{aligned}\] また, 三角関数の合成関数の公式も一緒に与えておこう. \[\begin{aligned} \frac{d }{d x } \sin{\left(f(x)\right)} &= \frac{df}{dx} \cos{\left(f(x)\right)} \\ \frac{d }{d x } \cos{\left(f(x)\right)} &=- \frac{df}{dx} \sin{\left(f(x)\right)} \quad . \end{aligned}\] これらの公式については三角関数の導関数で紹介している.


話を物理へ移そう.

まずは一番初めに説明したとおり, 物体が通る軌道を下図のような円軌道としよう.

\( x \) 軸と \( y \) 軸の交点を座標原点 \( O \) に選び, 原点から半径 \( r \) の円軌道上を運動するとしよう.

円軌道上のある点 \( P \) にいる時の物体の座標 \( (x, y) \) というのは, \( x \) 軸から反時計回りにとった角度 \( \theta \)\( r \) を用いて, \[\left\{ \begin{aligned} x & = r \cos{\theta} \\ y & = r \sin{\theta} \end{aligned} \right.\] で与えられる.

したがって, 点 \( P \) の物体の位置ベクトル \( \boldsymbol{r} \) は, \[\begin{aligned} \boldsymbol{r} & = \left( x, y \right)\\ & = \left( r\cos{\theta}, r\sin{\theta} \right) \end{aligned}\] となる. これが円軌道という条件を与えられた物体の位置ベクトルである.

次に, 物体が円軌道上を等速度運動(等速円運動という)する場合に物体が満たす条件を求めよう.

以下で用いる物理と数学の絡みとしては, 位置を時間微分することで速度が, 速度を自分微分することで加速度が得られる, ということを理解しておいて欲しい.(位置・速度・加速度と微分参照.)

物体の位置 \( \boldsymbol{r} \) を微分することで, 物体の速度 \( \boldsymbol{v} \) が得られることを用いれば, \[\begin{aligned} \boldsymbol{v} &= \frac{d }{dt} \boldsymbol{r} \\ & = \left( \frac{d }{dt} x, \frac{d }{dt} y \right) \\ & = \left( r \frac{d }{dt} \cos{\theta}, r \frac{d }{dt} \sin{\theta} \right) \\ & = \left( – r \frac{d \theta}{dt} \sin{\theta}, r \frac{d \theta }{dt} \cos{\theta} \right) \end{aligned}\] これが円軌道上での物体の速度の式である. ただし, 途中では半径\( r \) が時間変化しないことを用いている.

さて, 速さが一定であるという条件から得られる数式を考えてみよう. \[\begin{aligned} v &= \sqrt{ \left( \frac{d }{dt} x \right)^2 + \left( \frac{d }{dt} y \right)^2 } \\ &= \sqrt{ \left( – r \frac{d \theta}{dt} \sin{\theta} \right)^2 + \left( r \frac{d \theta }{dt} \cos{\theta} \right)^2 } \\ &= r \left| \frac{d \theta }{dt} \right| \sqrt{ \sin^2{\theta} + \cos^2{\theta}} \\ &= r \left| \frac{d \theta }{dt} \right| \end{aligned}\] ここで, \( \displaystyle{ \frac{d \theta }{dt} } \) の大きさは角振動数(角周波数)といわれ, 記号 \( \omega \) で表す.

以上より, 円軌道半径( \( =r \) )が一定で, 円軌道上での速さ( \( =v \) )が一定なので, \( \omega \) も一定ということがわかる.

このような, \( \omega \) が一定の円運動を等速円運動というのであった.

さて, 円運動の運動方程式を知るために, 次は加速度を求めておこう.

加速度 \( \boldsymbol{a} \) は速度 \( \boldsymbol{v} \) をさらに時間で微分することで求まるので, \[\begin{aligned} \boldsymbol{a} &= \frac{d }{dt} \boldsymbol{v} \\ & = \left( \frac{d}{dt} \left\{ \right.- \underbrace{ r \frac{d \theta}{dt} }_{\mathrm{const.}} \sin{\theta} \left. \right\}, \frac{d}{dt} \left\{ \right. \underbrace{ r \frac{d \theta}{dt} }_{\mathrm{const.}}\cos{\theta} \left. \right\} \right) \\ & = \left( – r \frac{d \theta}{dt} \cdot \frac{d}{dt} \sin{\theta} , r \frac{d \theta}{dt} \cdot \frac{d}{dt} \cos{\theta} \right) \\ & = \left( – r \frac{d \theta}{dt} \cdot \frac{d \theta}{dt} \cos{\theta} , r \frac{d \theta}{dt} \cdot \frac{d \theta}{dt} \left( – \sin{\theta} \right) \right) \\ & = \left( – r \omega^2 \cos{\theta}, – r \omega^2 \sin{\theta} \right) \end{aligned}\] これで, 円軌道上を等速度運動する物体の加速度 \( \boldsymbol{a} \) が得られた.

ここで, 位置 \( \boldsymbol{r} \) と加速度 \( \boldsymbol{a} \) が次のような関係に在ることに気付く. \[\begin{aligned} \boldsymbol{r} &= \left( r \cos{\theta} , r \sin{\theta} \right) \\ \boldsymbol{a} &= \left( -r\omega^2 \cos{\theta} , -r\omega^2 \sin{\theta} \right) \\ &= – \omega^2 \left( r \cos{\theta} , r \sin{\theta} \right) \\ &= – \omega^2 \boldsymbol{r} \end{aligned}\] これは, 加速度ベクトルというのは位置ベクトルとは真逆の方向を向いていて, その大きさは \( \omega^2 \) 倍されたものであることを示している.

もともと位置ベクトル \( \boldsymbol{r} \) は”原点 \( O \) から円軌道上の点 \( P \) へ向かう方向”を向いていたので, 加速度ベクトルというのは”円軌道上の点 \( P \) から原点 \( O \) へ向かう方向”を向いているのである.

そう思ってもう一度 \[\boldsymbol{a} =- \omega^2 \boldsymbol{r}\] を見なおしてみると, 位置 \( \boldsymbol{r} \) が円軌道上かつ角振動数が一定という条件のもとでの加速度 \( \boldsymbol{a} \) というのは, \( \boldsymbol{r} \) に沿った方向以外には存在していない, ということも同時に訴えているのである.

続いて, これを運動方程式 \[m \boldsymbol{a} = \boldsymbol{F}\] に代入しよう.

ただし, 合力 \( \boldsymbol{F} \) を, 位置ベクトルと同じ方向の力 \( \boldsymbol{F}_{r} \) と, それ以外の力 \( \boldsymbol{F}_{\theta} \) とに分解しておこう. \[\boldsymbol{F} = \boldsymbol{F}_{r} + \boldsymbol{F}_{\theta} \quad .\] なぜこんなことをするかといえば, 今の条件下では加速度 \( \boldsymbol{a} \)\( \boldsymbol{r} \) 方向以外には生じていないので, 加速度に比例する量である力も \( \boldsymbol{r} \) 方向以外は作用していないはずだからである.

すなわち, 角振動数一定で円軌道を運動している物体には \[\boldsymbol{F}_{\theta} = \boldsymbol{0}\] となっているのである.

以上をかんがみると, \[\begin{aligned} m \boldsymbol{a} &= \boldsymbol{F}_{r} + \boldsymbol{F}_{\theta} \\ \to m \boldsymbol{a} &= \boldsymbol{F}_{r} \\ – m \boldsymbol{r} \omega^2 &= \boldsymbol{F}_{r} \\ m \boldsymbol{r} \omega^2 &=- \boldsymbol{F}_{r} \\ \end{aligned}\] ここで, 右辺の \( – \boldsymbol{F}_{r} \)\( \boldsymbol{r} \) 方向とは逆方向の力, すなわち向心力 \( \boldsymbol{F}_{\text{向心力}} \) のことであり, \[\boldsymbol{F}_{\text{向心力}} =- \boldsymbol{F}_{r}\] を用いて, 円運動の運動方程式, \[m \boldsymbol{r} \omega^2 = \boldsymbol{F}_{\text{向心力}}\] が得られた. この右辺の力は”向心方向を正としている”ことを再度注意しておく.

これが教科書で登場している等速円運動の項目で登場している \[ m r \omega^2 = F \] の正体である.

もうおわかりかと思うが, ここでいうところの\( F \) とは向心方向を正とした向心力 \( \boldsymbol{F}_{\text{向心力}} \) の大きさを意味している.

また, 速さ, 円軌道半径, 角振動数について成り立つ式 \[v = r \omega\] をつかえば, \[m \frac{v^2}{r} = F_{\text{向心力} }\] となる.

円運動の時だけ運動方程式が見た目上変わっているのは, 運動方程式の語り方が \( x, y \) を用いた方法から, \( r, \theta \) を用いた方法に変わっただけのことである.




補足    (↵ 本文へ)
  1. 本編で説明した手法というのは,

    1. 座標系を直交座標系から極座標系で記述し直す.

    2. 極座標系での位置, 速度, 加速度がどうなっているのかを調べる.

    3. 極座標系での一般的な運動に対する運動方程式を導出する.

    4. 極座標系での運動方程式に束縛条件を与えることで円運動の運動方程式を導く.

    といった手法であった. これは, 理学としては真っ当な道筋なのであろうが, いかんせん脱落者を多く排出してしまう.

  2. 大学受験を控えた学生さんならば, これらの証明は是非ともできて欲しい.

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